準特級術師はカプ厨につき!   作:波間こうど

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 お酒飲んでたらこんな時間になりました。すいませんね。


第十三話 覚悟を問う夜につき

 

 時刻は回って、夜。

 

 散々遊び回ったウチらは沖縄の半分近くを堪能し(流石に全部を堪能し尽くすのは無理だった)て、そして夕方にホテルに急いで滑り込んだ。ホテルは歌姫ちゃんが見つけてくれたのでそこにお邪魔する形になる。急な予約だったのに快く引き受けてくれたようだ。カードはウチのものを切ったけどまぁ、モーマンタイである。

 

 ウチらはホテルでビュッフェを堪能して、これから部屋に入るところだった。そこでわざわざエントランス付近のベンチに腰掛けてビシッ! とみんなに向き直る。みんな各々の服装(アロハを買ったりして浮かれている奴もいるけど)のままご飯に満足したのか寛いでいて、和やかな空気が充満してる。

 

「さて、みんなとここから相談しないといけないことがある」

「相談? あと風呂入って寝るだけじゃないんですか?」

「チッチッチ! 甘い! 甘いよ硝子ちゃん! チョコラテのように甘いんだよお嬢ちゃん! 大事な話が残っているだろう!」

「さっきのチョコのアイス美味かったのじゃ」

「理子さまに一口貰いましたが蕩けるような味で私も堪能させていただきました」

「え! なにそれ俺食ってねーんだけど!」

「悟がデザートにありつく頃にはもうなくなってしまっていたからね。私は九条先輩から一つ貰ったよ」

「はぁ!? 俺の分は!!」

「ない。…………あの、話していい?」

 

 こいつら堰を切ったように話し出しやがって……いいぞ、もっとやれ。お前たちのカップリングを見るために高い金を一時的に自腹で払ってやったんだから、その分君たちのね、カップリングをね、是非とも見せてくれって話なんだよ、ゲヘ、ゲヘヘ。それはそれとして話は聞いて欲しいが。

 

「それで、なんの話なのよ。どうせアンタがこんな所で改まって話すことなんてまともなことじゃないんでしょう?」

「何を言うか失礼な……ゴホン! それでは、部屋割りの話をしようか」

 

 わざわざこんなに引っ張ってから話を切り出した理由は単純で、ここでの部屋割りによってウチは見ることができるカップリングが変わってくるのだ。

 

「あ? 男部屋と女部屋に分かれるんじゃねぇの?」

「馬鹿だなぁ馬鹿、五条くんマイナス五億点」

 

 ウチは間抜けなことを言う特大のお馬鹿さんにやれやれと肩をすくめて見せた。確かに男子部屋と女子部屋を分けるのは理に適った選択だと言えるだろう。昨日はちなみにホテルを二人一組で取って理子ちゃんを寝かせてる横をみんなで順番交代で仮眠を取る形に落ち着いた。五条くんは万が一に備えて眠ってなかったけど。ウチ? ウチは快眠。

 

「それはもちろん普通ならそうだろうけど……ウチが楽しくない! くじ引きでもじゃんけんでもグッパでも何でもいいからさっさと別れよう!」

「え〜……女子と一緒に寝るのがまずいの位俺でもわかるけど」

「え、何? みんなで楽しく過ごしたくないの? こういうギャンブルが楽しいんじゃん。唆るぜ……! これは……!」

「先輩、今の先輩流石に五条より貞操観念ダメになってるよ」

「貞操観念〜?」

 

 なんだそれは……? ……あぁ! そういうのウチみんなには持ってないから大丈夫だよ! みんなにえっちな感情はもちろん当たり前に持ってるしむしろそれのおかげで今の所生きながらえていると言ったところも多分にあるんだけれども。それはそれとしてみんなのイチャイチャで抜くから……! ウチはみんなで気持ちよくなったりしないから……!(最低)

 

「まさか仲間にそんな感情もつわけないじゃん! そんな童貞みたいなこと考えてる奴いるの!? 童貞!?」

「童貞じゃねぇわ!!」

「え!? 五条くん童貞じゃないの!? 意外!!」

「マジで何なんだよ!」

 

 ホテルのエントランスでするべき会話じゃないとは思いつつも五条先生のことを馬鹿にして見せる。まぁ、五条先生は童貞より先に処女を失いそうだもんね、スパダリ傑くんが包容力の化身みたいな顔して抱いてくれ……チベスナだった。塩顔イケメンに前世で親を殺されたので憎いんだ(適当)

 

 そうやって馬鹿で低俗な会話をしていると黒井さんがスッと申し訳なさそうに手を上げた。その様はまさしく「あの、皆様にボディーガードしていただいている身なのでそう易々とこの談笑の流れを断ち切るのは心苦しいのですが、理子様に悪影響なんでやめてくれませんか?」と言っているようである。自覚ある。ごめんね?

 

「あの……理子様に悪影響ですので……」

 

 しかし、この程度で折れるわけにはいかない。今後二人の関係が進展するかもしれないじゃないか。ならウチは全力でお節介を遂行するッッ!!

 

「黒井さん……もう理子ちゃんも中学生です。この手の下ネタには慣れていかないと社会でやっていけませんよ。それに、ウチの勘が正しければ理子ちゃんは多分隠れてそういうの読んでます」

「理子様……?」

「何で妾のこと生贄にするんじゃ!? 読んでない! 黒井読んでないから……!」

「…………申し訳ありません、配慮が足りませんでした」

「読んでない! 読んでないから! ほんとだからぁぁぁ!!」

 

 理子ちゃんが顔を真っ赤にして両手を振り回す。うーん、あまりにも可愛らしい。しかも黒井さんと姉妹百合みたいになってて最高に興……興奮してきたね!

 

「うんうん。ということでギャンブルしよ!」

「なんかさっきから盛り上がってる所悪いんだけど大部屋にしたわよ。というか大部屋しか空いてなかったし」

「………………へ?」

 

 なんてこったい。その可能性は考えてなかった。というかこの手の大きいホテルにまさか大部屋って概念があったとは……え、和室ってこと? 雑魚寝? みんなで爆睡? うーん……。

 

「それはそれで楽しいからアリだな。枕投げしよーぜ!」

「なんですぐに切り替えられるんですか?」

「なんも考えてねーからだろ。この人マジで脊髄で生きてるような人だし」

「あり得ねー」

 

 修学旅行みたいで楽しいだろ絶対。めちゃくちゃ楽しいって絶対。ウチ前世ではコロナ禍だったから修学旅行とか行けてないの! 絶対楽しいって!!

 

「恋バナとかしよ! ね、理子ちゃん!」

「ふぇ!?」

「好きな子とかいないの? ハッ! まさか……ウチ!?」

「そんなわけないでしょ」

 

 スパチーン! とウチの頭が叩かれる。この衝撃、角度、手の柔らかさに声のトーン、ハリ、こぶし、ビブラート、美声……歌姫ちゃんだな?(声が十割の推理)

 

「ほら、さっさと行くわよ。温泉浸かってさっさと寝るんだから。明日朝イチの飛行機に乗るんでしょ?」

「別に昼ぐらいでもいいじゃん。のんびり行こうよ。トランプとか買って大富豪とかしない? ババ抜きでもいいよ」

「そんなことしてたら理子ちゃん寝れないでしょう」

「でもでもせっかくのバカンスだよ?」

「任務だって言ってんでしょ」

「そう思ってるのもう君だけだよ」

「え」

 

 歌姫ちゃんが驚いた顔してるけど普通に考えてこんなのバカンスでしょ、一級クラスが三人もいるんだよ? 歌姫ちゃんのバフまで乗ったらほとんどの術師に負けないんだから。

 

「つーか、七海と灰原は?」

「あの二人はもうそろそろこっちに合流するんじゃないかな? ちゃんと労ってあげないとね」

 

 バカンスのバの字もない状態でただひたすらに空港の護衛をしてたんだからたくさん労ってあげないとバチが当たるってものである。でも多分原作通りだと那覇空港の前で寝泊まりしたんじゃないかと思ってるんだよね。五条先生と夏油くんがそこら辺配慮するとは思えないもん。

 

「温泉入って〜、恋バナしよ! 恋バナ!」

「恋バナって……するわけないでしょ」

「え〜、みんなの好きな人教えてよ〜!!」

 

 カップリングをウチに見せろ! ウチのために恋愛しろ! ウチのためにイチャイチャしろ!! ウチのことを満足させるんだよ!!

 

「……アンタ酔ってるの?」

「呑んでないけど!?」

 

 失礼なこと言うなぁ。ウチは別にお酒好きじゃないんだけど? あれフワフワする割に別に気持ちよくなるわけでもないし思考力は鈍るしでいいことないんだよね。

 

「それはよかった。呑んでたらお風呂入れないものね。さ、みんなお風呂入っちゃいましょ」

「もー、無視して〜」

「うるさい。あ、突き当たりの大部屋が私たちの部屋ね」

「あいあーい。ごゆっくりね〜」

 

 女子メンツがベンチから立ち上がっていく、それに手を振って見送ってからベンチに座っている五条先生と夏油くんに目を向ける。そうしてニヤリと笑って見せた。ちょっと聞いてみたいことがあるのだ。二人のカップリングを見ながら、理子ちゃんたちのことを絡めたとても大事なこと。

 

「ね、二人とも外出れる?」

 

 

  × × ×

 

 

 先輩に呼ばれて外に出る。いつもはヘラヘラとしている先輩が笑顔を顔に貼り付けたまま俺たちのことを外へと呼び出した。わざわざ女子組がいなくなったタイミングで呼び出したんだからそれなりに理由があるんだろう。

 

「風気持ちいいね〜」

「そうですね……」

 

 風に靡く髪を耳にかけながらの先輩の言葉に傑が反応した。どうも傑も先輩の様子に何かを感じているらしい。何か、どこか、普段とは違う雰囲気を纏った先輩が夜の闇と同化している。

 

「ね、二人ともどうするの?」

「なにが?」

「要領を得ませんね……何が言いたいんですか?」

「いやいや、分かってる癖に……理子ちゃんだよ」

 

 先輩がすぐそこの柵に腰を掛けてこちらを見つめる。ポケットから出したチュッパチャップスを口の中に突っ込んで転がす。

 

「このまま天元様との同化を見逃すの?」

「……それは」

「理子ちゃんが泣いて拒んだら、君たちは止められるの?」

 

 目から光を消して、先輩がこちらを見つめる。真面目な質問。どこまでも俺たちのことを試してくる、深く深く飲み込むような質問。

 

 ……波の音が聞こえる。

 

「理子ちゃんが同化を拒んだら?」

「理子ちゃんが泣いて、嫌だって言ったら?」

「君たちよりも年下の女の子が泣きながら、君たちに縋ったら?」

「君たちはどうするの? 君たちは守れる? 彼女のことを救えるの?」

 

 いつも笑顔を携えた彼が、笑顔を呑み込んで。何度も何度も、確認するように聞いてくる。

 

「このためにアイツらが居ないタイミングで呼び出したのかよ」

「性格が悪いですね……」

「どうするの? 五条一級術師、夏油一級術師」

 

 ガリッ! と飴が噛み砕かれる。ジロリと、視線がこちらを見つめる。

 

「……そのときは、同化はなし」

「天元様と戦うことになるかもしれないよ」

「それでも、私たちは……理子ちゃんを守ります」

 

 傑が言い切る、俺たちの意見は変わらない。

 

 そこに先輩が言葉を被せる。ただ一つの質問。そして、ただ一つの事実。

 

「それは、つまりウチと戦うってことだけど」

 

 真夜中の風が吹き抜ける。ほとんど満月の月が俺たちのことを見つめている。

 

「それでも、君たちは最強を名乗って、理子ちゃんを救えるの? 答えてよ」

 

 先輩が獲物を狩る獣のように、俺たちの前に立ち塞がった——。

 

 





 毎日書いてますがストックなくなってきて困った。どっかで止まる……? いいや、まだだ。まだ止まりませんよ……! 止まるんじゃねぇぞ……!!

 ここは分岐点です。詩刀子ちゃんの分岐点で、原作との分岐点。原作の空白を埋めながら書きたかったギャップや、自分の苦手なところを埋めていくの楽しい。これだから二次創作はやめられない。

 マジでお気に入りとか評価とか感想とかありがとうございます! 感想は全部返してますし、評価はもう嬉しくて嬉しくて……昨日は日刊ランキング載りました!! 最高!! ハッピー!! これからもよろしくお願いします!!
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