準特級術師はカプ厨につき!   作:波間こうど

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 ちゃんと熱くね? 夏。


第十五話 またね、につき

 

 朝、頭の痛みで目が覚めた。辺りを見渡してみるもののみんな寝落ちしたのかそこかしこに転がっていて、トランプが散らばりお菓子の袋やゴミなんかが散乱していて、みんな着物こそ着ているものの布団を敷いた形跡もなく潰れて……あ、理子ちゃんだけ布団で寝てる……黒井さんが敷いたのかな……“執念”を感じて大変良いです。

 

 あ、五条くんは気を張って寝ないようにはしてるみたいだけど目を瞑って気を張り巡らせることで休憩は取ってるね。夏油くんも割と起きてるな。ただ、二人共何故だか仮眠に近い状態らしい。原作ではほとんど寝ずの番なんじゃなかったっけ? まぁ、いいけど。

 

「頭痛い……」

「お酒飲むからよ」

「そんなこと言ったって硝子ちゃんが未成年なのに持ってたからそりゃ処理するでしょ……って、あれ? 歌姫ちゃん」

「朝風呂行ってきたの。アンタも入ってきたら?」

「いや〜……面倒かも……」

 

 髪のケアって割と大変だけどお風呂入るたびにしてるから毎回時間かかるしで怠いが勝つかな。それに今日はこの後大仕事が残っているので、余計な体力は消耗したくない。

 

「……ウチ二度寝しようと思うんだけど、お布団ってどこにある?」

「なに快眠するつもりで布団敷こうとしてんの」

「いや……体バキバキだし」

 

 こんなんじゃコンディションもクソもなくなっちゃう。

 

「いいからさっさと起きなさい。ほらみんなも起こして。早く帰らないとダメなんでしょ……最後の時間くらいたくさん過ごさせてあげましょう」

「……そうだね」

 

 原作では関わり合いにすらならなかった二人だけど、お姉さん気質の歌姫ちゃんと理子ちゃんは割と相性が良かったようで、いつの間にか仲良くなっていた。こういうのがね、魅力ですよね。うん。

 

「よーし! みんな起きて! 朝だよ!! それじゃあ飛行機に乗るまでの時間をたっぷり観光しよう!! そこまで時間ないけど!! 美ら海水族館くらいなら行け……え!? 水族館行けるの!?!? 流石にテンション上がるね!! 流石に気分が高揚します(一航戦)」

「……………………ガチでうるさい」

「なんで朝からそんなに元気なんですか」

「僕もうるさい方だと思いますけど先輩には負けます!」

「灰原……声のボリューム落としてくれ……」

「なんじゃ!? 爆撃か!? 敵襲か!?」

「頭いてぇ〜〜」

 

 みんながゾロゾロと起き上がってくる。おぉ、布団で寝てたわけでもないから体もバキバキだし夜更かししたせいかわからないけど体も痛めてるからもう完全にゾンビみたいになってる。起き上がってくるだけで一苦労って感じですねぇ〜。可哀想。

 

「そんじゃ、今日も楽しも!!」

 

 カーテンを開けると部屋の中に朝日が差す。その光に浄化されるようにみんなが蠢いたのが面白くて腹を抱えて笑った。物語の分岐点上でも、ウチは絶好調である。

 

 それがウチだからね。

 

 

  × × ×

 

 

 飛行機は止まることなく飛んだ。台風が迫ってきていたのでどうなるんだろうかって思ってたんだけど別に問題はなかった。割とあっさりと飛んだ。もうビュンビュンと……ってそんなにはしゃいではないけど。それでも普通に飛ぶくらいには飛んだわけだ。

 

 そういえば大地、森、海の呪霊は出たけど……漏瑚、花御、陀艮(≠理子ちゃん)ね。でも台風の呪霊って出てないなぁ……あんまり恐怖心がないとか呪いの感情がないとかなのかな。どうなんだろ。

 

「じゃ、どうする? 東京観光?」

「するわけないでしょ」

「え〜?」

「東京は観光いらん。妾の庭じゃ」

「ハッ! たかだか中坊のガキが偉そうなこと言うじゃねぇか」

「なんじゃ? 京都出身の貴様に取ってはこんぷれっくすか?」

「ちげぇよバーカ。こっちに別荘もあるしな」

「悟の別荘凄いよね。大きいというか広い」

「まぁ、五条家だしねぇ」

「妾だって高層マンションに住んでたもん!」

「爆破されましたけどね……」

 

 みんながゾロゾロと羽田からだらだらと話しながら高専へと移動していく。うーん、やっぱり凄いな。全然見られてるのがわかんない。

 

 この時点からパパ黒が監視してないと物語上おかしいはず……いや、高専の麓とかから観察してたのかな? パパ黒はその辺用意周到だから割としっかりと見てると思ってたんだけど……でも原作先生が気づかなかったんだからウチが気づかないって可能性もあるか。

 

「ご飯とか食べていく? やっぱり魚介?」

「さっき水族館に行きましたよね?」

「分かってないなぁナナミン。マグロとか食べたくない?」

「流石に趣味悪くないですか?」

「え〜? そんなことないでしょ! ね? 歌姫ちゃん! 硝子ちゃん!」

「私はいいわ」

「辛口の日本酒」

「ほら、硝子ちゃんなんてマグロのこと酒のお供にしか考えてないよ」

「酷いですね……」

 

 黒井さんにまで非難されてなお硝子ちゃんは「美味いじゃん」みたいな顔してる。ワロタ。ウチも言ってみただけで別に本当にマグロ食べたいとかは思ってないよ? マグロってあんまり好きじゃないんだよね……なんか特別美味しいとか感じなくて、味ってものがそもそもあんまりわかんないんだけどさ。

 

「さ、じゃあこの階段上がっちゃって、じゃんじゃん高専へと近づいていこう!」

「なんでそんなに元気なんですか?」

「いつものことだろ」

 

 階段を二段飛ばしで登っていく。ウチとみんなの距離が離れていくがその都度立ち止まって早く早くと急かしているとそのうち理子ちゃんが追いかけるように一段飛ばしで追いかけてくるようになった。君の感情的には行きたくないだろうに……偉いなぁ……心配かけないようにしてるんだね。

 

 階段を登り切る。ここで一つポイントなんだけど、高専組は慣れているので疲れるのは理子ちゃんと黒井さんだけってことになります。酷い話ですね。呼びつけたんならなんかロープウェイとか用意しとけ。ウチらも登るの割と怠いと思ってるんだから。

 

「皆んなお疲れ様。高専結界の内側だ」

「いやー、遊んだねぇ。バカンスはどうだった? 明日から任務頑張れそう?」

「今日のこれも任務だったんですが……」

「私は全然、お酒飲んでタバコ吸ってただけだしなぁ」

「家入さんは禁煙した方がいいと思います!」

「というか……なんで……硝子は、タバコ吸うておるのにこの階段を苦もなく登れるんじゃ……」

「まぁ、慣れよ慣れ」

 

 みんなが口々に喋り出すけどウチの耳はその全てを聞きつつ、周りを気にしていた。いや、五条先生ならいいけどウチが刺されて戦闘不能になったらシャレにならないしね。

 

「悟も本当にお疲れ様」

「……二度とごめんだ、ガキのお守りは」

「お?」

 

 理子ちゃんが五条先生の言葉に怒りの意を示した次の瞬間だった。

 

 五条先生が貫かれた。

 

「は?」

「え?」

 

 みんなが驚く中、黒井さんの行動は早かった。理子ちゃんの手を引いて元凶から遠ざけようとする。これが家族の守りか、家族の守りっていいよね。ナルト然りドラゴンボール然り……そういうのは信頼関係ないと成り立たないから。……ん? ピッコロと御飯は家族じゃない? 家族だろ……ッ!!

 

 理子ちゃんと黒井さんを腕の後ろに隠しながらウチはジッと呪霊に飲み込まれたパパ黒を眺めた。うーん。やっぱり強いな。予定調和だから普通な顔してるけど普通にしんどいよね、状況だけ考えると。

 

「アンタ、どっかで会ったか?」

「気にすんな、俺も苦手だ。男の名前覚えんのは」

 

 パパ黒が返す刀でナナミンと灰原くんを斬りつけてバックステップ、五条先生の術式を避けながら高く飛び上がった彼のことを夏油くんの呪霊が飲み込んだ。……この程度ではもちろん死んだりしないけど。つーか普通に早すぎだろワロタ。なんなんだよコイツ。

 

「悟……! 七海、灰原!」

「問題ない。術式は間に合わなかったけど内臓は避けたし、呪力で強化して刃を引かせなかった。ニットのセーターに安全ピン刺したようなもん。マジで問題ない」

「何その例え」

「天内優先、傑たちは先に天元様のところ行ってくれ」

「あ、ナナミンと灰原くんのことは硝子ちゃんと歌姫ちゃんに頼もうか。高専本部にまで行って、治療……それから一級術師を召集して」

「一級術師? 夜蛾先生とか……?」

「誰でもいいよ。というか、そのレベルじゃないと役に立たない……そういう相手だ」

 

 まぁ、高専にいるのは夜蛾先生くらいなものだし、一級術師なんてみんな出払っているので、その願いは叶わないんだけど。原作にいなかった四人をこの場から避難させるにはこの方法しかない。無駄な怪我はしてほしくないからね。もう二人くらい怪我してるけど。

 

「それじゃあ、五条くん任せたよ」

「油断するなよ」

「誰に言ってんのさ」

 

 ナナミンと灰原くんを背負った硝子ちゃんと歌姫ちゃんが離れていくのを確認してから理子ちゃんを抱き上げる。そうして全力で走り出した。黒井さんは夏油くんに抱いてもらおう……えっちな意味じゃないよ!

 

「走るよ! 夏油くん! 全力で!!」

「分かってます!!」

「なんで担ぐんじゃ!? 妾も黒井みたいにお姫様抱っこがいい!」

「我儘言わないの! そんなに我儘言うなら夏油さん家の子になっちゃいなさい!」

「先輩ふざけてる場合ですか!」

 

 ごめん。シリアスなムードを維持してられないんだよね。だって……あまりにも思い悩んだ分岐ルートだから。

 

「大丈夫。ちゃんとするからさ」

 

 

  × × ×

 

 

 高専最下層へ至る薨星宮(こうせいきゅう)に至るエレベーターに乗って、下に降りていく。そうして辿り着いた天元様の元へと向かう足元、その広場でウチは立ち止まった。黒井さんが立ち止まったからである。

 

「理子様……私はここまでです」

 

 涙目になりながら霞むような、そうして苦しむような声を出しながら、黒井さんが頭を下げた。溢れそうになっている涙はもう今にも落ちてしまいそうで、それほどまでに彼女と、理子ちゃんとの生活はまさしく幸せな日々だったのだろう。呼び捨てにされて、年下の女の子に甘えられ続けるのはそれはまぁ、見方によっては面倒以外の何者でもないかもしれないけれど、それでも。

 

「理子様……どうか……」

「黒井……大好きだよ……! ずっと! これからもずっと……!」

「はい……私も大好きです……!」

 

 それでも、いや、そんな少女だから、彼女は理子ちゃんのことを愛していたし、四六時中お世話していたのだろう。理子ちゃんはこの人のことを愛していたのだろう。どこまでも深く、重い愛。

 

 ……………………正直最高なシチュな上にブッ刺さってます。最高すぎる。え? やっぱりシチュとして家族愛も形として綺麗すぎるな。黒井さんと理子ちゃんの二人の仲の睦まじさってものが咲き誇ってます。咲き誇ってますよ……! 流石に興奮しちゃうかもしれない。ウチとしては二人の仲が本当にここで終わってしまうことが許せないんだけどね。本当にダメ。マジで。許しちゃいけないよ。この二人が離れ離れになることなんて許しちゃいけないんだよ。

 

 黒井さんと理子ちゃんが離れる。そうしてトンネルの先……天元様の待つところに向けて歩き出すタイミングで、ウチは足を止めた。

 

「夏油くん。ウチはここに残るよ」

「……あの男ですか」

「ま、念には念ね。だから理子ちゃんを頼むよ」

 

 きっと、パパ黒はここまで来るだろう。だから、ここで止めてあげないといけないんだ。ウチがここで止めることが、この物語の分岐点。そして、この世界の分岐点。

 

「分かりました……」

「君は本当に警戒してね。ウチがやられる可能性もあるから」

「貴方が? 悟が万が一、億が一負けたとして……貴方まで負けたら誰が勝てるんですか」

「そりゃ君が勝つしかないだろ」

「…………」

 

 自信なさそうな夏油くんに笑って見せる。まぁ、言うまでもないことではあるけど、ウチは知ってる。世界で一番好きな作品のキャラだもん。分かってる。

 

「君たちは最強なんでしょ?」

「…………はい。そうですよ。私たちは最強だ」

 

 夏油くんが頭を上げた。覚悟の決まった瞳。全てを理解した顔。男になったじゃあない。いいね。五条くんと二人揃って君たちは最強なんだ。

 

 この『呪術廻戦』を爆発的ヒットに持っていった立役者なんだから。君たちの頑張りがこの物語の中での青春。青い季節なんだから。

 

 そんな君たちを見て、ウチはカプ厨に目覚めたんだから。

 

「理子ちゃん!」

 

 声をかける。そして振り返った理子ちゃんに向けて、

 

 ウチは最大の呪いの言葉を————。

 

「またね!」

 

 その顔が歪んで、その後、ゆっくりと笑顔へと変わる。何も知らない、何もわからない、運命に翻弄されただけの少女が、ただ笑顔で。

 

「うむ! またじゃ!」

 

 そう微笑んでトンネルの闇へと消えた。

 





 物語が進み、詩刀子がようやく勝手に自律的な行動をしてくれるようになってきました。キャラクターが動き始めてからが本番ですからね。

 お次はここ数話影で動いてきたパパ黒にフォーカスですね。面白く仕上げます! 明日をお楽しみに!! 毎日投稿頑張るぞ〜!!

懐玉・玉折以降の原作展開に突入するべき?

  • 懐玉・玉折以降の原作展開へ突入する。
  • 綺麗に終わるなら懐玉・玉折で終わり。
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