準特級術師はカプ厨につき!   作:波間こうど

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 カプはBLも百合もノマカプも固定夢主もなんでも愛せる。

 ただしナマモノてめぇはダメだ。


第二話 喧嘩両成敗につき

 

 喧嘩の仲裁に入ってから早三十分が経過した。

 

 最初の五分もしないうちに喧嘩の仲裁(という名の一人勝ち)は終わったので、伸びた二人を引きずり医務室にまで連れてきた、というのがことの顛末ということになる。今は医務室でりんごを剥いてあげてます、私は優しいので。

 

 ……ボコボコのフルボッコにしてしまったため好感度稼ぎをしようとしてるわけじゃないですヨ? ホントダヨ?

 

 いや、別に好感度を稼いで夢女になろうってわけじゃないんだよ? ただ、こう、仲良くなってた方がイチャイチャを、カップリングの余波を浴びることができるから好感度を稼ごうと思ってるだけなんだ……ギブアンドテイクなんだ……。だから間違っても夢女だと思わないで欲しい。私は夢じゃない。草とかになりたい。

 

 ちなみに歌姫ちゃんは今夏油くんを診てくれています。一人につき一人つけた方がいいんじゃね? というのは配慮に見せかけた私の計算だ。ただ単に小ズルいだけともいう。

 

 一人で看病している先輩……って考えたらなんかこう……ね? ほら、優しそうな感じするじゃん?(語彙力)

 

 私は料理ができるタイプのオタクなのでとりあえず看病の定番、りんごを剥く、というタスクをしているのだけど……フルボッコにしすぎたのか、五条先生(まだ先生ではない)が起きる気配はない。ヤり過ぎた……? やっぱり最後のハイキックは酷すぎただろうか……モロにイってたし……。黒閃は出なかった……というか出ないんだけども、流石にあんだけ綺麗に入ったら……もしかして植物状態とかになってない!?

 

 罪悪感でアワアワしていると彼の体がピクリと揺れた。頭を抑えながら体を起こす姿は痛みを訴えてくるようだ。ごめんて……。次からはもっと優しくしますやん……。

 

「ん……」

「あ、起きた? やっほ」

「……! 誰だお前!」

「あれ? 強く頭蹴りすぎたかな……? 記憶ぶっ飛んだ?」

 

 五条悟が目をパチクリさせてるのってすごいな。顔面国宝級じゃん。は? 何この顔、なんで自分は悪くないみたいな顔できるんだ? 顔だけで国堕とせるだろ。特級の顔面。傾国の美男子顔しやがって。そんなんだからBL絵と夢絵が量産されるんだぞ。いい加減にしろ。模写したろか。オタクはすぐに二次創作に走るからな? 舐めるなよ?

 

 つか睫毛長すぎだろ、綿棒何本乗るねん。はぁ〜、やってられませんわ〜。ウチらの朝の努力を無にするような造形しやがって。もっぺんしばいたろか。

 

「こんにちは。ウチは九条(くじょう)詩刀子(しとね)。五条くんの先輩に当たる人間だね。さっきは喧嘩の仲裁ってことでフルボッコにしてごめんね……言葉より手が出ちゃうタイプの人間なの。あ、リンゴ食べる?」

「…………アンタ、どこの家の人間?」

「はい?」

 

 五条悟が何やらジッとこちらを睨みながらそう言った。ごめん、セリフの意味がわかんない。

 

「ごめん、セリフの意味がわかんない」

 

 ほら、あまりにも何言ってるのか分かんないから口から出ちゃったじゃんか。

 

「俺のこと片手間にボコボコにできるような人間が旧家の出身じゃないなんてあり得ない。加茂か? 禪院か? どこの家の出だ、お前」

「あぁ、なるほど……?」

 

 確かに、そりゃ五条家最強の……といってもまだ反転も術式のオート展開もできない、領域も使えないような状態だけど、そんな状態の先生でも最強の力を持っていることは確かだ。五条家をワンマンプレーにまでのし上げることができる存在。そんな人間を片手間にボッコボコにしたらそりゃびっくりされること請け合いである。

 

「めっちゃ一般家庭出身だよ。この学校に入るまでは呪術のじゅの濁点すら知らなかったくらい」

「じゃあお前の術式は?」

「“視た”らわかるんじゃないの?」

「…………」

 

 ジッと五条先生(先生ではない)の目が顰められる。そして、そのまま私の術式を認識したのか固まった。それって一生懸命見ないとちゃんと認識できないの?

 

 でも虎杖くんと初めて出会った時もジッと観察して「ハハ、混じってるよ」みたいなこと言ってたし、ちゃんと使わないと分かんないのかな。思ってるよりも難しい眼なのね。大変だ。

 

 嫌そうな顔をした五条先生(先生ではない)が私のことを再度睨んだ。

 

「……その術式が相伝じゃなくて、一般家庭から生えてくるわけないだろ。ここ数百年出てないんだぞ」

「そんなこと言われても……呪霊操術の彼も一般家庭出身なんだよ? たまにあるらしいじゃん。突然変異」

「まぁ、呪霊操術も相当に珍しい術式だけど……! お前のそれはもっとやばいだろーが!」

 

五条先生(まだ先生ではない)が顔を顰めながら毛布を押し除けて私のことを睨む。なんか学生時代だからかチワワが睨んできてるくらいにしか感じないな……おーう、チワワ先輩ウォッチ! 可愛い可愛いね。

 

「『天逆処調天逆処調(あまのさかとこのしらべ)』……!」

 

 五条先生(だからまだ先生ではないってば)は顔を顰めながら私の術式を看破して言い切った。心底腹が立つというような顔だ。まぁ、当然だろう。彼にとってほとんど唯一の完全な弱点になり得る術式だろうから。

 

 そう、『天逆処調(あまのさかとこのしらべ)』。それが私の術式の名前だ。名前から『呪術廻戦』を齧ってる人は聞き覚えがあるだろう。なんだろ? って感じもするかもしれないけど。

 

「……特級呪具、天逆鉾(あまのさかほこ)と同じ性能の術式」

「領域を展開できなきゃただの一般人だけどね」

 

 聞き覚えあるどころかって感じだろうけど説明しよう! 天逆鉾とは! 恵くんパパ、パパ黒でお馴染み伏黒甚爾さんが五条先生(だからまだ先生ではないって)をズタズタにしたときの鉾である。あまりにもぶっ壊れすぎて原作五条先生が封印したやべぇ代物だ! そのせいで散々な目に合った呪具でもある。マジで最強特級呪具である!

 

 その効果は対象の術式中和。強制解除。

 

「ウチの術式は展開した領域内にいる人間をのべつまくなし全員強制的に術式を解除させ、ステゴロを強制させる」

 

 言うなればエネルギー……吸収……アリーナ……である。拳のみ、勝者あり──! といった具合だろうか。術式については自覚した時点で流石に笑ってしまったものだ。ウケるでしょ。こんなの。問題はエネルギーを吸収しないのでひたすらに私が素手で強くないことには使えない術式であると言う問題だ。どないしたらええねん……と絶望して割と真面目に本気で鍛えたものだ。体が資本(ガチ)である。

 

「ま、術式だけじゃ強くないから鍛えなくちゃいけないのが難点だね」

「は? 体術に関してはアンタの素の実力なわけ?」

「え? うん……」

「……じゃあ、俺のこと……仮にも! 五条家の次期当主を片手間にボコボコにした体術は自前?」

「言葉変えただけで同じ意味じゃない? そうだってば」

 

 本当に苦労したものだ。この術式、というか領域については本当に大爆笑させてもらったが、その後よくよく考えたら「これって虎杖悠仁だったから笑い事になったけど、ただの人間が持つには流石にダメな術式なのでは?」ってことに気づいてからはもうダメだったね……領域で術式消しても結局ステゴロしなくちゃいけないってことに気づいてからはもう大変!

 

 素手の特訓をこれでもかというほど続け、今となっては私のことを素手で倒せるのはフィジカルギフテッドくらいなものじゃないだろうか。素の身体能力が高いタイプには負けるっぽいんだよね。あれって結局術式じゃなくて縛りだもん。解除できないんだよなぁ。

 

 まぁ! フィジギフとか、原作でも二人しか出んかったしあんま関係あらへんやろ! 出くわさへん出くわさへん! 平気平気!(一級フラグ建築士)(フラグ建築は速さと正確さが命)(コーナーで差をつけろ)

 

「……」

「高専って同期に恵まれるの自体が奇跡に等しいんだから、同期とは仲良くしなよ? りんご食べる?」

「いらねぇ」

「そう? ならウチが食べるけど」

 

 口の中にりんごを放り込んでシャクシャクと嚙む、そして味わってから呑み込んだ。美味い。

 

「……おい、領域教えろ」

「んぁ? なんで?」

「先輩なんだろ? 後輩に技術伝えるのは当たり前のことじゃねぇのかよ」

「まぁ、それもそうか」

 

 それはそうかもしれない。確かに、先輩たるもの後輩をいじめ……ゲフンゲフン、可愛がらなくちゃいけないのはもっともな理論だろう。

 

「じゃあ夏油くんに謝れたらいいよ」

「は!?」

「夏油くんにちゃんと謝って、夏油くんと仲良くなれたら相手してあげる」

 

 私はカプ厨だからね。結局のところ五条先生(先生じゃないって)とメロンパン(メロンパンは入ってない)が仲良くするところ……というか夏五が見たいの! あ、逆カプもありだよ! ウチはリバすら受け入れる心の広いオタクだから……。でも本質的には夏油が左なんだよなぁ。(燃料投下)

 

 椅子から立ち上がって寝台の上にリンゴの皿を置く。残り数キレだけど食べるといいよ。

 

「それじゃあウチは夏油くんの方見にいくから、仲直りできたらいつでも来なね」

「はぁ!? なんであんな前髪と! ふざけんなよブス!」

「……ウチ、優しいから一回目は許したげるけど、二回目はないよ? 五条くん」

 

 仮にも乙女に対してブスとはなんだブスとは。私は小学校によくいるタイプの好きな子にちょっかいかけるような男子嫌いなんだよね。クズはクズでもそういう部分のクズは今のうちに切除してあげなきゃ(使命感)

 

 そうしたら今後はもっと夏油くんとか硝子ちゃんとかに甘いセリフ言うようになるかな? そうなると最高に旨味だけど。五条先生とのカプは割と誰でも好きだから、ウチ。

 

「優しく言ってるうちにやめな? 五条くん」

「お前らは袴のやつ含めて全員ブス!」

「よし、表に出なよ。ぶち転がしてやる」

「やめなさい」

 

 スパーン! とドアが開いて歌姫ちゃんがやって来た。後ろには夏油くんもいる。おぉ、なんで起きたばっかりなのに前髪までセットしてんだ。デフォの髪型それじゃないだろ。後ろのめんどくさそうなお団子下せよ。お前は何ガハマ結衣だよ。

 

「歌姫ちゃ〜ん。先輩なんだから舐められたらシメなきゃ。シマは守れねぇんですぜ? 旦那ァ」

「馬鹿言ってないで二人にするわよ」

 

 スパチーンと頭を歌姫ちゃんに叩かれつつ椅子から立ち上がる。立っちゃうと余裕で歌姫ちゃんより大きいはずなのに歌姫ちゃんに勝てない気がするのは何故なのだろうか。果たして、その真相は、如何に。

 

「あ、アンタのこと夜蛾先生が呼んでたわよ」

「なに? 一年生止めたからお褒めの言葉?」

「早く来なかったからお説教だって」

「は? ヒーローは遅れて登場するんだが? ウチが何したって言うんだ」

「早く行きなさい。私は新しく入ってきた一年生と女子会するから」

「え、ウチも混ぜてよ」

「アンタ女子じゃないじゃない」

 

 ──そう、私は今世は女の子として生まれなかった。

 

 九条詩刀子。十九歳。現役高専生。

 

 性別、男。

 

 腐女子の心を宿し、業を背負った、TS転生者の男(心は乙女)である。

 

 昔は女の子であったから許されたあれやそれが許されなくなって、ネットミームで話したり、激キショ腐女子の精神性丸出しのカプ厨なだけの大男だ。できるだけ優しく殺してね……。

 

 

  × × ×

 

 

 東京都立呪術高専。

 

 呪霊を祓うための人間、呪術師を育成するための機関であるこの呪術高専において、三年前、とある異端の少年が入学した。

 

 後ろ盾も何もない。親戚や婚姻関係なんかを根掘り葉掘り調べたけれど、何も引っ掛からなかった、文字通り突然変異として、術式を持って生まれた少年。

 

「……ねぇ、ヤガセンのところ行かないで二人でカフェとかに繰り出さない? 奢るよ?」

「嫌よ。私まで怒られるじゃない」

「そんな! ウチが怒られてもいいってこと!?」

「自業自得でしょ。アンタが一番適任だったんだし」

「そうだけどさぁ……後輩殴るのなんて気が向くわけないのにさぁ……」

 

 ブツブツと唇を尖らせる横にいる少年は、髪を長く伸ばし、サラサラの黒髪ロングを伸ばした中性的な美少女……ではなく、美少年だった。

 

 高専の制服に黒のパレオのようなスカート風の履き物を纏い、耳にピアスを二つぶら下げた、右腕には特徴的な銀のリングを付けている彼は、道端で見かけたらモデルか何かと勘違いされるような風貌だ。実際、二人揃ってナンパされたことなんて一度や二度じゃ数え切れない。切れ長の目、小顔なことも相まってその美しさに一層の拍車を掛けている。

 

「じゃあ服とか買いに行こ! コスメでもいい!」

「なに? 奢ってくれるの?」

「えぇえぇ、構いませんとも! だから……」

「じゃ、怒られてからね、デートは」

「えぇ!? それじゃあウチ奢るだけ損じゃん!」

「アンタのがお給料貰ってるんだからいいでしょ」

 

 準二級の私なんかとは違う。本当の天才。クールな顔をしているのにいつもペラペラ話しては下品な声で笑うこの男は、現状、ただ一人の術師キラーだ。

 

「そういう問題じゃないでしょ……」

「ほら、ぐずってないでさっさと入るわよ」

「あ、ちょ、歌姫ちゃ」

 

 言葉になり切る前にドアを開けてしまう。するとそこには眉間の皺を揉んでいる夜蛾先生が居た。その視線は私……次いで彼に注がれて、またため息へと変わる。

 

「来たか……歌姫、よく連れてきてくれた」

「いえ」

「それにしても……詩刀子! お前は何故さっさと来ない!」

「ヤガセンでも止められたでしょ! なんでウチにやらせるわけ!? 可愛い後輩に嫌われたらどうするの!?」

「お前の術式が適していたからだ! お前がもっと早く動いていればこんなことにはなっていなかった!! 今補助監督が総出で修繕に回っているんだぞ!」

「ウチのせいにしないでくれます!?」

 

 夜峨先生の怒号を受けてバカがギャイギャイと悲鳴を上げながら耳を塞ぐ。聞きたくありませーん! と声を上げる姿は、まさしく子どものようで、クールさの欠片もない。夜蛾先生が我慢ならないと拳をバカに振り下ろした。捌けるであろうその拳を頭頂部に受けて、彼が泣き声を上げる。

 

 

「お前はもっと準特級術師としての自覚を待て!!」

 

 

 そう、彼は準特級術師。ただ一人だけの男。

 

 術師に対応することだけを目的として生まれた、術式『天逆処調』をその身に宿した男は、全ての呪詛師、全ての呪術師への抑止力としての役割を与えられた。この世でたった一人の、天才。

 

「ウチが準特級にしてくれって言ったわけじゃないやい! 勝手にしておいてそんなこと言うとか何なの!? マジでプラチナムカつく!!」

「お前が最強だという自覚を持て!! さっさと補助監督全員に謝ってこい! ついでに修繕を手伝え!!」

「横暴だ! 体罰だ! 言い掛かりだ! そんなんだから奥さんに離婚話切り出されるんだよ! アホ! ボケナス! 夜蛾正道ぃぃ!!」

 

 突如呪術界に現れた新星は、勢力図を大きく書き換えた。そんなこと露知らず、その張本人は夜蛾先生と追いかけっこを続けている。狭い職員室の中でよくやるよ、本当に。

 

「ヤガセンのアホ! 間抜け! さっさと諦めて離婚届にサインしちゃえ!」

「お前……! そこに直らんか詩刀子(しとね)ェェェェェ!!」

「やっべ、ガチギレだ。歌姫ちゃん行くよ!」

「はぁ? あ、ちょっと……!」

 

 私が何かを告げるよりも早く彼が私の体を抱きしめてそのままくるりと持ち直すと、職員室から、というより、怒れる夜蛾先生の手からするりと逃れて廊下へと飛び出した。その長い髪すらもたなびかせ、その一本すらも掴ませない。

 

「ちょっと、補助監督の方々に謝るんじゃないの?」

「謝る前にまずはデートでしょ? タスクは先に出来たやつから片付けちゃいたいんだよねぇ」

「……あの、この格好は恥ずいんだけど」

「いいからいいから!」

 

 窓を開けて、そこからまた飛び出した。

 

 こうして私の青春は過ぎていく。このキテレツな男と一緒に。

 

「……私も怒られそうじゃない」

「その時はウチと一緒に怒られてね?」

「あー……はいはい。仕方ないわねぇ……」

 

 チュッパチャップスを口の中で転がすこの外見詐欺人間に、心を揺さぶられながら。

 

 遠ざかっていく青空が、やけに澄んでいるのが見えた。

 

 

 





 オリジナルの術式って出すだけでバッシングされたりしませんか?

 怒らないで……怒ってもいいけど優しく殺して……。

 感想はいつでも受け付けてます! 感想も、反応も評価も嬉しい! ぜひよろしくお願いします!! 頑張ります!!
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