準特級術師はカプ厨につき!   作:波間こうど

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 最近の悩みは突発的にやってくる頭痛。


第七話 その者味覚音痴につき

 

 死屍累々(ししるいるい)という言葉は読んで字の如く、死体が折り重なっているような様を指す。ちなみに辞書的な意味で引っ張ってくるのなら「たくさんの死体が折り重なって倒れており、非常にむごたらしいさま」だ。非常に惨たらしいて、どんな状況かって思うよね。見たことない人はどんなんやねんなって思うことでしょう。

 

 こんな状況である。

 

 今、ウチの目の前には五条先生、夏油くん、硝子ちゃん……つまるところさしすがぶっ倒れていた。全員ぶっ倒れていて硝子ちゃんの腕が夏油くんの背中に、夏油くんの足が五条先生の頭に、五条先生の体がくの字に折れ曲がって地面に突っ伏している。君たち仲良いね? 最高に尊いですわ……。

 

 それは現状を言い表すのに適切な言葉が個人的には「死屍累々」しか思いつかなかったのだ。いや、事実だし……。さて、どうしたものかと三人を見下ろしながら腕を組んだ。妙案が降ってくるまで少し待機しようかな。なんかみんながイチャついてると見ればこれも高度なカップリングに……見えなくも……見えないわ。ごめん。

 

 どうしようかと困り果てているとウチの後ろに二人、人がやってきたのがわかった。くるりと振り返るとどうやらたくさんのおにぎりやらを持たされた少年たちが高専の制服に包まれている。

 

 その姿には幸い見覚えがあった。ないわけがない。ウチにとって大事な大事なキャラクターたちだから。

 

「1年! 灰原です! 校舎にいた先輩にこっちに来るよう言われてきました! よろしくお願いします!」

「同じく1年七海建人です。よろしくお願いします」

 

 うーん、あまりにも若々しくてビューティフォー……こう見るとなんかやっぱりナナミン若いねぇ……ちなみに灰原くんは若いときしか知りません。死んじゃうからね、仕方ないね。

 

 ちなみに言うまでもないことだが、三人が折り重なって倒れているところを眺めて楽しそうだと笑っているのが灰原くんで、ドン引きしてるのが若かりしナナミンである。ガチで言うまでもないよね。

 

「楽しそうですね! なんの遊びですか?」

「……なんですかこの惨状は」

「あ、やっぱり気になる?」

「説明してください。なんですかこれ」

「あんまり先輩をこれ扱いするのもいかがなものかと思うけど……あ、ウチは君たちの四つ上の先輩に当たる九条だよ。よろしくね」

 

 さて、説明をしなくてはいけないというのならするけれど大した話でもないんだよね。ウチとしては光栄な話なんだけど……でもまぁ? 後輩に聞かれたからには答えてあげるのが礼儀だし? 自慢話にならない程度に答えてあげようかな? ウチはコホンと一つ、咳払いをした。

 

 話はほんの少し前に遡る。

 

 

   × × ×

 

 

「なんで俺らが後輩なんかのために歓迎会なんて開かなくちゃいけねぇわけ? 勝手に入ってきたんだからむしろ先輩の俺らを敬うのが筋じゃね?」

「おっと、ここで天上天下唯我独尊五条悟くんからこんなセリフが出ましたが、同級生のお二人様からの反応はどうでしょう?」

「ゴミ」

「クズ」

「それでは総括で歌姫ちゃん。どう思いました?」

「アンタみたいなのが生まれる限り呪いは産まれ続けるわ」

「俺そこまで酷いこと言ったかな!?」

 

 五条くんをボロカスに貶めながらウチらは高専の裏手にある桜の木の下で準備をしていた。なんの準備かは五条先生がもう言ってくれていたけれど、一年生の歓迎会だ。

 

 原作で言うとナナミンや灰原くんが入学してくるこの年度は、実質のところ原作高専メンバーがほとんど揃うタイミングと言ってもいい。伊地知くん居ないけど、まぁ、その代わりに歌姫ちゃんとウチがいるのでトントンと言ったところだろう。ウチと歌姫ちゃんは去年で卒業だったので、今は一応扱いとしてはOBになる。高専付きの術師だからまだしばらくは高専にいる予定なので、カップリングはたっぷり見られるだろう。やったぜ。

 

 そんな節目の年になるのならきちんとお祝いしてあげたいと思うのが先輩の優しさである。なんでわざわざ桜の木の下にしたのかというと歌姫ちゃんと綺麗だねって話をしたからだ。それ以外に意味はない。

 

 …………嘘ですぅ……嘘つきましたぁ……お花見しながらカップリングを見るのはさぞかし楽しいだろうなって考えたからですぅ〜、絶対楽しいじゃん。120%ナナミンと五条先生は喧嘩するだろうし、夏油くんと灰原くんは仲良くなるだろう。そうやって男同士がイチャイチャするのにかこつけて咲き誇った百合の花……いやさ、皆まで言うまいよ……グフフフ。デュフ、デュフ、デュフフ。

 

 そうやってイチャイチャしてる三組を眺めながら桜の花弁を愛でるのはまさしくウチの欲するところである。まぁ、どこでしてもそうなると思うがやっぱり雅であることが重要だと思うの。ウチらみたいなキモいヲタク(縮めてキモヲタ)が雅さや清潔感を忘れたらどうなるのかなんて日を見るより明らか! でしょう? ただキモいだけになるじゃん!!

 

「というか悟は忘れているかもしれないけれど、私たちが入学したときも先輩たちに歓迎会を開いてもらったよ」

「歌姫先輩と詩刀子先輩が余興してくれたじゃん」

「ま、夏油くんと五条くんには初対面であなたのことを尊敬しようとは思いませんって言われたし、硝子ちゃんには二人のことボコボコにしたから若干怖がられてたけどね」

 

 あれは今となっては思うとやっぱり悪手じゃったよ、アリンコ。というかウチは夢になりたいわけじゃないかなそこら辺の線引きって難しいんだけどさ、そもそも仲良くないと近くにいられないからみんながイチャイチャするところ見れないよね〜って気づいてその後は必死で好感度取り戻そうとしたよね。だってネームドじゃない現四年生と三年生には歓迎会してないもん。あまりにも突飛な行動だ。歌姫ちゃんも困惑してたし。

 

「でも今はすごい尊敬してるんだからいいじゃないですかぁ」

「調子のいいこと言ってさ。硝子ちゃんがウチのこと好きなのは酒も煙草も咎めないからでしょ」

「え〜、そんなことないですよ?」

「どうだか……そこのクズ二人はいまだにウチにビビってるし」

「は? ビビってねーし」

「ビビってませんが?」

 

 仲良く反論を唱えてくる二人にどうだか、と肩をすくめてみせる。君たち仲良くウチにビビり散らかしてるじゃん。最近はウチが手を挙げるだけでびくってするし……やっぱり一年間で1000回以上ボコボコにしたのが不味かったか……いやでも、二人には強くなってもらわないとパパ黒にボコボコにされて闇堕ちルート一直線だもんなぁ。

 

 ここら辺線引きが難しい。特に夏油くんは強くなってないと闇堕ちするから……。割とすぐ闇堕ちする。あれって術師を守護りたい七割、五条悟に置いて行かれて拗ねたが三割でしょ? は〜、夏五の感情の矢印おもて〜、ありがてぇ〜……。

 

「というか……年功序列だけで物事を考える人は嫌とかほざいてた五条くんが? まさかまさか年上だから敬えなんて……老害とな〜んにも変わらないねぇ、もしかして頭禪院なの?」

「う……」

「全く、そんなんだからケサランパサランとか言われるんだよ」

「え……? それ誰が言ってんの?」

「さ、分かったら一年生来る前にさっさと進めちゃうよ! 歌姫ちゃんはお料理持ってきて!」

「わかったわよ。夏油も硝子もケサランパサランもしっかり準備するのよ」

「俺のことケサランパサランって言い出したの誰だよ!」

 

 もちろんウチだけど知らんふりをしておく。勝手に夏油くんだと疑われてそこでイチャイチャしてくれるといい。ウチとしては君たちがイチャイチャしてくれるならそれに勝るものはないからね。

 

「で、その間に君たちには重大な任務があるんだよね」

 

 ……歌姫ちゃんを追い出したのは歌姫ちゃんに料理を受け取ってくるように頼んでいたから、ということもあるが、それよりもウチの企みを歌姫ちゃんが止める可能性があるからである。あんまり準備中にふざけるのは歌姫ちゃん的にも嫌だろうしね。

 

「ふふ、スイーツいかない?」

「スイーツ?」

 

 硝子ちゃんが首を傾げた。その様が可愛らしすぎる。うーん、これは十年後硝子ちゃんよりも十年前の方が可愛かったって連中が湧くのもわかるかもしれない。いいやわかる(反語)

 

 そんな硝子ちゃんの頭を意味もなく撫でくりまわしてから懐からタッパーを取り出した。この制服結構ダボダボだから無理すればなんでも入れられるのだ。歌姫ちゃんは気づかなかったようだな……ちなみにいつもはここに大量のチュッパチャップスを入れてます。

 

「桜餅作ってきたんだよね!」

「え、普通に美味そう」

「詩刀子先輩って料理できるですね〜」

「意外です。器用なことはできないものかと」

「君たちがウチのことをどう思ってるのかはよく分かった」

 

 散々舐められてるみたいですね。まぁ、そういうところも推しキャラなら可愛いものだからいいけどね。これが惚れた弱みってやつだろうか。違うか、違うよね。

 

「まま、食べてみなよ! 味は保証するよ!」

「そこまで言うなら……」

「一番乗りもらい〜」

「あ、ずるいって俺も食う!」

「大人しく食べなよ……」

 

 そうして三人が口の中に桜餅を含む。そして何度か咀嚼して……

 

 全員が糸を切られた操り人形のように倒れた。

 

 

  × × ×

 

 

「で、今に至るってわけよ」

「なるほど、毒物を混ぜたのなら今すぐ自首することをオススメします」

「悶絶するほど美味しかったんですね!」

「灰原くんは可愛いなぁ、ナナミンは全然ダメ。先輩の甘やかし方がなっちゃね〜」

「ナナミン……?」

 

 まぁ、多分不味くて倒れたんだけど思うけどね。ウチの味覚は普通の人と違うみたいだし。チュッパチャップスもまず味の方が好きだし。というか口を慰めるために入れてるだけで味は割とどうでもいいみたいな節ある。

 

「ま、しばらくしたら起きてくるでしょ。良かったよ、君たちに食べさせる前に実験しといて」

「先輩、カスってよく言われませんか」

「あはは、安心してよ。ウチが始末した三人の方がカスだよ。役満レベル」

「先輩より下ってすごいですね!」

 

 お、今ウチよりも上じゃなくて下って言い換えたあたりウチのことを下限だと思ってたな? 灰原くんはこれからすごく驚くことになるぞ〜。ウチらは卒業後も高専に呼ばれて来てるだけで残りの先輩は君たちが卒業するまで……具体的三年はこの先輩たちが上にいるんだぞ。後悔するといい。

 

「詩刀子、とりあえず作った料理貰ってきたけど、寮母さんがもしかして詩刀子ちゃん何か作ったかって聞いてき……って、遅かったみたいね……」

「失礼な。何を持ってそう思ったのか教えてもらえるかな?」

「現状見れば一目でわかるわよ! 五条と夏油はどうだっていいけど硝子にも食べさせたの!?」

「いや、硝子ちゃんから食べたんだけど……」

「どうせあんたから食べない? とか言ったんでしょ!?」

 

 バレてら。

 

「いやでもウチとしてはみんなに美味しいと思ってもらいたくて……!」

「アンタの味覚音痴は今に始まったわけじゃないからこの際いいけど、せめて硝子には迷惑かけないようにしなさいよ!」

「おい待てや歌姫……まるで俺と傑は良いみたいじゃねぇか……」

「まぁ、アンタらは……別に……」

 

 五条先生が起き上がってきて何やら抗議している。いやでも、君たちは別に反転とか……あ、今はできないのか。硝子ちゃんに治してもらったら? と思ったけどそもそもその硝子ちゃんがダウンしてたわ。というか不味いだけなら反転もクソもない?

 

「……というか、私たちはなんでこの場に呼ばれたんですか? もしそこの先輩の手料理を実食するためだというのなら帰りますが」

「えぇ!? 食べていこうよ七海! 不味さで倒れられるなんて多分人生でそうない経験だよ!?」

「灰原。私と貴方はここで初めて出会いましたが、趣味は合わないようですね」

 

 おぉ、原作ではあまり見られなかった上に下半身がグッバイするという強烈な死に方をした故に七海と夏油とのカップリングが数多報告されている灰原くんの性格ってこんな感じなんだ。いやまぁ、虎杖悠仁みたいな感じするけども。たまに生まれるらしいしね、この世界に珍しい根明。虎杖くんと灰原くん以外だと……ウチ、とか?

 

「ただの歓迎会だよ。一年生に食べさせた桜餅はちょっと不興らしいので君たちには食べさせません! その代わり寮母さんが美味しいご飯作ってくれてるからそれ食べよう。歌姫ちゃん! ビニールシートとかは準備してあるから、早く食べよ!」

「ちょっと待ってください……私たちに毒餅を食べさせたことに対する謝罪はないんですか……?」

「あ、夏油くん。早く座りな? ご飯なくなっちゃうよ」

「詩刀子先輩には悪いけど普通に殴りたい……」

「硝子ちゃん顔青くない? 大丈夫そ?」

 

 二人がフラフラと立ち上がりながら口元を拭う。どうやら自分の口に入れた分は食べ切ったようだ。頑張ったね。まぁ、ウチ的には普通に食べれる味だったから本当に味覚が違うんだろうけど。

 

「傑……」

「あぁ、悟も同じことを思ったようだね……これは一年生にも是非伝えなきゃいけないことだと私は思うよ」

「?」

 

 何やら五条くんと夏油くんが肩を組む。楽しそうだね? というな尊いな……ここだけ青が澄んでるもん。やっぱどこまでも続くよこの季節は。というかウチが続けさせてあげるから、メロンパンなんて知ったことかーい! あいつは芸人と一生漫才してればいいんだよ!! 余計なお世Wi-Fiだって話!! このめちゃくちゃ質の高いカップリングの邪魔をする!? あり得ない話!!

 

 ……いや、このカップリング壊れるのは別にあのメロンパン関係ないんだけどさ。なんならあのメロンパンは偶然を組み込んで式を組み立てるのが上手いだけで別に全部の糸を引いてると藍染惣右介(ヨンさま)金玉(オール・フォー・ワン)タイプじゃないし……。

 

「先輩。何ぼんやりしてんすか?」

「え? あぁ、ごめん。君たちが仲良いのが微笑ましくて」

「そうですよ。私たちは二人揃えば最強ですからね」

 

 あ、最近夏油くんは一級術師になりました。いや〜、長かったね。いや、別に長くないわ。なんで高専一年生とかで一級術師になってんだよ。普通に化け物すぎるだろ。呪術覚えて一年で一級って……五条くんも硝子ちゃんも、歌姫ちゃんすら当たり前みたいな顔してたけど割とやばいことしてると思うのウチだけ?

 

「そんな最強二人が一人を敵だと認定してるんです。どうなるかなんて考えるまでもありませんよね?」

「…………あー、なるほどね? 話せばわかると思う」

「話せばわかるなら警察はいらねーし、そいつ話せずに死んでんぞ」

「ということですので……一年生の二人も覚えておくといい。この高専では弱肉強食。下剋上が許されてるとね!」

 

 二人が揃って襲いかかってくる。なんか毎回二人に殴りかかられてる気がするなぁ。なんでウチ喧嘩っプルに巻き込まれてるの? 腐女子の夢ってよりも夢女の夢じゃん。ウチ固定夢主とかもイケる口だけどナマモノは地雷だって言ってるだろ!!

 

「今日こそぶっ倒してやる……!」

「いいぞー、今日だけは二人の応援してあげる」

「アンタも良い機会だしお灸据えて貰えば?」

「なんでウチの味方一人もいないの!?」

 

 圧倒的アウェーな声が聞こえてくる。二人の繰り出される拳や脚を避けながらウチは焦りの声をあげていた。本当の本当に訓練くらいガチで当てに来てるじゃん。術式を使わないあたりちゃんと優しさを持ってるみたいだけど、いや、使ってもウチが術式掻き消すから意味ないと思ってる顔かこれ。

 

「あ、ナナミンと灰原くんは普通に食べてていいからね?」

「こいつ、俺らの相手しながら後輩気遣ってるぞ……!」

「私たちのことを舐めすぎですよ、先輩!」

「舐めてないが?」

 

 いやほんとほんと。まじまじ。マジのガチで舐めてない。君たちが手を抜いてくれないと普通に何もできずに負けるもんウチ。舐めてるんじゃなくて君たちが合わせてくれてるんだよ、本当に優しい子たちだ。

 

「…………灰原」

「うん?」

「私はどうやら、入学する学校を間違えたようです」

「アハハ! 俺は俄然楽しみになってきたよ! この高校での生活!」

 

 二人の会話が遠くで聞こえる。ウチとしても楽しみだよ。これから始まる物語が……。

 

 役者は揃った。原作が動き出す。ま、過去編だけど。まずはそこから楽しんで見ていこうかな。ウチ結構本気で楽しみにしてるからね。

 

 ウチは五条先生と夏油くんの攻撃を掻い潜りながら、桜の花が舞い上がっていく蒼穹の果てに視線を投げた。

 

 

  × × ×

 

 

「そもそもさぁ、“帳”ってそこまで必要?」

「別に一般人に見られてもよくねぇ? どうせ呪術も呪霊も見えねぇんだし」

「駄目に決まってるだろ。呪霊の発生を抑制するのは何より人々の心の平穏のためだ」

 

 ヤガセンに拳骨を落とされた頭を押さえながら常日頃から抱えていた疑問を投げかけた。それは目の前にいる変な前髪をした塩顔に否定される。

 

 夏油傑。俺と同じ一級の階級を持つ、高専の同期だ。今俺たちは二年、高専に在籍している奴らの中では最強の部類に入る。

 

 ……まぁ、高専所属の術師に一人化け物がいるがそれは無視することにしておこう。

 

「そのためにも目に見えない脅威は極力秘匿しなければいけないのさ、それだけじゃない……例えば、」

「分かった分かった……弱い奴等に気を遣うのは疲れるよホント」

「“弱者生存”それが社会のあるべき姿さ。弱きを助け強気を挫く、いいかい悟。呪術は非術師を守るためにある」

「それ正論?」

「……何?」

 

 なんだか嗜められているのが気に食わなくて傑が嫌がるような態度をとって見せた。硝子は気配を察知してすぐに教室を飛び出していく。

 

呪術(ちから)に責任とか理由とか乗っけんのはそれこそ弱者がやることだろ。ポジショントークで気持ちよくなってんじゃねぇーよ。オ゛ッエー」

「外で話そうか、悟」

「寂しんぼか? 一人でいけよ」

 

 俺と傑の呪力が満ちていく。傑の呪霊が顔を出したその瞬間、教室の扉が開かれた。

 

「……硝子はどうした?」

「さぁ?」

「便所でしょ」

 

 俺と傑はすぐさま座って呪力を霧散させる。わざわざしょうもないこんな喧嘩でヤガセンに殴られる必要もない。さっき殴られたばっかで痛むし。わざわざ何回も殴られてやる必要もないしな。

 

「まぁいい、この任務はオマエ達二人に行ってもらう。詩刀子が断ったのでな」

「あ?」

 

 ヤガセンの声に意味がわからないと首を傾げる。傑も同じようだ。

 

 九条詩刀子。非術師家系の生まれながら『天逆処調』を持ち、その体術は俺たち二人すらも圧倒する化け物中の化け物だ。俺たち二人揃ってようやく相手できる、俺が知る限り一番最強に近い術師。

 

 準特級術師だ。

 

「正直荷が重いとは思うが、天元様のご指名だ」

「!」

「依頼は二つ。“星漿体(せいしょうたい)”……天元様の適合者。その少女の護衛と、抹消だ」

 

 呪いが廻ることを、俺たちはまだ知らない。

 

 この世界の成り立ちも、仕組みも、俺たちは何も分かっちゃいないのだ。

 

 それをこの一件で、俺たちは知ることになる。

 

 帳の降りた、この世界で。

 

 

 

 





 ⭐︎10つけてもらえたの嬉しくて喜びの舞。多くの人が高評価してくれて嬉しいです。このまま突き進みます! 次回からは原作に入っていきますので、今後とも変わらぬ応援のほどよろしくお願いします!!

 お気に入りも感想も評価も嬉しいです!! ありがとうございます!!

 続きもお楽しみに!!
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