D.C.Ⅱ.C.E. ~ダ・カーポⅡ チェンジエンド~   作:Masty_Zaki

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俺は、救えるモノは全て救う――。

全てを失った、あの人のために――。


プロローグ
終焉、そして転生


「はぁっ……はっ……はぁっ……!」

 

少し前から休むことなく走り続けていて、長時間酷使し続けた足はもちろん、既に肺にも負担がかかり、かなりきつい。

俺――弓月光雅は、ちょっと街中で人助けをしたら、なんか10人越えのチンピラだかヤクザだかに追われることになっている。

ここらの地理はほとんど完全に把握しているも等しく、裏道抜け道何でも利用して追ってくる人数を分散させながら逃走しているのだが。

……ああ、しんど。かれこれ2時間以上逃げてるってのに、まだ追ってきやがる。

背後を振り返ったらまだそこに性懲りもなく2人程追手が追いかけてきていた。しかし前方にはこの狭く臭い抜け道から少し広い裏通りへ、そしてそこから商店街の大通りへと抜けられる道がある。

……よし、この裏道を抜けて大通りに入れば撒くことくらい楽勝だろう。

俺はさらにスピードをあげる。

 

「……よっしゃ……」

 

小さくガッツポーズを作ったその時、前方から追っ手が1人。だが、後ろにはさらに多くの追っ手がいるのは間違いない。このまま突っ切るぜ!

相手との距離が5mを切った時、一気に地面を蹴って懐に飛び込む。その勢いで相手に攻撃を許す前に鳩尾に肘を入れる。怯んだ相手の背後に回りつつ、首の裏に肘を一発。横目で相手が崩れたのを確認しつつ逃走開始。しかし――

 

――パンッ!!

 

銃声ひとつ。背中に激痛が走る。

銃って、マジかよ……!

実際撃たれるのは初めての経験だし、一生経験したくないことだったが、どうやら痛みよりも先に撃たれた事実に驚愕する方が先なようだ。

追いかけてきた奴の誰かだろう。1人にばっか夢中になっててそっちにまで気は回せないっての。

 

――パンッ!!

 

もう一発。避けることも考えられず、次は右足にヒット。流石につんのめってバランスを崩し、盛大に道路へと倒れ込む。アスファルトに手をついた時の勢いで手の皮がグロテスクに剥がれていく。マジ痛ぇ。

立ち上がることすらままならず、背後から足音が接近してきた。得物を追い詰めた時の、余裕ぶった足音に腹が立つ。

クソ、ここまでか……!

サイレンサー付きなのかあまり音は出ず、大通りの人はこちらに気づかない。かといって、赤の他人を巻き込んで事を大きくするつもりもない。

もう、いいだろ。後悔はしない。

さて、俺が助けた見知らぬ人よ、ここまでしたんだから俺の分も強く生きろよな……。

銃口が俺の頭にセットされる。

 

「終わりだ坊や」

 

パンッ!!

 

その瞬間、俺は終わった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

………………

 

…………

 

……

 

 

 

……ここは、どこだ?

 

あたり一面、真っ白。いや、真っ黒?あれ、赤だったり緑だったりも見えるな……。俺どうかしてるのかな?

 

『案ずるな、ここはそういう世界なのだ』

 

――っ!?誰だ!?

 

『うむ、ここはいうなれば死後の世界。俺はさしずめ、“魂の選別者”とでも言っておくか……』

 

ってことは、俺はここで天国か地獄か決まんの?

 

『まぁそういうことになるんだが、貴様は少し事情があってな。本来はここで死者が意識を持つことはない』

 

ふぅん……。事情って何さ?

 

『貴様は無茶をし過ぎた。死にゆく運命にある者を助けるというのはすなわち、“助ける側の寿命”を削って“助けられる側の寿命”に加算する、ということだ。貴様の人生では偶然にもその機会に恵まれ、自分の寿命を削り尽くした』

 

つまり、あそこであいつを助けた時点で俺があそこで撃たれて死ぬ運命は決まってたってことか……。

 

『そういうことだ。貴様、ここに来る前、後悔はしない、と思ったな。だが、本当にそう思っているか?』

 

……あ、ああ。もちろんさ。俺は誰かの為に死ねたんだ。そいつはきっとこれから幸せに生きていけるんだ。ハッピーエンドになってんだろ?

 

『それは貴様の主観に過ぎない。貴様を愛する者たちがそれで満足できると思うか?その者達の中で、貴様の結末はただのバッドエンドだ』

 

そりゃ、いわれてみればそうだな。

 

『そこでだ。貴様にもう一度チャンスをくれてやる。貴様のまわりの者が全員一致でハッピーエンドだ と言える人生を送るチャンスを』

 

それはつまり……、……どういうことだ?

 

『転生というべきか。今、ある世界で貴様と似たような運命を迎えようとする者がいる世界がある。そこに行って、貴様の思うようなエンドにして来い。それが貴様への、無茶をし過ぎた事に対する罰だ』

 

罰、ね。そっか。そういうことならお安い御用さ。じゃ、いますぐそこに連れてってくれ。

 

『まぁ待て。今のままでは貴様は同じことを繰り返す。貴様は、力を望むか?』

 

力?そうだな、力がなければ、助けられるものも助けられない。代償はあるのか?

 

『いや、ない。だが強いて言えば、貴様ら脆弱な人間が力を持つことこそに責任とやらと、そしてそれだけの重みを背負うことになるが、さて、その力で、救ってみよ。世界を!』

 

ああ、行ってくる!

 

……

 

…………

 

………………

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

深々と。

 

桜が舞っていた。

 

驚くほどゆったりと。

 

音もなく。

 

見渡す限りに舞い散る桜の花びら。

 

それは一面を色づけるように、

 

白で塗りつぶされた世界を彩るように、

 

ただゆったりと舞い踊っていた。

 

それはとても綺麗で、

 

呆れるくらいにとても綺麗で、

 

ひとりぼっちで、

 

ただ震えることしかできなくて、

 

どうしようもないくらい途方に暮れていたボクでさえ見惚れてしまうくらい、

 

綺麗な景色だった。

 

だから、

 

だからこれはきっと夢なんだと思った。

 

真っ白な夢。

 

夢のような夢。

 

いつか覚めてしまうことが分かっているのに、

 

それでも夢見ることを夢見てしまう。

 

新しい予感に胸を膨らませるような、

 

陽だまりのなかでふと涙をこぼしてしまうような、

 

冬の最中に春の訪れを待ち望むような、

 

夢。

 

差し伸べられた手をぎゅっと掴む。

 

温かな手。

 

凍える世界で、

 

雪の中で、

 

ぬくもりを確かめるように、

 

ぎゅっと。

 

そんな、

 

始まりを告げる夢の始まり。




処女作です。
拙文ですが、よろしくお願いします。
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