D.C.Ⅱ.C.E. ~ダ・カーポⅡ チェンジエンド~   作:Masty_Zaki

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杉並「ふむ、ヌーの巻頭特集は一度お預け、か……」

光雅「ああ、そうですか……」


朝倉姉妹とその隣人(前編)

ロボット少女との数奇な出会いを果たして、さっさと教室に帰ってきた。

すると小恋に声を掛けられる。

 

「遅かったね、光雅。杉並くんとどこ行ってたの?」

 

「ああ、ちょっとな」

 

「お~い、次全校集会だぜ」

 

廊下に出ようとする渉たちに催促される。

俺は、さっき座ったばかりの椅子から立ち上がって、彼らに続く。

 

「いくわよ」

 

「ああ」

 

みんなで体育館に向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

体育館は人でごった返していた。無理もない。付属、本校の全校生徒が集まっているのだから。

 

「んで、全校集会って、何の話だっけ?」

 

「クリスマスパーティー関連だろう」

 

「もうすぐだからな~、クリパ」

 

前を見る。時間が時間なので、少しずつ喧騒が治まっていく。

やがて、沈黙が体育館を包んだ。

 

「ただいまより、全校集会を始めます」

 

スピーカーから、活発な印象を与える声が聞こえる。そして、体育館のステージ下左側には、マイクの後ろに、同じく活発な印象を与えるショートヘアが似合う、1人の女性がいた。

高坂(こうさか)まゆき先輩である。

まゆき先輩は、陸上部のエースであり、風見学園の生徒会副会長でもある。生徒会の鞭の異名を持ち、その迫力を前に恐れをなさないのは杉並と杏だけであろう。そのおかげか、『歩く核弾頭』とまで呼ばれている。ちなみに、まゆき先輩が生徒会の鞭なら、飴は会長の音姉である。

 

「まずは先生方から、諸連絡をいただきます。先生方、よろしくお願いします」

 

全校集会が進められる。クリパの注意事項を各先生方からいただく。いつものような、既に分かりきってるような、マニュアルどおりのような注意事項。

 

「続きまして、生徒会長から、諸連絡があります。朝倉音姫さん、よろしくお願いします」

 

「はい」

 

透き通る声で返事をし、ステージに上がる音姉。その顔は、生徒会長そのものだった。

 

「それでは、私のほうから連絡いたします」

 

音姉が話し始めただけで、この辺の空気が綺麗になったのは気のせいだろうか。

 

「今年も、例年通り、12月23日から25日にかけての3日間、我が風見学園ではクリスマスパーティーを開催します」

 

よどみなく流れる言葉。その流暢さには、ナイアガラの滝も吃驚だろう。

 

「一般の方へも公開を行うのが23日、24日の2日間。25日は学園関係者のみの後夜祭となります」

 

すると後ろの渉が背中をつついてくる。

そして耳元近くでこそこそ喋りはじめた。

 

「なぁなぁ、やっぱり音姫先輩っていいよな? もう、たまんねぇーよ!」

 

「渉、うるさい!」

 

なんか渉がハイテンションに。

 

「ルックス良し!成績良し!性格良し!優しくてしっかり者でそのうえ料理もうまい!」

 

確かにそうかもしれないんだが。

 

「しかも、すげーいい匂いするんだよな~」

 

ちょ、おま、まさかストーカーか?

 

「俺、音姫先輩の匂いでメシ3杯は軽くいけるね、これマジで」

 

俺はキムチがあれば3杯いけるぞ。

……ってそうじゃなくて。

 

「(うるさい!いい加減にしろ!)」

 

「んだよ、別にいいじゃんかよ。俺はお前や義之と違って遠くから眺めることしかできねーんだからよ」

 

「俺も入ってんの!?」

 

渉の後ろの義之も巻き込まれて反応した。

確かに俺と義之の状況は同じだからな。

 

「あたりめーだろうが!あー、俺も音姫先輩みたいなお姉ちゃんが欲しいよ。光雅、義之、やっぱてめーら羨ましすぎんぞ!」

 

「姉って言っても別に本当の姉ってわけじゃねえし……」

 

「ますますいいじゃねーかよ!ちくしょう!俺も美人姉妹のいる家に居候してーなぁ……」

 

んなこといっても、しょうがないじゃん?

 

「それでは皆さん、これからも頑張りましょうね」

 

音姉は、見るもの全ての心を奪うかのような温かい笑顔を向けた結果、館内の至る所から溜め息がこぼれた。

……むさい男どもの。

 

「ああぅぅ!やっぱたまんねーよ音姫先輩。……あぁ、くそっ!」

 

――ガシッ!

 

唐突に蹴られた。

というかそんな理不尽な屁理屈ってアリか!?

 

「いで!いきなりなにすんだよ!」

 

「うっせー!お前と義之はこんくらい甘んじて受ける義務があるんだよ!」

 

周りの野郎どもが、そうだそうだ、とでも言わんばかりに頷く。

 

「家に帰ってからも音姫先輩に会えるなんて、羨ましすぎるぞーお前!」

 

「いや、だって、そういう家庭だから、どうしようもないだろ?」

 

「かーっ!これだから恵まれてる奴ってのはっ!余裕ってか!ちきしょー!」

 

――パシィ!

 

本日二度目のナイスキャッチ。

俺の手には渉の拳が握られていた。

 

「やめよっか」

 

「は、はい……」

 

なるほど、今の俺は極上の笑みを浮かべているに違いない。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

集会が終わり、教室に帰るところ。

 

「やっぱり憧れるな~、音姫先輩」

 

「なんていうか、最高のお姉さんって感じだよな~」

 

「うん、頼りがいあるし、優しいし、綺麗だし」

 

その意見に反論はしない。本当のことだもん。

 

「って、噂をすればだね」

 

茜の一言にみんなが首をそちらに向ける。

みんなが向いた目線の先には、たくさんの生徒と、その中央に立つ音姉だった。

 

「会長っ!一般来場者に対する誘導と安全確保のための人員について――」

 

「その件に関しては明日の会議での議題とします。時間までにたたき台の作成をしてください」

 

「はい、わかりました」

 

「音姫先輩、パーティー期間中の円滑な案内放送を行うため、放送部との――」

 

「あ、放送部の部長さんと話はつけてありますので、あとは現場サイドで打ち合わせを行ってください」

 

「了解です、音姫先輩」

 

「朝倉さん。お料理クラブ主催臨時食堂の食材についてですけど」

 

「昨日、業者に発注を行いました。再来週の火曜には届く手はずになっています。詳しくはまゆきに確認してください」

 

「はい。高坂さんに確認します」

 

てきぱきと指示を出す。やはり、学園の生徒サイドのトップとしてあるべき姿だった。

 

「相変わらず大変だな、音姉」

 

「クリパまであと1週間だからね」

 

そういえばもうそんなに時期が近いんだっけか。

俺たちのクラスも急いで準備しなければならない。

杏と杉並が余裕そうな表情をしているもんだから大丈夫だとは思うが。

 

「でもすごいよね~。てきぱきと仕事をこなしていって」

 

「なんつーか、完璧?、理想?、最強?」

 

「全然気取ったところとか無いしね」

 

「うん。誰に対しても平等だし、ほんとかっこいいな~」

 

「あー、羨ましいな、この野郎は!」

 

まだ言うか、こいつは。

 

「例外があるんだけどね」

 

杏が真実をぼそりと呟く。

そう、例外があるんだ。……俺という。

その瞬間、音姉の目がパッチリと開いた。それはもう生徒会長の顔ではなかった。

 

「あ~!光くんみっけ!」

 

「……」

 

とりあえず俺は、左手を使って『絞首装備装着神速拳』を使った。簡単に言えば、ホックを高速で片手で閉めただけなんだが。

 

「えへへ~」

 

こりゃまた極上の笑顔で。

でも、音姉がそばにいてくれるとなんとなく落ち着くんだよな。

……なんだろうね、これ。

 

「服装は……大丈夫だね。後は~」

 

なんか外野が恨み言を言ってくるが、前からあることだから、気にしない。

 

「音姉、なんか仕事中みたいだったけど、大丈夫なの?」

 

あんだけ生徒に囲まれてさ。

 

「うん、大丈夫だよ♪それより、ちょっとこの後、時間、ある?」

 

音姉が不安そうに首を傾げる。

外野が――

 

「わかってんよな?」

 

なんて、渉的なのが言っているが、別に忙しくもないため――

 

「ああ、とは言っても、一旦教室に戻るけど」

 

なんか周りの温度が下がった気がする。

……別に姉弟なんだからいいじゃん。

 

「ホント!?じゃあ、この後生徒会室に来てね?」

 

「ああ」

 

その時。

 

「ほ~れ~、音姫~、仕事するよ~」

 

まゆき先輩の登場である。

 

「うん♪今日も晩御飯つくりに行くからね~!一緒に食べようね~!」

 

なんて盛大な爆弾投下をしながらまゆき先輩のもとへ笑顔で去っていった。

 

「っと、渉、お前の挑発には乗らない」

 

この後渉が何か言ってくるのは明白だった。

 

「ぐぐぐ……」

 

俺たちはまっすぐ教室へ戻り、各々解散したのだった。

……義之は渉たちに捕まったらしい。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

さて、ところ変わって生徒会室前。

 

「さてと……」

 

音姉に生徒会室に来いと言われたから、生徒会の仕事を手伝うことになるだろうな。

ドアに手をかける。

 

「失礼します」

 

ドアを開けて中に入る。

 

「あ、弟くん1号!」

 

そう俺を呼ぶのは、生徒会副会長のまゆき先輩である。ちなみに、義之は2号である。

 

「こんにちは、まゆき先輩」

 

「こんにちは」

 

快活な笑顔で、俺を迎え入れてくれる。

 

「あ~っ、光くん、来てくれたんだ~!」

 

「いや、別に暇だし」

 

「そういえば弟くん1号って部活入ってないよね?」

 

「え、まぁ、はい」

 

確かに俺はいつでも音姉や、由夢、さくらさんの手伝いが出来るよう、部活には入ってない。

……義之?あいつを手伝うことが何かあるのか?

 

「じゃあさ、音姫と話し合ったんだけどさ、生徒会に入らない?」

 

「光くんのクラスもクリスマスパーティーで忙しいと思うけど、生徒会も人手が足りなさ過ぎるんだよ……」

 

その溜息と、残念そうな顔が、今の生徒会のメンバーでは手一杯であると語っていた。

 

「生徒会、か……」

 

『音姉の仕事』は手伝ったことはたくさんあるが、『生徒会の仕事』を直接的に手伝ったことは皆無だった。

まゆき先輩が獲物を狙う目で睨んでくる。

 

「……まゆき先輩、その目、脅してません?」

 

「まさか、ソンナコトスルハズナイジャナ~イ」

 

「その棒読みはわざとですか?」

 

「で、どうなのよ」

 

「えっと、忙しいんだったら、無理にとは言わないよ?」

 

と、音姉が言うが、音姉は無理するタイプだから放っておけないしな……。

俺は少し考えて――

 

「う~ん、生徒会には入りませんけど、生徒会の仕事は全面的にサポートしますよ」

 

「光くん、ほんと!?」

 

「ほんとに!?」

 

「いや、別にいいですよ」

 

「「ありがと~~~~!」」

 

生徒会会長副会長コンビは、たいそう嬉しそうに俺の手をとった。

ということで、俺は生徒会を手伝うことになった。

 

「で、俺はなにすりゃいいんですか?」

 

「じゃあ、今日は音姫と一緒に、各クラスのクリパの報告書に目を通して、進行状況を確認、怪しいものがあったら分けて置く、っていう作業をよろしく」

 

「まゆき先輩はどうするんですか?」

 

「私は、生徒会の精鋭を率いて、対非公式新聞部の対策を立て、杉並の動向を掴むための情報収集をしてくる。ということで、そっちよろしくにゃ~」

 

なんというか、まゆき先輩らしい行動予定だった。

 

「無理はしないでくださいね」

 

「大丈夫大丈夫」

 

「いってらっしゃい」

 

まゆき先輩が出陣した。

 

「じゃ、始めよっか」

 

「ああ」

 

報告書を確認する。大変だったが、楽しかった。

ちなみに、怪しいものはいくつかあった。明らかに抽象的過ぎて、これ絶対なんか隠してんだろ的なものがあったり、正々堂々と『爆発物使用』なんて書いてあったり。

……喧嘩売ってんの、こいつら?

作業は無事終了。

 

「今日は助かったよ~。光くんが手伝ってくれたから、いつもの3倍くらいのスピードで終わっちゃったよ。まゆきも杉並くん対策に全力を尽くせたそうだしね」

 

「流石は、弟くん1号。仕事が速くて効率いいわ~」

 

「んじゃ、そろそろ帰るか」

 

「そうだね。あ、でも、ちょっと片付けてから帰らないと」

 

「手伝おうか?」

 

「大丈夫。先帰ってていいよ」

 

「そう?あ、でも、俺ちょっと用事あるから、家に着くのは音姉が先になると思う」

 

「そうなの?」

 

「ああ、だから、俺が帰る前に、おいしいご飯、よろしくな」

 

「う、うん」

 

「ふ~ん、全校生徒の憧れの女の子の手料理か~……ほんとあんたと音姫って夫婦みたいだにゃ~♪」

 

まゆき先輩の猫のような目で、からかうように俺と音姉を見てくる。

この状態のまゆき先輩はちょっと面倒臭い。

 

「そ、そんなことないよ~」

 

「そうですよ、そんなんじゃないですよ。じゃ、お疲れ様です」

 

「うん、お疲れ」

 

生徒会室を後にする。

これから忙しくなるんだろうな、なんて考えながら校門を抜けようとすると、校門に見慣れた人影があった。

 

「……由夢?」

 

由夢が校門の柱に誰かを待っているかのように寄りかかっていた。

 

「どうした?」

 

「あ、光雅兄さん。今帰りですか?」

 

「ああ、誰か待ってんの?」

 

「や、別に待ってるってわけじゃ……」

 

由夢が頬を赤らめて目をそらす。

……ああ、義之か。

こいつがこういう反応をとった時はたいてい義之がらみである。

きっと由夢は義之に好意でも抱いているんだろう。

 

「え、えと、義之兄さん見ませんでした?」

 

「いや。ていうか、あいつまだ帰ってなかったのか?」

 

「多分」

 

恐らく放課後になってここまできて、ずっと待っていたんだろう。

 

「あ、そうそう、俺ちょっと用事あるから先行くぞ。じゃあな」

 

「あ、はい」

 

由夢に背を向け、校門を抜けた先の桜並木を進んでいった。




後編に続きます。
由夢は原作より若干態度が軟化してますかね。
ツンデレが好きだ、って言う人はご容赦くださいませアーメン。
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