D.C.Ⅱ.C.E. ~ダ・カーポⅡ チェンジエンド~ 作:Masty_Zaki
後編始まります。
あ、いまさらだけどあんまり本編と変わってねぇわ……。
マジですみません(汗
全午前授業終了。腹減ったな。
朝は音姉を手伝うということで、時間がなかったため、弁当を作る時間なんて無かった。
もともと弁当なんて週に1回か2回だけなんだけどな。面倒だし。
「お~い、義之、光雅、学食いこうぜ」
断る理由が無いので話に乗る。
「おう」
「了解」
義之もついてくる。
そして学食到着。今はそうでもないが、あと1、2分も経てば大混雑となる。
「ところで光雅、お前、今日は何注文するんだ?」
「ん~、素うどん」
「俺もだな」
なんか義之と気が合ってしまった。微笑ましいぜ。
「うっわ、学食の中でも最もお買い得商品かよ。わびしいやつらだなー」
だってお小遣いあんまり使いたくないもん。
「そういうお前は何すんのよ?」
「スープ ウィズ ウ・ダンヌ!」
自由奔放。悪く言えば馬鹿。
悪く言わなくても馬鹿になるような気がするけど。
「何語?」
「さぁ?」
「意味さえ通じりゃいいんだよ。っつうことで俺が買っておいてやるから、お前らは席を取っておいてくれ」
「おう」
辺りをきょろきょろしてみる。すると、6人席のところに見慣れたお団子頭があった。
「あれ、由夢だよな?」
「そうだな」
「行くか」
「ああ」
由夢に歩み寄る。
向こうも俺たちに気が付いたようで、視線をこちらに向けて、完璧な角度で一礼する。
「光雅兄さんに義之兄さん、こんなとこでお会いするなんて奇遇ですね。」
しゃんと背筋を伸ばして首を傾げる。完璧な微笑みに丁寧な口調。
すげぇ。マジすげぇ。完璧な表裏だぜ。千年パ○ルも吃驚だぜ。
「?どうかなさいました?」
「ん、いや、相席いいかなって」
「あ、はい、いいですよ」
っと、視線をずらすと、そこには牛柄のホルスタイン帽を被った少女がいた。
……昨日のロボットか。
「……チッ」
舌打ちされた。まぁ極度の人間嫌いなのに人間に囲まれて食事するなんて拷問といっても過言じゃないしな。
「あれ、光雅兄さん、天枷さんとお知り合いだったんですか?」
「ん~、知り合いっていえば知り合いかもしれないが、まだ名前もしらねぇよ」
「そうですか。えっと、こちらは天枷美夏さん。今日、私たちのクラスに転入してきたの」
ふぅん、天枷美夏っていうんだ。
「よろしくな」
握手をしようと手を差し伸べる。
「フン!」
無視された。しかも不機嫌そうである。
人間嫌いって言っても、学校でこれじゃ、クラスでも浮いてしまうんじゃないだろうか。
「この人は弓月光雅。その隣が桜内義之。一学年上の3年生で私の兄みたいなものかな」
「……」
さらにスルー。
「あははは……」
乾いた笑いをする由夢。
「(ちょっと光雅兄さん。いったい天枷さんになにしたのよ!)」
由夢がひそひそと疑いの眼差しを向けてくる。
「(いや、何も?)」
「(じゃあ、なんで天枷さん、あんなに不機嫌そうなのよ?)」
「(うーん、色々あってな)」
そう、彼女には本当に色々あった。
「ま、まぁ、腹減ったし、食おうぜ?」
「そうだな」
後から素うどんを3つ持ってきた渉を加えて昼食となったのだが……。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
気まずい!おかげでただでさえあまり美味くない素うどんがますますまずい!
カチカチ。ズルズル。聞こえる音はそれだけ。
渉も何度かムードメーカーとして、美夏に話しかけたが、やはり無視。
由夢が何とかしてよ的な視線を送ってくる。
……無理だ!
――かちっ。
美夏が箸を置く。
「ご馳走様」
手を合わせて挨拶。礼儀は正しい。根はいいやつなんだろう。
――ごそごそ。
天枷が脇に置いてあった鞄を引き寄せ、中からバナナを取り出す。
「へぇ、天枷って、バナナ好きなんだ」
おい!バカ!今地雷踏んだぞ!
だって……。
「……今、何て言った?」
怒気を孕んだ声に空気が凍りつく。やべぇ、何とか取り付くろわねぇと。
だが、言葉が出てこない。
「あ、その、バナナ、好きなんだなって」
「……貴様」
ふつふつと怒りが頭に上ってくるのが良く分かる。次の瞬間――
「どこの誰がバナナなんぞを好き好んで食べようかぁぁっ!!」
――バダンッ!!
美夏の拳がテーブルを穿つ。机の上の物が揺れた。
「うわっ!」
「おい、美夏、落ち着け!」
「うるさいっ!できることならこの世界上からバナナなんてものを――」
――ピコーンピコーンピコーン。
突如、天枷が装着している腕時計のような物から、電子音が鳴り響いた。
恐らく何らかの支障を内部で起こしたのだろう。
怒り過ぎでオーバーヒートしたとか?
「ちぃぃ!バナナミンが!」
ば、バナナミン?
舌打ちをしてバナナの皮を剥いて、一心不乱に食べ始める。
……こいつホントにバナナ嫌いなのか?
不機嫌そうにも見えたけど、なんだか嬉しそうにも見えたんだが?
「(なあ由夢。天枷ってどんなやつなんだ?)」
「(わ、私に聞かないでよ。)」
「(だって、お前クラスメイ―――)」
――――ピンポンパンポン。
『えー、2年1組の天枷美夏さん、3年3組弓月光雅くん、至急保健室まで来てください。』
舞佳先生が放送で俺たちを呼び出した。
なんつータイミングだよ。
それにしても、なんで俺と美夏?
『繰り返します。2年1組の天枷美夏さん、3年3組弓月光雅くん、至急保健室まで来てください。』
理由は分からないが、とりあえずいかないことには何も聞けない。
美夏のことも、舞佳先生ならいろいろ知っているだろう。
とうの美夏はさっさと食器を片付けて食堂を出て行ってしまった。
「お前も呼ばれてるぞ」
「あ、ああ」
「義之兄さんじゃないですけど、何かやらかしたんですか?」
「なんで俺と義之が同系列になってるんだよ……」
「だいたい、光雅兄さんと天枷さんの間でいったいなにがあったんです?天枷さん、明らかにおかしかったし」
「確かに」
義之も同調するんじゃない。
俺だってお前が怒られてる時に同調するけど、結構うざいぞ、これ。
「それについては何とも。じゃ、俺も行ってくるわ」
俺も食器を片付けて、保健室に向かった。
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「失礼しまーす」
保健室に入ると、舞佳先生――と、美夏が部屋にいた。
「いらっさーい」
自分の家に同年代の友達を招くような口調で俺を招き入れた。
美夏は相変わらずぶすっとしている。
「ま、ちょっとそこに座って」
舞佳先生の指示した場所、ベッドに腰掛ける。
「わざわざ来てもらって悪いわね。ちょっと弓月くんに頼みたいことがあって」
「美夏は必要ないと言っている」
何の話か全く見えてこない。
「まぁ、そう言わないの」
美夏をなだめて視線を俺に移す。
「えっと、この前ちょっと話したと思うけど、この子、天枷美夏はロボットなのね」
「……ふっ」
美夏がエッヘンと誇らしげに胸を反らす。
「最新鋭……とは言ってもちょっと古い技術なんだけど、まぁなんていうか少し特殊なつくりになっているのね」
おっと、機械工学はそもそも専門外だから、何を言われてもわからんぞ。
「見ての通り人間となんら変わりない感情や自分の意志を持ってるの」
ロボットの感情ってどういう仕組みになってるんだろう。
……おっと、美夏“たち”にとっては少し不謹慎だったか?
“たち”と言ったのは、美夏と同じような人間そっくりのロボット、『μ』も、昔、人間のような感情を持っていたがゆえに、人間によって排除されていったらしい。いまのμは、ほとんど感情がないに等しい。
「う~ん、でも、ここまでそっくりとなるとこいつが本当にロボットかどうか分かりませんね」
当然の感想だと思ったのだが、美夏にとっては不快の素になったようで。
「そんなに信じられんというのなら、証拠を見せてやろうじゃないか。このロケットパンチを食らえ!」
……ついてないだろうな。
美夏が腕を振りかぶり、拳を前に突き出したが。
……何も起こらなかった。
「ついてないわよ」
やっぱり。
「何故つけん!?」
「必要ないでしょ?」
「むぅ、これだから人間って奴は……」
その件に関しては人間云々は関係ないんじゃ?
ていうか、ますます人間くさい。
「まぁ、天枷がロボットであることは間違いないわ。私が保証します。弓月くんが疑問に思うのも分かるけどね」
「ああ、はい」
「逆に言えばね、それだけ特殊なロボットなの。だからあそこで凍結されていた。弓月くんも習ったでしょ?ロボットにまつわる色んな事件のこと」
「そりゃ、もう」
そう、人間中心的な考え方が引き起こした、ロボットにとっては残酷すぎる事件。
――規制、弾圧、破壊。
「ぶっちゃけ、この天枷の存在が外に漏れるのはやばいんだよね」
「……」
その時、美夏の表情が若干強張ったような気がした。
「間違いなくスクラップ処分される。」
だろうな。極度のロボット差別者たちが黙っているはずがないだろう。
「私たちはそれを望まないの。んで、天枷は長い間凍結されていたから社会常識に疎い。さらにシステム的にも不安定。言ってしまえば、かなり奇怪な行動を取ることが予想されるのね。だから、天枷がロボットだってばれないように誰かにサポートしてほしいのよ」
「で、それを事情を知ってる俺に?」
「ご名答」
「だから、美夏は必要ないと言っている!」
ああ、だから最初の台詞があれか。
「美夏は常識人だしシステムも安定している、奇怪な行動もとったりはしない!」
自分が何の問題もないことをアピールする美夏。
……残念だが、耳から煙が出ていた。
チェックメイトだった。
「まったく説得力がないわね。ほら、これで回路を冷やして」
冷却シートを美夏に渡す。
「……むぅ」
だが、美夏は納得していないようだ。
「ほらね、ロボットだったでしょ?」
「……間違いないですね」
「どの道フォローする人間は必要なの。これは、研究所の総意と取ってもらって構わない」
「……」
「だったらすで正体のばれている弓月くんに頼むのが手っ取り早い」
「それはそうだが……」
「天枷を起動したのが弓月くんだった。そういう巡り合わせなんでしょう」
「……」
「不満かしら?」
「もちろん不満だ……が、水越博士の指示には従おう。」
うーん、はっきりと言われると少しばかり凹むな。
「が、美夏は別にフォローが必要だとは思ってないからな。人間を信用するつもりもない。だから弓月、貴様も余計なことはするな。美夏が言いたいのはそれだけだ」
そのままいかにも怒ってますという足取りで保健室から出て行ってしまった。
「はぁ~、やれやれだね」
まぁ、確かに今回は前途多難だわさ。
アレをフォローするって、かなり神経使うぞ?
「まぁ、別に、ずっと一緒に行動してほしいって事じゃないの。あの子もバカじゃないし、そうそうばれるようなことはしないでしょ」
まぁ、自分から死に急ぐようなことはしないだろうな。
「ただね、たまに気に掛けてあげてほしいの。あの子、基本的に1人ぼっちだからね」
まるで我が子を心配するかのような温かい声。
……いや、研究員たちにとって、特に開発者たちにとって、彼女らは自慢の娘だろう。
「で、引き受けてくれる?」
「まぁ、別にいいですよ」
「うん、ありがとう。じゃ、これ」
「……これは?」
「天枷の基本資料。一通り目を通しておいて」
「了解です」
割と分厚い書類だった。大丈夫かな?
「基本的には人間と変わらないから。しかも年頃の女の子のね」
「はぁ……」
「あっち系の機能ももちろん完備してるから、頑張ればいいことあるかもよ?」
そして、あはは、と笑う。
本当にこの人、仮にも教師なの?
「ああ、そうそう、あとね、出来ることなら、仲良くしてくれると嬉しいかな。ちょっと色々あってね、今は人間が嫌いになっちゃってるんだけど。あの子、本当は素直ないい子だからね」
そんなことを言われた。
……う~ん、生徒会の仕事にさくらさんの雑務の手伝い、さらに美夏のフォローか。
ますます立ち回りに苦労しそうだなぁ……。
大人びたようで、子供っぽい。
子供のように見えて、年寄りのように聡い。
彼女は、大人か?子供か?
平凡というのは、書くのも読むのも、そしてきっと登場人物も退屈なんだろう。
次回『つかの間の平凡?』