D.C.Ⅱ.C.E. ~ダ・カーポⅡ チェンジエンド~ 作:Masty_Zaki
人間だろうがロボットだろうが、そこに他人を思いやる心があるのなら、それだけで俺たちは同じ道を歩むことが出来るのではないだろうか。
俺は、走り去ったロボット少女と、クラスメイトの毒舌少女の顔を思い浮かべながら、そう思った。
12月20日
意識がしっかりしてくる。しっかりしてくると同時に、冬の寒さを改めて実感させられる。
ってか、マジで寒い。
寝ぼけなまこで時計を確認。
7時半。
う~ん、いつもより遅いなぁ。音姉はもう家を出て学園に向かっているだろう。
「んん~、さってと、起きま……フェックションルルルヴォゲェイ!」
我ながらかなりおかしいくしゃみをしてしまった。さくらさん辺りに聞かれてしまったら恥ずかしさのあまりに死ねるんですけど?
体を起こして1分ほどぼーっとしてたが、誰も中に入ってくる様子はない。
……良かった、聞かれてないな。
さっと着替えて台所に立つ。トーストを焼いてバターを塗り、コーヒーをスタンバイする。
それを居間で腹に押し込む。
その他諸々の支度を済ませて学園にGO。
……あ、今日数学の問題演習の板書当たってるっけ。
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いつもの桜並木。この時間に登校している生徒もちらほらいる。
そんな中、明らかに特徴的な知り合いの姿を見つける。
真紅のマフラーに牛柄帽子。
天枷美夏。
ロボット。
でも、ただのロボットのようには思えない。
あのμもロボットだが、あれは感情がリミットされているのか、自然な表情を見たことがない。
でも、あいつは俺たちに対して、怒った。怒鳴った。
そして、昨日は杏を『杏先輩』と慕っている素振りを見せた。
あの人間嫌いなロボットは、人間をどう見ているのか、ちょっと気になった。
ということで、思い立ったら即行動。
「よ、美夏」
「ん?ああ、なんだ、弓月か。何か用か?」
相変わらずの素っ気無い態度。
「ん~、あるといえばあるし、ないといえばない、みたいな」
「はぁ?」
「見かけたから話しかけた、ってことだよ」
「なんだかよく分からんが、あまり美夏に付きまとうな」
案の定、俺のことを煙たがってまともに取り合おうともしない。
それが美夏の性格なのは重々承知だけども。
「そいつは無理な話だな。お前、杏とつるんでるみたいだな」
「ああ、そうだ。杏先輩は他の人間と違ってよく出来ている。杏先輩は信用できる」
ほー、あの美夏から信用できるって言葉が聞けるとは。
「ま、あいつはいい奴だからな」
雪村杏。毒舌で侮れない存在だが、根は友達思いでいい奴だ。
美夏が人間と仲良くなるためのきっかけとしては最高の部類だろう。
「なぁ、何故貴様は美夏に構うのだ?」
「は?」
唐突で、俺を試すような質問。
美夏が意図的に俺のことを判断しようとしているのかは知らないが、俺は俺で素直に思ったことを言うしかない。
適当なことを言っても、美夏が相手じゃすぐにボロが出るだろう。
「美夏は貴様に対して常に冷たく接してきたはずだ」
あ、そういう自覚はあったのね。
美夏がばつが悪そうに目線を逸らす。
「なのに、何故貴様は、それでも美夏に話しかけようとするのだ?普通は、嫌うものではないか?」
「うーん、何ていうべきか?んまあ、そういうものなんだよ、人間ってのは」
「?」
「エゴでしか動けないって事だ」
「エゴ?」
自分でもこの状況でこの言葉選びはセンスがないな、と思いながら、それでも言いたいことくらいは美夏相手にも伝わるだろうと思い、そのまま続ける。
「人間ってのはな、お前たちロボットみたいにプログラミングされてるわけじゃないから、それぞれが自分勝手にしか行動できないんだよ。お前たちを貶めたのも、やっぱり人間のそういう部分なんだ。お前が人間嫌いになるのも、無理ないよな。俺はただお前にみんなと仲良くなってほしい、そういう自己中心的な考え方だけでお前と接している。そして、それ以前にまず、俺がお前と仲良くしてみたい」
「……」
ロボットに関する部分は周りの連中に聞こえないように小声で話す。
「でも、あいつは、杏は、自分のエゴを、他人の役に立てようとしている。あいつはすげぇ奴だよ」
「そ、それは、まぁ、杏先輩だからなっ!美夏が人を見る目がないわけなかろう!」
「そいつはそうだ。そんな杏が、人を見る目がないわけがないだろ?」
「当たり前だ」
「あいつの周りにいる奴は、みんないい奴ばっかだ。小恋に茜、渉、杉並、義之……」
それぞれの顔を脳裏に思い浮かべる。それだけでなぜか胸がいっぱいになった気がする。
「だからさ、人間を信用しろとは言わないけどさ、何かあったら、あいつらに相談しろよ。あの馬鹿どもは、親身になって相談に乗ってくれるはずだからさ」
「……貴様」
美夏の歩調が速まったと思ったら、急に立ち止まった。
その表情は、ホルスタイン帽の陰に隠れて、よく見えなかった。
「貴様、変わった奴だな」
「自覚はしている」
「それと、……あ……ありが、とう……」
そう言い残すと、ダッシュで校門をくぐり抜けていった。
……ったく、ホント、忙しい奴だな。
それでも、ちゃんと礼を言えるくらいには、人としての自覚はあるんだろうし、並の人間以上に人間をやっていると俺は思う。
それが美夏自身の本意かどうかは別として、だけど。
その時後方から、いつもの声が聞こえてきた。
「あら、光雅がこんな時間になんて、珍しいじゃない」
女の嫉妬は怖いというが、この学園、男の嫉妬もえげつない。
テスト返却後、板橋渉が男子生徒を代表したかのように、見当はずれなことを次々とまくし立てる。
次回『テスト返却 英語編』
とはいっても、他の教科も描写するつもりはありませんが。
今回も短かったなぁ・・・。