D.C.Ⅱ.C.E. ~ダ・カーポⅡ チェンジエンド~ 作:Masty_Zaki
なんかいろいろ事件もあったけど、無事ここまでこれて本当によかったと思う
さて、部屋は暗いけど、午後からもがんばっていきまっしょい!
現在昼休み。午前中は全ての時間がHRとなり、各会場の準備時間として割り当てられたようだ。
とはいっても、午後もそうなるんだけど……。
さて、どうして微妙にテンションが低いのかと言うと。
ここはお化け屋敷である。
ドロドロなのである。
暗いのである。
杏に電気をつけていいかと聞くと、『あら、怖いの?お子ちゃまね。』と鼻で笑われた。
いや、全然そういうつもりじゃないんだけど。
杉並も霊をおびき寄せるためとかで張り切ってるし。
ちなみに、杉並の用意してきたオバケグッズはかなりそれっぽかった。
どこから持ち出したのかは一切不明だが、ホラー映画に使われていそうなレベルで、杏もこれには感嘆していた。
杉並と杏って、なんだかんだで仲いいよね。
さて、杏がなんか複数人分の昼食を準備してきたらしい。
そんでもって、小恋がちゃんと話を聞いてなくて、彼女までもたくさんの弁当を作ってしまう始末。
まぁ、男子連中は大喜びするんだが、これは食べきれるだろうか。
俺だって急速で作ったmy弁当があるんだし。
適当だからあんまり量はないけどね。
とりあえず雪月花と俺、義之、渉、杉並というレギュラーメンバーはいる。
だが杏はそれだけではないと。
「杏せんぱーい!」
美夏だ。
真紅のマフラーが目にチカチカする。
そして俺たちを見るなり。
「そうか。そういえばここは弓月たちのクラスだったな……」
若干距離を置いた棘のある台詞だったが、それでも出会った当初と比べてだいぶ軟化したものだ。
「美夏じゃないか。飯食いにきたのか?」
「ああ、杏先輩に呼ばれてな」
「いらっしゃい、美夏。こっちに座りなさい」
「これはすまない、杏先輩」
「気にしないで。さ、一緒に食べましょ」
というわけで、総勢8人でのお化け屋敷食事会が始まった。
……あ、お化け屋敷カフェなんて斬新だよな。
物食ってるときにいろんな方法で脅かしてくるとか。
「それにしても1週間ちょっとで良くここまでできたもんだなぁ~」
渉が教室の内装を眺めながら呟く。
渉は製作期間は大道具を担当していたので、セットを組むときにその柱などを調達して切り分けたりしていた。その完成を目の当たりにすると感動もひとしおだろう。
「それは俺も思った。うちのクラスって意外と団結力あるもんだな」
確かに。このお化け屋敷は思いつきの1週間で出来るような代物じゃない。
なんといっても妥協を許さない杏・杉並クオリティーだ。
この2人についていけば何らかの面白いことに遭遇できる。
それでクラスメイトはこの2人についていく。
生徒会にもお世話になるけど。
「美夏のクラスは何をするの?」
「美夏のクラスはただの喫茶店だそうだ」
「だそうだ?」
「美夏はクラスの連中と関わり合うつもりはないからな。具体的に何をするかは知らん。喫茶店をするというのも由夢から聞いた」
「由夢がねぇ……」
明らかに、あのものぐさが、といったリアクションの義之。
今度ちくってやろうか。
やっぱいいやと考え直して、小恋の弁当からミートボールを1個。
小恋の料理はとことん基本に忠実で、それをそのまま究極化させた感じだ。
誰が口に運んでも美味しいのに、本人はかなり謙遜する。
渉は別のフィルターがありそうだけどね。
小恋にはもっと自信を持ってもらいたい。
杏だって茜だってからかい口調だけど本心からそう思ってるだろう。
俺が口を挟むことじゃないけど。
さて、みんなが大体食事を終わらせるころに。
――ハプニング発生。
美夏が袋から1本のバナナを取り出す。そして、それを嫌そうに一気に口に放り込む。
やっぱり少し嬉しそうなのは気のせいだろうか?
そこに。
「あー、バナナどうしようかなー」
「えっ、バナナ嫌いなの?あたしもー」
「あんまり美味しくないよねー」
そこで、美夏がハジケた。
「貴様ら、バナナを馬鹿にするとは、何事かーっ!?」
「えっ?」
「バナナはな、凄いんだぞ!キャベンディッシュ種などのデザート用バナナは、皮を剥いてそのまま、あるいはケーキやヨーグルトに入れるなどして生食される!さらに牛乳や氷などとともにミキサーにかけてジュースとすることもあるだろう!バナナにチョコレートを掛けたチョコバナナなどが屋台の定番の一品となっていたりするではないか!それだけではない、バナナはデンプンやたんぱく質、それにビタミンAが豊富なんだぞ!バナナは果物の王様なんだぞ!凄いんだぞ!」
一気にたたみかけた!
……ってやっぱりお前バナナ大好きだろ。
「……あれ?」
女子生徒2人が困惑しているのをよそに、美夏は1人首をかしげる。
「なんで美夏はバナナの擁護をしているんだ?バナナなんかの!?」
今気づいたのかね、お嬢さん。
「そんなわけがない、美夏は、ただ美夏以外の人間がバナナを馬鹿にするのが許せなかっただけなんだ……。そうだ、美夏がバナナの擁護などするはずがなかろうっ!」
美夏は1人混乱し始めた。
やっぱり、アホだな、こいつ。
「ねぇねぇ」
「何?」
小恋が小声で俺を呼ぶ。
「美夏ちゃんって、バナナ嫌いなの?」
「みたいだけど?」
「そんな風に見えないんだけど……」
やっぱそう見えるのは俺だけじゃないようだ。
「とりあえず、美夏の前でバナナに触れるのは止めといたほうがいい」
「う、うん」
とりあえず、混乱に陥った美夏は杏に宥められながら教室に帰っていった。
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さて、午後からの作業は、主にシフト決めなんだが。
どうしても杉並は来てくれないようだ。
「あーもう、なんであいつはいっつも大事なときにいないのかしら……。こないだまではホラーハウスの支配人だとか言ってたくせに!なのに、何が『後は現場に任せた』よ!あー、いらいらするー!」
麻耶さん、ご機嫌斜めです。
杉並とまともにやり合っても勝てんぞ……。
「まぁまぁ、落ち着けよ、麻耶。杉並なんか相手にしてたら、命がいくつあっても全部干からびちまう」
「それもそうね……。すー、はー」
麻耶が深呼吸し、苛立ちを緩和する。
そうだそうだ、あんましぴりぴりすると、肌に悪いぞ?
「とりあえず、みんなの協力のおかげで、無事に会場を完成させることが出来ました」
麻耶の言葉に、クラスメイトがうんうん頷いたり、歓声を上げたりする。
「それにしても、立派なものだよね~」
「杉並持参の衣装とかだけが浮くようなことがなければいいけどな……」
「もー、義之くん!それは言わない約束でしょ~!」
「あいや、ごめん……」
義之の言い分ももっともである。
杉並が規格外なせいで若干安っぽくなっているのも否めない。
でも流石にたかが学園の出し物でそこまでこだわる必要もないよな。
「静かに!で、午後からはシフトを決めていきたいと思います。係や委員会とかで参加できない時間がある人は先に決めます!」
あ~、俺生徒会の仕事が午前にあるわ。主に杉並関連の。
「あ、俺生徒会」
「弓月~?あぁ、一番まともなのが……」
「面目ない」
「しょうがないわ。で、何時が駄目なの?」
「午前中は無理。バーサス杉並の下準備があるから」
「また杉並……」
その時。
――バンッ!
扉がものすごい勢いで開く音が。
「杉並いるー!?」
まゆき先輩か……。ということは、エリカもいるってことかな?
「隠すとためになりませんわよ!」
やっぱり。
「ねぇ、弟くん2号」
「は、はい……?」
まゆき先輩は義之に尋問を開始した。お得意の顔面接近尋問。
「杉並隠してない?」
「いないですって!シフト決めしてるのにあいつがいなくてどうしようかってところなのに……」
「ホントにぃ~?」
はいでました!まゆき先輩の顔が義之に大接近。
ここから見れば白昼堂々と見せるものを見せているようにも見えるんだが。
「あ、目逸らした」
「無茶ですって!顔近すぎですよ!」
「まぁ、いいや。沢井、本当に隠してないでしょうね?」
「えっ!?隠してないですっ!」
「本当に?」
「天地神明に誓って……」
「信じてあげましょ。でも、なにかやらかしたらクラス全員しょっぴくからね?」
「高坂先輩、信じてもよろしいのですか!?」
エリカが非難の声を上げる。そりゃ3バカがいるクラスだから、隠してると本気で思われても無理ないよなー。
「大丈夫。弟くん1号の表情見てごらんなさい?あれは本当に知らない顔よ」
「そうなのですか?」
えっ、俺で判断したの?
それじゃあ義之や麻耶への尋問って一体……。
「それじゃ、次行くわよ!1号!明日の午前、よろしくねー!」
そう言うなり、風のように去ってしまった。
「弓月……」
ガシッと、肩を強く握られる。
「何……?」
「明日、杉並が何かやらかしたら、クラスの信用を取り戻すために絶対捕まえてよね……!」
「わ、分かってるって……」
麻耶、いつにも増して迫力あるな……。
瞳の奥に炎がたぎってたぞ……。
それにしても、ようやく明日かー。
楽しみなようで、そうでないようで。
さて、渉は小恋と急接近することが出来るのか!?
渉の運命や、如何に!?
これ、どうよ?
俺たち生徒会一同は3日間のクリパの治安維持に精を出し――。
天邪鬼な妹は、朴念仁の兄をクリパに誘い――。
そんな聖なる日の前夜の前夜のそのまた前夜。
浮ついた雰囲気の芳乃家の、ほのぼのした日常の一片。
次回『明日からクリパ』