D.C.Ⅱ.C.E. ~ダ・カーポⅡ チェンジエンド~ 作:Masty_Zaki
頭脳戦って書くの難しかったんで(俺自身がそんなに頭いい訳じゃないんで)、ところどころになんでそうなるの、っていう部分もあるかもしれませんが、まぁ頑張る分には頑張ったんで、子供の遊びを見る感じで楽しんでいただけたらと。
それでは、ハジマリハジマリー。
まゆき先輩から連絡があった。
なんでも、校舎裏の焼却炉周辺で、『クリスマスリア充潰し』なるものを計画していた男子生徒数名が現れた、とのこと。
恐らく非公式新聞部の刺客に違いないだろう。
だが、杉並のことだ。そんなところで悠長に構えているはずがない。
そう考えると、罠である可能性が高いわけだが、まゆき先輩曰く、『罠だとしても暴れまわる輩をとっ捕まえないわけにはいかないでしょ。』だそうだ。
まゆき先輩はそのまま役員5、6人を引き連れて鎮圧に向かった。
とりあえず、ここから杉並が動き出すのは間違いないだろう。
「音姉」
「うん」
音姉と目を合わせ、頷きあう。
――戦闘開始だ。
「まず、杉並くんの性格からして、騒ぎを起こすのにたくさんの人を巻き込むよね」
「そうだな。そうしたら、出だしは人の集まるイベント、もしくは場所からスタートになるはずだ」
杉並が狙うなら――
――ミスコンか。
『体育館で行われているミスコンで、事件発生!白河ななかの出番が終わると同時に、謎の爆発音、及び煙玉による白煙が充満しています!恐らく、非公式新聞部の仕業かと!』
「わかりました。そちらは、その場で騒動の鎮圧に当たってください。安全のため、観客は一旦体育館から避難させるよう誘導してください。」
『了解!』
音姉が役員の報告に対して適切な指示を与える。伊達に風見学園の問題児を長年相手してない。
「光くん、さっき体育館で非公式新聞部員の仕業と思われる騒ぎが起きました。とりあえず近くにいた役員さんに対処してもらっているけど、きっと杉並くんはそこにはもういない。次は、どこに出ると思う?」
「そうだな……」
そうは言われても、杉並の行動は俺にも理解できない。
だが、今までの経験から推測するしかない。
とりあえず、あいつは相手の思考の裏を突かず、裏の裏を突くこともしない。
あいつは。
――裏と、裏の裏の間を通り抜ける。
非公式新聞部は先程、校舎裏で、有志によるデモ隊を編成し、ミスコン会場で大きな騒ぎを起こした。
まず、『表』。
普通なら、騒動を起こしたら、捕まえられないように、その場から『離れる』。
では、その『裏』。
つまり、その裏を突いて、その場に留まって被害者面をする。
これはないだろう。非公式新聞部のトップである杉並が生徒会の目の前で被害者面をしていても、問答無用で捕まる。
その『間』。
――まさか。
「音姉!」
「何か分かった?」
「いや、手がかりじゃないけど、さっきのミスコンの騒ぎを知らせた奴、杉並側だ」
「どういうこと?」
「理由は分からないが、恐らく、開戦の火蓋を切って落としたつもりなんだろ。音姉の携帯番号くらい、非公式新聞部なら、知っていても不思議じゃない」
『間』とは、非公式新聞部の情報網を使って司令塔である音姉の電話番号を入手し、生徒会役員の振りをして行動を妨害する、という行為だ。
とりあえず、まだ杉並本人は動かない。だが、出鼻は挫いておかなければ、後の展開で面倒なことになるはずだ。
「なんかそれ、嫌だなぁ……」
その時、再び音姉の携帯がなる。
多分、相手はまゆき先輩だろう。デモ隊の鎮圧を完了したのかも知れない。
「もしもし、まゆき?」
『ああ、音姫、今、デモ隊の鎮圧を終わらせたわ』
「お疲れ様。それで、どうだった?」
『ダ~メね~。どいつもこいつも噂を聞いて集まった連中らしくて、誰の口からも杉並の“す”の字も出てこないわ』
「そっか……。うん、ありがと、まゆき」
『で、そっちも何かあったんでしょ?ミスコンか何かで』
「うん」
『だったら、多分これからが始まりね。気を引き締めて行きましょ』
音姉はまゆき先輩と意気投合しているようだ。
だが、俺は少し考えた。
「音姉、ちょっと貸して」
「え?あ、うん。まゆき、ちょっと光くんが話しがあるって」
音姉から携帯を借り、急いでまゆき先輩に思いついたことを伝える。
「まゆき先輩ですか?ちょっと聞いてください。杉並は多分、まだ動きません。しばらくは手下を使って俺たちをかく乱しつつ、自分は作戦を遂行する、という方針を取ってくるでしょう。今の場所から本校生の昇降口って近いですよね?」
『まぁ、そうね』
「なら、一度校舎に戻って、“逆に”人が集まりにくいところを中心に、情報を集めてください。運がよければ杉並と遭遇できます」
『了解。んじゃ、早速行ってくるわ』
「よろしくお願いします」
通話を切り、携帯を音姉に返却する。
俺はこう考えた。
木を隠すなら森に、人を隠すなら人混みに、それはきっと非公式新聞部の手下が既に行っている。
そして、杉並は逆に人の集まりにくいところで、行事終盤で起こす何かのためにトラップや仕掛けを設置しに回っている可能性が高い。
だが、相手は杉並。
先ほども言ったように、裏を探るような戦略だけじゃ、勝てるような相手ではない。
だから、ここではそんなに力を入れる必要性はない。
それで俺の指示は『杉並を探せ』ではなく、『情報収集』としておいたのだ。
俺たちも動かなければならない。
校舎内には既にエリカが巡回している。俺たちまで行く必要はないだろう。
俺たちはセーフティとして、一応校舎の外で待機しておく。
「あ、あった」
「ん?何か見つけた?」
「杉並くんの仕掛け」
「何故見つけたし?」
いや、全然分からなかったんですけど。滅茶苦茶周りの風景にカモフラージュされてたんですけど。
「これで27個目」
「27!?いつの間にそんなに拾ってたの?」
「あれ、気付いてなかったの?」
「いや、全然……」
「もう、ダメだなぁ」
音姉がハイスペック過ぎるだけだと思うんだけど。
とりあえず、中庭に回ろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それから、音姉を中心として生徒会はあちこち走り回り、非公式新聞部との戦略ゲームは比較的有利に進められていた。
非公式新聞部のメンバーを何人か確保することに成功し、確実に相手の駒を減らすことが出来た。
だがしかし、その中で誰も、杉並がどこで何をしているのか知っている素振りを見せなかった。
流石は大将、そう簡単に尻尾を出さない。
それだけではない。
何故か、こちらが動けば動くほど、杉並軍は激化する。
そんな時。
音姉の携帯に反応が。
「もしもし」
『こちらムラサキです。非公式新聞部部室に繋がると思われる通路を発見。指示をお願いします』
「本当ですか!?それなら、周囲に注意して、速やかに突入してください。その際、入り口に見張りをつけておいてください」
『了解!』
「音姉、ちょっと待った!!」
「えっ、どうしたの?」
とりあえず、エリカの見つけた非公式新聞部の部室というのは本物だろう。そして、エリカが今いる場所は、非公式新聞部が行動を起こすのに便利な場所にあり、なおかつ見つかりにくい。彼女が突入すれば、間違いなく部員を一網打尽にすることが出来るかもしれない。
だがしかし、そんなことは杉並もすぐに分かるだろう。
それに、非公式新聞部のアジトが1つだと決まったわけでもない。
杉並は他の連中を残して1人ずらかる可能性が高い。
そうなれば。
もうエリカは杉並捕縛作戦には使えない。
杉並はもうエリカの行動の癖に気付いているだろう。
俺はそういうのはすぐに分かるタイプじゃないけど。
ならば、俺が利用すればいい。
ここからは、俺と杉並の一騎打ちだ。
俺は音姉からまた携帯を借り、エリカに指示を出した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その後、エリカが部室に向かった時、そこはもうもぬけの殻だったようだ。出入り口は3通りあると言っていた。
だが、その後、人海戦術で、風見学園敷地内の部室の一部を発見、制圧した。
杉並と部員はそれぞれ独立して動いているのなら、もう下っ端は動けない。
なぜなら、時間は既に日没寸前だ。杉並は最後の仕上げに集中している。だから、他のダミーを仕掛ける余裕は、いかに杉並といえど、ないはずだ。
そういう訳で、悠長に手下と連絡を取り合う時間も無い。
それに、杉並は1人でも十分動ける。
残り時間は、杉並は単独行動を始める。
そして、今俺は音姉と一緒に校舎内を巡回している。
その時、何の前触れもなく、敷地中に校内放送が鳴り響く。
『ハァーッハッハッハッハァー!生徒会の無能な役員共!貴様らがあまりにも無能すぎるから、ついうっかり放送室を占拠してしまったではないか!』
これは、校内放送!?
「ちょっと待って!?放送室は、あらかじめ役員さんが手を回しているはずだけど……」
「分からない、でももしかしたら……」
「当てがあるの?」
「いや、可能性は低い。だから今俺が考えていることは後回しだ。とりあえず、放送室には多分俺たちが一番近い。早く制圧しにいこう」
「そうね」
『この放送を止めたくば、幾重にも張り巡らされたバリケードを突破して、ここまで辿り着くがいい!それまで、この放送は自由に使わせてもらうぞ!それではDJ杉並がお送りする、クリスマス・イブにぜんぜんふさわしくない、日本伝統のダンスナンバー、ザ・盆踊りメドレー!』
あまりにも風情という言葉から逸脱してしまった音楽が学園の敷地中に流れる。
その間、音姉は他の役員と連絡を交わしていた。
そして、一通りの指示が終わると、俺たちは放送室へと向かった。
その道中の、面倒くさいことといったらありゃしない。
机や椅子でしっかりと壁ができていたり。
地面がローションみたいなのでぬるぬるしていたり。
突然水をかけられたり。
紆余曲折の末、放送室に辿り着いたのだが、そこは既にもぬけの殻だった。
「テープに録音していたのを再生していただけか……」
音姉はあたりの捜索。
その間に俺はラジオを止め、放送を流す。
「ただいま放送室は、生徒会が制圧しました。繰り返します。ただいま放送室は、生徒会が制圧しました。皆さんは、気にせずに引き続きクリスマスパーティーを楽しんでください」
これでよし、と。
「光くん、今の、なんかかっこいいね」
「こういうのは言ったもん勝ちさ」
さて、俺は次の作戦を遂行しますか。
そろそろ杉並は姿を現す。
その時。
杉並が体育館付近に出現した、との情報が入ってきた。
「んじゃ、行くか」
「うん!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
体育館に生徒会役員を結集させ、包囲する。
そして、俺と音姉とまゆき先輩が代表して真っ暗な体育館に入っていった。
そして、俺たちが体育館中央くらいに来たとき、突如ステージの電気がついた。
そこにいたのは、杉並だった。
「お疲れだったな、杉並」
「よくもここまでやってくれたわね」
追い詰められたにもかかわらず、杉並は余裕の表情である。
「いやぁいやぁ、生徒会はよく頑張った。まさか俺をここまで追い詰めるとは。まことに恐れ入ったよ諸君」
「それじゃ、おとなしく捕まりなさい」
「そいつは無理な話だ。何故なら、生徒会はこの俺に敗北したからだ」
「何ぃ?」
「それでは、そろそろ種明かしをしようか。今回の特別ゲストの紹介を」
その時、杉並の携帯に連絡が入ったようだ。
「もしもし、そちらの準備は?」
そして、次に聞こえるのは、誰もが予想だにしない声だった。
『うん!今屋上に来たところだよ!いやぁ~、これってほんとに楽しいね!』
さくらさんだ。
「さ、さくらさん!?」
『あ~、ごめんね、音姫ちゃん、まゆきちゃん。つい、杉並くんに誘われて、楽しそうだったからね、にゃはは……』
生徒会の連中は、音姉含めてみんな困惑している。
『それじゃ、これから始め……って、誰!?』
その瞬間、俺は勝利を確信した。
俺は、唇を歪めて笑った。
「杉並、俺の勝ちだ」
「何……?」
そしてもう一度、さくらさんの声。
『えっ、なんで義之くんと由夢ちゃんがこんなところに!?』
「に、2号!?」
「何が起こったか、説明してやろうか」
そして、俺は全てを話す。
俺が黒幕がさくらさんであることに確証がいったのは、放送室を制圧したときだ。
そのタイミングで、生徒会役員からの連絡、杉並が体育館付近に出現、と。
そして、その杉並は、最後の囮だったのだ。
だが、杉並が囮になったのでは何も事件を起こすことはできない。
そこで考えたのは、何故生徒会の動きが次々に読まれていたのか。
生徒会は常に杉並に対して全力で動いているので、この中に犯人はいない。
そして、その生徒会に入ってきた異分子。
そう、クリパの前日に生徒会室にお邪魔して、何もないのを装ってしっかりと生徒会の情報を非公式新聞部に垂れ流していた、さくらさんである。
そこで、俺はあえて音姉やまゆき先輩が生徒会役員を一箇所に集めるのを放っておいて、別の行動を起こしていたのだ。
万が一のための保険として起こした行動。
それは。
エリカ・ムラサキに、ある人に電話を入れさせること。
それも、他の生徒会役員から、校舎外で杉並が発見された報告を受けたときのみ。
そのある人が、義之である。
但し、そのタイミングで連絡を入れると、確実に警戒される危険性があった。
杉並の情報網がどこまで広がっているのか分からない状況で、下手なことは出来ない。
だからある程度予測を立てて早めに指示を与えておいたのだ。
義之は以前の登校の事件で、エリカには頭が上がらないようになっている。
それに、俺から連絡したところで、杉並なら俺や音姉を警戒し、その連絡を盗聴する危険があった。
俺は、エリカと義之の仲が険悪であることを利用したのだ。
そして、既に杉並側は賢明な判断ができるのが1人。
『裏』と『裏の裏』の間を割る作戦を採るのは、時間と労力がかかる。
だから、体育館とは正反対の場所、校舎の屋上、それも、とある怪談話であまり人が近づかない特別教棟の屋上に義之を誘導したのだ。
まさか由夢まで来るとは思ってなかったけど。
もちろん、この作戦は完全に俺1人の独断で、なおかつ、ところどころに推理の穴はありまくった。
だからこその、後回し。
そして見事に、この保険は効いたのだ。
「ほう、流石だな、同志弓月。それほどまでの判断力があるのなら、ぜひ非公式新聞部に来てもらいたいものだな」
「俺はお前の同志でもないし、部活に入るつもりもない」
「そいつは残念だ。……それでは、これから片付けもあるだろう。屋上に行こうではないか」
「何言ってるんだか。どうせまた何かやらかすつもりでしょ?」
「その心配は要らないですよ」
「どういうこと?」
「まず、杉並のポリシーに反すること。そして、もうひとつは、杉並の最後の計画は、誰にも迷惑をかけないでしょう」
「どうしてそんなことが言えるのよ?」
「さくらさんですよ。そんな大事をやるのなら、はなからさくらさんは参加しません」
「それもそうか。それなら、何をするつもりなの?」
「恐らく、文字通り花火を打ち上げるんでしょう」
それでみんなは一旦納得したようだ。
みんなで、屋上にあがった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
屋上では、さくらさんが義之たちに捕まっていた。
「うにゃ~。ごめんね、杉並くん、失敗しちゃった」
「いえいえ、こちらこそ、ご協力感謝します」
生徒会役員がその後花火のチェックをしたところ、特に被害の出るものはないと判断された。
その結果、さくらさんのお願いで、花火は打ち上げられることになった。
仕掛けを作動させ、カウントダウンが始まる。
10!
9!
8!
7!
6!
5!
4!
3!
2!
1!
「「「「「「「「「「ゼロ!!!!」」」」」」」」」」
次の瞬間、色とりどりの花火が夜空へと打ちあがった。
それだけじゃない。
なんと。
雪が降ってきたのだ。
まるでこの世に奇跡をもたらすかのように、お祭り騒ぎで真っ白に燃え尽きた人々の心をゆったりと癒すように。
それは、とても綺麗だった。
ただただ、みんなはこの風景に見惚れるだけで。
この風景を、言葉で形容しようとしなかった。
――出来なかった。
とにかく、綺麗だとしか、思えなかった。
詩人や俳人なら、この夢のような景色をどのように捉えるのだろうか。
俺には、彼らのような感性なんてないから、そんなことは分からない。
ただ、そんな中で唯一言えることは。
クリパが、とても楽しかったこと。
そして、杉並たちも、それに貢献してくれたこと。
「音姉、楽しかったか?」
「……うん」
「ホワイトクリスマスだ……」
音姉も、どうやらこの絶景に見惚れているようだった。
俺は、そんな音姉の、冷え切った手を握ってやる。
「(今日だけだぞ)」
音姉は俺の行動に一瞬吃驚したようだったが、握った俺の手を握り返し、そっと微笑んだ。
その笑顔を見て、本当大切なものは、すぐ傍にあることを朧げに感じていた。
そうして、華やかな花火と、幻想的な雪に祝福されて、俺たちのクリスマスパーティーは幕を閉じた。
幸せな時間は終わった。
次は、果て無き孤独への序章である。
以前全てを救うと誓った人間に――
自分の力から逃避した人間に――
誰かを救うことはできるのか。
次回『迫り来る絶望』