D.C.Ⅱ.C.E. ~ダ・カーポⅡ チェンジエンド~   作:Masty_Zaki

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本当の物語はここから始まる。
それは起こるべくして起こったものか。
あるいは、最初から仕組まれたものか。
誰も何も答えてくれない。
誰も何も知らない。
さあ、見届けようか。
少年が『孤独』に身を晒す悪夢(バッドエンド)を……!


迫り来る絶望

12月25日

 

昨日は杉並との死力の限りを尽くした激闘に勝利した。

今日は昨日までの2日間とは違って、風見学園生徒は自由登校となり、あまり盛り上がりを見せない。

この2日間は、とにかく内容が濃いものだった。

 

天枷美夏。

人間嫌いなロボットを、弱味(?)を握っておとなしくさせ、一緒にクリパを回った。

お化け屋敷で握った彼女の手の温もりは、忘れようにも忘れられない。

彼女だって、生命なんだ。

それはほかのμにも言えることで。

美夏たちが、本心から幸せだと思えるような日常を、創っていきたいと思う。

その先に、人間とロボットが共存できる未来があると信じて。

 

朝倉音姫。

俺の義理の姉であり、生徒会長でもある彼女は、間違いなく俺にとって一番お世話になっている人だ。

昨日はほとんどそんな彼女と一緒に生徒会の仕事に尽力した。

周りから見れば、そのたたずまいはとてもしっかりしていて、頼りがいのある人かもしれない。

でも、そんな音姉は、なぜか俺に対して甘えん坊で、天然で。

音姉と屋上で見た花火は、とても綺麗だった。

そのときの音姉の横顔からも、喜びとか、達成感とか、幸せとか、そんなのが感じられた。

なんていうか、彼女と一緒にいると、楽しい。

 

さて、今日はクリスマスパーティー最終日だ。

無論、昨日出し尽くした杉並率いる非公式新聞は、今日は何もしてこないだろう。

そんな平和なお祭りを、音姉と見回りをしながら楽しんでいるときだった。

風見学園は、一瞬で阿鼻叫喚となってしまった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あ~、なんていうか、やりきった感がまだ抜けねぇわ」

 

「ふふ、そうだね」

 

クリパの出来事を何度も何度も繰り返しながら思い出していた。

今日来ている生徒が、ちらほら、笑顔で学園内を回っている。

 

「光くん」

 

「ん?」

 

「本当に、ありがとう。光くんがいたから、クリスマスパーティーは成功したんだよ」

 

「俺だけじゃねぇよ。みんながいたから、だろ?」

 

「……そうだね」

 

2人並んで校舎を見上げる。

いつも見ているその建物が、なぜかとても荘厳としているように感じた。

そんなときだった。

杉並から電話がかかってきたのは。

制服のポケットで携帯が振動しているのを感じる。

取り出して見てみると、杉並からの電話だった。

 

「なんだあいつ、まだ何かやらかすつもりか?」

 

「どうしたの?」

 

「いや、杉並から電話」

 

とりあえず、通話ボタンを押し、携帯を耳に当てる。

 

「もしもし、杉並?」

 

『弓月か。緊急だ。気をつけろ、バイクの集団が風見学園に接近している。人数にしておよそ30だ。おそらく他校の回し者だろう』

 

「どういうことだ?」

 

少なくとも、今回の杉並は“マジ”だ。

 

『こちらは少し様子を見る。先程高坂まゆきやエリカ・ムラサキにも連絡をしてある。速やかに対処してくれ』

 

「……了解」

 

通話を切り、少し黙る。考える時間が欲しかった。

 

「光くん、どうしたの?」

 

聞かれた。生徒会長である音姉に、話さないわけにはいかない。

 

「落ち着いて聞いてくれ。今、この学園に暴走族と思われるバイク集団が向かってきているらしい」

 

「それって……」

 

音姉は何かを察した。俺は頷く。

 

「だから、今ここにいる人全員を、建物の中に避難させるよう誘導してくれ」

 

「分かった」

 

音姉は携帯を取り出し、その旨をまゆき先輩とエリカに伝えた。

避難先は――体育館がベストだろう。

そして、俺と音姉も動き出す。

 

「皆さん、今この近隣で暴走族が走り回っているそうです!危険ですので、安全が確認されるまで体育館に避難してください!」

 

「避難をよろしくお願いします!」

 

しかし。

 

――ブロロロロロロロロロロロ!!

 

来てしまった。

やはりこいつらの目的は風見学園だったようだ。

敷地内にバイクで乗り込んできて、先頭の男が言った。

 

「ひゅー、ここがあの有名な風見学園か。綺麗な場所だねぇ~!」

 

「「「「「「ははははははは!!!!!」」」」」」

 

「遅かったか……!」

 

後ろの連中が一斉に笑い出す。

こいつら、クリパをぶっ壊しに来たのか?

いや、それなら昨日までに来ているはずだ。

 

「急いでください!」

 

「速く!こっちですわ!」

 

「急いで!」

 

生徒会の面子は避難勧告に苦戦している。

 

「音姉、まゆき先輩たちを手伝って、無事全員避難できたら、一緒に隠れてろ。こいつらは俺が引き受ける」

 

「で、でも……」

 

「死にたくなかったらさっさとしろ!」

 

「ひっ……!」

 

音姉は俺の一喝に怯み、言われるままにまゆき先輩たちのところに走っていった。

これでいいんだ。下手に近くに誰かいたら、守れないかもしれない。

後で謝らないといけないな、音姉に。

さて、こいつら、いつも相手にしてきたそこらへんのチンピラとは少しわけが違うようだ。

ぱっと見だが、多分喧嘩慣れしている。

俺はバイク集団に向かって歩き出す。

 

「……なんだ?」

 

「風見学園の生徒会の者だ。悪いが、ここはバイクで立ち入っていい場所ではない。速やかに出て行ってくれないか?」

 

「あんたか、弓月光雅ってのは?」

 

こいつ、俺のことを知っている……?

まさか、あの時の刀の女と関係あるのか?

 

「こちらも騒ぎを大きくしたくない。警察を呼ばれたくなければ、直ちにここを立ち去れ」

 

「無視かよ。それにしても、威勢がいいなぁ!お前!」

 

「あいにく、学園を守るのが今の俺の仕事なんでね」

 

「それじゃ、その仕事、クビにしてやるよ!いけぇ!」

 

その合図で、そのバイク集団は散り散りになる。

これだけ広がられると、全て倒しきれない!

とりあえず、体育館には入れないように構えておくか。

そっと、腰を落とし、体育館を背に低く構える。

バイクが3台立て続けに突っ込んでくる。

手に持っているのはそれぞれ金属バット。

バイクが距離7メートル範囲に入った。

俺は地面を蹴り、その距離を一気に縮める。

バイクの横をすれ違った瞬間、車体の横腹を蹴り飛ばす。

 

「どわぁ!」

 

その男は猛スピードのまま転倒した。

俺の行動に反応したのか、次の奴はもう振り上げたバットを振り下ろしている。

そのバットを腕でガードし、人間の鳩尾に拳を入れる。

そのままの勢いで3人目も叩き潰す。

だが数は一向に減らない。

 

「くそ、きりがない……」

 

次々と襲い掛かってくるバイクの男。

それを殴り、蹴り、投げ飛ばし。

俺は近くに落ちてあった数本の金属バットを拾い上げ、そのうち1本を構える。

バイクの接近と、タイヤの回転を見計らう。

そして、タイミングを合わせて、タイヤの隙間に投げ込む。

そのバイクは転倒、後続のバイクも巻き添えを食らってクラッシュした。

首を横に向けると1人が既に接近していた。

手に持っているバット2本を、双剣のように持つ。

ゼロ距離になると同時に、左手の得物を前輪に、ワンステップ踏んでその勢いで右手の得物で後輪を叩き壊す。

そのバイクの破片をさっと適当に集めて、バイクのタイヤめがけて思い切りばら撒く。

すると、刃のように鋭くなった破片が、数台のバイクの前輪に刺さり、パンクさせた。

勢いがついたバイクはそのままクラッシュ。

よし、だいぶ数が減ってきたな。

もう片付くだろ。

 

しかし。

 

甘かった。

 

「「「「「「きゃぁあああああああああああああああああ!」」」」」」

 

体育館から無数の悲鳴が聞こえる!

しまった、侵入されたか!

だが、中に入ろうにも、次々と襲い掛かってくる男が邪魔をする。

その時。

 

『音姫!音姫!』

 

かすかに聞こえた、まゆき先輩の声。

彼女の声は大きいから、人ごみの喧騒の中でも聞こえる。

その声は、音姉を呼んでいる。

その声は、尋常じゃないことを示唆していた。

 

「音姉!どうした?音姉!?」

 

外から叫んでみるも、やっぱり中には届かない。

ちくしょう、みんな、無事でいてくれよ……!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

~まゆきside~

 

外で弟くん1号が暴走族相手に奮闘してくれているのを、ただ見守ることしかできなかったあたしたちは、とにかく、彼の無事を祈っていた。

もう少しで片がつくかとと思ってたその時、ありえない事件が起こった。

 

「おぉ~っと、おとなしくしてなお前らぁ!」

 

――バン、バン!

 

手に持っていたピストルのようなもので威嚇射撃をし、あたしたちの不安を煽る。

 

「ちょっと人探し中なんだよね!」

 

「この中に~、朝倉音姫とかって言う女いない~?」

 

この男たち、音姫に用があるの?

でも駄目だ。たとえ音姫が出て行ってこの場のみんなを助けられたとしても、音姫がいないんじゃ、みんなが悲しむ。

それだけは、避けないと。

 

「朝倉音姫なら、今日は休みよ。12月25日は自主登校で、生徒は別に来なくてもいいもの」

 

はったりをかます。1号が助けに来るまで、持ち堪えられるか。

 

「ほぉ~、ここにも美人がいるじゃねぇか。でも、そんなことはどうでもいい、朝倉音姫は本当にいないのか?」

 

「ええ」

 

さて、犀は投げられた。後は、状況に任せるしかない。

 

「ウソ言ってんのばればれだっつーの!生徒会長なんだろ?いないわけねーじゃん!」

 

「ほう?それはそれはッ!」

 

近くの男子生徒が蹴飛ばされた。

 

「ぐふっ!?」

 

「ほらほらぁ、出てくるまでこいつが痛い思いするぞー!」

 

くそ、ばれてるんじゃどうしようもない。

音姫、絶対に出てきたら駄目だからね?

みんなで、このピンチを切り抜けよう。

 

でも、そんな願いは届かなかったようだ。

 

「私が……私が、朝倉音姫です!」

 

「音姫!?」

 

音姫が、名乗り上げて立ち上がった。

 

「ふむ……。写真と同じだな」

 

「よっしゃ、任務終了。連れてくぞー」

 

男2人が音姫に向かって歩き、そして彼女を捕まえる。

 

「いやっ!放してください!」

 

「音姫!音姫!」

 

待って!親友を連れて行かないで!お願い!

 

「弓月光雅に伝えな。大切なもん失いたくなかったら、俺たちを探しにくるんだなってな」

 

そういい残し、彼らはバイクに乗って去って行ってしまった。

 

「音姫……、音姫……、いやぁあああああああああ!!!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

~光雅side~

 

敵を全て片付け、体育館に入ろうとした時、バイクの男2人が走っていった。

その内の1人の男の背中に。

 

――音姉が縛られて座っていた。

 

「音姉!音姉!くそっ、お前ら待ちやがれ!」

 

叫ぶが、そんなことで待ってくれたら暴走族ではない。

そのまま高速で走り去ってしまった。

 

「くそっ!くそっ!」

 

音姉を、守りきることができなかった。

あの時、あの海の近くの旅館で、誓ったのに。

 

――みんなを守る、と。

 

――音姉を守る、と。

 

そして、由姫さんの遺言でもあった。

それなのに俺は……。

俺は。

また……。

 

「守りきれねぇのかよぉおおおおおおおおおおおおおお!」

 

俺は、叫んだ。

力の限り。

そうでもしないと、心が挫けそうだった。

 

――その時。

 

俺の携帯が、鳴ってる・・・?

こんな時に、誰だよ。

その相手は――由夢だった。

 

『もしもし、光雅兄さん?』

 

「何の用だ……?」

 

『お姉ちゃんはきっと、この島の西側の海岸沿いにある工場近くの倉庫に向かっているはずです!』

 

――え?

 

なぜ、それを由夢が?

 

『お姉ちゃんのことは、高坂先輩から聞きました!それと、私を信じてください!』

 

――信じてください。

 

その言葉は、俺の希望を取り戻すのには十分だった。

だったら、それがホントかどうかなんてどうでもいい。

一か八か、とにかく行ってみるしかない!

 

「ありがとう、由夢!音姉は絶対に連れて帰る!」

 

『無理だけはしないでください!みんな、待ってますから!』

 

「ああ!」

 

通話を切る。

まだ、終わっちゃいない。

終わらせるわけにはいかない。

だから俺は。

全速力で桜並木を駆け抜けていった。




さて、ようやくお出ましだな、ヒーロー気取りの糞野郎。
人を救うってのが、人間には到底出来ないってことを、俺が教えてやる。
お前の思い上がりが――
お前の自惚れが――
お前の自己満足が――

――誰かを苦しめているってことを。

次回『闘う理由』
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