D.C.Ⅱ.C.E. ~ダ・カーポⅡ チェンジエンド~   作:Masty_Zaki

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――独りよがりじゃ、誰も救えない。
『力』は、守るためのものじゃない。
壊すためのものだ。
俺は、たった1人の大切だった妹のために――
全てに嘆いた新たな支配者のために――

――全てを壊す。
――お前を壊す。


闘う理由

~由夢side~

 

私は今朝、夢を見た。

恐ろしい夢だった。

お姉ちゃんが暴走族に捕まり、そのまま連れて行かれる夢だった。

そして夢は。

 

――現実になる。

 

高坂先輩から連絡が来た。

高坂先輩らしくない、すごく慌てた話し方だった。

それもそうだろう、お姉ちゃんは、高坂先輩にとっても、かけがえのない人だもの。

だから、お姉ちゃんをなんとしてでもたすけださなければならない。

私の見た、確定された未来を打ち破ることができる人。

そう、光雅兄さん。

彼ならきっと、平和な日常を取り戻してくれる。

お姉ちゃんを、取り戻してくれる。

 

「私は、諦めちゃいけない……」

 

携帯を開き、希望の光に、声を届けた。

 

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~光雅side~

 

初音島西部の、海岸沿いの工場近くの倉庫。

由夢はそう言っていた。

なぜ彼女にそんなことが分かるのか、今はどうでもいい。

藁をもすがる思い、ってのを、初めて感じた気がする。

とにかく、行動を起こすためのきっかけが欲しかった。

由夢には、後でお礼をしないとな。

桜並木を突っ切っていると、また携帯がポケットで震える。

手に取り、電話に出る。

相手はまた、杉並。

 

『もしもし、弓月、例の朝倉姉を拉致したバイクは現在、初音島の西側に向かっている。そちらには島から出るルートは存在しない。理由は分かりかねるが、とにかく、状況は随時連絡する』

 

「そっか、サンキューな、杉並!」

 

『なぁに、礼には及ばんさ。朝倉姉がいないと、生徒会は脳なしの集団まで成り下がってしまうからな。それじゃあ面白くないから、とにかく、無傷で連れて帰って来い』

 

「ああ!」

 

……よし。

杉並の情報によって、場所は確定された。

よっしゃ、待ってろよ音姉!絶対に助け出してやる!

 

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~美夏side~

 

美夏は、どうすればよいのか。

どうやら、風見学園の生徒会長である、由夢の姉が阿呆な男どもに捕まったらしい。

朝倉先輩を助けるため、弓月が単身で追いかけていったことも聞いた。

研究員ども噂のを聞いて知ったのだが、あいつはやはり本物の馬鹿だ。

助けに行くことは容易い。

しかし、その行動は、憎き人間を助けることになる。

それが美夏を躊躇わせる。

それとも、弓月を信じるべきか?

人間を、信じてもいいのか?

 

――怖い。

 

またいいように扱われて、いらなくなったら捨てられるのが。

でも。

それでも。

 

――楽しいから、だよ。

 

あいつは、そう言った。

美夏に構うのは、楽しいからだ、と。

もしそれが、人間の言う、『エゴ』とやらでの発言ならば、それはあいつの本心である、と、そう考えてもいいのか?

杏先輩なら、こんな時どうするのだろうか?

 

――っ!?

 

そうか、変わらないのだな。

弓月も、杏先輩も。

どちらも、美夏を無意識のうちに友達として接していたのだ。

今更、そんな事に気付いた。

弓月は、朝倉先輩のために走っている。

ならば、きっと杏先輩も、仲間が危険な目に会った時、最優先にその人間を心配し、助けに行くだろう。

美夏がすべきことは、理解できた。

研究所の廊下を歩いていると、水越博士を見つけた。

 

「あら、天枷、どうしたの?」

 

訊かれる。

今までの美夏なら、この場でなんでもない、と誤魔化し、踵を返して逃げ出しただろう。

 

「美夏は、弓月を、助けたい」

 

「あら……」

 

「どうすればいい?」

 

こういう時、人間の大人は色々と情報を提供してくれるから便利だ。

水越博士の情報は、なお信用できる。

 

「ふふ、そうね、だったら、あなたにしかできない方法を、自分で考えなさい。私たち大人は、もう彼らのために動いているからね。……公共の力だけど」

 

「美夏にしか、出来ない事……」

 

――何かあったら、あいつらに相談しろよ。あの馬鹿どもは、親身になって相談に乗ってくれるはずだからさ。

 

やはり美夏は、弓月に救われようとしていたのだ。

そうと決まれば。

使い慣れない携帯電話を取り出し、慣れない手つきで、アドレス帳を開く。

その相手はやっぱり。

杏先輩だな。

 

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~光雅side~

 

ついた。

杉並の情報提供通りの場所。

確かに、複数ある倉庫の中で、1つだけ異様な感じがする建物があった。

見た目は別に他と変わらない。

だが、その建物だけは、恐らく耐久力を底上げする魔法がかけられている。

そうなると、やはり魔法絡みか。

とにかく、中に入るしかない。

少し考えていると、倉庫の中から無数の男が現れる。

またここで足止め食わされんのかよ……。

そう思ったんだけど、奴らは倉庫の入口に誘導するように2列に並び、ニヤニヤ笑っていた。

……お出迎えってことか。

なら、遠慮なくさっさと助け出しますか。

ゆっくり歩く。

その時間がやたらとゆっくりと感じられる。

まだるっこくなって、歩くのをやめ、俺は走って中に入った。

中に入ると、すごい勢いで扉が閉まる。

音で俺が驚いてしまったじゃないか。

 

「待ってたぜ、小僧」

 

建物の奥から男の声が聞こえてくる。

それと同時に、暗かった空間に明かりが点いた。

そこは、倉庫というよりむしろ、廃工場と呼んだ方がしっくりくる作りだった。

 

「音姉をどこにやった?」

 

「ああ、あの女ね。そこのモニターを見な」

 

男の指差す方を見上げる。

そこには大きなモニターがあった。

そこには、左手を石像の蛇に咥えられ、意識がないのか、ぐったりと座り込んでいる音姉の姿があった。

 

「――ッ!?てめぇ!音姉は無事なんだろうな!?」

 

「そう焦るなよ。これはゲームだ」

 

「ゲーム?」

 

「そ。俺を倒すことができれば、女は無事解放、感動の再会ができる。だが、小僧が負けるか、制限時間内に俺を葬ることができなけりゃ、ジ・エンドってわけさ」

 

「時間制限ってどういうことだ?」

 

「モニターの画面右下を見な」

 

指示された場所に注目する。

残り時間、24分17秒。

 

「この時間は、まさか……!?」

 

「多分察したとおりだ。あの蛇は少しづつ魔法で合成された毒を少しづつ体内に流し込んでいる。つまり、お医者様じゃあ、女は助けられないぜ」

 

「てめぇ……!」

 

音姉を殺すなんて、絶対に許さねぇ……!

何があっても、絶対に助けだす!

俺がどうなろうとも!

 

「ハハハ、俺の名は佐久間英嗣(さくまえいじ)だ。お手柔らかに頼むぜぇ……」

 

そういうと、英嗣と名乗ったこの男は突如地面に足を叩きつける。

その衝撃か、地面がかなり揺れた。

どんな馬鹿力してんだよ、こいつ……。

そして、振動に耐えられなくなった地面が崩壊、その瓦礫が宙に舞い、しばらくしてその大量の瓦礫、鉄屑が重力で地面に落ちる。

 

「なんのつもりだ?」

 

英嗣は唇を歪める。

 

「俺の能力を説明してやろう。俺は、遠隔操作系魔術に特化していてな。それと、SFみたいな最先端科学を使用できるんだ。そぉら、こんな風になぁ!」

 

英嗣が叫ぶと、再び瓦礫は宙を舞い、渦巻き、そして魔法特有の光を放つ。

そして、その光が収まったころ、そこに現出したのは、複数の独立飛行射撃ユニットだった。

 

「こいつは……」

 

その銃口は、全て俺に向かっている。

……魔法なしで倒せるか。

あれがピストルやライフルのような直線的な攻撃しかしないのなら、その向きを読むことで、行動が大分楽になるはずだ。

その隙を突いて攻撃をすることが出来れば、あるいは。

 

「行くぜ!」

 

合図と共に、そのユニットが一斉にバラバラの動きを始める。

そしてそれらは、バラバラのタイミングで俺に砲撃を開始する。

その銃弾は。

いや、銃弾ではなく、こいつは、ビームか。

とりあえず、見かけによらず高火力なのは間違いない。

それならば、時間はまだ20分程ある。

様子見をする時間くらいはあるだろう。

ロボットアニメにあるような、ビームの嵐。

こいつを掻い潜るには、かなり手間が掛かりそうだ。

 

「そらぁ、逃げろ逃げろぉ!」

 

だが、そんな直線的な攻撃は、俺には通用しない。

楽勝だ、この野郎。

そして、待っていた。

 

――チャンスだ!

 

一気に突っ込む。

そして俺は攻撃態勢を――

 

――ドドドドン!ドドドドン!

 

「ホーミングミサイル、展開……」

 

両サイドから、10機ほどのミサイル。それも追跡型だ。

このまま攻撃に入れば、間違いなく被弾する。

 

「くっそ……」

 

仕方なく、今は回避に専念する。

ビームを回避し、ミサイルから逃げる。

 

「おいおい、逃げてばっかじゃつまんねえじゃん……」

 

すると英嗣は指を鳴らした。

新しく魔法が展開される気配。

それと同時に、今まで屈折していなかったビームが、壁や天井、地面に当たるたびに跳ね返り、屈折するようになった。

 

「なんだと!?」

 

「こっちだって命懸けなんだっつーの。全力で行かせてもらおうか」

 

くそ、どうすればいい?

こんな危機的状況、今までに体験したことなんてあるかよ……。

時間を見れば、あと、12分40秒。

魔法をこっちも使えば――でも……。

なんでこんなところで俺は葛藤しなければならない!?

 

――光くん……。

 

「――ッ!?」

 

俺は一度音姉に赦しを乞うた。

その代償に、俺は十字架を背負った。

自分の能力を束縛することで。

俺は、その十字架を背負い続けると決めた。

それが、どんなに苦しくても。

だから、俺が魔法で、力で人をねじ伏せてこいつを倒したとしても、それは音姉の望んだことなんかじゃない。

だから、俺は――。

 

「うおおおおおおおおおお!!!」

 

振り返り、一番接近していたミサイルをキャッチする。

そして、力の限り、他のミサイルの1つに投げ返す。

 

――ドガーーーン!!!

 

大爆発。

粉塵舞う中、俺は同じことを繰り返す。

 

「俺は、俺自身で、お前を倒す!」

 

そう叫ぶと、先程までのビームの嵐が急に止んだ。

煙が晴れる。

英嗣の姿がはっきり見えてくる。

その表情は。

呆れていた。

 

「お前、無理だわ……」

 

「なんだよ……」

 

英嗣がゆっくりと目を開く。

その視線は冷たく俺を捕らえている。

英嗣が口を開く――が、躊躇ったのかもう一度口を閉じ、そして。

 

「そんな生半可な覚悟で、他人を守るなんてほざいてんじゃねーぞこのアマが!!」

 

「な……!?」

 

激昂し、怒鳴った。

 

「俺はな、そういうご都合主義的な考えが大嫌いなんだよ。特に、お前みたいなヒーロー気取りしたクズ野郎がな!」

 

ご都合主義、だと……!?

俺がどれだけ苦しんできたか、お前なんかに何が分かる?

 

「どうやらお前は周囲のモブ共によほど懐かれてるらしいじゃねーか。そいつらも何かしらのアクシデントやらトラブルやらから助け出したんだろう。それは確かにすばらしいことさ。褒めてやるよ」

 

「何が言いたい!?」

 

「だがなぁ、そんなちょっとばかしいいことしました、くらいじゃあ、世界どころか、人1人救えねーんだよ!」

 

「説教ばっかしてんじゃねーよ!意味分かんねぇんだよ!要はお前を倒す、それだけだろうが!」

 

「魔法を使わずに俺を倒せるなんざ、無理な話なんだよ!」

 

俺の行動に激昂するこの男に、一体何があった?

 

「……昔話をしてやるよ。俺は10年位前に、海外で傭兵をやってたんだよ。今のお前みたいに、誰かを守りたい、力を以って、弱者の楯になるってな。その時には既にこの魔法の力は操れたんだが、表の紛争で使うことは許されない。だからほかの連中と同じように、軍隊の装備らしいものを集めて身につけて戦場に赴いた」

 

英嗣は思い出に浸りながら天井を見上げる。

 

「俺には妹がいたんだよ。サイカって言う名前のな。親も戦争に巻き込まれて死んで、残った俺らは、本当に互いを大切にした。だから、サイカを守るためにも、俺は傭兵として生活した」

 

元傭兵の表情は憎しみと怒りに変わり、その視線は俺を射抜く。

 

「だけどな、俺が戦地にいる間に、サイカがいる場所が紛争地となった。すぐに駆けつけたよ。だけど、もう宴の後だった。サイカの姿は、もうどこにもなかった。俺は力でサイカを守れなかった……!俺は思ったよ。力じゃ何も救えない、力で何かを救おうと思うなら、それこそ思い上がりで、自惚れなんだってな。そして、俺が絶望に打ち震えていた時、1人の男に出会った」

 

英嗣は不敵に笑みを浮かべ、その表情に俺は戦慄した。

 

「その男は俺と同じくこの世界に失望した奴だった。まだガキだった。俺に声をかけるなり、『一緒に世界を消してみないか?』だぜ?こいつ馬鹿だと思ったが、俺はそいつに覚悟を見た。決意を見た。俺はそいつの持論を聞いて惚れたよ。こいつがすることこそが、正しい力の使い方だってな。だから俺は――」

 

――お前の自惚れを許さない。

 

――お前の自己満足を許さない。

 

――お前の思い上がりを許さない。

 

――お前のその中途半端な考えを許さないッ……!

 

「お前のせいで、あの女は死に掛かっている。お前が存在しているせいでなァ!」

 

「な――!?」

 

「消えちまえ!ヒーロー気取りの糞野郎がァアアアア!!」

 

罵倒と共に、もう一度一斉射撃が始まった。

反応が遅れる。

身に纏っている制服と共に、俺の皮膚までビームが掠める。

 

「くっ……」

 

それがきっかけか、俺はビームを避けられなくなった。

クリーンヒットこそ無いが、わずかに掠める。

その度に、被弾したところに、痛み、そして熱を感じる。

 

「もう避けられなくなってきたか。どうした、バテたか!?」

 

罵りに構っている場合じゃない。

この間の帯刀女といい、こいつといい、戦闘系魔法使い相手に指一本触れることが出来ない。

また、防戦一方になってしまっている。

しかも今度は。

 

負けは。

 

俺と。

 

音姉の。

 

――死。

 

負けるわけにはいかないんだ。

約束したんだ、由夢にも、杉並にも。

音姉を連れて帰ると。

無傷で連れて帰ると。

由夢は無理はするなと言ったけど、どうやら今は無理をするところらしい。

 

でも。

 

それでも。

 

想いだけじゃ、叶わない。

 

望むだけじゃ、通じない。

 

「どわぁあああああああああああ!!!」

 

ビームがもろに脇腹にヒット。

もちろん、最小限の魔法防御はあらかじめされているが、それでもダメージで体勢は崩れる。

そして。

 

「フルバースト!!」

 

全ての砲口から、光が漏れる。

これが、俺の最期なのか?

ここで、終わるのか?

 

――ごめんなさい、由姫さん、約束、守れそうもないです。

 

――ごめんなさい、さくらさん、俺、もう、帰れないかもです。

 

――みんな、ごめん。

 

――音姉。

 

力があれば。

力があれば、こんな事にはならないのに。

力があれば、なんだって救えるのに。

力を使っていれば、俺が苦しむだけで済んだのに。

力があれば。

『力』が、欲しい。

なによりも、『力』が欲しい。

全てを変える『力』が。

全てを壊す『力』が。

全てを決める『力』が。

そして、全てを救う『力』が。

 

――欲しい。

 

失望。絶望。欲望。羨望。渇望。切望。懇望。責望。

全ての想いがごちゃごちゃになった、その時。

辺りに、巨大な爆発音が鳴り響いた。

 

弓月光雅は。

 

閃光の中で。

 

――“死んだ”。




それぞれの想いを胸に、皆は行動を起こす。
いつも一緒にいた大切な仲間のために。
自分のことをいつも気にかけてくれた、新しい『トモダチ』のために。

だが、全てが遅かった。

『死者』は知る。
破壊の悦楽と。
能力者の孤独の意味を。

驚愕の真実は、『彼』を知る魔法使いから語られる。

次回『孤独の力』
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