D.C.Ⅱ.C.E. ~ダ・カーポⅡ チェンジエンド~   作:Masty_Zaki

47 / 90
ついに旅行当日。
朝早く起きた少年たちは、秘密を語り合う。
義之の決意に、光雅は自分を晒す決意をする。


夢の中の過去

俺は、驚愕した。

何に驚愕したかってーと。

その音姉の荷物の量だ。

なんだ、そのこれから数ヶ月海外に出張し、なおかつそれを全て自前で賄うような荷物の量は。

半分、いや、その10分の1あれば十分に足りますって。

というか、そんな巨大バッグどこで手に入れたんだよ。

しかも複数。

それにそのバッグに荷物をぎゅうぎゅうに詰め込んだ上、積み上げて放置して運べないから俺に玄関まで運ばせるって、どういう思考回路してんだろうか、この人は。

いや、音姉が荷物の量が異常に多いのは、石橋を叩いて渡る性格の音姉にしたら当たり前で、別に俺とてそこまで驚くことじゃないんだが。

以前にスキー旅行に行った時より、格段に増えてるじゃねーか。

それに、前回より日数も短いというのに。

どうしてこうなるんだ。

音姉曰く『前よりも集まる人も多いし、もし他の人が忘れたりなくしたりした時に困っちゃうだろうし、自分も何かトラブルとかに会った時にたくさんあった方が何かと便利で安心できるでしょ?』だそうだ。

いや、夏物なんて、急に温度が上昇するとかありえないし、旅行で歯ブラシセットを人数分持っていくとか聞いたことないし、バスタオルだけで3キログラム前後あるとかあの家にそれだけタオル貯蔵してたのかって感じだし、まして帰れなくなったときのための暇潰しに本を大きな本棚に十分入る量持っていくって、アンタ本当に旅行楽しみにしてるの?

まぁ別に転生者である俺にとって重く感じることはないんだけどね。

あんまり誇りたいことでもないけど。

義之が、由夢が箪笥ごと服を持っていこうとしたとか言ってたが、まだ可愛いものだから聞かないことにしておく。

まぁ、そういうわけで、前日準備が終わったわけだ。

明日は朝早いそうなので、今日は早めに就寝しておこう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

さて、現在、4時半。出発は6時となっている。

多分、俺が一番早起きなのではなかろうか。

とりあえず、早く起きたなら朝飯でも作っておくとするか。

 

――と思って自室を出ると、既に電気がついていた。

 

義之が既に起きているらしい。

あいつにしてはいいことをするものだ。

早起きは三文の徳ってね。

階段を下りると、義之が台所に立って朝食の準備をしていた。

 

「おはよ、義之」

 

「ああ、光雅、おはよう」

 

「すまんな、朝飯用意させて」

 

「いや、早起きし過ぎたから、ついでにと思ってな」

 

義之が早起きをし過ぎるとは、地に落ちてあるリンゴが木に戻ってしまうくらいありえない。

さては楽しみ過ぎて目が覚めちまったか?

 

「なるほど、すっげー楽しみにしてたんだな」

 

「なっ!?……いや、まぁ、そうだけどさ。お前はどうなんだよ?」

 

「俺は楽しみさ。もしかしたら俺は今日という日を迎えられなかったかもしれない。でも、みんなのおかげで今ここに俺がいて、そのみんなと楽しく過ごすことができる。だから、毎日が新鮮で、面白くて。すっげー楽しみなんだよ」

 

「そっか」

 

そして、話す事がなくなり、俺も義之も黙り込んで、義之の調理の音だけが時間の流れを感じさせる。

フライパンで卵を焼く音が、台所を占める。

そんな中、不意に義之が口を開いた。

 

「俺、夢を見たんだ」

 

「夢?」

 

なんでここで夢の話なのだろうか?

あれか、俺の力で夢占いでもして欲しいのだろうか?

 

「俺は光雅の秘密を知っちまったから、交換として、俺もちょっとした秘密を教えてやる」

 

「お前、なんか隠してるのか?」

 

「ああ。俺な、他人の夢を見ることが出来るんだ」

 

「それ、すげーな。その夢に干渉することが出来るのか?」

 

「いや。全く出来ない」

 

ありゃ、そんな力に何の意味があるのか。

いや、他人の夢を見るって事は、対象の考えていることの断片を知ることが出来る。それはすなわち、対象が悩んでいたり苦しんでいたりする時、それを解決する時のヒントにもなり得るのかもしれない。

 

「ふぅん、でも、他人の深層心理を拝見するってのは、便利なモンじゃないのか?」

 

「ぜんっぜん。そもそも誰の夢に入り込むかランダムなわけで、誰の夢かわかんないし、更にもし分かったとしても夢なんて決まって無茶苦茶でストーリー性がなくてご都合的な展開でカオスなものじゃん。だから、別にこれが便利ってことでもない」

 

それでも、今の会話からして、その能力の概念を俺が理解していないと、俺にとって全く理解できない会話になるのは間違いないのだろう。

 

「でも、1回だけ、多分お前の夢を見た」

 

「ほう。で、どんな夢だった?」

 

まあ今の流れからしてそうなるだろ。

でも、そんなにシリアスな雰囲気を出しての内容って、俺のどんな夢を見たんだろうか?

 

「多分、お前が小さい頃だ。お前には、兄貴がいたんだ」

 

なるほど、俺の前世での思い出の夢か。

 

「その兄貴は、お前を置いて、1人で家を出ていったんだ。自分を蔑んでな」

 

「……」

 

「お前、前の世界から、随分大変な思いしていたんだな。同情でもないし、力になれるとも思わない。それでも、何があったのか、俺たちに話してくれたら嬉しい」

 

そうだな。

前世でのことも、この旅行のうちに話しておくとしますか。

ちょっと辛気臭い雰囲気になりそうだけど、俺もみんなのことをもっと知りたい。

そして、その代償に、俺は自分のことをみんなに知らせないといけない。

今まで、俺は自分のことを隠し過ぎた。

それは、俺自身が、みんなと距離をとっていたということになる。

そんなんじゃ、本当の信頼関係は結べないと思うんだ。

美夏も、自分の足で1歩進むことが出来た。

今まで辿り着けなかった境界に、自分の力で向かっていった。

その手助けをしたのは、俺である自覚もある。

だから、そんな風にエラそうに他人をリードするのなら、自分も変わらないといけないと思う。

 

「旅行先で、落ち着いたらみんなを集めて話すよ。現場に居合わせなかった、ななかにも」

 

「そっか」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

さて、音姉たちを食卓に集め、早々に朝食を食べ、そして集合場所である芳乃邸前で待機。

それで、まずは今回の旅行の第一人者である杏が到着。

 

「杏、早いな」

 

義之が杏に声を掛ける。

 

「おはよう、が先じゃないの?……まあいいわ。責任者が遅く来る集団なんて最低でしょ?」

 

「社長出勤ってのはどうなんだ?」

 

「社長なんて、一部の会社ではいてもいなくても一緒じゃない」

 

「いや、何その偉い人全否定発言……」

 

そうやって余計な会話をしていると、多分このメンバーの中で一番盛り上がっているんじゃないかと思われる人が登場した。

 

「みんな、おはよーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

「茜、近所迷惑」

 

「あっ、ごめんごめん」

 

同じタイミングで、美夏も集合した。

 

「おはよう、杏先輩、光雅、桜内、花咲、由夢、朝倉先輩」

 

「おはよう、天枷さん」

 

「おはようございます」

 

挨拶するなり、美夏は妙にそわそわし始めた。

どうしたんだろうか?

 

「みんな、これから、よろしく頼む――じゃなくて、よろしくお願いします」

 

「別に改まる必要もないだろ。お前らしくない」

 

「そ、そうか?それなら……」

 

ばつが悪そうに、その場で俯く。

そこで、何故か由夢が少し唖然としているのが分かった。

 

「……ところで光雅兄さん、天枷さんと仲がいいのは分かりましたけど、いつの間に名前で呼び合う仲に?」

 

「確かに」

 

弟妹コンビがいぶかしく思っているとろを、杏が口を挟んだ。

 

「あら、そんなこと、まず光雅からして誰でも名前で呼ぶことは普通でしょ?それと、美夏も光雅を信頼できる人間として認めた。それだけのことじゃない?私だって下の名前で呼ばれてるし。そうでなければ、――ねぇ?」

 

「ねぇ、ってなんだよ……?」

 

「あ、杏先輩!べっ、別に美夏は認めてなど――」

 

「天枷さん、相変わらず態度だけは強気だね、可愛いっ♪このっつこのっ♪」

 

「コラッ、やめろ、花咲っ!」

 

やっぱり美夏でさえこの2人のいじりには勝てないようだ。

相変わらずの風景で何よりである。

そして、渉の登場。

 

「いやー、4時起きなんて久しぶりなもんだから、朝から気持ちがいいねぇ~……」

 

「渉、おはよう」

 

「おーう、光雅ちゃん、おはようさんっ!」

 

そして、更に時間が経って小恋とななかが。

……って、ななか、半分寝てるが大丈夫か?

 

「んー……」

 

「なぁなぁかぁ、ほら、起きてよー……」

 

「んあ゜ー。だいじょー……」

 

『ぶ』が言えてなかった。マジで大丈夫じゃないっぽい。

 

「ななかって、こんなに朝弱かったっけ?」

 

「そーなんだよね……」

 

小恋も朝のななかには大分苦労したらしい。

さて。あとひとり。

 

「杉並は?」

 

「俺ならここにいるが?」

 

「「ひゃっ!?」」

 

義之が確認すると、杉並が音姉と由夢のすぐ背後から姿を現した。

 

「お前、いつからそこにいた?」

 

なんかもう、その質問は聞くだけ野暮ってモンじゃないか?

どうせ返答は決まってるんだし。

 

「俺ならずっとここにいたぞ。そんなことより、今からみんなにはこの杉並特製旅行のしおりを進呈しよう」

 

杉並が冊子を全員に配布する。

 

「度々悪いんだが、こういうのは事前に配っておくものじゃないか?」

 

「なに、気分の問題さ」

 

「さすが杉並、なかなかの出来ね」

 

「あなどれないなぁ~」

 

「ほらぁ~、起きてよぉ~……」

 

「んん……」

 

とりあえず、全員揃ったことなので、これからみんなで新しい世界に向かうのである。

杏が全員を仕切り、全体に指示を通す。

バスに乗るために、旅行会社に指定された場所にみんなで向かった。




俺は思った。
なんで誰も俺のスノボに突っ込んでくれないの?
興味ないの?

次回『いざ、雪原へ』








最近『Ⅲ』のほうも書いてるんですが、どうも1人称より3人称のほうが書きやすいような気がする。
そこで、聞きたいんですが、次の章辺りから、雰囲気を残すために1人称のまま通すべきか、それとも3人称に変えて執筆するか、どっちがいいですかね?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。