D.C.Ⅱ.C.E. ~ダ・カーポⅡ チェンジエンド~   作:Masty_Zaki

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バスの中での闘争は熱を帯びる。
手の中にある札を上手く駆使して、他を欺き、蹴落とす。
状況をひっくり返しては、ひっくり返され。
昼食が懸かった彼らの目は、本気だった。


いざ、雪原へ

杉並の旅行のしおりに全員でざっと目を通して、とりあえずななかを起こして、初音島から本島に渡るバスに乗るためにバス停まで移動する。

 

「あはは~、なんか、ごめんね……」

 

「ななかってそんなに朝弱いのか?」

 

「まぁ、大体いつも遅刻気味だからね~」

 

「望んでなくとも一応お前は有名人なんだからさ、間違ってもガチな遅刻だけはするなよ?」

 

だが、少なくとも俺には覚えがあった。

アレはクリパ前日の雪の降った日だったか。

 

「でも、光くんもこないだ遅刻したよね?」

 

ほら、やっぱり墓穴掘っちまった。

 

「うっ……」

 

「まぁ、ねぇ?」

 

自分のせいであるななかは、音姉のその一言にえらく反応した。

 

「はぁ……」

 

続いて小恋が溜息をつく。

 

「まぁ、あれは俺が起きられなかったのも悪いんだけどさ、音姉が俺を置いていったのも悪いって言うか。起こしてくれりゃ遅刻するのは小恋とななかだけだったのに……」

 

「ふぇ!?ちょっと、そんな他人事にしないでよー!」

 

と、小恋が叫び始めるので、近所迷惑だと思って、義之にバトンタッチさせよう。

 

「そもそも義之だ。お前だけは信じていたのに……」

 

「はぁ!?俺のせい!?お前だって俺起こさないことよくあんだろーが……」

 

「いや、それでもお前遅刻しないじゃん。いいじゃん。お前は出来る立派な子だ」

 

「別にそこまででも……」

 

――と、何故由夢は自分の掌を見つめているのだろうか?

 

手がかさかさなのか?

ダメだろ、女の子が肌の手入れを忘れてちゃ。

 

「光くん!」

 

「はいっ!?」

 

「遅刻はダメだよ?」

 

他人に擦り付けても音姉はその本質っつーか、根本の問題を忘れていません。

流石は生徒会長というか。

そんなことより、誰も俺のスノボに突っ込まないんだけど。

気にされてないの?

お前が何しようと勝手だろってか?

舐めんなよ?

俺の華麗なる空中トラップを見てそのスルースキルを持って生まれてしまったことを後悔するがいい。

 

……いえ、マジで寂しいです。

『それスノボ?うわっ、お前出来んの?』的なリアクションホントに欲しいです。

 

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さて、現在バスに乗ったところです。

旅行で乗るバスって、公共交通機関のバスと比べて座り心地が格段にいい。

快適な旅行をするのに、旅行会社もちゃんと考えてくれる。

たかが学生数人だってのに、一切の妥協をしないのは感心する。

 

「私、お菓子持って来ましたけど、皆さん食べます?」

 

「さっすが由夢さん!気が利くぅ~!」

 

由夢がバッグから取り出したお菓子の袋を全体に回して、お菓子が全員にいきわたるようにする。

俺たち野郎はとりあえずポテチのファミリーサイズ(コンソメ味、ここ重要)ゲット。

ちなみに、席順は。

 

小|な|茜|音|由

美|杏| |義|光

 | | |杉|渉

 

~~~~~~~~~

~~~~~~~~~

 

運転席

 

となっておりまする。

そして俺らは義之の前のテーブルを引っ張り出してこれから野郎同士でトランプゲームをしようと。

 

「まず何やる?」

 

「大富豪と洒落込もうではないか?」

 

「よし!んじゃ、カード配っていくぞ。任せた光雅」

 

「俺かよ。まぁいいや」

 

義之からトランプを預かり、軽くシャッフルをする。

その手捌きをちょうど反対サイドの美夏が見ていたようで。

 

「おお、そのカードの束の扱い、どうやってやるのだ?」

 

「ああ、これね?」

 

俺がしたのは簡単なリフルシャッフル。

デックを二つに分けて指で順番に弾いて重ねていくシャッフルの仕方を言うのだが、どうやらマシンガンシャッフルとかショットガンシャッフルとか間違った名前で覚えられてることが多い。

マシンガンシャッフルは、デッキを2つに分けて、それを両手の中で順海老反りに曲げて中央の机上に向けてスプリングし、、机の真ん中でカードを混ぜる方法を指す。

この誤解は、遊○王のカードから生じるものらしいけど、まぁそんなことどうだっていいか。

 

「やってみるか?」

 

「いいのか?」

 

すると、美夏の隣の杏がそれを静止した。

 

「やめておきなさい。あれは手の小さい私たちじゃ出来るような代物じゃないわ。バスの中でカードをばら撒いたら、あそこの変態が地面を這い蹲ってはしたないことをしでかすに違いないわ」

 

ちらっと、渉を見る。

しばらく沈黙があって。

 

「しっ、しねーよ!こんなところでするわけねーだろっ!」

 

「今の間は一体なんだ?」

 

「誠に板橋らしい間だったな」

 

「だめだこいつ早く何とかしないと……無駄か……」

 

「ちょっと!?そこまだ諦めないでっ!?」

 

諦めるなってことは、自分がどうしようもないというのは納得しているのだろうか?

まあそんなことどうだっていいや。

さて、始めようか、大富豪。

 

……。

 

第8試合目終盤。

 

「『8』で流して、スペード、クラブ、ハートの『5』!ほら、この終盤で出せねーだろ!」

 

「ふむ、パス」

 

「あーもー、3枚なんて出せるわけねーだろ……」

 

この勝負、もらったぜ!

 

「行くぜ!」

 

ダイヤ、クラブの『A』にジョーカー!

そして『2』は俺の手元に1枚、あとは既に出尽くしたから再び俺のターン!

『8』で流して切る、続いて『2』を出し、更に俺のターン!

『K』をダブルで出して、どうだ……?

 

「無理だ、パス」

 

「パスだ」

 

「パスパス」

 

終わり。

『4』をダブルで出して勝ち抜け。

 

「ほほう。流石は同志弓月。華麗な戦術であった……」

 

「いやまあ、適当に振っただけなんだけど」

 

そしてその後続いた結果、順位は、

1位 光雅

2位 渉

3位 杉並

4位 義之

となった。

 

「まだまだだな」

 

「くっそーっ!」

 

ちなみに、俺の勝利は、大富豪3回、富豪2回、貧民2回、大貧民1回だった。

さすがに杉並に革命祭りで翻弄されてはこっちも動くに動けない。

 

「次ババ抜きしようぜ!」

 

……。

 

ゲーム終盤。

杉並は既に1抜けしている。

そして俺も。

 

「おーっし……。これだッ!――よっしゃ、アガリ!」

 

「ちっくしょ……。ほら、それよこせ……」

 

義之が俺の最後の一枚を取って、俺の持ち札ゼロ。

ここからは義之と渉の一騎打ちだ。

そして……。

 

……。

 

「――さて、こうなったからには言うことは1つ。俺の昼食は、ハヤシライス大盛り!」

 

義之に衝撃走る。

渉に衝撃走る。

 

「杉並ィ……!」

 

「杉並ッ、てめッ!」

 

「ならば俺はそれにチキンフライを追加な」

 

「では俺はオプションにコンソメスープをつけようか」

 

この会話はというと、このゲームで負け残った奴は男全員分の昼食を奢る、という罰ゲームから来たものだ。

渉は義之のカード1枚を掴み、引っ張る。

しかし、義之がそれを拒むかのようにそれを握って阻止している。

明らかにアレはジョーカーじゃない。

 

「思い出せ渉っ!お前の失敗の全てはその考えの浅さにあるということをッ!」

 

「バカ言え!俺は今まで直感で生きてきたし、これからもその直感だけを信じて生きていくんだよ!だからさっさとその手を放しやがれっ、このッ!あっ、義之汚ねぇぞ!」

 

「考え直せ、俺はお前に人生というものをだな――」

 

「大きなお世話だ!」

 

勢いをつけて一気に札を引っ張った。

そして、その札を見て渉は歓喜する。

 

「よっしゃー!義之昼飯奢りな!」

 

「ちっくしょー……」

 

これで義之の昼飯代はいくらになるのだろうか。

さて、もうそろそろサービスエリアかな。

一旦そこでゆっくりしますかねぇ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「はい、ここで一旦休憩です。30分後にはまたバスに戻ってくるように」

 

30分か……。

やけに長いな……。

ゆっくりするのにはちょうどいいか。

さて、ちょっとトイレでも行ってくるかな。

 

~義之side~

 

ふぅ~、ようやく休憩か。

長かったし、財布が大変なことになる未来は確定するし、散々です、はい。

高速道路ということなので、いつもより高い高度の空気、周りが山々に囲まれた場所なこともあって、空気が綺麗だ。

 

「すぅ~、はぁ~」

 

「義之兄さん」

 

声がするほうを見ると、由夢がこっちを見ていた。

 

「どうした?」

 

「お店とか、寄らないんですか?」

 

確かに、建物の中も温かくていいんだろうけど、今はしばらくこの空気を満喫したい。

 

「いや、いいよ」

 

「そ、そうですか。用は、足しておいた方がいいですよ」

 

そういうと、由夢は建物のほうへ足を運んでいった。

入れ替わりに、天枷が建物から戻ってきた。

 

「なぁ桜内、あの店の中にカレーやらうどんやら食べ物がいっぱいあったんだが、あれは食べてもいいのか?」

 

妙に興奮気味に話す天枷。

初めて初音島から出たのに興奮を覚えているんだろうか。

 

「ああ。でも、時間までには戻ってこいよ」

 

「分かってる!行ってきていいんだな?」

 

すると、同じく建物から戻ってきた渉が、興奮気味の天枷に気がつく。

 

「おっ?天枷もこれから食事ってか?」

 

「ああ、そうだが、それがどうした?」

 

「何を隠そう、サービスエリアの大食い王と呼ばれた俺様に、食いっぷりで勝てる奴などいないのだよフッフッフ!」

 

「な、なんだとっ!?美夏が貴様ごときに負けるはずがなかろう!勝負だ!」

 

「そうこなくっちゃな!それじゃ、さっさと行こうぜ!」

 

「望むところだ!」

 

出会った当初は渉までも完全に無視されていたというに、今となっては少なくともこのメンバーの人間相手なら気兼ねなく接するようになった。

全ては、光雅の努力の賜物か。

いや、あいつはきっと、努力なんてしていない。

ただ友達を作ろうとしただけなんだ。

何も難しいことをしてやったわけじゃない。

だから美夏もその純粋な想いに惹かれて、人間に対する考え方が変わってきているのだろう。

あいつには、本当に感謝しっぱなしだな。

俺は、2人で足並みを揃えて食事コーナーに向かっているのを見送っていると、続いては小恋に声を掛けられた。

 

「ねぇ、義之」

 

「ああ、小恋、どうした?」

 

「2人とも、楽しそうだね」

 

「まぁ、そうだな」

 

うるさくしなければいいんだけど。

あの2人に言ったところで無駄なんだろうけれども。

 

「天枷は初めて島を出るからなぁ~」

 

「えっ、でも義之美夏ちゃんって外国から来たって……」

 

しまった、ついうっかり口が滑ってしまった。

バレてしまったら光雅とか水越先生に殺される……。

 

「ああ、いや、1度初音島に来てからって言う意味だよ……」

 

上手く誤魔化せたか……?

 

「あ、そっか。そうそう、トイレとか、行っておいた方がいいんじゃない?」

 

「ああ、いいよ。どうせあと1時間程だろ?残りの時間は俺寝る予定だし、大丈夫だろ」

 

しかし、小恋の顔は真剣みを帯びた。

 

「分からないよ。もしかしたらバスが渋滞に巻き込まれるかもしれないじゃない。それに、冬で寒いんだから、いつもよおしてもおかしくないし。バスが道を間違えてしまうことだってあるかもしれないよ?」

 

「うっ……」

 

そう言われてみれば、急にトイレに行きたくなってきたような気がする。

意識したらこうなるんだな、本当に。

 

「ち、ちょっと行ってくる……」

 

俺はトイレに一目散に駆けていった。

 

~光雅side~

 

さて、時間になったので土産屋から引き上げてきた。

どうでもいいことだが、ここは初音島にも近いところなので、枯れない桜をモチーフにした、桜のご当地キ○ィが販売されていて、俺もなんか気に入った。

買おうかと思ったけど、まだそういう段階でもないと思ったんで、やめておいた。

そもそも、初音島ってうちの島だし。

買っても意味ないし。

渉と美夏が満足そうにしているのだが、間食でも食べたんだろうか。

とにかく、もう少しで目的地だ。

朝も早かったので、残りのバスの時間はゆっくり寝るとしよう。

 

「それでは、出発」

 

杏の声で、バスが目的地に向かって出発した。




信じて欲しいなら、まず自分が信じることだ。
逆もまた然り。
信じたいなら、信じてもらうことで自信がつく。
少女を導いた少年は、少女を説く。

次回『ゆっくりと羽を伸ばして』
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