D.C.Ⅱ.C.E. ~ダ・カーポⅡ チェンジエンド~ 作:Masty_Zaki
純一「かったるいから私抜きで行ってきなさい」
さくら「しょーがないなー……」
あれから2年とちょっと。音姉もだいぶ明るくなり、おかげで朝倉家の日常はすっかり明るくなった。
気が付けは音姉は俺の周りをうろちょろついてくるようになって、何だか妹みたいだとそんなことを呟いてみれば、咄嗟に怒ったような表情をつくってぷりぷりと『お姉ちゃんなんだよ』なんて言い出す始末。
一方俺は毎日欠かさず魔法の訓練を行い、ある程度その使い方と長所短所を把握することができた。体力・精神力を使うというのは比喩でも何でもなく、実際に魔法を使ってみれば疲労は付き纏う。しかしその消費があってこそそれに見合う魔法が使えるわけで、概念さえはっきりしていれば、実際に存在しないものも創造できる。強いて言えば、ビームみたいなものとか。俺個人の問題にしても、家族の問題にしても割と順調に進んでいた。
……のはいいんだが。
「えへへ~」
「ふ~んふふ~ん♪」
「……むぅ」
「……」
えと、どうすればよかとですか?
右手には音姉が嬉しそうにしがみつき、左手には由夢が、俺の左手と、義之の右手をとって鼻歌を歌っている。さくらさんは、音姉の横から、うらやましそうに俺の手をまじまじと見ている。なんで?
「ねぇ音姫ちゃん、そろそろ離れてくれないと、光雅くん困ってるよ?」
「……光くんは、いやなの?」
光くんはそんなこと思ってないよね?とでも言いたそうな目で、そんなことを訊いてくる。いやぁ、あはは。
嫌ではない。嫌ではないんだけど、別に子供だから周囲の目を引くわけでもなし、問題は些細な事なんだけど、まず歩きにくい。次にさくらさんからの熱烈な視線がだんだん強く鋭く。
「……いや……まぁ、その、嫌……ってわけじゃ、ないけど……」
「なら大丈夫!」
「……」
な……なんかさくらさんからすげぇ殺気みたいなのを感じるんですけど。
音姉、音姉。そんなにしがみつかないで!なんか嫌な予感しかしないんだけど!
何とかこの状況を打開しようと、義之に視線を向ける。主にどうにかしてくれという懇願の視線。しかし義之は憐れみを伴う苦笑いで暗にどうにもできないと言っている。どうしようもないんですかそうですか。
実は今、純一さん――音姉と由夢のお爺さんなんだけど――以外でお出かけしております。え?何で純一さんいないかって?……まぁ、ご想像にお任せします。あの人優しくて頼りがいがあるんだけどかったる……何でもないです。
あぁ、空が青いな~。
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お昼ごろ。
現在地、とあるファミレス。
休日だからなのか、お客さんはそれなりに多く、お店で働く人たちも忙しそうにあっちに行ったりこっちに行ったりと店の中を行ったり来たりしている。
俺たちは店員さんの案内で禁煙席のテーブルに座り、子供3人はお子様ランチを注文。雑談に花を咲かせております。
「義之、お前宿題やった?」
「宿題?なんかあったっけ?」
だろうな……。
義之は基本的にあまり重要ではないことは綺麗さっぱり忘れてしまうような人間だ。重要なこともたまに忘れるけど。というより宿題を重要じゃないと分類するあたり義之の思考はどうなってるんだろう?
「算数の復習プリントと、漢字練習ノート1ページだったろ?」
「う~ん?なんもやってね」
ちなみに俺は死ぬ前は中学3年だったため、その記憶はそのまま残っているし、勉強は苦手ではないため、小学校の勉強なんて面白くもなんとも無い。
だが中学校に入ったら英語がある。あれはだめだ。単語が多いから覚えづらい。どうして日本人が英語を学ばなければいけないんだ!?日本人は日本人らしく自分の国の言葉を愛し敬うべきではないか!?――なんて使い古された戯言を声高らかに叫びたくもなる。
「だめだよ、義くん。宿題はちゃんとしないと」
「わたしはやったよー」
「さすが由夢ちゃん、えらいね~」
由夢の嬉々とした笑顔に、さくらさんが褒める。
俺と義之は3年生、由夢は2年生、音姉は5年生である。音姉はお姉ちゃんぶるのが好きなようだ。責任感も強く、自分が魔法使いであるのを自覚しているのか、プライドもある。というよりはこの場合お姉ちゃんとしての威厳を知らしめたいのだろう。
「光雅はやったの?」
「もち。算数大変だったぞ。問題数多かったし」
「うっそ、頼む、見せてくれ!」
「義くん!」
音姉の喝。責任感の強い音姉には、弟の素行不良は許せないらしい。
「ごめんなさい……」
音姉は怒ると怖い。
お姉ちゃんモードに入ると、俺にも容赦がなくなるもんだから、自然と日常生活が模範的なものになってしまう。朝起きる時間、部屋の整理、身だしなみなど、彼女には徹底的に正された。
お、やっべ、トイレいきてぇ。
「ちょ、俺トイレいってくる」
「「いってらっしゃ~い」」
音姉と由夢が返事を返してくれた。
事件が起こったのは、その後だった……。
~???side~
なんでこんなことになっちゃったんだろ。
私は家族でお出かけして、お昼にこのファミレスに入ったの。お父さんも、お母さんも、私も、笑顔だった。
休日だから家族サービスということでお父さんにお願いして、お父さんと、お母さんと、それから私の3人の新しい思い出をつくろう、そんな楽しいひと時。
でも、ご飯を食べていたところに出入り口から入ってきた10人くらいの男の人たちのせいで、その笑顔はなくなっちゃった。
――バンッ!!バンッ!!
男の人の1人が鉄砲を2回撃った。聞こえるのは、男の人たちの罵声、お客さんたちの悲鳴、泣き声。
「ここは俺たちが占拠した!テメェら全員俺たちの指示に従ってもらおう!」
「オルルァ!テメェら全員店の端に寄りやがれ!こっちだこっち!」
……。
しばらくの沈黙。
声を上げれば殺される、それくらいの怖い空気が肌に染みついて気持ち悪い。おまわりさんが助けに来てくれるのかな?
「なぁ、念のためにこの中から1人人質取っといたほうがいいと思うんだが」
「そうだな。なら、子供がいいだろ。暴れないし楽だし」
「了解」
悪い人同士が何か相談事をしている。
何か嫌な予感がすると思っていたら、そのうちの1人がこっちに向かって歩いてくる!
「お前、こっち来い!」
男の人の集団の1人が私を指名してきた。……怖いよ……!
「やめろ、この子だけはやめてくれ!人質には私がなる。だから――」
「うるせぇ!黙ってろ!」
男の人がお父さんを蹴り飛ばす。
どれくらいの力が込められたのだろう、お父さんは一蹴りで吹き飛ばされ、壁にぶつかって倒れ込んだ。私はその光景に怖すぎて悲鳴も上げられず、泣いてしまいそうなのを必死に堪えることしかできなかった。
「ぐはっ!」
「「お父さん!!」」
「お前はこっちだ」
悪い人の腕がこっちに伸びて、私の体を抱え上げる。そのまま私と、お母さんとお父さんを引き離し、私は1人になってしまった。
お願い……誰か助けて……!
そんなことを考えていると。
――がちゃっ。
トイレから1人私と同い年くらいの男の子が。近くには犯人が1人。
「おおっとぉ。まだ1人いやがった」
犯人は懐から鉄砲を取り出すと、男の子に向ける。……お願いやめて!これ以上誰かを傷つけないで!
「こいつは血祭りにあげてやる……」
笑ってる。悪い人が男の子に銃を向けて笑ってる。まるで誰かを殺すことを楽しんでいるように。
でも、男の子は動じない。そればかりか――
「はぁ~、メンドクセェ……」
そんなことを言って、明らかに男の人たちを挑発していた。
~光雅side~
ふぅ~すっきりしたぁ~。用を済ませて手を洗っていると――
――バンッ!!バンッ!!
なんか音が2回。すっげぇ静かになった。
セレモニーかなんか始まったのかな?
そろそろ注文した飯来てんのかな?なんて考えながらドアを開けて外に出ると、
「おおっとぉ。まだ1人いやがった」
何々?何が起こってんの?ふと顔を上げると俺の側頭部に何か固い筒のようなものが突きつけられいた。
この野郎、銃持ってやがる。ってか、……俺狙ってんの?
「こいつは血祭りにあげてやる……」
あ、俺殺されるんだ。いや違うか、俺を殺そうとしているんだ。
これは、差し詰め強盗って奴か。しゃ~ね~なぁ、俺は俺のするべきことをするだけ。誰も傷付けず、誰も苦しまない、1人残らず助け出す。
「はぁ~、メンドクセェ……」
挑発的な笑みを浮かべてやった。犯人は10人といったところか。
わざと全員に聞こえるように挑発してやったら、気の短そうな奴が数人こちらを振り向いた。
「あぁ~?このクソガキ、自分の状況分かってんのか?」
ゲス顔がうざい。うざすぎる。流石に腹が立ってきた。
状況が分かってないのはそっちの方だ。こんなことをしでかしてただで済むと思ってんのか?
「ほら、死ねよ」
そんな冷酷な言葉を口にして、犯人の1人が引き金に指を掛ける、でもな……
「おっせぇんだよ!!」
銃声が鳴り響く前に目の前のクズを手加減なしで殴り飛ばしてやった。犯人はそのままぶっ飛んで、店の対角線上に飛んでいった。
俺は次の行動を敵に起こされる前に椅子の椅子や仕切りの死角を上手く使いながら移動する。神様みたいな人から、魔法を使うに堪えうるくらいの肉体と身体能力を持ったこの身体は、全速力で走ると多分車くらいは速度が出る。
「な、何が起こっ――」
「ウッセクズ!」
冷静ではない、下手に刺激すると暴れ出しそうだった男を殴り飛ばす。
すると犯人の1人がマシンガンのようなものを取り出した。
……なんでそんなんもってんだよ。
「くたばれクソガキ!」
犯人が連射を始める。薬莢とものが焦げたような匂いが部屋に充満してきて、不快感が込み上げてくる。
まぁ銃弾こそ俺には当たらないが、俺がよけた流れ弾が他の客に当たらないように移動する。更に放たれた弾丸の跳弾にも気を付けなければならない。
辺りから聞こえるのは悲鳴。待ってろよ、全員まとめて助け出してやる!
「チッ!すばしっこいやつめ!」
犯人がリロードの動作に入る。これを待っていた!
俺はステップで直角にターンし、力強く地面を蹴り出して一気に距離を縮める。
だが、犯人のリロードは思ったより速かった。銃の扱いに慣れてんのね。
犯人がマシンガンを向けると同時に、俺は地面に落ちている、ハンバーグの鉄板プレートを拾う。耐久性としては心許ないが、弾を逸らすくらいには十分に使える。
すかさずそれを盾にし、狙撃をしのぎながら銃を破壊、犯人の顔面に蹴りを入れる。そのままその男を踏み台にして跳躍し、近くの野郎を2人撃破。
残り2人。近いのは、女の子を人質にとってるあいつか。
すると背後から、1人の少年がオレンジジュースの入ったガラスコップをもってこそこそしている。
次の瞬間、その少年――義之は、中身を犯人の顔面にぶちまけた。
「ぶほっ!!」
「光雅!いまだ!」
「ナイス義之!」
犯人の顎にアッパーをお見舞いし、女の子を抱え、救出。泣きそうになっていたのを我慢していたのか、顔が赤い。
「うわっ、なにすんだ、はなせ!」
背後から聞こえてきた焦りの声。しかしその声はあまりにも聞き慣れ過ぎていた。
背中に不安を感じながら振り返ると義之が最後の1人に捕まって、銃を突きつけられている。
チッ!クズが!
「義之、待ってろ、今助けるからな」
「テメェ1人で何ができる!このクソガキ!」
どいつもこいつもクソガキクソガキ……。他の言葉を知らないのか。
誰1人として死なすわけにも、傷つける訳にもいかない。ここでカッコよく義之を助け出して、この事件を解決してやる!
「ああ、すぐにこの茶番を終わらせてやるよ」
「やれるもんならやってみろ!」
左手に神経を集中させる。イメージは鉄、具現は敵を拘束し封じる鎖。そしてその鎖に、ありとあらゆる危険を排除する、凶悪な力を強制的にシャットダウンさせる力を。
そして一気に解放させる!
「≪能力束縛(パワーオフ)≫!」
俺の左手から鈍く金属光沢を放つ一連の鎖が高速で射出される。まぁ、ステルス性能も魔法で追加しているから俺にしか見えないんだけどね。
鎖が犯人の体を捉えると同時に、犯人は身動きが取れなくなる。引き金にかかっている指も動かない。
俺の2つ目の能力、≪能力束縛(パワーオフ)≫は、自分の現在の状況に対して害のある物に触れることで発動でき、それを無力化することができる。そして≪魔術創造(マジカルクリエイト)≫と組み合わせることで、鎖として具現化し、遠隔操作を行うことができる。
俺はこの力で『殺意を込めて銃を義之に向けている犯人』という驚異に対して、それを無力化すべく≪魔術創造(マジカルクリエイト)≫で創造した鎖を≪能力束縛(パワーオフ)≫でコーティングし、それを遠隔操作で射出することで相手を拘束し、動きを封じたということだ。無論相手の身体が動かせないのはもちろん、こいつが持っている銃も、他人が握ったところで使い物にならない。
「勝負あり、だな。ほら、義之、こっち来い」
「あ、ありがと」
「な、何が起こってやがる……!」
不可解な現象に恐怖とそしてその感情に抗うため怒声を上げる男を尻目に、俺はそっと皮肉を告げる。
「さぁ、何が起こったでしょう?」
その瞬間、背後から強い殺気を感じた。
振り向いたら、潰した男の1人が人質だった女の子に銃を向けている。全く往生際の悪い……!
俺は右足に全力を込め、一直線に飛び出し、一気に女の子に接近する。
だが、犯人の発砲は速かった。
俺は女の子を抱きすくめると同時に、魔法であらゆる衝突物の進行方向を変える≪反射鏡(リフレクター)≫を瞬時に創造する。
弾筋を変え、自分が下になるように近くの客席に滑り込んだ。
「……大丈夫か?」
「う、うん……」
まだ顔が赤いぞ?やっぱ風邪かな?
なら、さっさと終わらせる。流石に面倒だし、やり方に腹が立ってきた。
再び≪能力束縛(パワーオフ)≫を使用し、男の銃を使用不能にする。俺は横たわっている男の頭の前に立ち、そして殺意を込めて睨みつける。
「ひぃぃぃぃ……た、助けてぇぇぇ……!」
周りから見たらこれ、大の男が子供に見下されて命乞いしてる光景だよな、これ。
命乞いだろうがなんだろうが、こいつらのしたことは見逃すわけにはいかない。ここでしっかりと灸をすえておいてやろう。
「……助けて、だと?」
さっきまで自分が誰かを傷つけ苦しめる行為をして、女の子だけは助けてほしいと言ったであろう両親を足蹴にし、あまつさえ人が大勢いるのにその中で銃を乱射したこいつらが白台詞だろうか。ふざけんなよ。
「おいテメェ、ちょっと歯ァ食いしばれよ……」
「……いぃ、いいいぃぃ……ぃぃいぃい……!」
「そこで少し……」
ゆっくりと足を上げて、狙いを外さないように頭の上にセットする。
「頭冷やしやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
轟音が鳴り響く。砂埃が待って一時視界が悪くなるが問題はない。
犯人の頭は、床に埋まっていた。
周りからは歓声や拍手、安堵のため息、泣き声が聞こえる。
俺は急いで足を動かし、腰が抜けて座り込んでいる女の子に話しかける。
「大丈夫?」
「え、えと、ありがと……」
その時――
「光雅!」
「光雅くん!」
「光雅お兄ちゃん!」
「光くん!」
家族の皆様が俺のことを呼びながら俺に詰め寄ってきた。
心配、というより怒ってるだろうか。事件解決しちゃったとはいえ、危険だったことに違いはないし。
「光くん、無茶しすぎだよ!みんなずっと心配してたんだからね!」
「ごめんなさい……」
確かにただの子供があそこまでやれば、奇跡だとしても無理したと思われても無理はない。というよりむしろ魔法の存在を知らない由夢や義之にとって、ホント何が起こったのかまるで理解できていないに違いない。俺が無謀にも突貫しに行ったくらいの認識だろう。
「「「じゃあ、無茶する人にはお話が必要だから、ちょっとこっちおいで」」」
あ、これアカンやつや。急いでここから逃げようと踵を返そうとして――もう遅かったらしい。
既に俺の腕を3人がしっかりと握り締めていた。
「ちょ、ちょっと、引っ張らないで!ってか誰か助けてぇ~~~!」
「あは、あははははは……」
~???side~
おまわりさんたちのお話を聞いて、そしてお父さんとお母さんがお話をして、そして全部全部終わった後、わたしは思い出に耽っていた。
あの恐ろしい事件をあっという間に解決してしまったあの子、光雅くんっていうんだ……。かっこよかったなぁ。
部屋の中を颯爽と飛び回って、誰も傷つかないように悪い人を全員やっつけて、まるで、正義のヒーローみたいな人。あんな人が世の中には本当にいたんだ。
「あら、あの子のこと、かっこいいって思ってるんでしょ?」
「ふぇ!?」
「まぁ、またどっかで会えるだろ。そのときにちゃんと恩返ししないとな」
「う、うん、そうだね……」
その時が、本当に来ればいいな。
その時には、友達になって、一緒に遊んで、そして――
「さあ、ななか、帰りましょ」
「……うん!」
その男の子の戦う姿を思い出す。ああして、こうして、そして私をだっこして。
私を抱いて滑り込んだ時、あの子の瞳が蒼くなったの、綺麗だったな。
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~光雅side~
3人からのお説教は2時間にも渡りました。
面倒なことにならないようにと別の店に逃げ込んで正座をさせられ長時間、もう足腰持たないとです。
今日ってホント厄日だよな……。
「光くん、ちゃんと聞いてる?」
「は、はいぃ!」
俺一応事件解決した人なんだけど、どうしてこう上手く行かないんだろうな……。
俺の魔法は――。
みんなのために――。
――さて、そろそろ始めるとしますか。
次回『三日月の光る夜に』