D.C.Ⅱ.C.E. ~ダ・カーポⅡ チェンジエンド~   作:Masty_Zaki

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いぃぃぃぃやっほおおおおおおおおおおおおおおおおう!!!

はっ、はっ、はっ。

いよっと。

そりゃっ!


雪の中の猛練習

このスキー場、なんと恐ろしいことにスキーとスノボの区域分けがなされていない。

まぁ、俺としては1人スノボをやっていてもみんなと離れることはないから好都合だけれども。

 

美夏と並走しながら、無事に麓まで降りる。

 

「なんというか、流石は光雅だな」

 

「だろ」

 

2人で笑いあって、美夏はふとゲレンデに向き直る。

 

「なぁ光雅、後ろの連中はあんな風に転げまわって全身に雪を浴びても楽しそうにしているのだが、スキーの楽しみの本領というのは、ああすることなのか……?」

 

この質問には、美夏にとって深い意味があるようだ。

下手くそな連中が転びながら楽しそうにしている。

一方で、同じく初心者であるはずの美夏は、渉たちと違って、完璧にスキーイングをこなし、転ぶことなく麓まで駆け下りた。

その決定的な差異に、困惑しているのだろう。

 

「確かに、上手くない人が転びながら上達していくのは、とても楽しいもんさ。でも、それは初心者の楽しみ方だ。お前は十分上手みたいだから、より技術的な上昇を目的として続けりゃ、楽しめると思うぜ?」

 

「そうか……。そうだな!」

 

そうして残りのメンバーも次々と降りてくる。

ただ雪の上を滑って降りるだけなのに、渉と小恋は極端に疲労していた。

 

「くっそー、これホンットに腰にクるなー……」

 

「そ、そだねー……」

 

「普通にやっていればそんなに疲れんよ」

 

と、ここで杏が次の指示を出す。

 

「ハイ、とりあえずみんなのレベルが分かったところで、お腹も空いたろうし、そろそろ昼食をとりたいと思います」

 

杏の指示で、みんなで一旦食堂に向かった。

 

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さて、食堂に着いたのだが、客はそこそこ多い。

ということで、場所取りは杏、小恋、由夢、美夏、ななかに任せて、残りの俺たちで昼食の購入に当たった。

 

「そういえば奢りは義之だったよな?」

 

「その通りだ」

 

「分かってるっての……」

 

俺の一葉が、と涙ながらに食券の自販機に5千円札を飲み込ませ、とりあえず俺らの分の食券を購入、続いてはみんなの分を分割して購入する。

そのあと各列に並んで昼食を受け取る。

1番の被害者は紛れもなく義之だろう。

ゲームに負けたお前が悪い。あとでジュース奢るから元気出せ。

昼食後、俺はある提案をする。

 

「あのさ、せっかくさっきみんなの実力を把握したんだからさ、まだ明日もあることだし、今日は明日盛大に楽しむために分かれて練習ってことにしない?」

 

「それ、採用。それだと、効率よく練習するためには2人1組になるのが理想ね」

 

「滑れる人と滑れない人で、みたいな?」

 

「そうね。まずこの中で、滑れない人下半分を決定します」

 

滑れる人は、俺、義之、杉並、ななかは確実だな。

んで、確実に滑れないのが小恋と渉。

グレーゾーンが茜に、一応初心者の美夏、と。

杏と朝倉姉妹は、何とか滑れる、か。

 

「分けるなら、滑れるのは俺、義之、杉並、ななか、由夢に音姉か。杏は多分ボーゲンから卒業したいだろうから滑れない側な」

 

「分かってるじゃない」

 

「滑れない側は、杏、茜、小恋、美夏、そして渉だ。渉、お前だけ男だぞ……」

 

「うるさいやい!俺だって本気を出せばもっと滑れるに決まってるだろ!?」

 

「それじゃ、とりあえず渉は杉並が面倒見て。多分他じゃ手に負えないから」

 

「助かる、杏に杉並」

 

「何!?もう決定事項!?」

 

当たり前だろうが。出来ないのにそれを自覚していないのが、教える側からしたら教え甲斐がないんだっつーの。

自信過剰は自信過剰が相手するのがベストだろうが。

 

「そうなると、小恋はななかがベストだな」

 

「ななかで良かった~……」

 

「小恋ちゃん、義之くんじゃなくていいのぉ?」

 

「ふぇ!?べ、別に義之じゃなくったっていいもん!義之こういう時意地悪だもん!」

 

「へぇ、義之、マンツーマンで指導しながらも、上手くいかない時は体罰であんなことやこんなことを……」

 

「誤解を招く発言をするな!」

 

「義之兄さん、不潔です」

 

由夢のジト目は地味に精神に負担をきたす。

ああいうのがご褒美だという奴は例外だが、普通の人間なら鬱くらいにはなるだろう。精神的リーサルウエポンじゃねーか。

 

「んでもって、茜と杏はボーゲン卒業してすぐだから、纏めて義之に教えてもらえばいいんじゃね?ついでに義之だけじゃキツいだろうから、サポートとして由夢に入ってもらって、由夢自身も指導を聞いて取り込めるものは取り込んでいけるだろうし」

 

「実質俺1人で3人か……」

 

「義之兄さん、しっかりやって下さいね?」

 

あっ、久しぶりに見た気がする。あの背後のブラックファイア。

 

「そうすれば、音姉が美夏について完璧っと。それじゃいこーぜ!」

 

「はい質問」

 

杏が即座に手を上げてニヒルな笑みを浮かべる。

 

「ぐっ……!」

 

バレたか。

 

「あんたは誰を教えるのかしら?」

 

「俺は全体監督を務めさせてもらう」

 

「却下。そんなのいらないわ」

 

「だよねー。光雅くんだけ自由放任とか許せないよねー」

 

「分かったよ。んで、俺はどこに付けば?」

 

「美夏のところに行ってあげなさい。あんた、私の次に信用されてるから」

 

「了解」

 

美夏が俺を杏の次に信用している、というのには自覚はある。

証拠として、美夏が他人を名前で呼んでいるのは、杏と俺、それに由夢だけだ。

由夢の場合、信用とは別のベクトルで、なんていうか、普段良くしてくれていることに対してのお礼というか、せめてもの友情、といったところだろうか。

とにかく、決まったことは決まったことだし、早速指導に出ますかね。

 

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~渉side~

 

なんで杉並?

なんで杉並よ?

光雅と義之は女子とイチャイチャしながらレッスンが出来るというのに。

なんで俺は杉並となのよ?

俺も女子と組みたかった……。

あわよくば月島と……。

この際贅沢は言わん!

茜だろうが杏だろうが、誰とでも良かったというのにッ!

音姫先輩に優しく指導してもらうのも良かったろうなぁ~。

こーなったらもう、このゲレンデで恋を掴み取ってやるぜ!

という訳で、1歩踏み出して斜面へ……。

っと、ウォオオオオオオ!!

 

「ちょ、ナニコレ、は、速、速、速い!速い!」

 

このスピードはッ!

 

もしかしたらッ!

 

高速道路の限界速度をッ!

 

超えてしまってるんじゃないかッ!?

 

「落ち着け板橋!そんなに速度は出ておらんぞ!そんなへっぴり腰になっていては、最後まで持たんぞ!ほら、もっとエッジを利かせて!」

 

「それが出来たら苦労しねーよ!」

 

エッジを利かせることがどれだけ高等技術か……。

あれが出来る、滑れる組はプロになれるに違いない!

 

「どうした板橋、そんなことでは到底ゲレンデの恋を掴み取ることなど出来んぞ!」

 

う、うるさ、ってどぅわッ!

まさかまさかの大転倒。

やっちまったよ。

こんなんで本当にゲレンデの恋は成就するのかよ!?

 

「ほら板橋!お前は虎だ!虎になれ!ほら、ガオーと言ってみろ!ほら、ガオー!」

 

杉並がなにやら意味不明な鼓舞を続けているんだけど、どうしよっかな。

 

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~小恋side~

 

「あう゛ッ!」

 

んも~、また転倒しちゃったよ~。

月島的にもう疲れました、休みたいであります。

 

「ほ~ら小恋、大丈夫?」

 

「大丈夫じゃなーい……」

 

ななかが私のウェアや頭に付いた雪を払ってくれる。

こういう優しいところはななかっていいなって思う。

 

「小恋、もっとしっかりしないと、また雪だるま作りで旅行終わっちゃうよ?」

 

「それもなんかやだー。絶対上達してやるんだから!」

 

「そうだぞ小恋!その意気!」

 

もう一度しっかりとストックを握りなおす。

 

「それじゃ、もう1度平面で滑ってみようか。サンハイ、スー」

 

ストックで体を押し出してゆっくり前に進むんだけど、やっぱり怖くて。

 

「あ、あわわわわわ!」

 

――べしゃ。

 

「あう゛っ!」

 

も、もうやだ~……!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

~義之side~

 

俺らのところは、とりあえず俺と由夢が1度手本を見せて、杏にはその暗記術で動作をだいたい記憶してもらい、茜にも要領を掴んでもらう。

 

「流石由夢さんね。義之の“私物”なだけあるわ」

 

「し、私物って、雪村先輩!?わ、私は義之兄さんの妹であって、その――~~~!!」

 

「真っ赤になっちゃってる由夢さん可愛いっ!」

 

なんか女子同士でキャッキャしてるけど、お前らレッスン中だってこと忘れんなよー。

さて、由夢は滑れるからいいとして、杏と茜にはもう少し特訓が必要か。

 

「という訳で、とりあえずは杏の方が覚えが早いだろうから、先に叩き込もうか」

 

「よろしく」

 

「杏ちゃん、頑張って!」

 

「これから義之と1対3でのハーレムレッスン。何をされるか楽しみね」

 

「おぉう、義之くん、どんな調教をしてくれるのかな?」

 

だから誤解を招く発言は止めてくれ。

うちの妹は冗談が通じんのだ。

あんな風に。

 

「義之兄さん、普通に指導してくださいね」

 

表情では笑ってるが目は怒ってる。

ほらすぐにこうなる。

というかもうしんどい。

1人で気楽に滑りたい。

 

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~光雅side~

 

俺は基本スノボしかやらないのでお手本は音姉に任せて、俺は論理指導というか、まぁ、口頭での技術指導といったところだ。

とはいっても美夏は周囲の上手い人や、音姉の手本だけですいすい上達してしまうので、教える側としちゃ嬉しいやら悲しいやら。

 

「まぁ、なんていうか、文句なしだな……」

 

「そ、そうだね……」

 

当然この結果には音姉も唖然としている。

だって初めてでほんの数分で技術じゃ上級者って何万人に1人の天才だよ!?

 

「美夏はもう上級者に分類されるのか?」

 

「技術はな。あとは、ひたすら経験を積んで場慣れしとくことが必要だ。技術があるからといって、それを過信しすぎるとイレギュラーに対応できない。経験があってこその、絶対の自信だ」

 

「なるほど」

 

「それじゃ、とりあえず経験積むために中級者コースを滑りまくるぞー!」

 

「ああ!」

 

~音姫side~

 

あの事件の日以来、光くんは天枷さんとより親しくなった。

天枷さんは、以前から由夢ちゃんから聞いていたけど、自分から周囲の人を避けるようにして生活し、とにかく人との関わりを避けようとする子だった。

そんな子が、今ではみんなと仲良くしようとし、光くんともお互いに名前で呼び合う仲になった。

光くんはひょっとしたら、天枷さんのことが好きなのかもしれない。

それは光くんのお姉ちゃんとしては、弟にいいヒトができるのはいいことだと思うし祝ってあげたいけど、恋する女の子としては、ちょっと複雑かな?

光くんにとって、私は1人のお姉ちゃん。

それ以上でも、それ以下でもない。

だから光くんは私を大切にしてくれるし、光くんは彼の大切だと思う人を本当に大切にする。

だから私は光くんの本当の想いを知りたい。

そして私は考えた。

スキー旅行中に、光くんに。

気持ちを伝えよう、と。

自分の胸元に、拳を握る。

そこには、“あの日”光くんから貰った、大切な宝物が飾られる予定だ。

光くんと気持ちが繋がれば。

この胸に。

“あの日”の約束の証として。

 

――こーくん―、わ――と、い――ん―――いで――い?

 

――ああ、いいよ。

 

きっと、光くんは忘れている。

10年も昔の、大切な約束。

だから、私はずっと覚えていた。

私の想いは、ずっと変わらなかった。

それでも、光くんが他の人を選んだ時、私は、光くんを祝福したい。

それも、あの約束の、意味の1つだから。

光くんが幸せなら、私も幸せでなくちゃ。

楽しそうに喋りながら歩いていく男女の後姿を眺めながら、私は寂しげに微笑んだ。




――俺は、救えるモノは全て救う。
――全てを失った、あの人のために。
少年が人を救うことに熱望する理由。
彼が魔法を手に入れた経緯。
全ての始まりは、前世での出来事、大切な家族の物語の始まりだった。

次回『前世の記憶、全ての始まり』
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