D.C.Ⅱ.C.E. ~ダ・カーポⅡ チェンジエンド~   作:Masty_Zaki

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何も理解していなかった。
何も理解しようとしなかった。
自分の周りには、それを教えてくれる者たちがいる。
美夏は、その者達に、感謝をしたい。
そして、美夏の新しい夢を――


ロボットと人間の架け橋

「俺の話は以上だ。」

俺は話し終えて一息つくと、少し離れた位置の美夏に視線を送る。

すると向こうも俺の視線に気付いたらしく、こっちに顔を向けた。

その少女の瞳は、覚悟と、決意を秘めていた。

俺はそれを見て、彼女を信じる。

彼女は、決して間違えないと。

そして、その少女は、ゆっくりと口を開いた。

 

「光雅は、自分のことを、話した。美夏も、話さなければならない。いや、話したいことがある」

 

美夏が俯き加減でその言葉を発すると同時に、みんなの視線が一斉に美夏に向いた。

その瞬間、美夏は強張った。

恐怖したのかもしれない。

 

「実はな、美夏はな……美夏は……――人間じゃ、ないんだ」

 

当然のごとく、みんなは頭上に疑問符を浮かべたような顔をしている。

 

「美夏は、ロボットなんだ」

 

すると俺の隣にいた義之が、静かに耳打ちをする。

 

「おいおい、大丈夫かよ!?もし何か失敗したら天枷の正体がバレていろんな場所に広まるぞ!?」

 

「心配すんな」

 

俺の一言に、義之は黙り込む。

 

「初音島にもたまに見かけるだろう。人の形をした、ロボット、『μ』を。美夏は、それと同じタイプのロボットなのだ……」

 

「あ、天枷さんが、ロボットだなんて……」

 

「みんなを謀るつもりはなかった!だが、謀っていたことは事実だ!本当に、申し訳ないッ!」

 

美夏は深々と頭を下げて、謝罪をした。

だが、それを俺はやめさせる。

 

「だが……」

 

「それについては仕方のないことだ。そんなことより、お前の気持ちを、みんなに伝えてやるんだ。お前が、何をしたいのかを」

 

「美夏のしたいこと……――分かった」

 

美夏は語る。

 

「美夏は、およそ半世紀前に造られた、型番MH‐A06型のロボットで、通称『ミナツ』、そこから、天枷研究所の名前を借りて、天枷美夏となった。だが、そのころ、みんなも学園の授業で知って入るだろうが、ロボットの評判は悪くて、その開発者もそして当のロボットたちも迫害を受け、社会の隅に追いやられた。そして美夏は、人の立ち入らないような森の奥で、ひっそりと眠るように封印された。もう二度と起動することはないだろうと思った」

 

美夏は、それで良かった。

その時に芽生えた人間に対する憎悪の感情を、もう一度抱えて生きることはないと思った。

それで、いいと思った。

だけど、それから50年、その森の奥に、馬鹿が2人迷い込んだ。

その2人は、あろうことか、片方の男が偶然にも何かに躓き、起動スイッチを押してしまった。

美夏は、偶然にも叩き起こされた。

美夏は、ずっと眠っていたかった。

それを、偶然で叩き起こされて、美夏は激昂した。

人間の愚かさに嘆いた。

更に、美夏はそのような中で、転校生として風見学園に通うようになった。

転校当初、由夢にはよく世話になった。

由夢は、他の連中とは違って、どんなに突き放そうとしても、美夏が困っていれば、いつでも助けてくれた。

だから、クラスでも由夢だけは信用できた。

だからと言って、人間を見直したわけではない。

美夏は、1人密かに、世界征服を計画し始めた。

今となれば馬鹿馬鹿しい話なのだが、当時の美夏は本気でしたいと願った。

その計画書であるとあるノートを、ある日杏先輩に偶然見られた。

美夏は終わったと思った。

だけど、杏先輩は、そんな美夏の計画を笑いもせずに、一緒になってその添削、そして相談を受けてくれた。

杏先輩は、偉大な『人』だと思った。

美夏は、そこから変わり始めたのかもしれない。

次に美夏にしつこくなったのは、光雅だ。

こいつは何も用事がなくてもすぐに話しかけてくる、鬱陶しい奴だった。

美夏はこいつにとことん冷たくしたはずなのに、こいつは少しも嫌がっちゃいなかった。

そんなある日、美夏は光雅に聞いてみた。

 

――なぜ美夏に構うのか、と。

 

すると光雅はこう答えた。

楽しいから、と。

みんなと仲良くなってほしいからだ、と、そう言った。

正直、余計なお世話だと思ったが、その反面、とても嬉しかったのもまた事実だ。

そしてクリスマスパーティーの初日。

光雅にも、例のノートを見られた。

光雅は、美夏がそのことをばらされると拙いことを利用して、美夏を脅迫した。

そして、美夏は何をされるのかと思いながら光雅についていけば、美夏はただ光雅と遊んでいるだけだった。

そこで、美夏は確認の意味もあってもう1度訊いた。

だけどもやはり光雅は、同じ答えを提示した。

その頃から、美夏は、朧げながらに人間という種族が悪者なのではないことを理解し始めた。

由夢も、杏先輩も、光雅も、美夏になんの邪気もなく接してくれた。

それが、答えなのだということを。

 

そして、あの事件。

 

美夏は、その時1つの結論に至った。

人間を憎むのではなく、人間を信じてみよう、と。

それは、朝倉先輩を助けに行く光雅の行動から得たものだ。

そして、光雅の背負ってきた重いものを知ってから、確信したものだ。

どんなに辛い思いをしていても、人は、人に信じられるために信じることが出来るんだな、と思った。

そして、そのことを、『絆』と呼ぶんだ、と。

美夏は、その『絆』を、人間と、ロボットとの間に築いていきたい。

美夏は、人間を嫌っていた。

そんな状況でも、光雅のおかげで今ではこれだけの仲間と共に日々を過ごすことが出来ている。

だから、美夏は、そんな架け橋を作るための、礎になりたい。

そして、いつの日か、人間とロボットが共存できる世界を創造できたらと思う。

 

美夏は、間違っているのだろうか?

 

「『ミナツ』は、ここにいることを、許されるのだろうか……?」

 

暫くの沈黙。

ここでも、その沈黙を破ったのは、やっぱり渉だった。

 

「なぁ光雅。お前、知ってたんだよな?なんで今まで黙ってた?」

 

「研究所からの厳重な注意だ。お前たちを信用していなかったわけじゃない。それでも、知っている人間は少ない方が、比較的、こいつの正体がばれないようにするには安全だった。だから、このことを知っているのは、俺と杉並、それから念のために義之の3人だった」

 

「確かに光雅くんらしい判断だよね~」

 

「このタイミングで話したというのは、恐らく、他の人間の耳に届かない、初音島から離れた場所でみんなに話そうと思ったから。そして光雅が自分のことを話して乗り越えるのを見せて、美夏にも同じものを乗り越えて欲しかった、ってところかしら」

 

「ふむ、流石は雪村」

 

「そっかー。いろいろあったんだな、天枷にも。まぁ、天枷がロボットかどうかなんてこの際どうでもいいんだけどさ、俺たちはお前が俺たちを必要とするなら、俺たちもお前を必要とする。お前はずっと俺たちの仲間で、友達だ」

 

“天枷がロボットかどうかなんてこの際どうでもいい”

 

俺も美夏も、渉のその言葉に胸を打たれた。

 

「そうですよ、天枷さん。これからも、よろしくお願いします」

 

クラスメイトの全てを知った、由夢の笑顔が、弾けた。

美夏は軽く気圧された。

美夏は、正式に、俺たちの仲間として、認められた。

 

「それに、ロボットと人間の架け橋、俺たちも、協力するよ」

 

俺も、その力になりたい。

すると、感極まった美夏が、オーバーフローを起こし、床に倒れる。

 

「み、美夏!?」

 

耳から煙を噴いているのを見て、俺は慌てて冷たいタオルを創り、彼女の回路を冷やす。

 

「わ、悪いな、光雅。嬉しすぎて、オーバーフローを、おこ、したみたい、だ……」

 

「心配するな。少し寝てろ。30分くらいで直るだろ」

 

「そ、うだな。すまん……」

 

そう言うと、美夏は瞳を閉じて、眠りに就いた。

優しげに美夏を見守るみんなの瞳。

美夏は、疑いようもなく、愛されていた。

俺たちの中で交錯している絆。

その絆が、俺たちとロボットたちの間を結ぶその時まで、俺たちも協力してやる。

だから今は、残酷で下らないこの世界を、俺たちと一緒に思う存分楽しんでくれ。

 

「さて、言いたいことも言い終わったし、風呂に入りますか」

 

「そうですね。嫌な空気を流し去るのには、お風呂が一番です!」

 

お風呂好きの由夢の言葉には、なぜか説得力がある。

そうして、新たな一面を見せた俺と美夏はとことんいじられ、今日という1日は、幕を閉じた。




威圧する、『白』。
雪を操り、氷を操る、最強の魔法使い。
理由も分からず、突然光雅の前に立ち塞がる。
実力者同士の激闘が、白銀世界の中、繰り広げられる。

次回『『氷槍』を冠する男』
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