D.C.Ⅱ.C.E. ~ダ・カーポⅡ チェンジエンド~   作:Masty_Zaki

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自称最強の名は伊達ではなかった。
高精度の魔法攻撃を文句を言いながら全ていなし、ありとあらゆる芸を以って、反撃を繰り出す。
なかなかの強敵だ、と、密かに思った。


『氷槍』を冠する男

翌朝。

俺は何かしらの違和感を感じ、早くから目が覚めた。

時刻で言うと、まだ5時半。

これは、魔法使いが傍にいる時のの感覚だ。

そう、俺はまだある事件を解決していなかった。

クリパの数日前に、俺に忠告を授けに来た帯刀の女。

多分だが、あの時の佐久間英嗣とその帯刀の女には関連性はない。

何故そう言えるのかと言うと、その根拠は双方の主張にある。

英嗣は、この世界を破壊する、と言っていた。

一方で、帯刀女は、音姉と義之の保護、と言っていた。

そしてなおかつ、俺の存在が原因で次元を破壊しようとするものがいることをも知っていた。

それは恐らく、あの時英嗣が言っていた、男のことだろう。

 

もしかしたら、その時の帯刀女かもしれない。

そう思って、俺は外に出た。

ロッジから出ると、そこに、1人の青年が立っていた。

美しく白い髪、その前髪が右目を隠し、見えている左目からは、相手を凍てつかせるような威圧感、そして、今回のこの男――帯刀女より確実に強い。

その男が、ちょいちょいと、手招きをする。

言われるがままに接近、その顔がしっかりと見えるほどに近づいた。

その端正な顔は、どこか杉並を髣髴とさせるようなものがあった。

 

「お前、何者だ?」

 

「エンカウント早々その挨拶はなくね?んまぁ、いいや」

 

呆れた表情から一変、威嚇するような笑みを浮かべて、名を名乗る。

 

「俺の名はロイ・シュレイド。この世界で最強の魔法使いさ」

 

最強、それは俺でも見ただけで分かる。

今こうして話している最中も、全く隙を見せようとしない。

 

「そして、俺の通り名は、『氷槍』。スピアオブアイスってね。お前、弓月光雅だな?」

 

「ああ」

 

「だったら話は早い。俺はこのロッジに魔法で出来た爆弾を複数セットしておいた。これを解除するには、俺を倒すしかない。というわけで、さっさとかかって来い!」

 

なんというか、強引な奴だ。

闘う理由も、爆弾を設置する理由も、全く分からん。

でも、みんなの命が危ないのなら、こいつを倒すまでだ!

 

「それなら――いくぞ!」

 

俺は直接突っ込む。

その際に右手に魔剣『長江』を作り出し、しっかりと握る。

剣を十字に振り、その軌道延長上に血色の濁流を作り出す。

 

「うわっと!うひゃあ~、こいつは凄いわ……」

 

ロイはその攻撃を避けて空中に移動した。

俺もその後を追う。

そして再び斬りつける、が、当たらない。

 

「なかなかの剣捌きじゃん。魔法に頼った馬鹿みたいな戦い方はしないんだな」

 

「当たり前だ。そんなんじゃ闘いには勝てねーからな!」

 

光の剣を大量に創造し、一気に飛ばす。

 

「さて、そろそろ俺もやる気出しますか!」

 

ロイは俺と同じように氷で出来た剣を同量作り、全てを相殺する。

 

「やるな……」

 

「これだけじゃないぜ!」

 

声に反応して見上げると、巨大な氷の柱が3本降ってきていた。

 

「やっべ!≪能力束縛(パワーオフ)≫!」

 

3本の鎖をそれぞれに射出し、柱を消す。

 

「うわぁ~、面倒臭ぇ能力持ってんなぁ~……。だが、まだまだ!」

 

背面に氷の板を出現させると、それに勢いよく拳を叩きつける。

 

「なんだ……?」

 

後ろを振り返ると、そこには同様に氷の壁が出来ていた。

すると、右、左、そして前方を壁で塞がれる。

下を見下ろすと、予測どおり、下から例の氷の柱が飛んできていた。

 

「こんなのっ!」

 

冷静に上から脱出、が。

 

「よっしゃ、引っ掛かった!」

 

俺が上から出る瞬間、俺の後ろからもう1本氷の柱が接近していた。

 

「マジかよ!?」

 

とっさに反応して『長江』で破壊する。

続いて下から来る柱も壊しておく。

そしてロイに向き直る――が、そこにはもういなかった。

 

「こっちだ!」

 

後ろを振り向くと、氷の短槍を持ったロイがすぐそこにいて、俺に斬りかかろうとしていた。

振り下ろされた刃を『長江』で受け止め、つばぜり合いになる。

俺が蹴りを入れようとしたら、ロイはすぐに引き下がった。

 

「流石だな、お前……」

 

「お前こそ……」

 

「へっ、魔法使い最高のランクを舐めんなよ?」

 

「最高ランク?」

 

「魔法使いではそのレベルによって5段階に分けられてな、俺はその中でも5人ほどしかいないとされるトップなんだよ。魔法使いの中で優秀だという証さ!」

 

その言葉を言い終わると同時に、猛吹雪が俺を襲う。

おかげで視界がほとんど閉ざされてしまった。

俺は視力強化を使って動体視力を少し上昇させる。

するとロイが正面から突っ込んでくるのが分かった。

物凄い速度で槍を振るう。

こいつのこの槍はヤバイ……!

なんていうか、完全に熟練している!

槍そのものが、使い手にとって、攻撃力、耐久、重さ、長さ、魔力の許容量、その他もろもろが完璧なバランスになるように精製された究極の氷の槍!

これがさっき自分で自称してた『氷槍』の所以ってやつか……!

俺もそれに応戦しようと、もう片方の剣、『黄河』を創造し、二刀流で槍の切っ先を逸らす。

 

「おいおい、あの馬鹿げた力の剣がもう1本あるんかい……!」

 

「実は維持するのしんどいんだけどねッ!」

 

ロイの猛攻が一瞬隙を見せた時に、『長江』で槍を叩き折る。

その破片が舞い散る中で、俺は更に『黄河』を相手の喉元に突き出す――が、これもあたらない。

刺さっていたのはロイの喉ではなく、白い雪だるまだった。

 

「チッ……」

 

「ほら、降りてこいよ!」

 

ロイが、いつの間に下に下りたのか、地面から俺を挑発する。

魔弾を周囲に200程展開し、ロイに向かって急降下する。

魔弾は先にロイに向かう。

その後を追うように、俺もロイに突撃。

地面の白い雪が魔弾に接触し、爆発と同時に柱を立てる。

 

「うおっ!?」

 

ロイは足元を掬われ、バランスを崩したようだ。

よし、チェックメイトだ!

 

「もらったぁ!」

 

剣を振りかぶる。

そして、その距離が近づくと同時に、力を籠めて振り下ろす。

でも、やっぱりロイは戦闘経験が豊富なようで、冷静に距離を稼ぐためにわざと地面に仰向けに倒れこみ、シールドを張る。

俺の剣はそれに阻まれた。

 

「しかたねぇ、そろそろ出すか、俺の相棒!」

 

俺はその台詞に一旦後退、状況を判断する。

すると、ロイの背後から、巨大な――

そう、巨大な氷の塊が出現しやがった。

あれ、俺これどっかで見たことがあるんだけど。

 

「ジャパニーズアニメカルチャーだ!これぞ伝説の氷の守護神、レ○アイスだぁ!」

 

「なん……だと……!?」

 

そう、あのシルエットといい、あの目(?)の黄色い点の位置といい、あれは紛れもなく○ジアイスだった。

バカヤロー、ゲームフ○ークに怒られるぞ!?

するとレジア○スはその腕の氷の爪を回転させ、俺に向かって飛来させる。

 

――速いッ!?

 

物凄いスピードと威力に、勘で回避するのがやっとだ。

とりあえず、あのでかいレジア○スを剣で相手にするのは分が悪い。

二振りの剣をを消す。

レジアイスの集中砲火はまだまだ続く。

 

「クソッ、一体どうすりゃ……?」

 

「レジアイス、れい○うビームだ!」

 

振り向くと、青白い光線がこちらに向かって――ってヤバイヤバイ!

≪魔術創造(マジカルクリエイト)≫で≪反射鏡(リフレクター)≫を創造、その軌道を逸らす。

 

――勿論、氷のバケモノに向かって、な。

 

青白い光線は、そのままレジアイスを貫いた。

破壊されたレジアイスの破片が散らばり、視界が再び遮られる。

どうやらこの化身の氷は補助魔法を無力化する効果を持っていて、俺の視界も遮られるままだ。

こんどばかしは、どうやっても対応できない!

相手の動きを空気の振動や、魔力の流とかで感知でもしないと、奇襲を喰らう!

 

その時。

 

背後に、殺気。

 

振り向く。

 

その手には、白い玉。

 

俺も片手に白い玉を作り、そして相対するように突っ込む。

 

俺とロイが交差するその時。

 

巨大な爆発音と共に。

 

地面の白い結晶が。

 

爆風に巻き込まれて宙を舞った。

 

俺は。

 

俺は、地面に仰向けになっていた。

 

顔が冷たい。

その冷たいもの払いのけるとそれが雪であることが分かった。

寝そべったままで、ロイの姿を探す。

立っていれば俺の負けか。

しかし、一向にその姿は見当たらない。

すると。

 

「ハハハ……、アーッハッハッハッハァ!」

 

ロイの笑い声。

俺には、その声に恐怖は感じなかった。

むしろ、この男の笑い声に、無垢さ、純粋さを感じた。

 

「いやー、やっぱお前、強いわ」

 

今気付いたのだが、ロイも俺と同じように地面に伏していたようだ。

となると、俺もあいつもやったことは一緒、か。

そう、最後はただお互いに全力で、雪玉作って相手の顔面めがけて螺旋丸しただけ。

 

「お前もな……」

 

そして、俺は1つ聞きたいことがある。

 

「お前、爆弾なんて設置してないだろ?」

 

「あっ、バレた?」

 

「お前の魔法から考えると、専門は温度変化、特に低温度にするのが得意、それを利用して空気中や周囲の物体の水分を凝縮、冷凍して氷のアイテムを使って戦闘する、だろ?」

 

「ほぼ当たり!」

 

「そこに爆弾の要素って、ほとんどなくないか?」

 

「そういうもんなの?」

 

「多分……」

 

「ふぅ~ん」

 

「何が目的だ?いきなり勝負を持ちかけて?」

 

「目的?……いやぁ、なんか強そうなのいたから闘ってみたかっただけ。んで、お前みたいな平和主義は事件が起こらないと本気出してくんないからデマをちょろっと」

 

「なるほど……」

 

じゃあ、こいつは本当に興味本位で俺に喧嘩を吹っかけたのか?

それなら、どうしてこんな強い奴がこんな場所で放任されているんだ?

仮にも魔法使いって言うのはそのための機関があって、そこである程度統制されているって聞いたことがあるんだけれども……。

 

「もうお遊戯は終わりましたか、ロイ先輩?」

 

どこからか女性の声が聞こえる。

それもどこかで聞いたような……。

体力も回復してきたところなので、体を起こして声の主を確かめる。

 

「っておい、こいつ、まさか――」

 

「お久しぶりです、弓月光雅」

 

こいつは、あの時の――!?

 

「えええぇぇぇええええええええええええええ!?」




『氷槍』は語る。
今この世界において何が起こっているのか。
今、最も警戒すべきは何なのか――。
そして、その男は意外にも、バカだった。

次回『『最強』、接触の理由』
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