D.C.Ⅱ.C.E. ~ダ・カーポⅡ チェンジエンド~   作:Masty_Zaki

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ダレカガ、サケンデイル。
ワタシノナマエヲ、サケンデイル。
ナツカシクテ、アタタカクテ、ソレデイテ、キキタクナイ。
ソレデモ、ヒツヨウトサレテイル。

――モウイチド、アノヒカリノナカニ、モドリタクテ。


ナリヒビケ、アスニ

『うっ、ひっく……』

 

『由夢ちゃん、元気出して。僕も由姫さんがいなくなって悲しいけど、由夢ちゃんが泣いてると、もっと悲しいんだ……』

 

『だって、だってぇ、お母さんが……』

 

『大丈夫だよ。由夢ちゃんのお母さんは、傍にはいないけど、いつも見守っているよ?』

 

『……本当?』

 

『多分、だけど……』

 

『……』

 

『これ、食べなよ』

 

『これ、大福?』

 

『うん。多分……』

 

『もぐもぐ……。……不味い……』

 

『えっ、うそ……?』

 

『でも……ありがとう、義之お兄ちゃん』

 

『ど、どういたしまして。……やっぱり、由夢ちゃんは笑ってる方がいいよ』

 

『え……?』

 

『泣いてる由夢ちゃんは、見てるとこっちも悲しくなっちゃうから、キライ。由夢ちゃんは、笑ってる方が、すてきだよ』

 

『あ……うん』

 

『だから、ね。お母さんがいなくなちゃったのは悲しいけど、由夢ちゃんは、笑っていてね。そうすれば、僕も嬉しいし、みんなも、お母さんも嬉しいって思うと思うから』

 

『うん……。由夢、笑ってる!』

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

~義之side~

 

由夢が家にいないって、どういうことだ!?

あいつは熱出してぶっ倒れてるはずなのに、どうしてまたそんな無茶して家を出たりなんかするんだ・・・?

桜並木を全力ダッシュで通り抜ける。

今頃登校してくるやつなんていないから、今この桜並木を走っているのは、俺だけだ。

その時、遠くから爆発音が聞こえた。

あそこで、何が起こっている?

あそこは、枯れない桜か……。

もしそこに由夢がいたら……!

俺は……俺は――!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

~光雅side~

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

かれこれ、2時間以上の戦闘か……。

≪solitary Pluto(孤独の冥王星)≫を発動してさえここまで手間がかかるとは……!

だが、一体どうすればいい!?

優香が口を開いた。

 

「これは、強引な方法は取れませんね。由夢さんを攻撃するのは勿論、桜の破壊など、枯れない桜と由夢さんとのリンクを無理矢理引きちぎる行為は由夢さん自身に大きな負担を強います。となると、方法は、システム不良の≪聖域の宝物庫(ヴァルハラアーセナル)≫をもう1度鎮めるか、由夢さん自身の負の感情を取り除くか、しかありません!」

 

≪聖域の宝物庫(ヴァルハラアーセナル)≫を鎮めること、これは戦争をほぼ同時にいくつかの平行世界で起こせるほどの力を有していないと不可能だ。となると、残る1つの方法、由夢の負の感情を取り除く。

だが、一体どうやって?

由夢、いや、黒い霧の放つ神器が邪魔で由夢には一切近づくことが出来ない。

これでは、防戦一方のまま、由夢に押し切られて敗北する!

 

「由夢ちゃん……!」

 

さくらも、苦い顔をして由夢を見つめている。

もしかしたら、この状況を打開できる人間はたった1人しかいないのかもしれない。

だが、そいつは今も学校にいるはずだ。

それにもしここに来たところで神器に体中を引き裂かれてゲームオーバーだ……。

 

「光雅くん、また来たよ!」

 

「クソッ!」

 

ちょくちょく飛んでくる能力無効の神器が面倒くさい。

これが飛んでくる度、俺は≪絶対防御の大城壁(アブソルートシールド)≫を解除しなければならない。

そして解除している間は、必然的に神器の雨に晒されることになる。

 

だが――

 

「――――!!」

 

由夢が悲鳴を上げると同時に、100を超えた神器が出現し、一斉に襲い掛かってきた!

 

「くそ、間に合わない!?」

 

「時間を稼ぐ!」

 

ロイが振ってくる神器の位置を瞬時に特定し、それぞれの位置に氷のシールドを幾重にも張り巡らせる。

神器はそれらを突き破ってくるが、俺の≪絶対防御の大城壁(アブソルートシールド)≫を展開する時間は十分に稼げた。

 

――だめなのか?

 

俺は、苦しんでいる家族すら助けてやることも出来ないのか?

こんなのってねぇよ……!

これだけの力を持っておいて、これだけの協力者がいて……!

それでも、俺たちは妹1人救うこともできねぇのかよ!?

 

「どうしますか、光雅さん……?」

 

「どうしたらいいんだよ……」

 

その時。

誰かの足音。

荒い息。

振り返ると――

 

「義之くん!」

 

真っ先に反応したのはさくらだった。

 

「駄目だ義之!こっちに来るな!」

 

義之がここまで来れば俺は庇ってやれない。

義之も状況を察したのか、その場で足を止める。

 

「これは、どうなってる!?」

 

義之が状況を確認して辺りを見渡す。

そして。

 

「由……夢……?」

 

異常になった由夢を見て、恐怖したようだ。

義之、お前は、ここに来て、何をするつもりだ……?

 

~義之side~

 

なんで、なんでこんなことになってんだよ……?

これは、あの時の廃工場での光雅と一緒じゃねぇか!

あんな力に振り回されて……。

由夢。

俺はお前を取り戻したい。

俺はお前とずっと一緒にいたい。

理由なんてどうだっていい。

お前が俺を避ける理由もまだ分からない。

それでも、俺はお前の傍にいたい。

まだまだお前と一緒に暮らして生きたい。

光雅と、音姉と、さくらさんと、アイシアと、まひると、お前と、俺。

ただとにかく、俺はみんなと、お前と幸せな時を過ごしたいんだ!

 

「由夢ぇぇぇぇぇえええええええええ!!!!!」

 

俺は叫ぶ。

力の限り叫ぶ。

俺の声、届いているか?

 

「帰ろう!一緒に帰ろう!俺と一緒に!」

 

俺は歩き出す。

たとえ光雅に止められたとしても。

俺は由夢と共にありたい。

由夢がそれを拒もうとも。

俺は決めたから。

もう迷わないから。

 

「義之!来るな!危険だ!」

 

光雅、忠告感謝するぜ。

でも、俺なんかより、由夢の方がずっと、長い間、俺なんかよりも苦しい思いをしてきたんだ。

それを今更自己保身なんかしてたまるかよ。

今こそ決着をつけるんだ。

この8年間、俺の中で育まれてきたこの想いを、ぶつけてやるんだ。

だから、少しでも、少しでも由夢の傍に。

 

「おい、桜内が結界の中に入ってきたぞ!」

 

「義之くん、逃げて!」

 

結界とやらに入ったらしい。

その瞬間、俺は大量の宙に舞う剣に襲われた。

俺だけじゃない。

遠くにいる光雅たちも。

 

「うわぁっ!」

 

地響きに足を取られ、バランスを崩す。

でも、ここでやられるわけにはいかない。

俺は由夢を取り戻して、一緒に帰るんだ。

 

――義之兄さん。

 

あの声を、ずっと聞き続けるために。

更に歩き続ける。

数多の剣が俺の周りを飛び交う。

なのに、何故か俺にあたる気がしない。

もしかしたら、拒みながらも、躊躇っているのか?

 

「由夢、俺は、お前と離れるなんて嫌なんだ……」

 

「――ッ!」

 

剣の嵐が強くなる。

まるで、俺の言葉を拒むかのように。

俺の接近を阻むかのように。

乗り越えるんだ!

これは、この残りの道のりは、俺と由夢の間の、深い溝なんだ!

その溝を、自分の足で埋めるんだ!

 

「俺は、ずっとお前と一緒にいたいんだ!」

 

「ああぁああ……!」

 

1歩、また1歩。

 

「お前が、何に苦しんでいるのか、俺には分からない」

 

でも――

 

「でも、お前が背負ってるもの、俺も一緒に背負ってやる!お前が苦しんでるなら、俺もその苦しみを一緒に背負ってやる!お前が喜んでるなら、俺も一緒に喜んでやる!

 

お前とまた喧嘩して、バカやって、一緒に飯食って、料理教えて!やりたいこと、いっぱいあるんだよ!」

 

「あああぁぁああああっぁああああああああ!!!」

 

俺がここまでお前を大切に思うのは――

 

「由夢!俺は、お前のことが好きなんだ!愛してる!だから、俺の傍に帰って来い!」

 

見ると、由夢はぼろぼろと涙を零していた。

理性を奪われながらも。

自分の葛藤に耐え続けて。

それが自分を苦しめて。

ずっと解き放たれたくて。

俺が、傍にいてやるから。

 

「だから、俺と、一緒に、帰ろう。――由夢……」

 

「う……」

 

由夢が、動作を止めたかと思いきや。

 

「うわあぁあああぁぁぁぁああああああああああぁぁぁあああああああ!!!!!!!!」

 

自分の手元に1振りの短剣を取り出し、俺に向かって突進してきた。

俺は、ただ、受け止めればいい。

 

「義之!」

 

「桜内!」

 

「義之くん!」

 

「桜内さん!」

 

顔面を涙でくしゃくしゃにしながら短剣を握って迫ってくる由夢が、俺にはスローモーションに見えた。

 

そして――

 

とん。

 

「うっ、ひっく……」

 

由夢は、俺の胸の内に納まった。

 

「由夢、もういいんだ。これからは、ずっと一緒だから……」

 

「よし、ゆき……にいさ……」

 

「ああ、俺はここだ。今は、ゆっくり休め」

 

「……」

 

俺は、右腕で、そっと由夢を抱きしめた。

良かった。

大切な人を失わないで済んだ。

俺は、これからもずっと、こいつと――

 

~光雅side~

 

由夢が義之に抱きしめられてから、剣の嵐は消え去り、黒い霧も霧散していた。

 

「お、終わった……」

 

さくらがへにゃりと地面に座り込む。

初めての本格的な戦闘経験、更には俺でもどうしようも出来ないほどの状況だった。

無理もないかな。

俺はさくらに肩を貸して立たせ、義之のもとへ寄る。

 

「義之、悪かったな。俺たちじゃ、何も出来なかった」

 

「い、いや、俺こそ、変なすれ違いばっか起こして、こんなことにまでしてしまった」

 

義之は胸の中の由夢の頭を右手で撫でながら、寂しそうな表情をしていた。

 

「義之くん、ありがとう……」

 

「当然のことをしたまでですよ、さくらさん。これは、本当は俺と由夢の問題だったから」

 

その時、義之は足をもつれさせる。

 

「おい、義之、大丈夫か?」

 

義之の表情は、何か辛そうだ。

 

「な、なぁ、光雅、ちょっと、由夢を預かってもらえるか?」

 

「――!?お前、もしかして!?」

 

「ワリィ、由夢のハートを射止めようとしたら、俺の体が射止められちまった……」

 

「お前、冗談言ってる場合かよ!ちょっと見せてみろ!」

 

「ごめん、ちょっと、眠くなって……」

 

義之の胸から由夢を半ば強引にもぎ取る。

すると、義之の左胸に。

 

由夢の持っていた短剣が。

 

深々と。

 

突き刺さっていた。

 

「よ、義之くん……!」

 

剣の柄を伝って滴り落ちる鮮血が、嫌に現実味を帯びていた。

そんな、そんなのって……!

 

「由夢のこと、頼んだ……」

 

義之は、そのまま仰向けに倒れた……。

 

「義之ーーーーーーーーーーーー!!!!?」




俺たちの行方。
決して幸せなものばかりではないのかもしれない。
それでも、この笑顔を、いつまでも守ってやると、そう誓って。

次回『ツナグミライ』
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