D.C.Ⅱ.C.E. ~ダ・カーポⅡ チェンジエンド~   作:Masty_Zaki

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信念と信念を懸けた戦い。
その火蓋は、今切って落とされる。
仲間との絆で昇華された、自分の力の紋様が、左腕で疼いた。


宣戦布告

生徒会室には、戦力である俺とロイ、優香、さくら、俺の正体と能力を知っている小恋、杏、茜、ななか、杉並、渉、美夏、それから義之に由夢、アイシア、まひる、更にまゆき先輩やエリカにも同席してもらった。

まゆき先輩は俺たちが何らかの事件に巻き込まれているのを自分で勘付いて、なんとなくそんな気がしたから同席させてほしいとのこと。

エリカは俺の意志だ。

まずは、俺の転生話は伏せておいて、とりあえず俺たち4人が魔法という不思議な力を扱えることを明らかにしておいた。

ここに来る前にさくらが電話越しで若干渋っていたのだが、なんだかんだで了承してくれた。

そして、優香が事の一部始終を説明し始める。

 

「まず大前提に理解していてほしいことは、魔法を利用してこの次元、言ってしまえば世界そのものを破壊しようとする者がいるということです。どんな理由であれ、それが許されないことであるというのは自明の理です。それを阻止するために、光雅さんを初めとした私たちが活動しているのです」

 

だがいしかし、いきなり世界レベルの話をされても、誰も理解が追い付かず、ちんぷんかんぷんになっている。

すると、それを見かねたロイが、物凄く簡単に説明してくれた。

 

「要するにだ、俺たちごと世界を吹っ飛ばして皆殺しにしてしまえーってことだよ。それもここ数週間以内に」

 

そのロイの言葉は正しいんだが、そんなに簡単に言われると混乱するしかないだろ……。

 

「そのために、光雅さん及び私たちが動きやすいように、今ここ、初音島がどのような危機に晒されているのか、そして、これからどのように行動すれば良いかを、理解していてほしいのです」

 

「あえて知らせるというのは、既に同志弓月改め芳乃のことを知っている人間が、その事件とやらを知らないことで彼の行動を無意識のうちに束縛してしまう、または自ら危険に飛び込んでしまう、という可能性を考慮してのことだな?」

 

杉並が上手いこと補足してくれるのはありがたいんだけど、その『改め』って言うのやめろ……。

 

「で、でも、そんな重大なことに私たちを巻き込んで、大丈夫なのかなぁ……?」

 

小恋がオドオドしながら弱音を吐く。

確かにここにいる人間の半分以上がこれまで日常を過ごしてきた、普通の人間だ。

心配しない方がおかしいに決まっている。

 

「そのことについてなら大丈夫だ。知ってることで危険には自ら近づかないだろうし、もしかしたら何かサポートできるかもしれないからな」

 

ロイが不安を笑い飛ばすように発言する。

流石はデキた魔法使いというか、人心掌握もお手の物なのかもしれない。

普通の人はどこかで、だれかの役に立ちたい、と思っている部分があり、それを想像の部分で満たすことによって緊張を和らげる、そして『サポート』という言葉を使用することによって、自分が自ら死地に赴くような状況にはなり得ないことを連想させる。

実際、小恋もまだ不安がってはいるが、納得はしたようだ。

 

「さて、本題に入るんだが、先程俺とロイ、それから優香が、初音島の中で、他の魔法使いの所業だと思われる召喚術によって生み出された、黒い騎士団と相対した。個体の戦闘力は大したことはないだろうが、数が多いと予測される」

 

俺の後に、ロイが続く。

 

「多分だけども、初音島の中で戦えそうな連中にあの雑魚軍団をあてがって、様子見をしていたんだろ。学園長は学園から出てなかったから観察されることはなかったろうけど」

 

「そうなんだ」

 

だがしかし、召喚術を扱い、更に召喚した生命体に戦闘能力を付加させることのできる魔法使いとなると、少数の召喚はありえない。

となると、あの黒騎士団の数は、ロイの言った通り、未知数と考えたほうがいいだろう。

 

「あの……」

 

発言をしようとおずおずと挙手をしたのはエリカだった。

 

「どうした?」

 

「いえ、その、その騎士団というのを、先程弓月先輩と遭遇したのですが、あの存在は、同じく魔法のような非科学的な手法を用いないと撃破できないのでしょうか?」

 

エリカの質問に、ロイが答える。

 

「いや、それはない。俺の槍で十分倒せた。魔法で創り出したものとはいえ、結局はぶっ刺す程度の物理干渉だ。恐らく小石でも威力さえあれば倒せるんじゃね?」

 

「そうですか、それならば、私の国から軍隊を派遣して、騎士団の抑制をさせるのはいかがでしょうか?」

 

「どうしてそう思う?」

 

「私の想像の話なのですが、弓月先輩方が私たちに相談するというのであれば、あの騎士団程度のレベルであるのならありえないはずだと思うのです。それくらいなら、弓月先輩方だけでどうにかなるものではないかと。しかし、それでなお相談するのであれば、何かまだ別の危険及び不確定要素が存在する、と睨んだのですが……。そうなれば、できるだけそういった数相手には、数で押し切るのが正攻法ではないかと……」

 

流石はエリカ、洞察力は桁外れだ。

 

「ああ、というのも、さっきも言った、次元を破壊する者が、ほぼ間違いなく初音島に既に辿り着いている。だから必ずと言っていいほど本人自ら出向いてくるだろう。そうなれば、かなり強力な力を持った連中が2、3人いても不思議じゃない。俺たちは恐らくそいつらの相手をすることになるんじゃないかと思う。だから、エリカのその、本国の軍隊を出動させる、というのは、こちらとしてはありがたい話だ」

 

「でも、そんな大勢の人間を短時間でヨーロッパから日本にまで運ぶのって、無理だと思うんだけど……」

 

義之がもっともな意見を言う。

 

「そこなんだよ。エリカのその提案は本当にありがたいんだけど、準備に時間がかかりそうだもんな……」

 

しかし、エリカはその懸念を押しのけるように、自信を持って立ち上がり、そして声を上げた。

 

「心配無用ですわ。我々の領地からここまでならば、2日もあれば到達、そして戦闘配備につくことなど造作もありません。もしよろしければ、私たちに任せてください」

 

威勢のいい、一国の姫に相応しい態度で、そう言い切った。

 

「……分かった。それなら、エリカ、軍隊の配備、頼んだ」

 

「了解しましたわ」

 

これで、俺たちは安心して、親玉を狙うことができる。

無論、複数いることも考慮しているが、そこには優香たちを当てておけば大丈夫だろう。

相手がいくら強いといえど、彼らも高レベルの魔法使いである。

恐らく、食い止めてくれるに違いない。

 

「それから、みんなには枯れない桜に近づかないでほしい。あそこはもしかしたら危険だ。一般人ならまだしも、俺たち魔法使いの存在に気付いている連中は、偵察やスパイみたいに勘違いをされて襲われる危険がある。それと念のため、さくらは音姫とまゆき先輩とで、桜公園から枯れない桜へ向かう道を閉鎖するように、役所に届けを出してくれ。さくらがいれば、なんとか通るんじゃないか?」

 

「可能性はそこまで高くはないけど、やるだけやってみるよ!」

 

そして、最後に言わなければならないことがある。

これは、本当に心にとめてほしいことだ。

 

「最後に、俺から1つ、言わせてほしい。これから始まるのは、遊びでもゲームでも、座興でもない。本当に、命の奪い合いになるかもしれない。俺たち4人は、直接的にそれに関わることになる。俺たちは最後まで諦めるつもりはないし、この世界を破壊させるなんて言語道断だ。だけど、万が一のこともありうる。誰かがやられるかもしれない。誰かを失うことになるかもしれない。そんなことになってしまうわけにはいかないけど、それでも、ありうるんだ。だから、その覚悟だけは、していてくれ。そして、みんなが無事に、ここで笑っていられる世界を迎えられるよう、祈っていてくれ……」

 

俺の重い言葉に、空気が固まり、静まり返る。

だがこの沈黙も、ロイによって破られた。

 

「光雅の馬鹿が変にかたっくるしいこと言うからこういう空気になるんだけどさ、まぁ要はここにいる全員で乗り切ろうぜってことさ。誰一人として、失うわけにはいかない。そのために、全員で一致団結して解決しようぜ!」

 

深刻なんてどこ吹く風、まるで部活の大会に赴く時の決意表明みたいに纏めるロイに、若干感服した。

こいつは、本当に大物なんだろうな。

ロイの言葉は、ここにいる全員の心を1つにした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

日付は変わり、休日にさくらの特訓に付き合ってから、少しばかり、自室でのんびりしていた。

窓を開けて、肌寒い風を、上半身で受け止める。

寒いけど、近づきつつある決戦の気配に緊張し、火照る体には、それくらいがちょうどよかった。

それにしても、ホント、みんなを巻き込んでしまったな。

本当なら、巻き込むべきではなかった。

本当なら、彼らは今頃普通に日常の中でのんびりしたり、誰かと会話したり、遊んだり、買い物をしたりしていたはずだ。

それを、俺がスケールのでかい争いに巻き込んだせいで、一瞬にして彼らの日常を奪い去った。

本当に俺は、みんながいてくれないと何もできない、弱い人間であることを思い知った。

それでも、みんなはついてきてくれた。

俺を信じてくれた。

それだけで、俺は何でもできる気がする。

俺は、絶対にみんなに報いる。

そして、みんなが幸せで、笑顔でいられる日常を、もう一度取り戻してやる!

その時、携帯にメールが届いた。

誰だろうと思い、携帯に手を伸ばし、確認する。

送信元は不明だった。

文面にはこう書いてある。

 

――弓月光雅、芳乃さくら、桜内義之、ロイ・シュレイド、紅葉優香を連れて、至急枯れない桜の元まで来い。

 

ついに来た。

恐らく宣戦布告でもするつもりだろう。

俺は覚悟を決めて形態を閉じ、該当する人物を呼び出して、枯れない桜に向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

5人で枯れない桜に向かったが、そこにはだれもいなかった。

気配を感じてみても、何も感じないし、特にこれといったトラップもなさそうだ。

ロイは訝しく思ったのか、辺りを散策して、状況を確認し始める。

 

「もしかしたら誰かのいたずらメールだったりするんじゃないか?杏や杉並あたりならやりかねんぞ?」

 

義之がそういうのも分かるが、流石にそれはない。

今回ばかりは、『命の奪い合い』と明言しているから、そんな俺の行動を促すような悪戯は、いくらあいつらでもするはずがない。

ロイが1周回って戻ってきた時、それは起こった。

周囲の全てが――止まった。

音がしない。

生きているものが動いていない。

世界に、異変が起きている。

でも、これは一体……?

 

『待たせたな。先日の黒騎士団はいかがだったか?』

 

誰かの声。

だが、どこから聞こえてくるのか、だれが話しかけてくるのか、分からない。

 

『いくら探しても、何も出てこねェよ。これは遠隔会話の魔法を使ったコミュニケーションだからな』

 

嘲笑うかのように、その声の主は語り掛けてくる。

 

「お前は、『ドラゴン』なのか?」

 

『ああ、英嗣たちは俺のことをそう呼ぶな。……いや、正確には、呼んでいた、か?まァいい。確かに俺はそう呼ばれ、そう自称している』

 

間違いない。こいつが『ドラゴン』で、全ての始まり、そして、俺が止めるべき相手。

 

「お前も、どこか異世界から来たのか?」

 

ロイや優香が言っていた、この世界に存在しない概念を用いた魔法の所有者。

恐らく、俺と同じような境遇、そして、能力を持っているのだろう。

 

『そうだな、俺もお前と同じ、異世界から来た者だ。お前を探してここに来た』

 

探しに来た?

ということは、俺のことを知っている人なのか?

かといって、俺が知っているとも限らない。でも、もしかしたら――

 

『俺はお前の『アンチテーゼ』だ。俺の目的は、お前という『テーゼ』を倒し、そして俺の掲げる理想郷、『アウフヘーベン』へと世界を導くことだ』

 

「その『アウフヘーベン』とやらが、この世界の終焉、とか、ふざけたことをぬかしてんのか」

 

『ふざけた?フン……流石は俺に対立する『テーゼ』だ。『アンチテーゼ』の考え方を真っ向から否定しやがる』

 

『ドラゴン』は、俺の見えないところで嗤っている。

そう考えるだけで悪寒が走った。

もし『ドラゴン』の言うことが本当であるとしたら、これまでのことは全て、俺がいることで引き起こされた事件ということになる。

俺がいることで、この世界が崩壊するという、優香の忠告は、間違いではなかったのか……。

 

「何故、世界を終わらせる……?」

 

『そうだな、強いて言うなら、世界そのもののためだ。この先は、お前に直接会って話がしたい。……さて、本題に入ろうか』

 

『ドラゴン』の一呼吸を置いての宣言に、俺たちは息を呑んでじっと聞く。

 

『明日だ。先程、俺は本格的にこの島を中心に術をかけた。効果は、島の生物全般の時間停止、但し、有効範囲は、対象を1人選択、そしてその者の周辺で魔法の存在を知っている者以外だ。作業は、最近開発が進んでいる、最新型『μ』を使って行った。お前たちは、初音島の中心地にある、島で最も大きい桜の木に到達しろ。そこで、弓月光雅、お前には直々に俺と勝負をしてもらう。勿論、お前らの進行の妨害はさせてもらう。じっくりと計画を練ってくるんだな。それでは、明日、ここで会おう――』

 

そう言い残して、回線は途切れてしまった。

周囲の全てが動かなくなったように感じたのは、こいつの広範囲における魔法陣の影響か。

そして、義之たちが動いていられるのも、魔法の存在を知っているから。

明日――

そう、明日には、すべてが決まる。

何もかもが終わってしまうか、それとも、みんなの笑顔を、幸せを、未来へと紡ぐことができるか――

でも、やるしか、ないんだ。

俺は、誓ったから。

 

――さくらに、寂しい思いはさせないと。

 

――由姫さんに、みんなで、幸せになると。

 

――由夢と義之に、未来の先の未来を変えると。

 

――音姫と一心同体で、正義の魔法使いとして力を使うと。

 

俺は、負けるわけにはいかない。

『ドラゴン』が『アンチテーゼ』からの止揚を望むのなら、俺は真っ向から対立して、『テーゼ』からの止揚を突きつけてやる。

そして、その先にある俺の理想郷、誰もが、俺の周りの人間全てが、全員纏めて幸せだといえる世界を、創ってやる。

俺は1人、何かに触発されるように内から溢れてくる闘争心を押さえつけ、踵を返して枯れてしまった魔法の桜から立ち去った。




小さな魔法少女は語る。
自分の恐れと、覚悟と、決意。
その想いに応えるように、彼女の魔法は輝きを増す。
彼女はやはり、大魔法使いの孫だった。

次回『決戦の覚悟』
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