D.C.Ⅱ.C.E. ~ダ・カーポⅡ チェンジエンド~   作:Masty_Zaki

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剣士にとって、剣とは、刀とは魂であり、命である。
なれば、その得物に己の運命を託し、最後まで信じ切ったもののみが、勝利と栄光を得る。
2人の少女はそれぞれの得物を握り締め、刃を振るう。


神より授けられし器

~優香side~

 

目の前に突如現れた、剣を二振り持った女性。薄紫色の髪が、風になびいていた。

その体は間違いなく人体ではなかった。感じられる雰囲気に、人間らしさが感じられない。

 

――ロボット。

 

それが彼女から感じられるオーラとして、最も適切だと思える表現だった。

彼女から少し視線を逸らし、ある一方向へと目を向ける。

光雅さんたちが去っていった方向であり、今は枯れてしまった魔法の桜への道筋。

光雅さんが去る際、彼はどこか、驚愕めいた表情をしていた。

知っている人間だったのだろうか。あるいは、仲の良かった者か。

いずれにせよ、このロボットは、その人本人ではないことは確かだ。

それに、その姿をそっくりそのまま似せて作った、『ドラゴン』も趣味が悪い。

そこまでして、何の意味があるというのか。

 

「行きます」

 

何にせよ、彼女が襲い掛かってくるというのなら、彼らの、みんなの生きる道を邪魔するというのなら――

輝夜さんが両腰に携えてある剣に手を伸ばし、同時に引き抜く。

 

――二刀流。

 

体の前で交差させて構え、こちらの様子を窺っている。

私も自らの刀に手を伸ばす――が、まだその刃を見せはしない。

それが私の戦法、第1段階、『消極的後手(ネガティブトライアル)』。

相手の行動に対応するように、自分が臨機応変に動く!

 

「いつでも!」

 

――ここで貴女を倒し、道を開ける!

 

まずは相手の武器の正体を見極める。

尋常じゃなく練りこまれている魔力を見るに、それは神器であることには間違いないだろう。

それを二振りも所有しているというのは、それなりの実力者であることを意味している。

ゲームや漫画などで、そういった強力な武器は『選ばれたものでないと使えない』という設定はよくあることだが、これはある意味では正しいのだ。

強力なものを得るには、いくつかの条件があり、いずれかを満たさなければならない。

それに耐えうる肉体を保有していること、または精神を保有していること、そして、それがなかったとしても、それを凌駕するほどの想いの力を持っていること。

そして彼女は、その全てを所有している。

彼女は左手の剣を水平に構えて力を蓄えはじめる。

周囲の光を集め始め、巨大な力のエネルギーを剣に纏わせる。

恐らくはそれを放出する中、遠距離攻撃だろう。

ならば私は――

 

「『秘雷・金剛力士』!」

 

鞘から少しだけ覗く刃から、光が、稲妻が放たれる。

幻想するは、神鳴(カミナリ)

放たれた光は徐々に私の正面に集約され、私の背丈の半分ほどの半径を持つ球体に変形した。

『金剛力士』は、言ってしまえばごり押しな防御魔法。

選択肢は2つで、1つは、雷の球体で受けた魔法攻撃をそのまま蓄え、自分の雷の攻撃分の威力を上乗せして相手に返す。

もう1つは、耐えきれなかった時、球体もろとも相手の魔法攻撃を切り捨てる。

いずれにせよ、回避など眼中にない技である。

彼女は蓄えた力を一気に放出し、剣を水平に振り抜いた。

 

「エクス、カリバァァァァァ!」

 

剣から膨大な魔力と共に協力は光が発せられたおかげで、視界が霞む!

速度も、威力も桁違いだ。

受け流すことは――できない!

私は、その驚異的な光に包まれた――

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

~光雅side~

 

あの姿、そして、彼女の名乗ったその名前。

彼女は間違いなく、月宮輝夜の『人格』を持っていた。

しかし、あれは、人ではない。

美夏と同じような雰囲気――ロボットと同じエネルギーを感じた。

だから、つまりそれは、彼女が輝夜さんであって、輝夜さんではない、ということだった。

輝夜さんは、俺の前の世界において、俺の兄さんの、友達だった。

兄さんが、友達を作るきっかけとなった人物。

彼女は中学生の頃クラスでいじめられていて、そこを兄さんに助けられた。

そしてひょんなことにもう1人の友人――隼翔さんと知り合い、それから3人で過ごすようになっていった。

少しずつ幸せそうに、笑顔になっていく兄さんを見るのが嬉しくて、そんな楽しそうな輪の中に入りたくて、俺も彼らと共に、過ごすことになっていった。

彼女たちは優しくて、親切だった。俺に対しても、兄さんに対しても。

それなのに。

俺と兄さんを残して、前世のあの事件で、逝ってしまった。

俺は救えなかった。

救う力さえ持っていなかった。

後で後悔して、涙するしかできなかった。

もう、彼女たちはいないのだと。

だが、先程、輝夜さんがああして俺たちの前に現れた。

本人ではないが、その面影を持つ、『器』が。

よほどの因縁だったのだろう。

ならば今度こそ俺の手で、全てに決着をつけてみせる。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

~優香side~

 

強烈な光、砂埃が消え去り、視界が開けると、膝をつきながら私は相手の姿をしっかりと目視する。

確認するは、強烈な光を放った剣――エクスカリバーと言ったか、かのアルトリア王の聖剣を持っているとは、かなり厄介な相手だ。

 

「いや、これはエクスカリバーなどではないよ」

 

彼女はそういう。

エクスカリバーではないというのなら、その剣は一体何なのか?

しかも先程の攻撃宣言ですら、『エクスカリバー』と名を挙げていたではないか。

 

「これはね、エクスカリバーを抑制、封印、破壊するための、エクスカリバーの上位互換となる剣、通称、『ギガスカリバー』さ」

 

そう言って彼女は掌で剣を数周回転させ、サッと斜めに空を斬った。

エクスカリバーの上位互換であれば、あの剣でエクスカリバーを放つことなど造作もないだろう。

普通のエクスカリバーでさえあれだけの威力なのだ。彼女の剣、ギガスカリバーの潜在能力は、一体どこまであるのだろう?

 

「もう1つ。私の持つ、もう1つの神器――」

 

ギガスカリバーでない方の剣の刃をこちらに突きつけ、言葉を続ける。

 

「氷剣『アウドムラ』。氷の神に知恵を授けられたとある鍛冶職人が自らの命と引き換えに完成させた剣だと言われている。しかし、アルプス山脈のどこかで眠ったこの剣を見つけ出すことは難しく、その結果これまでにこの剣は何も斬ったことがないらしい」

 

その瞬間、私は強く感じた。

輝夜さんの、人を斬りたいという強い執念。

言い換えれば、想いの力。

これが、彼女が神器を扱うための条件克服。

アウドムラの想いと、彼女の想いがシンクロして、相互的に強化を施している。

 

「私は見ての通り二刀流。それぞれ長さはあるけど、使いこなせないことはない。だから、手数、威力の点で、あなたは私には勝てない。大人しく、跪いてくれるかな……?」

 

それは、降伏勧告。

従えば、この戦いは終わり、彼女も戦いに身を投じることはなくなるだろう。

そもそも、ロボットは、戦うために作られたわけじゃない。

こんなことをしているこのロボットを、美夏さんが見れば、悲しむだろう。

でも――

だからこそ、こんな間違ったものを否定するために、そして、今はいないのであろう彼女の元の人格を汚さないために、ここで、彼女を倒さなければならないんだ。

だったら私は。

今まで、どんな敵を相手にしても、決して抜くことのなかった刀。

『彼』との習練中、1度だけ抜いて、それ以来。

それはつまり彼女の持つアウドムラと同じ。

曇り1つない、周りの景観を映し出すほどに美しい刃を、空気中に晒す。

シュラン、と、刀を抜く時の、感触の良い音が耳を掠める。

私の刀は、決して神器などという、崇高で強力なものではない。

でもしかし、私の刀に斬れないものは、『彼』1人で十分だ。

私は、彼に師事した者として、彼の『最強』としての威厳を傷つけないために、そして、私自身の、魔法使いとしての、正義と誇りを守り抜くために、私は――

 

「私の全てを以て、貴女を倒します!」

 

刀の柄を両手で握り締め、魔力を集中させる。

術式魔法展開――空中歩行、許可――敏捷性倍加、3重展開――刀身の物理、魔力的強化――属性付与、『鋼』、『風』――

戦闘形式変更。『積極的先手(ポジティブアクション)』。

前へ。より速く、前へ。

 

「舞うは木の葉、流離の風来坊!」

 

風属性の主な特徴は、相手に目視されないほどの速さで以って相手に干渉すること。

その敏捷性と高精度の旋回力を術式魔法に組み込んで、自らの身体能力と刀を強化する。

速度に乗った斬撃は、速ければ速いほど、その威力は発揮される。

私は、風と同化したように、嵐に巻き込まれた木の葉が縦横無尽に暴れまわるように、より速く、そしてより相手を翻弄するように動き回る。

勿論彼女はその程度では混乱しないだろうが、それでも隠し玉を見せかけるくらいはしてくれるだろう。

そもそも、彼女の武器の性能は、計り知れないのだ。

少しでもその片鱗を見せてくれれば、勝ち目は――ある!

 

「アウドムラ、止めて」

 

彼女は氷剣を地面に深く突き刺す。

地面が揺れる。

かつて何度も聞いてきた音。

これは――

 

――バキン!バキン!

 

地面を突き破って、高純度の氷の柱が私を貫こうと、いたるところから猛スピードで迫ってくる。

そして、それは少しずつ枝分かれを繰り返し、視界を少しずつ奪っていく。

でも、この技は、ロイ先輩の専売特許!

何度も見てきた技。

多少手数は多いが、それでも攻撃の質は彼の方が数倍も上回っている。

だから、この程度なら避けられないはずがない!

飛び出す氷柱を避けては薙ぎ、避けては斬り払う。

少しづつ相手に接近し、距離を詰める。

これは、遠距離攻撃を得意とする相手に対する、私にとってもっとも得意とし、そして有利にことを運ぶことができる接近方法。

ロイ先輩相手にも、これを使って肉薄できなかったことなどない。

叩き割り、壁として利用することで蹴って方向を変え、少しずつ、少しずつ距離を詰める。

 

――直感。

 

6方向からの同時攻撃。

同時に私は同じ方向へと魔方陣を出現させ、それぞれからこの刀と同能力の鋼の刃を射出する。

破壊。

そして――

ゼロ距離になった瞬間、私の刀と、彼女のギガスカリバーが、鋭い剣戟を響かせて、交差した。




『ドラゴン』。
全てを持ち、全てを知る者。
故に彼は、この世界に嘆き、絶望するだけの『負』を背負っていた。
悲しみから始まった物語。
全てはこの相対で始まり、この相対で終わる。

次回『再び会いまみえる時』
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