D.C.Ⅱ.C.E. ~ダ・カーポⅡ チェンジエンド~   作:Masty_Zaki

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番外編ストーリー『まひる』編。
『to you』と『fall in love』のおぼろげな知識を頼りに進めていきます。


After story ~Episode of Mahiru~
へーよーぶらざー


あの事件が終わって既に1ヶ月以上経っている。

卒業パーティーも終わって、春休みに突入したのはいいんだけど、どうにもあの事件のせいで気が休まらないというかまたなんか起こるんじゃないかって思うと碌にのんびりできてもいないような気がする今日この頃。

現在自室でのんびりネットショップでいろいろ見ているんだけどそれも飽きてきて、とりあえずパソコンをシャットダウンして背伸びを1つ。

扉を開けて部屋を出ると、廊下の向こう側で足音が遠のいていくのが聞こえたのでそちらを見ると、まひるが歩いていた。

そういや彼女をこの家に招き入れてから楽しいこと何ひとつやってあげてないなーと思いつつ、なんなら自分も少し気分転換をしたいと考えていたんだけども。

 

「おっとっと、由夢、順番が違う。先にこっちを入れてからじゃないとだな……」

 

「あっ、そっちが先ですか」

 

台所から義之たちの声が聞こえる。

由夢も料理嫌いを克服して、現在料理のレパートリーを増やしていく最中である。

新しいことに挑戦しているため、食卓に出てくる料理はたまに過去に見たような失敗作になっていることもあるが、それはそれで微笑ましいのだ。

階段を下りて居間に座り込み、テレビを点けると、初音島にあるアミューズメントパーク、通称さくらパークと呼ばれる遊園地での様子がテレビで流されていた。

 

「行ってみるのもアリか……」

 

そう呟いていると、どうやら聞いていた人がいたみたいで。

 

「どこに行くんですか?」

 

振り返ってみるとそこにはまひるがいた。

いいタイミングで現れたというか、ちょっと都合が悪いというか。

 

「いや、ちょっとな、さくらパークに行こうかと思って。久しぶりに行くもんだからちょっと考えてみたんだけど」

 

「私、行ってみたいです!」

 

「まぁ、でも……そうだな、来週くらいに行くとするか」

 

「いいんですか!?」

 

「もちろん。てゆーかそのつもりだったんだし」

 

その時のまひるの表情と言えば、もうこれ以上にないくらい喜んでいて、見てるこっちもなんか嬉しくなっていた。

例の無駄に長い例え話も抜かりなく語っておいででした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

生徒会の仕事で音姫もおらず、さくらもなぜか不在なので家には俺とアイシアとまひるしかいなかった。

義之と由夢は除外な。言うまでもない。というか完全に2人の世界ですご馳走様でした。

夕食でシチューでも作ろうかと思って冷蔵庫を開いてみれば、ニンジンがなかった。

そういえばこの間義之がカレー作った時にもうないって言ってたっけか。

すっかり忘れてたけど折角だしちょっと買い出しに行くとでもするか。

 

「まひるー、アイシアー、ちょっと買い出しいってくるけど、ついてくる人ー」

 

1人で行くのもつまらないし誰かを誘ってみた。

 

「あたし、家の掃除してるからパスー」

 

軽く悪寒が走った。

アイシアに掃除されると、あの人本気で綺麗にしようとするからたまに物がなくなったりする。

以前に純一さんたちと同居してた時もリビングの家具が恐ろしいほどに積み重なって庭に出されてたとか。

そこまではないが、自室のテレビのリモコンがなくなった時は本気で焦った。

それでもまぁ、なんとかやってくれてるから大丈夫かな。

 

「私ついていってもいいですか?」

 

まひるが私服姿でひょこひょこ出てくる。

本当に幽霊とは思えないほどの明るさだ。

死んでしまう前はどういう生活を送っていたのか少しばかり気になるんだけど、そういうことは安易に聞いていいことなのか迷うんだよなー。

もしかしたら彼女を傷つけてしまうかもしれない、デリケートな問題だ。

 

「もちろん大歓迎」

 

嬉しそうな笑顔を堪能しつつ、俺ってまひるのこと何にも知らないなーとか、少しばかり自分の不甲斐なさにやれやれ感を抱いていた。

でもこういうことって結局自分から行動しないと何も始まらなかったり。

 

「そういやまひるってさ、一応幽霊なんだよな」

 

「そうですよ。自慢できることじゃないんですけど、1度死んじゃってます」

 

そこで少し寂しげな笑顔。

その事実は、いくら明るく振舞っていてもやっぱり辛く感じるようだ。

 

「お前が生きてた時って、どんな生活送ってたんだ?」

 

自分から踏み込んでみようと思った。

結局は誰かを助けたいとか、支えになりたいとか、そんなことは建前でしかなくて、ただの自己満足で、彼女に嫌な思いをさせるだけなのかもしれない。

それでも俺は、そこから目を逸らしたくない。

 

「そうですねー、私、結構病弱だったんですよ」

 

自分が悩んでいたよりも、まひるは結構あっさり答えてくれた。

それが素の彼女なのか、それとも無理をしているのかは分からないが、話してくれることには感謝しておきたい。

 

「それで、学園には全然通えてなくて、ずっと入院生活でした。それで、ある日病院の先生から通学の許可が下りて、久しぶりの学園生活だって、ドキドキして。友達できるかなとか、勉強ついていけるかなとか……」

 

まひるも本当は1人の女の子だった。

ただ病弱なだけの、どこにでもいる女の子だった。

 

「それでね、登校初日に、ミキちゃんに出会ったんです」

 

「ミキちゃん?」

 

「初めてできたお友達なんです。大親友、ですかね。ずっと2人で、たくさんのことをしてきました。本当に、楽しかったです」

 

ミキ、か。

こんな笑顔の明るい少女と共に学園生活を過ごしてきた親友って、どんな人だったんだろう。

まひるはこんなおっちょこちょいなのだから、きっと、それなりにお姉さんな性格で、茜や杏みたいに他人をいじるのが好きで、友達を大切にできる人だったんだろうな。

俺だって友達は多い方だし、人間関係に不自由していないわけでもないけど、それでもそのまひるの親友には会ってみたかった。

そして、最後に1つだけ聞いてみたいこと。

 

「なぁまひる」

 

「なんですか?」

 

「俺たちと一緒にいて、楽しいか?」

 

俺の質問に、まひるは今日一番の笑顔を浮かべて。

 

「はい!」

 

はっきりと肯定した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

スーパーに行って食材を買い溜めする前に、ちょっとまひると遊んで帰ろうと思って色々寄って行った。

本屋やCDショップ、洋服店などになんとなく立ち寄って、色々なものを見たり聞いたりして、俺とまひるにとって、なかなかいい思い出ができたんじゃないかと思う。

そしてその帰り道。

日も沈みかけて、枯れてしまった桜の木々の隙間から夕陽の日差しが差し込む。

 

「光雅先輩、ちょっと寄りたいところがあるんですけど、いいですか?」

 

まひるが唐突に俺にそんなことを訊いてきた。

断る理由もなく、今日1日一緒に来てくれたんだし、まひるの都合にあわせてやろうかな、というのは少し上から目線か。

 

「風見学園に、寄っていきたいんです」

 

まひるはそう言った。

肝試しの時に義之が連れてきたこの少女は、風見学園の幽霊だった。

そして、俺が少し前にまひるの思い出話を聞いていた時、まひるの顔は、本当に懐かしげにものを語る時の顔だった。

そのことで懐かしくなったんだろうか、まひるの眼は、真剣だった。

 

「休みの日まで学園に行くのは癪だけど、まぁいいか」

 

仕方ないよね、用事がないのに学校なんて行きたい人間なんてそうはいないと思う。

それでもまひるが行きたいというのなら、それだけの想いがあるのだろう。

あわよくば生徒会の仕事を終えた音姫に合流できるかもしれないしね。

 

その道中。

自分たちの反対方向から、女性が1人歩いてくるのが見えた。

ここを通ってくるということは、風見学園にでもいたのだろうか?

まだ遠くてよく分からないが、その表情は、寂しそうにも見えた。

距離が近づいてきて、その輪郭もはっきりしてきて、そしてすれ違おうとしたその時――

 

「え――!?」

 

その女性の、驚くような声を聞いた。

信じられないとでも言うような声を上げて、こちらに振り向き、その視線は――まひるに向いていた。

そして、見つめられているまひるもまた、彼女を見て硬直していた。

女性の言葉で、静止していた時間が動き出す。

 

「まひる……なの……?」

 

「ミキ……ちゃん……?」

 

お互いがお互いに、呼び合って相手を確認する。

俺にはよく分からないが、それでも、この2人に何かしらの絆のようなものがあることは、無関係な俺でも確認できる。

とにかく、俺がここにいるのは無粋だろうから、少し離れた場所まで移動して、その様子を眺めることにした。

 

「どうして、ここに?」

 

「えっと、色々あって、ね」

 

突然の邂逅、会話はあまりうまく成り立ちそうになかった。

 

「本当に、まひるなんだよね……?」

 

「まひるだよ、ミキちゃん」

 

まひるが自分がここにいることを言うと、ミキという女性は涙を零し始めて、ぎゅっとまひるを抱き締めた。

 

「ずるいよ、ずるいよまひる……!こんなタイミングで登場なんて、反則だよ……!」

 

「ごめん、ごめんね、ミキちゃん」

 

まひるは、涙してはいたものの、ミキさん程には動揺してはいなかった。

もしかしたら、彼女がここに来るのが、何となく分かったのかもしれない。

それで俺に、風見学園に行くようにお願いしたのか。

 

「なんか、よく分かんないこともあるけど、とにかく、お帰り、まひる」

 

「ミキちゃん、ただいま」

 

一旦2人は離れると、それぞれは右手で軽く握り拳をつくった。

 

「それじゃ、再会を記念して」

 

2人の拳が、こつんとぶつかり合う。

そして元気を振り絞った声で、2人だけの言葉で。

 

「「へーよーぶらざー」」

 

茜色の空の下、長年に渡る親友の再会は、喜びの下に果たされた。




次更新は未定。
でも書き始めたからにはこの話もしっかり終わらせるつもりです。
久々の一人称描写が思いのほか難しくて本気で苦戦した。多分前と比べて大幅に雰囲気が変わってる気がする。
ああ『Ⅲ』の方もいよいよ佳境だし頑張らないとなぁ。
俺今日誕生日ですマジおめでとう。
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