D.C.Ⅱ.C.E. ~ダ・カーポⅡ チェンジエンド~   作:Masty_Zaki

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お化けに怯えるお化けまひる超可愛い。


親友の先輩の幸せ論

 

 

明るく、楽しい雰囲気を醸し出し、それに乗じるかのようにあちらこちらから聞こえてくるお客さんたちの歓声。誰もが楽しそうにさくらパーク内をうろうろしている。

さて、そんな中で、俺たちはあからさまに場の空気乱している、何とも古臭くておどろおどろしい建物の前まで来ていた。勿論それは、子供たちにトラウマを植え付けるアトラクション――お化け屋敷。美夏曰く、ホーンテッドハウス。

 

「嫌です!他のにしましょう!これだけは駄目です!」

 

ここまで来て駄々をこねる人物は、俺らの中で1人しかいない。

無論、まひるだ。

何でも、お化けの癖にお化けが怖いらしい。挙句、お化けなんてこの世からいなくなればいいなんて言い出す始末だ。自分で自分の存在を否定してしまってどうする。俺が手を加えている時点で少し違う存在にジョブチェンジしてしまっているわけだが。

 

「なぁに、まひる、お化け屋敷駄目なの?」

 

逃げようとするまひるの腕をホールドして拘束し、友人に苦笑いしながら面白そうな表情をしているミキさん。

義之はそんなまひるに憐れみの視線を向けながらも、何も言わないで突っ立っている。

 

「……!」

 

「……!?」

 

あっ、義之と視線が合った。

顔を真っ青にしながら半泣きのまひるの顔が、義之に対して助けを求める、子犬のような目つきへと変わった。

 

「義之せんぱぁい、ミキちゃんに何かガツンと言っちゃってください!いくらなんでも嫌いなものを押し付けるのは酷いですよね?ね!?」

 

「いやぁ、まぁ……」

 

義之は曖昧な返答しかしないので、ここは俺が、まひるのために一肌脱ぐとしよう。

大事な家族を守るのが、俺の使命だ。まひるだって俺の家族のようなものなのだ。

 

「まひる、大丈夫だ、俺に任せろ」

 

「――光雅先輩?」

 

俺の頼もしい言葉に、希望を見出している。

そう、俺に頼れ。いつだって俺は、まひるや、みんなのために戦おう。

 

「嫌いなものから逃げちゃいけない。由夢なんて見てみろ。嫌いな料理を克服したんだ。まひるならお化け嫌いを克服できる。ですよね、ミキさん?」

 

「そうねー。まひるがお化け嫌いを克服したら私も嬉しいかなー」

 

「光雅先輩っ!?ミキちゃん!?」

 

俺の突然の掌返しに驚愕しつつ、更にまひるは逃げ腰になる。なお、ミキさんは放そうとはしないようだ。

 

「そうだ、折角ダブルデートみたいなことしてるんだし、ここは私と光雅くん、そして義之くんとまひるで回ろっか!」

 

「あ、それいいですね」

 

「義之先輩っ!?」

 

1対3。まひるに勝ち目はない。

なんかまひるをいじめているみたいだけど、これはこれで面白い。折角時間を空けてみんなでさくらパークに遊びに来たのだ、絶叫マシーンばかり乗ってないで、こういったものも久しぶりに遊んでおきたいと思っているのは、俺だけでなくて義之やミキさんも同じらしい。

というより、何だろう、このミキさんの視線。まゆき先輩と似通ったものを感じるんだがこれ如何に。

数の暴力で強引にまひるを説得し、何とかお化け屋敷を回ることに承諾を得ることができた。もちろんまひる自身は嫌がったままではあるが。

 

「それじゃ、とりあえず私と光雅くん行ってくるから、まひる、ビビり過ぎて漏らしちゃったりしないようにね!」

 

「約束できそうにないですぅ!」

 

そう言うなり、ミキさんは突如俺の右腕に腕を巻き付けてくる。

ミキさんもそれなりに美人でスタイルもいいのだから、二の腕に当たる柔らかい感触が、音姫との差を痛切に語りかけてくるものだから泣きそうになる。

音姫、お前は悪くない。音姫は身長が周りより若干高いから小さゲフンゲフン、慎ましく感じるだけで、音姫もスタイルはいいんだ。そんなもので落ち込む必要はないんだ。

 

「とりあえずその腕を放してくれないとセクハラしますよ」

 

「光雅くんのセクハラがどんなものかは気になるけどね……。それに、疑似とはいえダブルデートじゃない?」

 

「誘っといてなんですが、それは絶対に違うと思います」

 

あくまで俺は、まひるとミキさんにも楽しい思い出をつくってもらうためにミキさんを呼んで一緒に遊んでいるはずだ。

どこをどうしたらダブルデートみたいな展開になってあまつさえミキさんと俺がカップルみたいな雰囲気に――はなっていないといいが、そんな役割になっているのだろう?

 

「いいのいいの。私が怖がって、きゃー、とか、怖い―、とか言いながら抱き着かれると光雅くん的にも嬉しいでしょ?この青少年っ!」

 

この言葉で既にお察しである。この人、まずお化け屋敷みたいな子供騙しには怖がらない。怖がっても演技で俺をからかう程度。

こういう時音姫とか由夢とか連れてきたら面白いことになるんだけど、あいにく2人とも予定が入ってみたいだし。今度誘ってみよう。

俺は、右腕にぶら下がるミキさん――もといアクセサリーを装着してお化け屋敷に入っていった。

 

あれ、アクセサリーの下りって、以前もどっかで……

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

~義之side~

 

光雅たちが入って大体5分くらい……か。

俺の腕どころか胴体までがっしりと掴んで離そうとしないでプルプル怖がって震えているまひるをなんとか宥める。

そろそろ入場しても大丈夫だとは思うのだけど、まひる、大丈夫なのか……?

 

「い、行くぞ?」

 

「嫌です」

 

即答された。これはどうしたものか。

これ以上言葉で説得するのも無理そうだしなぁ。こうなりゃいっそのこと、強引に攻めるとしますか。

 

「ちょっとごめんよ」

 

俺はまひるの背中と膝裏に腕を回し、ひょいと抱え込む。

まひるの小さな悲鳴が聞こえて、慌てているのか足をじたばたさせる。無理矢理連れ込もうとしているのがばれてしまったらしい。

足を離している時点でもうまひるに抵抗手段はないに等しいので、このまま門をくぐっていった。

辺りは既に真っ暗。入って少し進んだところだから、振り返ったところで入り口は見えない。そろそろだと思ってまひるを下ろす。

 

「どっ、どうするんですかっ!?真っ暗で怖いです!た、例えるなら電車から降りた後、友達に電話をしようとして鞄を漁るものの携帯電話が見つからない、どこに置いただろうと記憶を辿ってみたところ電車の中で使っていたことは明らかだったから電話はほぼ確実に電車の中!既に発進してしまった電車に戻ることはできず、このまま誰かに盗られて個人情報を悪用さるかもしれないという事実が目前に迫っている時くらい怖いですっ!」

 

お、おう。

なんというか、久しぶりに聞いたぞ、その何とも言えない無駄に長い例え話……。

しかも、何となく想像しただけで微妙に怖くなるそのリアリティーがまたね、凄いのよ。バスの中とかで携帯をいじるときは注意しよう。本当に。

とまぁ、そんなことは置いておいてだ。

 

「俺は先歩いてるけど、1人で大丈夫か?」

 

俺はそんな白々しい台詞を吐いて、まひるに背を向け、首だけはまひるに向けてゆっくりと歩き出す。

するとまひるはあわあわと足をばたつかせて、まるで小さな子供のように俺の服の裾をぎゅっと握り、ぺたりと俺にくっついて離れない。

何と言うか、そんなふとした一面に、可愛いなと思ってしまう。

これはあれだ、まるで子犬を散歩しているような……んでもって、大型犬に怯えていて……そんな感じ。

 

「ったくしょうがないなぁ。ほら、手貸して。服掴まれたんじゃ歩きにくいからな」

 

まひるに手を差し伸べると、一瞬、という時もなかったくらいのスピードで俺の手を両手で握りなおした。

暗くて微妙にしか見えないが、どうやら涙ぐんでいるらしい。

光雅曰く、どこぞのバナナはお化け屋敷に入って気絶したんだとか。光雅の肝試しに使ったアレなんかを見せたらあのバナナはどうなるだろうか。

とにかく、今はこの左手の女の子が気絶してしまわないようにお化け屋敷をクリアしよう。

 

~光雅side~

 

案の定、と言うか、ミキさんは悪戯好きであった。

まひるという親友に再会できて心が弾んでいる、と言うのもあるのだろうが、怖くもないだろうにお化けが出る度に棒読みリアクションで抱き着いて来たり、突如いなくなったと思ったら脅かして来たり。元気いっぱいな人みたいだ。

今は大人しくしている、と言うか隣に並んではいるのだけど。

 

「ところでさ、光雅くんって、魔法使いなんだよね?」

 

それは初めて会った時、まひるのことを話す際に説明しておいたこと。

魔法使いってだけで十分に稀有な存在であるし、その存在が親友との再会を実現させてくれたのだ。気にならない、と言ったらウソになるだろう。

 

「魔法、ってさ、何のために使ってるの?」

 

俺は思わず、息を飲んだ。

彼女の問いかけが、あまりにも心に響いてきたからだ。

きっとそれは、まひるが亡くなる際に、それ以前に、まひるの病気を知った時に、彼女に対して、どれだけ強く願ったかを、何となく分かってしまったからかもしれない。

俺は、隠す意味もないし、正直に答えることにした。

 

「ある意味では、臨機応変なものなんですけど、大体共通してくることは、自分の幸せを守るため、ですかね。それは決して欲望を満たすとか、そんなんじゃなくて、みんなを幸せにして、自分も幸せになる、みたいな」

 

「へぇ……」

 

俺の答えに、ミキさんは何かに想いを馳せるように遠くを見て、しばらく無言になる。

何を考えているのだろうか、俺には分からなかった。その眼の先に、何があるのか。

 

「……今の私は、無理してないかな?」

 

再び口を開いたミキさんから飛んできたのは、そんな問いだった。

それは、多分だけど、まひるが戻ってきて、死んだはずの親友がそこにいて、諦めたはずの想いが成就して、複雑な気持ちを無理矢理整理して、嬉しさだけで自分を誤魔化しきってはいないか、そんな意図が、含まれていたんだと思う。

 

「それを決めるのは、俺じゃないですよ。ミキさんが死んで、幽霊になったまひると、そう言った現実にちゃんと向き合って、ミキさん自身が決めることだと俺は思います」

 

自分の幸せを決めるのは自分だ。同時に、ミキさんの幸せを決めるのもまた、ミキさん自身で会って、俺ではない。

他人に決められた幸せ程、脆く崩れやすいものはない。

 

「光雅くんってさ、優しいけど、意外と他人にも厳しいんだね」

 

ふと、そんなことを言われた。

優しいと言われたのはさくらにも、音姫にも、義之や由夢、他の友達連中にも言われたことはあるけど、他人にも厳しいと言われたのは、初めてだった。

 

「光雅くんが頑張るのは、決して他人の為じゃない、自分のために頑張ってるんだって。自分の幸せを尊重するために、他人の幸せも支えてあげる。だからこそ、妥協はしないし、厳しくできる……。私もまひるに、そんな風にできるかな……?」

 

「まねはしなくてもいいと思いますよ、ミキさんは、これまで通りのミキさんで、まひるに接してあげればいいんです」

 

きっとそれが、ミキさんの幸せであり、まひるの幸せでもあるはずだから。

親友と言うのは、俺にはよく分からないけど、きっとそう言うものなのだと、信じたい。

 

「光雅くんてさ――ホントに学生さん?」

 

「はい?」

 

「いやだって、二十歳も過ぎてない子供がここまで達観してるなんて信じられないもん。実はおじいちゃんでしたって言われても、驚かないかな、うん」

 

俺って、考え方がおっさん臭かったのか?

お化け屋敷と言う、本来怖がるべき場所で、楽しそうに笑っているミキさんを見て、ちょっとショックを受けてしまった。




あと一、二話くらいでまひる編終わらせる予定。
相変わらず書くかどうかわからないけど、次は恐らく渉・ななか編かな?
『Ⅲ』の方で出てくるオリキャラ、白河息子の流々人の存在が明らかに……なるかもしれないしならないかもしれない。
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