傍若無人だけど義理に熱い硬派な男がおもしれー女にぞっこんになる話は健康にいい。
ロズワード・ロザリア。
その天竜人は程度の差こそあれど、様々な人間に知られていた。
西に風光明媚な自然があればキャンバスを抱えて船を出し。
東に美しい人間がいれば大理石と
北に新しい祭りがあると聞けば楽器を手に取って馳せ参じ。
南に賑やかな街があれば設計書をもって別荘を建てに向かった。
自他ともに認める芸術狂いである彼女の行動に、家族だけでなく足として使われる海軍も頭を抱えるほどだった。
その芸術に関する実力も飾りや道楽ではなく、彼女の芸術品は高い評価とともに受け入れられ高値で取引される。絵画、彫刻、
美に対する執着、そして行動力は彼女の身内だけでなく海軍もよく巻き込まれる。なにせ、毎回現地への足として使われるだけでなく、認められた海兵が芸術にされるパターンもあるので。
海軍の中にも、彼女の被害者は何人かいる。彼女が『美しい』と認めたのであれば、奴隷にされるか彼女の芸術の題材としてしばらく幽閉されるかの二択であるため、海兵たちは彼女の気まぐれに巻き込まれないことを、切に祈りながら職務に励んでいる。
…………ということに、一応なっている。
「そこのお前! とても気に入った、お前をワタクシの奴隷として召し上げてあげるアマス! 光栄に思うアマス!」
「ま、待ってください! どうかお慈悲を、この娘はまだ10歳で……!」
「あら、好都合アマス。こういうのは幼いうちに仕込むに限る。執事、手続きをするアマス! それとワタクシに異議を唱えたこの男もまとめて奴隷にするアマス!」
「かしこまりましたお嬢様。兵士よ、この二人を連れて行きなさい」
とある貧困に苦しむ非加盟国にて、今日もワタクシは絶好調。小汚くてやせ細った小娘を見つけたので、聖地に持ち帰って戯れに虐待することにした。
故郷が恋しくて泣きわめく小娘を風呂場に連れ込みお湯攻め。
充分お湯をかけた後は薬品を体中に塗りたくりゴシゴシする。
薬品で体中が汚染された事を確認し、再びお湯攻め。
お湯攻めの後は布でゴシゴシと体をこする。
風呂場での攻めの後は、全身にくまなく熱風をかける。
その後に、野菜をドロドロの液状にしたものを食わせる事にする。
腹が満たされるような食事なんて与えるわけがない。
もちろん暖かい食べ物なんて贅沢なものは与えない。ぬるい食べ物で十分だろう。
その後は同じように攫ってきた子供たちの中に放り込み、互いに
ぐったりとした小娘を小部屋に押し込み、施錠して寝る以外の行動をとれなくする。
寝るまで監視した後に就寝。
…………はい、ふざけましたすいません。
順を追って説明しよう。ワタクシはロズワード・ロザリア宮。ロズワード家の長女、27歳。
ごく普通の一般天竜人だったのだが、ちょっといろいろあって「あれ? 天竜人ってお先真っ暗では?」と思うようになった。
天竜人って、この世界の大多数の人間からヘイト買いすぎじゃない?
だって普通の人間の十倍の力がある魚人がずっと迫害されひどい目に遭ってきたのだ。神業の武人を祖にもつ程度の、魚人よりずっと少ない人数のコミュニティである天竜人が同じようにならないなんてどうして言える。というか、なんでこんな社会構造を維持できてるのか分からなくなってきた。海軍とか神の騎士団とか考えても、世界を相手取れるだけの戦力なのかどうかよく分からない。
おそらく奴隷の心理のように、学習性無気力とか認知的不協和などが絡んでくると思われるのだが、それだって長続きしない。王政が廃止され民主主義の国も出始めているし、革命軍なんてものも出てきた。だからこの天竜人一強の社会構造は、もう長続きしないだろうと思ったのだ。
そして体制が壊れた後の天竜人の扱いは簡単に想像がつく。命を顧みない労働階級なら優しいもの。奴隷のように飼われたり玩具にされたり、家畜のようにされる可能性が容易に想像出来た。
……今ならば、それは当然の報復だと理解している。その時代の流れを止めるつもりもないし、協力することもやぶさかではない。ただ、それでもワタクシは痛いのも辛いのも怖い。そしてもし己の行いを反省した天竜人がいるのなら、償う機会を与えてやってほしい。甘い考えなのは百も承知だが、その為には革命軍とのパイプが必要だ。
そんな想いで、ワタクシは行動を開始することにした。まずは味方が必要だ。幸い、生まれた頃から面倒を見てくれていた執事が味方についてくれたため、いろいろ相談することできた。
人を味方につけるには、信用と利益、そして能力が必要。そして天竜人という組織に敵対するのなら、可能な限りそれを明かしてはならないこと。
その助言に従いながら、ワタクシは会社を興した。表向きは美術商、裏側では機密情報のやり取りをする拝金主義のオークションだ。美術商ならばワタクシの作品をこっそり売りに出せるし、機密情報を集められるようにすれば革命軍の手助けもできる。
だが、どんな会社にも従業員は必要だ。ワタクシはそれを各地から集めた奴隷によって賄った。
もちろん、過酷な労働にならないよう労働時間、作業内容は気を付けている。たまたま拾ったスパイ経験者からノウハウの継承も行った。
そしてワタクシがとある出来事によって手に入れた能力は、隠し事をするのにもってこいの能力だった。それを利用し、『この仕事にはロザリアの能力が不可欠である』と認識させることで、表のリーダーがいるにも関わらず本当にリーダーはワタクシという関係を構築した。
しかし、大量の奴隷を買い込みながら姿を見せないのでは疑われる。そこでワタクシは、自分の趣味を利用することを思いついた。
ワタクシの趣味は、多岐にわたる芸術だ。美しい人間の彫像を作るのも好きだし、人間を着飾ることも好きだ。素質のある人間を美しい人間へと成長させるのはとても楽しい。
それを利用して、様々な人間を奴隷として召し上げては美しく仕立て上げ、モデルにして絵を描き彫刻を作り、飽きたら下界に帰すという建前で会社に就職させるという方法を取った。
家族からは浪費家だと言われたが、ごまかすことには成功した。時間が経ち会社も信頼を得られたのか、奴隷だけでなく一般人から従業員になりたいという人員も増えた。経験者が増えるのは会社としてもうれしい限りである。
そうして会社が軌道に乗ったころ、ワタクシは一人暮らし(奴隷付き)を始めた。能力のおかげで会社とのやり取りには困らないが、それでも同じ家の中で隠れながら行動するのは精神衛生的に悪い。建前に困ったので適当に
「チャルロスの顔がどうしようもないくらいにブサ……いえ、不潔アマス。もうこの家にいるのは嫌アマス」
と言って出ていった。その時の弟の顔は見ものだった。
一人暮らしを始めたわたくしは、悠々自適に芸術ライフ……とはもちろんならない。会社の経営もあるし、己が関与している事を隠さなければならないため会社に潜入してくるスパイを秘密裏に処分しなければならないし、何より今のワタクシには戦力がない。
申し訳ないなーと思いつつ、護衛のCPや騎士団に所属している親戚から教えを乞うたりしているのだ。
ほかにも、起こした会社で様々なサービスを考えたりしている。奴隷に性的なサービスを強要するのは主義に反するが、風俗というのは芸術と相性がいい。最初期の歌舞伎だって遊女の客へのアピールだったのだ。
それを参考に、会社で売る絵画や彫刻のモデルをやってもらった人間に、酌を任せるサービスを始めたら大当たり。美女が躍る様子を記録した映像電伝虫の販売も始めてみたところ、業績が面白いように上がった。試しに美男でもやってみたところ、女ほどではないが結構売れた。
美しいものに惹かれるのは男だけに限らないよね。
同意の上でならば水商売の斡旋もいいんじゃないかと言われたが、断固拒否した。
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ミュージアム:ディオニュソス。シャボンディ諸島に本店を構える、この会社の名前を知らないものは裏社会にはいない。いるとしたら、それは最下層の下っ端かよっぽどのバカぐらいのものだ。
正体不明の富豪が、己の評価した現代作家を売り出すために作られた、道楽の美術館。表ではそのように通っているが、実際はそんな生易しいものじゃない。
"間諜の社交場"と言われるほどに、この場所では表に出せない情報が行き交っている。
壁は全て収音性。室内は展示物以外ほとんどが薄暗く、監視用電伝虫はあからさまな死角が用意されている。
そんな、やましい話をしてくださいと言わんばかりの場所で開かれるオークションでは、普通の絵画や彫刻のほかに
そんな美術館には、珍しいことにバーが併設されている。展示場からは離れているが、そこを利用する客は多い。むしろ、そこをメインに使う客の方が多いだろう。なにせその場所こそが、裏社会への入口なのだから。
予約していた12番のバーの扉を開ける。そこは少人数で利用するための個室となっており、席は5つしかない。完全予約制のバーは時間制限があるため手早く用を済ませようと、挨拶してきたバーテンダーに決まっていた注文を答える。
「いらっしゃいませ、トラファルガー様。ご注文は?」
「…キューバンを一つ。それと、"ここ"にオークションのカタログはあるか?」
この場所を愛用していた海賊から聞き出した、この場所での裏情報の注文方法。
『4の倍数のバーで、キューバンのカクテルを頼みながら、オークションのカタログを確認する。そのとき必ず、"ここ"にあるのかと尋ねること』。
どうやらその情報は正しかったようで、バーテンダーは手早くカウンターの裏から薄い冊子を取り出した。
素早くカタログに目を通す。カタログには、ここ一週間のオークションで取り扱われる情報の一覧が載っていた。『高額懸賞金海賊の体調不良情報』『リンカ王国秘匿軍事会議の録音』『グランドライン:妖刀の在処』など、様々な情報が記載されている。
ピンからキリまでの情報。しかし、その情報に嘘偽りはない。このオークションで扱われる情報は必ず、ミュージアム側の精査を受ける。その中で真実であると判断されたものだけが、このオークションへの列挙を許されるのだ。どんな手を使っているかは知らないが、ここで扱われる情報と言う時点で一定の信用は確保されているらしい。
渡されたカタログを一通り眺めていると、『ドレスローザ密輸出裏帳簿(相手国の情報含む)』という文字が目に入った。
「…………っ!!」
想像以上の情報に思わず口角が動いた。だが、ここで終わりではない。この情報は
それがこのオークションの恐ろしいところであり、資金の源だ。
このミュージアムでは情報は全て金次第。ここのオークションに参加する者は、『情報を得たい側』と『情報を奪われたくない側』に分けられる。
そこで起こるのは、情報を得たい側と守りたい側による札束の殴り合いだ。そうして青天井になった金額は、出品者とミュージアム側が得られる仕組みとなっている。
この商売が生まれたことで、裏社会での情報屋の価値は様変わりした。
それまではフリーの情報屋が大小東西の様々な情報を集め、組織に属する情報屋はその組織が有利になるための情報を集めていた。
しかし情報屋という職自体、危険を伴うものであるのは間違いない。情報を奪われたことに感づいた敵に殺されるだけでなく、中には属していた組織から「それを知っているのは都合が悪い」と消されることもあり得るのだ。
そんな危険な情報屋という職は、この会社を間に挟むことで身の安全を確保することが出来るようになった。情報を提供しその正確性を担保するのはオークション側であり、情報を集めたスパイは表に出ない。
もちろん情報収集という行為自体に危険はつきものだが、それでも情報を得たことによるリスクの増大からは逃れられるようになったのだ。噂によれば、特殊な道具によって独自の連絡手段と諜報技術を擁しているため、情報収集という行為自体も格段に安全になったと言われている。
これにより多くの情報屋が属していた組織を抜け、この会社に所属することとなった。フリーの情報屋も安全と巨額の報酬を求め、情報の提供に際して間にこの会社を挟むようになった。
そうして様々な情報を独占したこの会社は、オークションと言う方式でその情報を売り出した。それも、善悪や立場を問わず。
『知るも隠すも金次第。智慧を得たいにしろ秘密を守るにしろ、望みがあるなら金を積みなさい』
こうして、たった10年ほどしか経っていないこの会社は、裏社会において決して無視できない存在となった。
ローが求めていたドフラミンゴに関する情報もあるだろうと探りを入れてみたが、予想以上の大当たりである。
問題は、これの情報を競り落とせるだけの金額を用意できるかという点だ。
情報の横に書かれている、オークションの開始金額は2000万ベリー。開始時点でこの金額なのだから、競り落とすためにはその倍以上は覚悟した方がいい。普段であれば、脅すなり奪うなり海賊らしい手段を取るのだが。
「お望みの商品の確認は終えられましたかな?」
「……ああ、世話になった。五日後、20時からのオークションに参加したい」
「かしこまりました。こちらのカードをお渡ししますので、当日は8番会場にて受付にお渡しください」
しかし、このオークションに並べられた時点で、奪い取るという行為はリスクが大きい。
二度とこのオークションを利用できない、なんて可愛いものだ。過去にはこのオークションを潰そうとした国が、機密情報を敵国にバラまかれ崩壊した例もあると聞く。
そんな影響力のある組織を敵に回すのは避けたい。幸い、シャボンディ諸島には襲っても気の引けることのない人間屋がたくさんある。それらを襲って金を工面するほかないだろう。
「それとトラファルガー様。お客様にお会いしたいとユーマ店長が仰せなのですが、これからお時間を頂戴することは出来ますでしょうか?」
「……? 大企業本店の店長とやらが、一介の海賊に何の用だ」
「要件はわたくし共では伺っておりません。店長からは、自分はトラファルガー様の知己である、とだけ聞いております」
思い当たるふしがない。生まれ育った故郷は滅び、第2の故郷となったスワロー島に住むヴォルフと、北の海で出会ったクルーたちの家族以外に知己と呼べる人間は思い当たらない。ユーマという名前にも思い当たる者はなかった。
警戒を表情の裏に隠しながら、「この部屋でなら会ってもいい」と返答した。
「ありがとうございます。ただいま店長を連れてまいりますので、少々お待ちください」
素早く、しかし丁寧なお辞儀と共にバーテンダーはバックヤードへと引っ込んだ。
シャボンディ諸島の地図を眺めて襲撃する人間屋の目星をつけながら待っていると、数分もしないうちにコンコン、と入口がノックされる。
入れ、と扉の向こうに返答した。
一切の音もたてずにドアが開かれる。そこに、いたのは、
「ロー……! 久しぶりだなァ!」
「コラ、さん……!?」
永遠に失われたと思っていた、大好きな恩人の姿だった。
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やっべお父様だ。
シャボンディ諸島の人間屋を訪れていたワタクシは、聞き覚えのある声に反応して入口の方に視線を向けた。あちらから気づかれることはなかったが、ここで家族と顔を合わせるのはまずい。可能性は低いが、万が一にも自分と会社の関係がバレるようなことはあってはならない。
幸いにして、天竜人の衣装を今は身に着けていない。いつでも着れるように服自体はユーマに預けてあるが、この服装なら少なくともすぐに天竜人だと分かることはないだろう。
VIP席へと案内されるお父様たちを尻目に、そそくさと会場の後ろに回って出入り口のすぐそばへと移動する。
顔を隠しながら配られたカタログを確認するが、書かれているのは年齢と性別くらい。うちの
そうやってカタログを眺めていたところ、扉を出たすぐそこが何やら騒がしいことに気が付いた。少しだけ扉を開けて外の様子をうかがう。
焦燥、緊張、恐怖。
それらを顔に張り付けた、王侯貴族とはかけ離れた雰囲気の一団。ほかの参加者のように装飾品で着飾ることもなく、動きやすい軽装を身に着けた姿からは、どちらかと言えば観光客というイメージが先に立つ。こっそり話に耳を傾けてみれば、「ここで間違いない」「こんな商売」「ケイミーちゃんを返せ!」という言葉が断片的に聞こえた。身近な人間がこのオークションで売られでもしたのだろうか。
会場に入ってきたその一団からは、「3億は用意した」「人魚が高くてもこれなら…!」という声が聞こえてくる。普通の王侯貴族ならば戦えるだろうが、ここには天竜人もいる。3億ベリーでは負ける可能性もあるだろう。
……手伝う道理は、無い。無関係の赤の他人でしかない。ただ、聞いてしまったからには、無視するのはワタクシの美学に反する。
難儀な性格だなと自嘲して、ワタクシはその一団へと近づき、金髪の男へと声をかけた。。
「もし、そこのお前」
「ん? いかがいたしましたか、レディ?」
「このオークション、お前の目当ては誰だ?」
ワタクシの言葉が予想外だったのか、目を瞬かせた男は一緒にいたオレンジの髪の女に視線を向ける。女は警戒を顔に浮かべながら答えた。
「そんなの、あなたに答える必要があるかしら?」
「警戒せずともよい。先ほど、お前たちの会話が聞こえてな。もし奴隷にされた親しい人を助けたいということならば、手を貸してもよいと言いにきた」
「「!!」」
ワタクシの言葉に、一団は目を見開いた。喜ぶ者と訝しむ者に分かれながら、訝しんだ側である女は口を開く。
「協力する条件は? あんたの目的は何?」
「ワタクシは芸術家を営んでいてな。このところ、食指が動くようなモデルが見つけられなくてスランプ気味だったのよ。ワタクシの芸術のモデルとなってくれるのならば、足りない金額は自分が出してやってもよい。どうだ、乗るか?」
「絵のモデル? ……本当に、それだけでいいのね?」
「ふむ、警戒するのは当然よな。それでは、お前たちをモデルにした作品を販売する許可も追加させてもらおうか。それを売った代金が、お前たちのモデル料という名目ならばどうだ?」
「……のった。協力できる金額の上限は?」
「7億まで。それ以上は条件を追加させてもらう」
「わかった。目当ての番になったら私から手を挙げるわ」
契約成立、との意思表示に差し出された手に握手を返す。
……相手が勝手に勘違いしてくれたが、ワタクシ、絵のモデルになれなんて一言も言っていない。
この肉感的な美女をモデルにするなら彫刻に限る。ぜひとも等身大のヌードモデルをやってもらいたいものだ。
「あなた、名前はなんていうの?」
「バリュエレータと、そう呼ぶがいい」
それだけを告げて、彼らとともに店の中へと戻る。見ると、目当てだった踊り子の競りが始まっていた。金髪の男は女好きなのか度を越して優しいのか、「ナミさん、あの子も買っちゃダメかな……?」と言って仲間に軽く蹴られた。
ワタクシはそれを気にせず、金額が上がらなくなったところで「1000万ベリー」と手を挙げる。直前の金額より300万ベリーほど上がった金額に会場が軽くどよめいた。それを見たオークショニアが「出ました1000万ベリー! これ以上の方はいらっしゃいませんか~?」と観客を煽る。
もう上がらないだろうなと静観していると、袖口を引っ張られている事に気が付いた。横にいたオレンジの会の女が険しい顔でこちらを睨んでいた。
「待って、あの子じゃないわ! サンジ君が勝手に言っただけで……!」
「わかってる、ワタクシが個人的に欲しいだけだ。心配せずとも、お友達の分は残しておくとも」
「……分かったわ。聞きそびれたけど、7億円以上かかった時の追加の条件は何?」
「人魚本人でも、お前たちでもいい。5年、ワタクシが勤めている会社で働け。」
「会社? 一体何の会社よ」
「性交渉無しのガールズバー、もしくは地獄の事務作業が業務内容だ。事務作業なら自宅での作業も可能となっている」
「……どっちするかはともかく、考えておくわ」
「客としてのご利用もお待ちしております」
「するかァ!」
ガァ! と吼えたてる女。
会社の社長が私であるということはトップシークレットであるため、あくまで『自分が勤めている会社』という体で話す。
そんなやり取りをしながらも、オークションは無情に進んでいく。海賊の船長を買おうと思ったが……自害されてしまった。隣で金髪の男が「奴隷として人間に飼われるくらいなら、ここで死んだほうがましというやつもいるだろうな」と呟いたのを、ワタクシは俯きながら聞いていた。
……否定は、しない。過去のワタクシもそうだったし、今現在の家族も奴隷の扱いはひどい。ここで「自分ならひどい扱いはしなのに」と思ってしまうのはお門違いだろう。
若干気落ちしながらも、オークションには続けて参加した。成人男性の10人パックを買って、ワタクシは一旦終了。あとはお相手の挙手を待つだけだ。
そう思って壁に体を預けていると、オレンジの髪の女が話しかけてきた。
「あんた、普通に奴隷を買うのね」
「ワタクシが勤めている会社は常に人手不足でな。奴隷で補うために経費で買っているが、福利厚生はちゃんとしてるぞ」
「本当に”職業安定所”として使ってるのね、意外」
「あの会社もいいものではない。なるべく危険のない部署に配置しているが、会社自体は裏社会で名が通っている。もしあの従業員だとバレれば、2度と太陽のもとは歩けんだろうさ」
思い返してみて、自分の奴隷の扱いを自嘲する。
奴隷は足が付きにくく、家族を巻き込む心配も少ない。大半は裏方での集めた情報の取りまとめ作業だが、人によってはスパイとして様々な国に送られる。ワタクシの能力のおかげでスパイだとバレる心配が減るとはいえ、危険な任務なのは間違いない。
普通の天竜人よりは良い待遇とはいえ、それを恩に着せるのに罪悪感がないとは言わない。それでも今更やめるわけにはいかない。せめて革命軍によって天竜人という制度が無くなるまで、ワタクシはこの活動をやめるわけにはいかないのだ。
「ふぅん……ま、あまり深くは聞かないけど。太陽のもとを歩けないのは、奴隷になった時点で変わらないでしょうに」
「奴隷よりはましだろうが、一般人にも戻れん。比較対象の問題だろう」
「そういうものかしら。……あっ、ケイミー!」
「!」
気が付けば、彼らのお目当てらしい人魚の番が回ってきた。巨大な金魚鉢のようなものに入れられた人魚の少女が、彼らのいる方向に視線を向けて何事かを叫んでいる。おそらく助けを求めているのだろう表情に、たまらずオレンジの髪の女が声を上げようするが。
「5億! 5億ベリ~!!」
それよりもはやく、汚らしい男チャルロスが声を上げた。弟じゃん最悪。チャルロスとの間に金髪の男を挟んで身を隠す。
相場をはるかに超えた金額に、他の参加者もうなだれた。そうでなくても、金銭で天竜人とやりあうのは普通の王侯貴族では難しいだろう。
「……ほら、女」
「―――っ! 6億ベリー!」
「ぬっ!?」
「ろ、6億! 6億が出ました! 他に続く方はいらっしゃいますか!?」
固まっていた女の肩を叩く。放心から戻っていた女は、すぐさま対抗して声を上げる。まさかの対抗馬にチャルロスが不満げな声を上げた。オークショニアは引きつった笑みで進行を続ける。天竜人の機嫌を損ねないかという不安と、思った以上の大金に目がくらんでいるのだろうか。
「ぐぬぬぬ……! 7億!」
「8億!」
「ならば~、9億!」
「10億!」
予定していた上限金額に届く。天竜人以外がここまでの金額を出したことに、会場の人間たちは驚きが隠せない。
予想以上に粘られたことで、弟は怒りで顔が真っ赤になっている。そばにいる男――お父上――に窘められているようだが、聞く耳持たない様子だった。
そして弟は、女にとって言われたくない言葉を放った。
「うう~~! 11億ベリ~!」
「「「!!」」」
女たちの用意した3億と、ワタクシの手持ちの7億。合計10億ベリーの予定金額を超えられた。ここから先は彼女たちの判断となる。
……ワタクシは何も言わない。言えることはない。
金額超過による対価を払ってでも助けるかどうかは彼ら次第。ワタクシは彼らを見守った。
「11億! 11億まで上がりました! どういたしますか!?」
「………っく!」
「では、11億で―――――」
「15億!」
4億とんで、いきなり15億と女は宣言した。これには弟もついていけなかった、というより、いい加減お父上からの静止に抗えなかったようだ。オークショニアからの発破に弟は、というかお父様が首を横に振ることで答えた。
「15億! 他にはいらっしゃらないようなので、これにて落札とさせていただきます!」
オークショナーな言葉に、女たちが胸を撫で下ろす。これで終わったと一息ついた瞬間、「あああああああぁぁぁぁ~~~…………!」と叫び声が聞こえてきた。
何事かと声の聞こえてきた方向に視線を向けると、勢いよく窓が砕け散った。そこから何人かの男たちが転げ落ちてくる。だが、ワタクシの視線はその中の一人に釘付けになっていた。
緑の髪の、刀を携えた男性。その男を見た瞬間、ワタクシの優先順位は見事に狂ったのだった。
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ちょっと面倒なことになった。
お友達らしい人魚を競り落とすまでは良かったのだ。しかし、突如として乱入してきた彼らの仲間によって、弟や父上たちはぶん殴られ踏みつぶされ、まあ大変な有様。まあそれ自体は良い。問題は、落札したはずの人魚やそのほかの奴隷までもが解放されたことだ。
奪還されてしまえば、ワタクシが協力したという実績もなくなり麦わらの一味をモデルにするという目的もパア。従業員の確保もご破算。それは困る。
そう思って、ワタクシは連れてきていたユーマに購入した奴隷の確保を任せ、自分は麦わらの一味に交渉した。気絶した弟から天竜人特有の服をはぎ取り、それを纏って言ったのだ。
「天竜人を人質にとったから道を開けろ! と、外にいる海軍に言ってやるがいい。この服を着ていれば説得力はあるだろう?」
報酬はさっき言った通りでよろしく、と笑って言った。報酬の話を事前にしていたおかげか、女――ナミと名乗った――はすんなりと受け入れてくれた。
しかし簡単に逃げることは出来ず、今は一時的な避難先であるバーに彼らとともに身を潜めていた。
「で、こいつは何時まで付いてくるんだ」
「レディに指さしてんじゃねぇぞコノヤロー!」
「うるっせぇなこのぐるぐる眉毛!」
一味のものでもない人間が付いてきていることに、緑髪の男は苦言を呈する。金髪の男はよほどの女好きだったらしく、赤の他人である自分に対しても丁寧な対応を取り続けてくれた。その二人が喧嘩する様子をしり目に、ワタクシは懐からメモ帳を取り出す。
「ワタクシも暇ではない。まずはこれだけ渡しておくから、暇になったら連絡をよこせ」
店主にペンを借りて自分の連絡先を書く。それと念のため、裏に『9』と彫り込まれたピンバッジを一つ取り出した。
「なんだこれ?」
「連絡先と、店への入館証だ。借金の踏み倒しなぞ認めんからな」
店への入館証と偽って、発信器を手渡す。男は疑うことなく受け取ったが無理もない。それ自体は本当にただのピンバッジなのだから。
ワタクシの能力はテルテルの実。『触れたものに対して、通信機能を付与する』という能力だ。
能力を行使した物品であれば、音声を、映像を、記載内容を、対応させた物で受け取れる。
遠く離れた場所で、盗聴される恐れもなく情報を受け取ることができるようになるのだ。
うちの会社で使われている標準装備であり、重要機密。特殊な科学技術による産物であるとごまかしているが、実態は能力による通信機能。
たとえば、『ビーコン、地図、駒』に能力を使うことで、『ビーコンが今どこにいるかを、駒が地図の上で指示してくれる』という機能が付けられる。それによって、誰がどこにいるかを探ることができるのだ。ビーコンが壊れた際には、駒も壊れるアラート付き。
ほかにも、『一対のノート』に使うと、『片方に書いた内容が、もう片方に複写される』という機能をつけることができる。能力を調整して使えばノートが焼失した際、片方のみが焼失したり両方焼失するようにもできる。用途によって使い分ければ、便利な連絡手段となる。
イヤリングが電伝虫に。ネックレスが盗聴器に。彫像が監視カメラに。
身近なものから情報をやり取りできるようにする能力。それによって支えられているのが、ワタクシの会社である。
この能力によって、うちの会社のスパイはバレる可能性が大幅に減った。何せ従来の通信機器を使うことなく情報のやり取りが可能になったのだから証拠が残りづらい。『本人が持つメモ帳と支店に置いたメモ帳』に能力を使えば、傍からはメモを取ってるようにしか見えないのに、実際は情報が筒抜けになる。観察対象に能力を使ったネックレスでも贈れば、実はそれが盗聴器になってて支店で待機している担当者が会話内容記録し放題、なんてことも普通にある。
普通の対スパイの警戒網では、そうそうバレはしないのがうちの強みである。
まあ今回渡したピンバッジはただのビーコンなので、あくまで借金の踏み倒し防止なのだが。踏み倒されそうになったらこのバッジを辿って追いかける所存である。
「お前、名は?」
「あ゛ぁ?」
「名を名乗れ」
名前を問われた男は、不審を隠さずに「……ロロノア・ゾロだ」と答えた。
「ゾロ、うん、覚えたぞ。ワタクシはどうやら、お前にめっぽう惚れ込んだらしい」
「はぁ!?」
「なにぃ!?」
「あら」
ゾロと金髪の男が素っ頓狂な声を上げ、黒髪の女が楽しそうにこちらを見る。それに構わず、鍛え上げられた肉体を上から下へと確かめるように視線を動かす。
ああ、オークション会場で一目見た時から思っていたが、やはりこの体は素晴らしい。鍛えがいがある、という意味でも極上だ。
「その体、その眼差し、その声、その佇まい! とても好みだ、ぜひともお前の絵を描きたい! 女どもも美しいが、個人的な好みとなるとやはりお前だ!」
「お、おぅ……?」
「逃げるなよ? 約束だからな? お前の体はワタクシが予約したからな、忘れるなよ!」
「何が予約だ!勝手に決めてんじゃねぇ!」
「契約したのはナミだから、文句ならばそっちに言うがいい。ともかく契約、約束、すなわち遵守だ!」
「分ァかったからちょっと離れろ! 近ェ!」
「いやもう今から少し描いちゃダメか? ラフ! ラフだけ描かせてくれ! 全裸で!」
こんな色っぽい肉体見て欲情しない方がおかしい。描きたい欲求が抑えきれなくなったため少しだけ描かせてもらおうと思い、素早くシャツをはぎ取った。続けてズボンを下ろそうとしたが、ゾロに手を押さえつけられて止められた。
「やめろ! こんなところで何してやがる、変態かお前!?」
「こんな素晴らしい肉体を衆目の場に晒しといて何言ってんだ猥褻物陳列罪!「わっ!?」減るもんじゃないんだから脱げ! 描かせろ!」
喋る骨格標本が「ヨホホホホッ、ゴホッゴホッ!」と爆笑する声と、ニコ・ロビンの「男女が逆じゃないかしら」という声を無視し、二人してズボンを上げるか下げるかの攻防を続けていたところで、「アウ! なかなかだがなお嬢ちゃん。続きは海兵を撒いたあとだ」と体のバランスがいびつな大男に引きはがされた。なかなかって何がだ。
「ケイミーを助けようとしてくれたらしいじゃねぇか。人間屋から逃げる時も手を貸してくれたし、礼はもちろんしてやりてぇ。ただ、今は海兵に追われていて難しい、そこで確認なんだが、お嬢ちゃんはこの島に住んでるのか?」
「……いや、住んでいるのは別の場所だ。ここには人間屋を見に来ていただけで、普段は各地にある会社の支店を周っている」
「その支店、新世界にもあるか?」
「ドレスローザという国にある。……まさか」
ワタクシは苦虫をかみつぶしたような顔になっているだろう。笑いながら大男は答えた。
「その国へのエターナルポースが貸してもらえりゃあ、俺たちの方からお前の方に向かえる。お前はそれを待っていればいい! そうすればおまえさんの手間も危険も減るが、どうだい?」
「……分かった。ただし、あんまりにも時間がかかるようなら、追いかけて押し掛けるからな?」
「オウ! みんなもそれでいいよな?」
我関せずとゾロとの攻防を眺めていた一行は、「いいんじゃない?」という意見で一致した。
肝心のエターナルポースは店にあるため、落ち着いたころに店に取りに来るという話になり店について話したところ、事前に店のことを知っていた黒髪の女から驚愕の視線をもらった。
「驚いた……あなた、あの美術館の人間だったのね」
「おや、常連だったか?」
「私自身はないけれど、元上司がよく使っていたわ。いずれお邪魔しましょうかしら」
「いつでもお待ちしております。買い手としても、
お客様ならば丁寧に対応しなければならないと思って一礼すると、ナミが嫌悪感を滲ませてこちらを睨んでいた。なぜ。
「あんたのとこって、人身売買もやってるの? ロビンは渡さないからね!」
「いつワタクシがそんなことを言った。欲しいのは歴史やポーネグリフの情報、商品として高く売れそうだからな」
「……たしかに、法外な値が付きそうね。でも、それを知った貴方たちは大丈夫なのかしら?」
「上だってさすがにオークションとして売れるものとそうでないものの区別くらいつける。もしポーネグリフの読み方一覧でも出品してくれるなら、信用のおける相手だけ参加させる。間違っても海軍は参加させないだろうさ」
「その相手の選定、私も口を挟める?」
「ご希望とあれば、担当者と交渉してください」
ニコ・ロビンとワタクシの二人ともが、ニヤリ、と口端を吊り上げる。
いい商品が入荷できるかもしれない。
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「おいミホーク。いいのか、こいつをここに置いて」
「お前の鍛錬に支障をきたさず、情報を漏らしもしないならば構わん」
ルフィからのメッセージを受け取り、くまに飛ばされた先で会ったミホークに稽古をつけてもらって数日後、この島には客人が訪れていた。
あの日、シャボンディ諸島で出会った女。ケイミーを買い上げる手伝いをし、その見返りとして絵のモデルを要求した変わり者の芸術家。
バリュエレータと名乗った女は、なぜかこのシッケアールに飛ばされた自分を見つけ出した。メリー号のような小さめの船で配下を数人だけ連れてやってきたその女は、開口一番こういった。
「借金の取り立てです! 体で返せ!」
第一声がこれだったので、ペローナはそりゃあもう狼狽した。借金の心当たりもなかったのに、本当に大慌てだった。すぐに目的はゾロだと誤解を解いたが、それはそれで赤面したりとうるさかったので二人して怒鳴ったりもした。
借金の取り立てであること、ゾロに自分の描く絵のモデルになることで返してほしいことをミホークに説明したこの女は、ゾロの所在を海軍に明かさないことを条件にこの島に住み着いた。
驚いたのは、この女があの時切り損ねた天竜人とやらの姉だったことだ。その時にようやっと本名を教えてもらえた。恨んでないのかと尋ねると、「恨むほど弟を大切に思っているのなら、お前たちに協力しない」とごもっともな答えが返ってきた。
天竜人にもいろいろあるのだろうと気にせず自分の鍛錬を続けていたが、モデルになるとナミが約束してしまったうえケイミーを助けようとしてくれた恩があるためモデルを引き受けていた自分は、嫌がおうにもあの女の行動が目についた。
まず、あいつ自身相当に強い。あいつはウソップとはまた違う狙撃手だった。ウソップのように遠距離から敵を狙撃するタイプではなく、二丁拳銃で素早く周囲の敵を撃ち抜くタイプ。ミホークに言われて一度手合わせしてみたが、銃剣を使って接近戦もすることができた。その時は俺が一本取ったが、ともにミホークから覇気を教わり始めたため、習熟の速さによっては危ういかもしれない。強い女は嫌いじゃない。
そして芸術への情熱が半端じゃない。あいつは俺を絵だけじゃなく彫刻でもモデルにし始めた。女のくせに容赦なく男を裸にひん剥こうとしたため、せめてもの抵抗としてパンツだけは守り抜いた。……肌色のブーメランパンツにされた上に、模擬戦で負けていたらそれを出しに押し切られたかもしれない。
そうして絵だけでなく彫刻も作り始めたロザリアのスケジュールは自由のないものだった。
ロザリアが連れてきた執事によれば、朝4時には起きて彫刻の作業と店の書類仕事。俺の鍛錬が始まればあの女も体を鍛えて、昼食をつまみながら絵を描く。午後の鍛錬を早めに切り上げ仕事の続き。夕食前には終わった仕事を店に送り、夕食後は寝るまでまた彫刻を掘る。10時に眠りにつくまで、芸術と鍛錬と仕事以外にやっていることが全くない。
そんなふうに絵を描いている姿を見て、自分にはあいつが楽しそうと思えなかった。だからある時、思わず言ってしまった。「何が楽しくてそんなに絵を描くんだ?」と。それに対してアイツは、「お前の剣のようなものだろう。鍛錬は楽しくなくても、望ましいものだ。人生をかけるものって、そういうものだろう?」と返した。
……なんとなく、共感した。剣の修行のため苦難の道を好んでも、楽しいかは別の話。それに人生をかけると決めた以上、進む道が茨でも、前に進めたことは嬉しいのだと。
それ以降、俺はその日の鍛錬が終わればよく話すようになった。
あいつの芸術にかける情熱。天竜人を嫌う理由。そこに至った、大切な恩人の話。こっそり教えてもらった、あいつが作ったという会社の話。
ふざけたことに、あいつは己の幸福というやつを投げ捨てていた。
天竜人として殺した奴隷への罪悪感。市民たちが抱く天竜人への怒り。
それがあったからこそあいつは、最悪自分が死んでも構わないと言っていた。恩人に報いるために、自分は犠牲にした人たち以上の成果を、人生をかけて証明しなければならないと。その為に会社を作って革命軍に協力し、いつか天竜人という制度を無くすのだと。その結末として、自分たちが皆殺しにされるのだとしても構わないと。
……こいつの人生を否定する理由はない。求めるものを、くだらないと馬鹿にすることは出来ない。
それでもこれだけ努力するやつが、報われないことを前提に進み続けることを俺は気に入らなかった。
こいつと話すようになってから、俺はこいつを気に入っていた。ルフィではないが、船に乗せたいとも思っていた。
天竜人であることが枷であるのなら奪ってしまおう。
海賊であることが、これほど好都合だったのは初めてだ。
ロザリアちゃん
…芸術が関わると頭のネジが吹っ飛ぶ芸術狂い。
ゾロに一目惚れだが、あくまでアイドル的な意味の好意。
ミョスガルド聖みたいなことがあったため、人間になった天竜人
ゾロ
…まだ恋愛かどうかは微妙。
こんなに努力して成果を出しているのに、報われることを諦めているのが気に入らない。
自覚するまでは押せ押せだろうけど、自覚したら躊躇して逆に奥手になりそう。
ロシナンテ
…いつの間にか救済されてたピエロ。
人に落ちた天竜人という共通点から協力関係になる
偽名の由来はロシナンテ→ドン・キホーテに登場した馬→UMA