不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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逆に考えろ、話数なんて関係無いさってね。


皆さんにお知らせが有ります。

不死の英雄伝 100話迄の内、なんと30話が裏汁編なんですよ。


つまりこのペースで残りを攻略すると200話のおおだ(ry



不死の英雄伝 101

第百一話 邪神征伐

 

 

俺の全てを込めた一撃はアルトリウスを見事斬った。

 

 

彼は満足したようだったが、俺はまだ膝をつく訳には行かない。

 

 

先ほどの戦いで、聖剣に残った魔力を根こそぎぶち込んで戦った所為で、喪失感と虚脱感が全身を襲っている。

 

 

正直立っているのがやっとで、アルトリウスを討った際の安堵感に繋ぎとめていた緊張の糸が切れてしまった。

 

 

身体がぐらつき、気が遠くなるのを小指の生爪を剥ぐ事で何とか持ち直す。

 

 

最近は多少の痛みでは何とも思わなくなっていたのだが、今は感情が昂ぶっているため、痛みを実感できる。

 

 

取りこぼしかけた聖剣を握り直し、マヌスに向かって駆け出して行く。

 

今はシフがマヌスを抑えてくれているが、彼にも疲労の色が見えている、悠長に休憩して居られない。

 

そもそも、今も意識を繋ぎ止めるのでやっとなのだ、膝を着けば意識を持って行かれてしまう。

 

最早光波を放つ事も、エンチャントをする事も出来ないだろうが、向こうも手負いなのだ。

 

 

奴だけは、死んでも殺す。

 

 

恨みや憎しみでは無い、純粋に彼の天下にピリオドを打たなければならないと言う思いが俺を突き動かしている。

 

 

聖剣は、アルトリウスを斬った時の輝きのまま周囲の深淵へ浄化の光を放ち、その穢れを祓っている。

 

 

満身創痍の身体だが、今の俺のコンディションは最高だ、それもかつてないほどにだ。

 

 

今なら、誰にも負ける気はしない。

 

 

シフに気を取られ、周囲の警戒を疎かにしているマヌスの背後から、その尻尾を刎ね飛ばす。

 

 

身体の末端に走った激痛にさしもの邪神も悲鳴を抑えられないようだ。

 

 

俺が健在な事に、彼の顔から驚愕の表情と、得体の知れない物を見たような恐怖が容易く読み取れた。

 

 

彼の不愉快な声が深淵の底へと木霊する。

 

 

男のような、女のような。

 

若人のような、老人のような。

 

子供のような、大人のような。

 

 

それらが全て入り混じった声が俺を怒鳴り付ける。

 

 

 

ー何故だ‼︎ー

 

ー神でも、竜でも無い貴様のような人間が‼︎ー

 

ー何故‼︎ 深淵の力を上回るのだ⁉︎ー

 

最早、彼に戦うだけの闘争心は残されていない。

 

 

有るのは、自らを打倒しかねない者への恐怖。

 

 

ー我の、我の深淵の力は絶対だ‼︎ー

 

ーきさ、貴様のような穢れた不死人の分際でッ‼︎ー

 

ー脆弱な人間風情で、我を、神である我を討つ事などあってはならんのだッ‼︎ー

 

 

恐怖は彼を支配し、得体の知れない人の形をした”バケモノ”への理不尽な怒りを露わにする。

 

 

ー貴様はッ‼︎ 死ななければならない‼︎ー

 

ー今ッ‼︎ 此処でッ‼︎ 我の手によってッ‼︎ー

 

ー殺してやるッ‼︎ー

 

ー殺してやるぞ‼︎ 人間風情がァァア‼︎ー

 

 

マヌスはシフによる斬撃を物ともせず、切断された大杖を使い、無理やり闇の飛沫を放ち、その濁流で俺を飲み込もうとする。

 

 

確かに、今の俺にはそれを避ける事は出来ないし、これに飲まれれば深淵に取り込まれてしまうだろう。

 

 

だが、奴は忘れている。

 

いや、若しかしたら知らないのかも知れないな。

 

 

 

俺の手の中にある聖剣は、月明かりの大剣はッ‼︎

 

 

唯の聖剣では無いッ‼︎

 

 

最大級の濁流、天を衝く高さとなった波は、全てを飲み込みながら一直線に俺へ向かってきている。

 

 

その波を、雄叫びと共に一刀の元に両断する。

 

 

巨大な深淵の濁流は、月明かりの大剣によってその全てを余す事なく浄化されて行く。

 

 

深淵の波を割って姿を表した俺を見て、遂に彼の手から杖がこぼれ落ちる。

 

 

彼の手足は震え、俺を恐怖し、後ろに下がり始めた。

 

 

ーく、来るなー

 

ー来るな!ー

 

ー来るなぁぁぁぁあ‼︎ー

 

 

絶叫と共に放たれた苦し紛れの一撃、それは大火球を溜めながら振り降ろされた左腕。

 

 

そんな物は今の俺には通用しない。

 

 

振り降ろされた左腕を、呪術の火諸共聖剣で斬り払う。

 

 

深淵そのものである彼の身体は、聖剣に触れた瞬間に浄化され、その左腕が四散する。

 

 

もう彼に打つ手は残されては居なかった。

 

闇術は杖を取り落としてしまい使用できない。

 

呪術は左腕ごと火を浄化された。

 

物理的な攻撃は先の二の舞になる。

 

 

 

彼は有り体に言えば詰んでいたのだ。

 

 

聖剣を携えた不死の騎士がゆっくりと邪神に近づいて行く。

 

 

己の死は目前、もう彼には命乞いをする以外に道は無かった。

 

 

ー頼む、助けてくれ……ー

 

 

騎士は応えない。

 

 

ー我も元を辿れば人間なのだ、同胞を斬ると言うのか‼︎ー

 

 

騎士は応えない。

 

 

ーか、金を与える、莫大な富を‼︎ー

 

 

騎士は応えない。

 

 

ー女は、女はどうだ? 絶世の美女を与える‼︎ー

 

 

騎士は彼の前に立ち、その聖剣をゆっくりと構える。

 

 

ーならば、ならば力をやろう‼︎ー

 

ー世界を思い通りに出来る深淵の力をッ‼︎ー

 

ーだから、頼む。 我を見逃してくれ‼︎ー

 

 

騎士は応えた。

 

 

ーDUST TO DUSTー

 

 

ー? な、なんだそれは、どう言う意味なのだ‼︎ー

 

 

ー塵は塵にと言う意味だー

 

ー塵に過ぎないお前達深淵は、塵に還るが良いッ‼︎ー

 

彼はその一言と共にマヌスの身体を一閃、彼に終止符を打つ。

 

 

ー貴様ッ‼︎ キサマァァァア‼︎ー

 

ー許サンゾ‼︎ 末代マデ呪ッテヤルカラナァァァァア‼︎ー

 

 

消滅して行く彼は、俺に向けて最期の一瞬まで呪いの言葉を口にしていた。

 

 

 

かくして、深淵の邪神は討たれ、深淵の拡大が防がれた。

 

 

だが、彼の偉業は語られる事は無い。

 

 

何故なら。

 

 

このウーラシールと言う地には。

 

 

彼の偉業を語り継ぐ者も、語り継がれる者も居ないからだ。

 

 

こうして、誰にも知られない英雄が産まれたのであった。





マヌスが瞬殺でしたね〜(白目)


アルトリウスが強過ぎた(確信)

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