黒炎のハルバード。
強靭削り上昇、切っ先に触れた瞬間に爆発。
刃の部分で焼き払い、硬い敵は切っ先の爆破による衝撃で蹴散らせるようになりました。
第百三話 森の狩人達
森の中に佇む大扉、それを開く鍵がこのアルトリウスの紋章。
扉にそれを嵌め込むと、俺を出迎えるかのごとくにその扉が開いた。
静寂に包まれた森、凡ゆる気配が断たれ、此処には自分しか居ないのでは、と言う錯覚を覚える。
しかし、周囲からは視線を感じる、神経を研ぎ澄ませば僅かな息遣いや衣擦れの音が聞こえてくる。
ウーラシールでの戦は気配と言うものに対して敏感にさせる物だった。
だからだろう、忍び寄る彼の動きが手に取るように分かるのは。
音を殺し、何らかの方法で姿を消した騎士が、俺の背後から斬りかかって来ようとして居るのが手に取るように分かる。
脳裏に浮かぶ、彼の剣の軌道。
上段から袈裟斬りにしようとするその動き、その刃の軌跡。
ソウルから混沌の刃を取り出し、振り向きざまに一閃。
振り降ろされた大剣ごと彼を両断する。
信じられ無い、と言った表情を浮かべた彼は、胴を泣き別れにされて絶命していった。
今の一連の惨劇で、周囲から殺気が俺に向けられる。
肌に突き刺さるソレは、仲間を殺された事への怒り。
最早この刀に魅了される事もなくなったな。
今の俺は、これを抜いたからといって殺人衝動に襲われる事は無い。
そんな物はとうに過ぎ去っている。
アルトリウスとの二度に渡る戦いの賜物だ。
もう、決して揺らが無い。
血払いを済ませた刃を納刀しながら、先に向かおうと思った時だった。
何時もの不快感が俺を襲う、それも一度ならず二度三度と。
闇霊の侵入か……。
ソウルにしまっていた盾を取り出し、その裏からナイフを抜いて木の陰から俺を狙っている魔術師の眉間を射抜く。
取り敢えず、闇霊が俺の前に姿を表す前に、厄介な後方支援を討ってしまおう。
ナイフによって、彼の身体が仰け反った隙にその胸に、ハルバードの刺突を放つ。
深淵の魔力に当てられ、その性質を変えた切っ先。
それは本来、傷口を燃やす代物だった力を大きく昇華させた。
魔術師の胸に突き刺さる切っ先、その刀身からは黒い炎が溢れ出し、その一点を爆発させる。
上半身が大きく抉れ、炭化した肉から不快な臭いを漂わせた魔術師の遺体。
切っ先だけ、性質が丸っきり変わってしまったようだな。
先端を眺めながら、その原因へと思考を向ける。
泥の四騎士の一人、泥のオーンスタインの位置を割り出すためにその体内に捻じ込んだ事がきっかけだろう。
アレはマヌスの中にある深淵の泥を固めて作られた物だ。
その中に入ったままだったのだから、変質するのは当たり前か。
炎によって焼き払うだけでなく、一点から爆破する事が可能となったハルバード。
コレはもう足場に出来そうもないな。
長い間使用している武器の扱いが少々雑なのは重々理解しているため、苦笑いを浮かべながら、新しい力を得たハルバードをしまい、俺の世界に侵入してきた闇霊に目を向ける。
三人羽織りの持っていた仮面を付けた男達。
それぞれが、子供、父親、母親を意味した仮面。
三人共が岩のような鎧を身に纏い、其々違った武器を持っている。
一人は大槌を、一人は大曲剣を、一人はバルデル兵が持っていた直剣を。
彼らは重装備に見えるが、良く目を凝らすと胴以外は亡者の腰巻きを付けているだけだ。
身軽に動けそうな彼らに視線を合わせながら、混沌の刃を抜く。
森の中では、大型の武器は取り回しが難しい。
例外的に、月明かりの大剣ならば、物体を透過出来るため振り回すには十分かもしれないが、代わりに爆風による移動が出来なくなってしまう。
第一に、彼らは深淵の力を得ている訳でも無さそうだ。通常武器でも十二分に殺す事が可能だろう。
三人とも殺気を隠さず、その瞳は俺への殺意に燃えていた。
ー来るがいい、狩人達よー
ー俺は此処に居る、逃げも隠れもしないー
ー但し、容易く俺の首を取れると思うなよー
ちょっと短めですが、次辺りに仮面相手に苦戦させたいですので御容赦を。