不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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ようやく不死街の攻略が終わります。

本編は一体何時になるのか。


不死の英雄伝 11

第十一話 太陽の信徒 無二の親友

 

目の前のデーモンに視線を合せつつ後ろを警戒する。

 

ここは足場が狭いから左右へ避けるといった回避行動が取りずらい。

 

後ろのボウガン兵を潰したいが目の前のデーモンから視線を外すのはマズイ。

 

ソウルから鎧を取り出し身に纏わせる。

 

ボウガンはリロードの際に音が出るので向こうが撃てるか否かは把握出来る。

 

これで取り敢えず矢によって体制が崩される心配はなくなった。

 

 

せめて火炎壺を一つ残して置くべきだったか?

 

デーモンとはいえ相手は生物だ。

 

それに体毛に包まれているから元々は何か別の獣だったのだろう。

 

ならば炎を恐れる可能性もあったが手持ちの火炎壺は根こそぎ使ってしまった。

 

ナイフも一本だけしか残っていない。

 

こちらがどう戦うか考えていると牛頭は咆哮を挙げながらドスドスと大股で接近してくる。

 

 

向こうは小難しい事を考えずにただ斧を振るえば良いだけなのだから躊躇しないのは当たり前のことか。

 

 

その動きに合わせ壁に掛けられた梯子へ走り出す。

 

後ろを確認すると牛頭は大斧を力一杯俺に振り下ろす所だった。

 

鎧をすぐさま仕舞い地面を蹴って転がる様に避ける。

 

あと数センチといった所に斧が振り下ろされる。

 

その時の風圧で壁へ叩きつけられる。

 

肺の中の空気を全て吐き出してしまい呼吸が乱れる。

 

 

しかし、荒れた呼吸もそのままに梯子を上る。

 

その判断は正しかったようで先ほど俺がいた場所を牛頭が踏みつける。

 

その衝撃で梯子を上る手が止まり掛けるが、気合いを入れ直し上りきる。

 

ボウガン兵達が剣を抜いて襲いかかって来る。

 

盾を構え鎧を纏い全体重を乗せ彼らを体当たりで下まで叩き落とす。

 

落ちて行った亡者達を牛頭がその大斧を使って粉砕する。

 

下で牛頭が暴れている隙に呼吸を整える。

 

腰の剣を引き抜き帯電している松脂を塗る。

 

バチバチと帯電した剣を構えこちらを見上げる牛頭の頭を目掛けて飛び降りる。

 

両手で握った剣を深く突き刺す。

 

脳に電気が流れたのかビクビクと痙攣して動きが止まった牛頭の右眼に、最後の一本となったナイフをねじ込む。

 

痛みで反射的に手が動いたのか頭の上から振り落とされる。

 

右眼を押さえ暴れまわる牛頭の股を抜け後ろに回り込む。

 

距離を取りボウガンで狙いを定め、奴がこちらを向いた瞬間に左眼に矢を放ち完全に視界を潰す。

 

両眼を潰された牛頭は怒りの咆哮を挙げて音と臭いで俺を探そうとしている様だ。

 

 

 

踵で地面を叩き位置を教えてやる。

 

その音に反応し真っ直ぐ此方を見る牛頭の眉間に照準を合わせ最後の一撃を放つ。

 

放たれた矢は吸い込まれるように狙い通りの場所に刺さる。

 

断末魔の悲鳴を上げながら牛頭のデーモンはソウルとなり俺の中に入っていった。

 

 

刺さったままだった剣を回収し鞘へ収める。

 

 

未だ帯電していたそれは鞘に収めると静かになった。

 

 

周囲を見渡し周りに敵が居ないのを確認し一旦座る。

 

 

だいぶ戦いに慣れては来たが俺は成長しているのだろうか?

 

何時も何かが上手く行くと調子に乗ってヘマをする。

 

今回も攻撃らしい攻撃は奇跡的に貰わなかったが、その事で自信過剰になりはしないだろうか。

 

共に旅をする仲間が居ればこの疑問に答えてくれるのだろうか?

 

 

 

このロードランと言う場所では正気を保ったままの者は珍しく、基本的に皆一人旅となる。

 

旅先で出会えたとしても一人旅をするもの達はそれぞれの目的を持っている。

 

その道中で交わる事は合っても並ぶ事は無い。

 

故に不死人は孤独であり一期一会の出会いを大切にする。

 

 

考えが後ろ向きになって来たので首を振り強引に頭を切り替える。

 

ともかくこれで不死教区への道が開いたんだ。

 

鐘を鳴らしに行きましょうかね。

 

ネガティブな事ばかり考えていては心が折れちまう。

 

ポジティブに行こうポジティブに。

 

 

先に進むと左には大通りがあり亡者たちが待っていた。

 

しかし右には見晴らしの良いテラスがあり太陽が雲間に顔を覗かせて居る。

 

俺はテラスに移動して太陽を眺める事にした。

 

これだけは前世と何も変わらない物だから。

 

俺の暗い感情を明るく照らして欲しかったからだ。

 

 

これを眺めている物好きは俺だけかと思っていたが驚いた事にここには先客が居た。

 

 

彼はソラールと言い自分を太陽の信徒と名乗った。

 

 

ソラールとは様々な事を語り合った。

 

 

彼は太陽のように誰もを明るく照らせるような大きな男に成りたいのだと言う。

 

その気持ちが分からなくも無いと答えると彼は大笑いしながら

 

-貴公は変わった男だな-

 

-他のもの達はこの話を聞くと腹を抱えて笑って居たのだがな-

 

-まさか理解者が現れるとは思わなかったぞ-

 

-貴公さえ良ければ俺と友にならないか?-

 

-このロードランで共に助け合い高め合う-

 

-そんな友となろう-

 

その言葉と共に差し出された手を俺は強く握り返す。

 

これがこの先幾多の困難を共に乗り越える親友ソラールとの出会いだった。

 


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