皆んなお待ちかね、公王戦だよ。
本作では、彼らは以下の通りの性能だよ。
始めから四湧き。
初めの一体を倒した後、それが消滅している最中に他を全て倒さないと即時復活。
毒ミダ並のオートヒール完備。
深淵纏い使用可能。
魔術、奇跡、呪術無効。
通常武器無効。
深淵による足止め。
以上になります。
アルトリよりは良心的ですね(錯乱)
そろそろ深淵相手もしつこくなって来ましたが、取り敢えずは、彼らで最後となります。
それと、アルトリウスの契約ですが。
普通に歩けるだけでも十分凄いですが、戦いが単調になりそうですので、”辛うじて”歩ける程度の性能にします。
立ち止まればズルズルと、という風に解釈してください。
第百十三話 闇の世界
アルトリウスの契約のお陰で深淵に沈む事は無いものの、
非常に動き辛い。
どうやら俺自身の格が足りないらしく、この指輪は十全な性能を発揮出来ていない様子、それは構わないのだが、問題は足元の深淵から伸びる腕である。
その腕は、以前マヌスとの戦いの際に辛酸を舐めさせられた物、今回も数と質の暴力が俺を襲うのだ、足を取られればお終いだ。
この深淵の世界で絶命した場合、若しかしたらそれに飲まれる可能性もある、杞憂なら良いがそんな甘い読みはしない方が良いだろう。
彼らの背中から放たれる六つの闇の弾丸、一人当たり六発だから計二十四発。
ギリギリまでそれを引きつけ、右に飛び退いて回避しようとしたが、突如俺の右側に深淵の壁がせり上がり、俺の行く手を塞がれた。
背に腹は変えられず、迫る弾丸をアルトリウスの大盾で受け止めたが、代わりに深淵に足を掴まれた。
公王達がそれぞれの大剣を振り下ろしてくる中、ダークレイスから逃げた際に、背中の月明かりの大剣に込めっぱなしだった魔力を一気に解放し、何とかその場から離れる。
仕方ない、か。
こんな状態では満足な戦いなど出来はしない、攻撃するにしろ回避するにせよ、足元の深淵が邪魔だ。
世界そのものが敵。
足を止めれば深淵に引き摺られ、攻勢に出ようものなら深淵の壁に遮られるだろう、回避先を潰されたのだ、それ位出来ると見て良い。
あんまり良い気はしないが……、聖盾の力を使わせて貰う。
深淵の力に耐えうるこの盾ならば、俺の考えている事も何とか可能だろう。
纏わり付く深淵の手を右手に持ち替えたアルトリウスの聖剣で斬り払いながら俺の足の裏に聖盾を設置する。
そうしながら左手にハルバードを取り出し、聖盾の力によって接近出来なくなった深淵の腕を突く。
確かに、深淵には通常武器は通らない。
彼らの再生速度に対抗できず、傷を与えた側から回復されるからだ。
だが誤解してはいけない、無意味に終わってしまうが、通常武器と言えど、彼らに傷自体を与える事は可能なのだ。
そして、今俺が使っているハルバードの切っ先は触れたものを爆破する力を宿している。
深淵によって変質した性質、今回それを利用する。
刺突によって巻き起こる爆風、それは深淵の腕を容易く吹き飛ばし、俺を前へと突き出す推進剤となる。
次々現れる深淵の腕を爆破しながら、深淵の上を滑るように移動して行く。
さしもの公王達も、こんな方法で深淵の妨害行動に対処するとは夢にも思わなかったのだろう、唖然としながら足を止めている。
その隙間を縫いながら、すれ違いざまに近くに居た公王の大剣を斬り落とす。
彼らも闇の弾丸を放ってくるが、今の俺を捉えることは出来ていないようだ。
焦れったくなったのか、先ほど大剣を斬り落とされた公王が腕を思いっきり振って闇の光波を放って来た。
振り切ろうとしたのだが、どうやら追尾性能が備わっているらしく中々振り切れない。
俺が彼の光波と鬼ごっこをしている間に、それを放った張本人は折れた大剣を深淵に突き刺さし、修理をしている様子だ。
彼は今無防備、俺がただ逃げ回るなんて真似をするわけ無いと言うことを教えてやる。
逃げ回りながらも、月明かりの大剣に魔力を込めていた俺は、右手のアルトリウスの大剣と交換し、魔力の篭ったその剣で、迫り来る闇の光波を弾きかえす。
聖剣の力で浄化され、純粋な魔力に変換された闇の力を利用し、月明かりの大剣による光波を肥大化させる。
巨大な光波は無防備だった公王に直撃し、悲鳴を上げる暇も無く彼は消え去った。
後は三体か、存外に呆気ない。
これなら楽に終われそうだな、そう思った矢先だった。
ソウルの粒子となって溶けていた公王の身体が急に動き出す。
彼は逆再生の様に身体を再生させて行く、その様子は深淵の泥による再生とは異なっている様に見えた。
どういう理屈かは知らないが、単純に殺しただけでは彼らは死なない様だ。
聖剣の攻撃は通る事を考えると、それにプラスα加えなければならないようだな。
その様子に溜息を吐きながら、偶には楽な戦いが有っても良いだろうに、と自分の運の無さを恨むのだった。
ハルバードオール化、アルトリウスの大盾サーフボード化。
君たちは泣いて良い。