不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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ニト戦もサクッと終わらせて早くイザリス編に行こう。

過去編の連中を強くし過ぎた(遠い目)




不死の英雄伝 118

第百十八話 墓王ニト

 

 

武器を回収した後に踏み入れた霧の先、その中はむせ返るような死臭が充満して居た。

 

目の前に見える穴、そこを覗くと鍾乳洞のような場所が見えている、どうやら死臭はこの中から漂ってきているらしい。

 

 

 

中から水が流れる音が聞こえてくる所をみると、どうやら地下水のような物が湧き出していると思われる。

 

取り敢えずソウルにしまいかけていた竜狩りの槍を再び取り出して左手に握っておく、もし水辺があれば有効打となりえるし、無くても十分戦える。

 

 

その穴に向かって飛び降りた俺を待っていたのは、三体の骸骨。

 

それに奥には巨人骸骨も見える、取り敢えずニト以外に見えている敵はこんな所だ。

 

 

周囲を大まかに把握して居ると、その肝心の墓王が姿を表した。

 

巨大な柩の蓋を開け、その全身を晒す墓王、その姿は唯の骸の寄せ集めのような印象を受ける。

 

しかし彼の纏った気配やその存在からは、強烈な死の空気が漂っている。

 

遠目から見ただけだと言うのに、彼が尋常ならざる存在と言うことを教えてくれた。

 

 

 

 

最初の死者となった墓王ニトは死を司る存在となり、死者達の王となった。

 

彼は恐怖するべき存在であり、崇め奉るべき存在。

 

しかし、死とは同時に救済でも有る。

 

我々不死にとっては、終わる事のない生を終わらせられる事こそが唯一無二の救い。

 

亡者となる事無く、自分である内に死ぬ事が出来る、それはとても素晴らしい事。

 

彼はある意味では救世主なのかもな。

 

 

 

フラムトから以前に聞いた話を反芻しつつ、そんな感想を抱いた俺は、周りの骸骨を竜狩りの槍で蹴散らしつつ彼に対峙する。

 

 

 

近くで見る彼の持つ大剣からは凄まじい瘴気を感じ、それに当てられた俺は思わず身がすくんでしまった。

 

否、大剣だけでは無い、彼の全身から其れ程の瘴気を感じるのだ。

 

その瘴気によって忘れていた死の恐怖を呼び覚まされるが、アルトリウスの大剣を引き抜き、前を向く。

 

 

 

目を逸らすものか。

 

俺は決めたのだ、この世界を始まりの火の力で一から作り直すと。

 

神の世界では無く、人の世界を創世すると。

 

新世界を創世すると。

 

 

 

アルトリウスの大剣を彼に向け、湧き上がる死の恐怖を押し付けながら叫ぶように啖呵を切る。

 

 

 

ー聞くが良い、死を司る者よ‼︎ー

 

ー我は新世界を創生する者‼︎ー

 

ー始まりの死者よ、我が新世界の創生の為に貴様の屍を踏ませて貰うー

 

ー己に与えられる死の安息、存分に味わうが良い‼︎ー

 

 

 

そう吠えた俺は、そのまま彼に飛び込んで行く。

 

本能的に湧き上がる死の恐怖を無視するためには、同じく本能的な闘争心に全てを委ねるしかない。

 

 

思考はたった一つ、彼を殺す事、それだけを考えて彼の懐まで接近する。

 

 

振り下ろされる墓王の大剣、それを皮一枚斬らせて光波を叩き込もうとしたのだが、急に身体の自由が効かなくなった。

身体を蝕むのは毒の症状、さっきの一瞬で皮を切った時に投与されたのだろう、それの所為で魔力を込めていた月明かりの大剣を取り落とす。

 

 

接近している俺を、絶叫と共に解き放った魔力で吹き飛ばしながら、彼は徐に大剣の刃を地面に突き刺した。

 

 

吹き飛ばされながらも、空中で解毒材である苔を三種類共纏めて口に放り込んで解毒を試みる。

 

身体の解毒が済むと同時に、地面から墓王の持っていた大剣の切っ先が俺を貫こうと飛び出してきた。

 

盾を滑り込ませ何とかその一撃を防いだが、追撃が怖いため、火炎壺を彼の顔に投げ付けながら、鍾乳石の影に身を隠して呼吸を整える。

 

影から覗き見るに、彼の動きは鈍重その物、さっきの火炎壺も見事命中したようで、その顔が燃えている。

 

 

月明かりの大剣を取り落としてしまった所為で光波に頼る事は出来ないが、まだ魔術が残っている。

 

 

鍾乳石の影から飛び出しつつ、結晶の槍をニトが大剣を持っている腕に叩き込む。

 

結晶の魔術によって、彼の身体を構成する骸の一部が粉砕され、彼が大剣を取り落とす。

その隙を突いて彼の懐に再び飛び込んだ後、彼の大剣を蹴り飛ばす。

地面を滑るように転がって行く彼の大剣を尻目に、俺は月明かりの大剣を回収する。

 

多少戦ってみて分かった事だが、彼は戦いに向いていない。

 

死を司る存在だから、てっきり彼も強いのかと思っていたが、此れではアルトリウス以下だ。

 

魂の管理が仕事なのか、それとも不死の呪いの所為でやる事が無くなり、長い間眠っていた所為で腕が鈍ってしまったのかは不明だが、何にせよ彼は今までの強敵よりは劣っている。

 

 

 

月明かりの大剣に結晶魔法の武器を施し、鐘乳石を蹴って彼の上に飛び乗る。

 

 

彼が再び魔力を解放する前に、その頭へ刃を突き立て、魔力を暴発させて、彼の身体を吹き飛ばす。

 

 

彼は身体を聖剣によって浄化されてしまい、骸の破片となって散って行った。

 

 

呆気ない最期とは裏腹に、俺の中へと入り込んだ王のソウルは何時も通りに俺を内側から焼いて行く。

 

手に入れる度にその熱量を上げて行くソウル、魂を焼かれているような錯覚を覚えながらも、次の場所へと思いを馳せる。

 

 

残りは、一つ。

 

最後の王のソウルは、イザリスか。

 

 

俺は張り裂けそうな胸を抑えながらも、目の前に現れた篝火に触れ、身体を祭祀場まで転送するのだった。

 

 





主人公の戦う理由の流れ。

戦うために理由が欲しい→不死の呪いを祓いたい→神の統治する世界を終わらせ、人間の世界を創世する。


不死の呪いは誰が火を継いでも必ず起きる世界の理、それを無くすなら世界その物を一から作り直す必要がある。


この過程で主人公は人の世を作り、新たな理を敷くつもりと言った所ですね。

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