不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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不死の英雄伝 12

第十二話 城下不死教区

 

ソラールと別れて大通りへと向かう。

 

彼はもう暫く太陽を眺めていくらしい。

 

別れる際に白いサインろう石と呼ばれる石を餞別にと貰った。

 

これはこの世界の歪みを利用して不死達が助け合う為の手段で、この石を使い地面にサインを書くとそれが他の世界にも現れる。

 

そのサインを通じて自分の身体を霊体に変えて世界を渡る。

 

呼ばれた先のエリアの主を倒す事で人間性とソウルを得て帰還する。

 

そして、霊体の召喚は生身でしか行えない。

 

なお、ソラールのサインは日輪の様に輝く黄金のサインらしい。

 

この先にある太陽の祭壇で祈りを捧げる事で太陽の信徒となり、サインがソラールの様になると言う。

 

ソラールの話を纏めながら情報を整理しつつ大通りを歩いていく。

 

不意に何かの羽ばたく音が聞こえた気がした。

 

嫌な予感がする。

 

耳を澄ますと威圧感のある咆哮が聞こえてくる。

 

地面に影が差し立って居られない程の風圧と共に熱線が大通りを焼き払って行く。

 

 

風圧とブレスによって身を焼かれながら地面をボールのように転々とする。

 

熱さと痛みで気を失いそうになるが、何とか立ち上がる。

 

不死街で見た竜が口から炎を零しながらこちらを睨み付けていた、そこから這々の体で右側に見える階段へ逃げ込む。

 

足が縺れ階段の上からゴロゴロと転がり落ちる。

 

なんとか避難出来た所で自分の状態を確認する。

 

風圧で吹き飛ばされた際に骨が何本も折れてしまっている上に背中は火傷でグチャグチャになっていた。

 

痛過ぎて気が狂いそうになる。

 

不死院の時に味わった死の恐怖を今再び味わわされている。

 

震える手でエスト瓶を口に運ぶ。

 

上手く飲み込めずだいぶ零してしまったが何とか傷を癒した。

 

畜生め。一撃で瀕死まで持って行かれちまった。久々に泣きたくなったぞ。

 

壁に凭れながら軽口を叩く、無意識に涙が溢れ出て止まらない。

 

死の恐怖と助かったと言う安堵の気持ちが胸の中に溢れかえる。

 

 

 

俺が動けるようになったのはそれから暫くしてからだった。

 

鎧を脱いで状態を確認する、背中の鉄板がドロドロに溶け、最早その役目を果たせない程だった。

 

 

直撃だったからなぁ…。

 

 

使い物にならなくなってしまった鎧をしまいながらどうするかを考える。

 

 

幸い、ここは不死街の篝火と繋がっていた。

 

梯子を掛けて篝火と大通りの下の小部屋を繋げる。

 

 

丁度良かった。ナイフも壺も全部使っちまったから補充しておきたかった。

 

 

商人の元でナイフを20本、壺を10個、矢を50本購入する。

 

そのまま帰ろうとすると商人が壊れた鎧を見てイイものがあると言ってきた。

 

それは修理箱と呼ばれる物でソウルを消費することで武器や防具を修理することが出来る代物だと言う。

 

値段は張ったが背に腹は変えられなかった。

 

篝火まで戻りその炎に照らされながらどうするかを考える。

 

どの道あれをどうにかする以外に先に進めそうになさそうだしな。

 

盾を構えたまま走るのは論外として、何時もの方法を取るのならどうにかしてあの竜を彼処から動かす。

 

若しくは何かで気を逸らしその隙に突破する。

 

しかしそのための手段が思い浮かばない。

 

所持品を確認してみるか。

 

 

今俺が持っているものは、ナイフ 火炎壺 ボウガン 剣と盾

後は鎧か。

 

コレでどうしたもんか。

 

 

床に広げていた物をそれぞれ仕舞っていく、火炎壺は半分ソウルとして収納する。

 

修理箱によって鎧も修復出来たので次は竜の様子を確認しに行く。

 

上に上がり大通りの下の外壁から竜を覗く。

 

不死教区に入る入り口の上に座り動く気配は無い。

 

周囲を見渡すとあの竜の長大な尻尾が見える。

 

 

安全に彼奴を退かせそうだな。

 

 

ボウガンを取り出し矢を装填する、狙いは勿論尻尾。

 

引き金を引き矢が放たれると同時に外壁から大通りへ戻る。

 

矢が着弾し奴が大通りの通路に降りて後ろを確認する。

 

その視線の先にはボウガンを構えた亡者が写っていた。

 

竜の炎は亡者を焼き尽くし灰すら残らない程の火力だった。

 

俺は今竜の足元で息を殺しこいつが再び前を向くのを待ってる。

 

竜は自分を攻撃したと思わしき亡者を焼き払って満足したのかゆっくりとした足取りで前に進んでいく。

 

奴が前を向いたので音のなる可能性の有るものを全てソウルとしてしまい込み全力で駆け抜けていく。

 

走り抜けた先には篝火があった。

 

彼奴に気付かれる前に篝火に触れる。

 

燻っていた火種に炎が灯る。

 

疲労は無くなりエスト瓶も補充された。

 

彼奴は満足したのか大きな羽音を響かせながら大空を飛んで行った。

 

 

先ほどの道を改めて見ると炎で焼かれた者たちの死体が幾つかあった。

 

鎧を着込みボウガンで亡者を処理した後に死体のそばに落ちていた剣を拾う。

 

 

その剣は1メートルほどの刀身を持ち、鍔は刃に向かって傾斜した形で左右に大きく張り出しており、先端には飾りの輪が複数ついている。

 

両手剣なのだろうが存外に軽く篝火で少し筋力を上げれば片手でも扱えそうだった。

 

新たな武器に心を踊らせながら不死教区への道をみる。

 

巨大な鉄格子に阻まれ進めそうにないが何故か隣にレバーがあった。

 

それを引くと鉄格子は上がって行き先に進めるようになった。

 

何でこっち側にレバーが着いてんだよ。

 

亡者の通行を防ぐ為か。

 

或いはあの竜が居るから大丈夫だと思ったのか。

 

何にせよ先に進めるようになって万々歳だ。

 

不死教区に向かう前に太陽の祭壇に向かって祈りを捧げる。

 

その祭壇は篝火の右側にあるテラスにあった。

 

元々は大王グウィンの像だったのだろうが、今は朽ち果てており原型が分からないほどの有様だった。

 

祭壇の前に跪き頭を垂れ誓約を交わす。

 

暖かい。

 

まるで太陽の暖かさに全身を包まれているようだ。

 

太陽の信徒…か。

 

神様に対しての信仰心は欠片も無いけれど、お天道様の為になら話は別だ。

 

良し、今日この日から俺は太陽の戦士だ!!

 

ソラール、お前もこんな気持ちなんだな。

 

太陽万歳‼︎

 

 




実はこの作品は主人公と同じ生まれのキャラクターを新たに制作し旅をしながら書いているんですが…。

不死街の黒騎士を倒したら黒騎士の剣をドロップ、不死教区の黒騎士を倒したら黒騎士の大剣をドロップ、牛頭のデーモン戦ではデーモンの大斧をドロップ。

牛頭のデーモン戦で斧をドロップするなんて長いことやってて始めてだよ。

しかもあんた、踏み台転生者って設定でしょうが。

な〜に主人公補正出しまくってんですかねぇ。

※ダークソウルを知らない人へ黒騎士の剣及び大剣はレアドロップアイテムで、どちらか一本でも有れば一周目なら余裕で無双出来る武器です。デーモンの大斧は商人から購入するのが普通です。間違っても最序盤にドロップする品では無いです。

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