みんなお待ちかね、共闘編ですよ。
彼ら二人によるイザリス蹂躙の始まりですね。
第百二十話 爛れ続ける者
目覚ましの鐘の側にあった階段を下って行き、イザリスについてフラムトから聞いた情報を整理する。
混沌の廃都イザリス。
嘗てイザリスの魔女は始まりの火を人の手によって再現しようとした。
そうする事で世界を恒久的に生命の炎で満たす事が出来ると考えたのだろう。
しかしその試みは失敗、始まりの火を模倣した物は混沌の炎となり、イザリスの魔女は七人の娘と共に穢されその姿を異形へ変えた。
フラムトの言葉ではクラーグもその一人。
彼女はこの地の番人でもあったのだろうか?
感傷と言う訳では無いが複雑だな。
考え事をしながらも、イザリスへの入り口に到達する。
イザリスは地下深くにあるそうだが、周囲には溶岩が溢れかえり、道を塞いでいた。
さて、如何したものか……。
無理矢理渡ると言うのは出来ればやりたくは無い。
武器を足場にしようにも、深さが分からない以上やらない方が良いだろう。
腕を組みながら頭を捻っていると、背後から声を掛けられた。
ーあん? 何やってんだテメェー
その声は何時もの放浪者の声だった。
其方に振り向くと同時に、彼に向かってナイフを投げつける。
ーなに、先に進めそうに無くてね、どうした物かと頭を悩ませて居たのだよー
ー世間話するようにナイフ投げて寄越すたぁ、テメェ喧嘩売ってんのか?ー
投げたナイフは容易く受け止められてしまったが、予想はしていた事。
彼がナイフを受け止めた隙に彼の懐まで飛び込み、混沌の刃による居合い抜きを放つ。
俺の動きが彼の予想を越えて居たのか、反応が遅れていた。
だが奴も只者では無い、反射的に左手のクラーグの魔剣を滑り込ませる事でその凶刃を受け止めていた。
ーッの野郎‼︎、問答無用ってか⁉︎ー
ー私と君の間に、語り合う言葉など有るのかね?ー
ー有るのは因縁のみ、此処で大人しく死んでおけー
ー喧しい‼︎ 俺にも事情ってもんが有るんだつっうの‼︎ー
ー黙って俺の話を聞きやがれ‼︎ー
鍔迫り合いをしながらも、彼は俺に向かってある提案を持ちかけてきた。
ー反吐が出る程気に入らねぇが、さっきも言ったように俺にも事情ってのがあるー
ー俺一人でも十分だが、万一って事もあるー
ー此処の王のソウルを手に入れるまで手を組まねぇか?ー
ー君のその事情とやらが何であれ、私には全く利が無いその提案を受け入れると思っているのかね?ー
ー後顧の憂いを断つ為にも、私的には君を此処で殺した方が利があるように思えるのだがねー
鍔迫り合いの状態から脱する為に彼を蹴り飛ばし、背中の月明かりの大剣を引き抜き、彼に向かって光波を放つ。
彼は蹴り飛ばされながらも墓王の持っていた大剣を取り出し、迫る光波を両断して見せた。
ーチッ、暫く見ねぇうちに随分な成長しやがってー
ー性格から何から全部変わってんじゃねえかー
ー私としては何も変わった実感は無いのだがねー
ーまあ、男子三日会わざれば刮目して見よとも言う、若しかしたら多少は変化しているのかもしれんなー
ー…………、テメエの利になる事ならあるぜー
ーこのイザリスの案内だー
ーほう? 君が率先して案内をしてくれるのかね?ー
ーそれはとても助かるのだが、意外だなー
溶岩の渡り方が分からずに手詰まりとなりかけていた為、大人しく彼の話を聞いてやる事にする。
彼は情報と引き換えに一時休戦を提案、俺はそれを承諾する。
口約束だが、お互いに無駄に体力を消費したくは無く、小競り合い程度ならともかく本格的に戦うのは避けたいのだ。
その理由は四つ目の王のソウル。
数が増すごとにその熱量は跳ね上がっている、下手をすると今度こそ身体の内側から燃やし尽くされる可能性がある為、体力を温存しておきたかった。
刃を納めて、彼の話に耳を傾ける。
現在イザリス迄の道を溶岩で塞いでいるのは、産まれた瞬間から爛れによって苦しんでいる混沌の娘達の弟らしい。
彼は直ぐそこの崖際に掴まりながら、混沌の娘の遺体を守っているそうだ。
ーやけに事情に詳しいじゃないか、知性の欠片も感じなかった昔とは大違いだなー
ー逐一棘がある物言いしやがって、本当に性格悪くなりやがったなー
ーふっ、褒め言葉として受け取っておくよー
俺自身、まさかこの男と肩を並べるとは思わなかった。
まったく、人生とはなんと複雑怪奇な物か。
俺たちはお互いに軽口を叩きながらも、爛れ続ける者へ向かっていった。
あったかもしれない会話①
放浪者「てか、本当にお前変わりすぎだろうよ」
放浪者「表情も能面みてぇだしよ」
主人公「何を言っているのかね?私は自分を表情豊かな人間だと自負しているが?」
主人公「これが笑顔」 無表情
主人公「これが泣き顔」 無表情
主人公「これが怒り顏」 無表情
主人公「どうだね?」
放浪者「眉ひとつ動いてねぇよ……」