不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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主人公の口調が冷めて来ましたね(白目)

リリカル編では彼に人間味のある性格にしたいな。

口調もある程度回復させる予定。


不死の英雄伝 121

第百二十一話 デーモン遺跡

 

 

 

放浪者と共に霧を越え、爛れの元まで近づいて行く。

 

此処は先ほど俺が溶岩を覗いていた場所の遥か上の崖、その縁に掴まっているのが彼だ。

 

 

彼の見た目は正にデーモンその物。

 

背中から生える無数の節足動物の様な手足。

 

山羊のような角、赤く光る四つの瞳。

 

彼の身体は全身が炎によって爛れていて、今も苦しそうだ。

 

 

彼は俺たちに気が付いて居ないのか、それとも眼中に無いのかは定かでは無いが、俺が近くまで接近して行っても反応する事はなかった。

 

彼の瞳が向いている方向に目を向けると、其処には誰のとも知れぬ遺体が転がっていた。

 

放浪者の言葉を信じるならば、アレが混沌の娘たちの一人だったのだろう。

 

 

 

正面に見える遺体への考察をしていた時に、後ろで放浪者が岩陰から竜狩りの弓を構えている音が聞こえてきた。

 

大方、此方からちょっかいを掛けて奴に気付かせるつもりなのだろう。

 

 

ギチギチと音を立てながら大弓を構えた彼の近くまで戻りながら、背中から月明かりの大剣を引き抜いて何時でも光波を放てるように結晶魔法の武器を施しておく。

 

 

ハンドサインで此方の準備が出来たことを伝えると、間髪入れずに彼の構えていた大弓から大矢が放たれる。

 

放たれた大矢は爛れの瞳の内の一つを撃ち抜き、彼の瞳を潰す。

 

 

此処で、漸く彼は俺たちが敵だと気が付いた様だが、彼が振り向く瞬間にその眉間に光波を放つ。

 

光波の直撃によって顔面を大きく抉られた爛れの顔面に、放浪者が俺を踏み台にして飛び乗り、そこに向かって墓王の大剣を捻じ込んで彼にトドメを刺す。

 

 

消える爛れの身体を蹴って俺の前に着地した彼は、何も言わず混沌の娘の遺体へと向かい、その遺品を回収して居る。

 

それが彼の目的なのだろうか?

 

まあ良い、それよりも今は溶岩の方が大事だ。

 

 

彼の情報によれば、ここの溶岩を操作していたのは爛れと言う話で、それを討てば溶岩が引いて行くはずと言っていた。

 

 

その情報源は定かでは無いが、彼曰く本人に聞いたんだから間違いねぇよ、との事。

 

一体誰に聞いたのだろうか?

 

そんな事を考えながら崖下の溶岩を眺めていると、徐々に溶岩が引いて行くのが見える。

 

成る程、取り敢えずは彼の持つ情報を信じても良さそうだな。

 

 

放浪者の方もやる事が終わったのか、此方の方へと戻って来た。

 

 

ーで? 疑いは晴れたかよ?ー

 

 

ーまあ、一応は君の情報を信用しようー

ー情報源が少々気になりはするがねー

 

ー短い間だろうが、宜しく頼むよー

 

 

彼はその言葉を鼻で一蹴し、俺の前に立って先に進み始めた、どうやら案内役をすると言う約束の通りに、先陣に立つつもりの様だ。

 

 

彼は手書きの地図を片手に、溶岩が引いた事で出来た大地を歩きながら、ふと思い出したように此方に振り向いた。

 

ーそういや、テメェ炎派生の武器を持ってるか?ー

 

 

ー? ああ、持っているよ、それが何か?ー

 

 

ー次いでだ、種火を拾いに行くぞー

 

ー敵に塩を送るような真似だがな、礼儀って奴だー

 

 

そう言い終えた彼は再び先導し始め、これから俺たちが向かう場所の事を語り始めた。

 

 

デーモン遺跡。

 

混沌の廃都イザリスへ向かう唯の通り道なのだが、呪術の原型だと言われる炎の魔術を使うデーモン炎司祭を筆頭に、様々なデーモンが住み着いた為その名が付いたそうだ。

 

 

ーまあ何千年前の話か分からねぇし、種火の在り処だって勘違いかも知れねぇからあんまり期待するんじゃねぇぞー

 

 

その話が本当なら、一体そいつは幾つなんだ?

 

彼の話の信憑性が一気に無くなったのと同時に、デーモン遺跡の入り口から山羊頭のデーモンが走ってくるのが見えた。

 

 

両手の大鉈を振り上げながら飛びかかって来た山羊頭は、俺の月明かりの大剣と放浪者の墓王の大剣によって同時に両断され、四つに分割される。

 

 

ーまっ、何にせよこの先のデーモンなんざこの程度、取るにたらねぇよー

 

 

そんな事を話しながらデーモン遺跡に足を踏み入れると、山羊頭のデーモンが山ほど見える、確かに此れならデーモン遺跡と渾名されるのも分かるな。

 

 

ー如何するかね、幾ら雑魚とは言え数で押されては我々とて押し切られるぞ?ー

 

 

放浪者にそう声を掛けたのだが、彼は後ろを見ながら真剣な顔をしながら背後を見ていた。

 

 

ー悪りぃな、どうやら俺の世界に侵入者が来たみてぇだー

 

ー片付けてくるからチョット待ってろー

 

 

ーそうか、それなら仕方ないー

 

ー私には君の世界に居る霊体が見えないので何もしてやる事は出来ぬがー

 

ーせめて、幸運を祈っておこうー

 

 

ーテメェの祈りなんざ要らねぇよー

 

彼に助太刀出来ない理由、それは世界の違いだ。

 

今は俺の世界と彼の世界が重なっている為に互いを認識しては居るが、別に俺が彼の世界に入った訳では無いため、彼の世界に居る霊体が見えないのだ。

元々このロードランは時空が湾曲した場所、霊体ならばサインを通じて他者の世界へ向かうことが出来るのだが、今回のように生身同士と言うのは非常に珍しい。

 

 

俺は壁に背を預けながら、彼が帰ってくるのを待ちつつ山羊頭攻略に意識を割いて行くのだった。

 





あったかもしれない会話 ②

〜 爛れ戦後 〜

主人公「ところで、聞きたい事があるのだが構わないかね?」

放浪者「なんだよ」

主人公「君の腰に付いているその二つの可愛らしい柄の弁当袋らしき物の事なのだが……」

放浪者「………」

主人公「ピクニック気分なのは構わないが、場所を考えたらどうかね? 下手をしたら腐ってしまうと思うが」

放浪者「押し付けられたんだよ……」



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