不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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さて、本来ならば此処で百足戦に入りますが、今回は師匠お手製の地図を放浪者は所有して居ます、ですのでショートカットを使用します。

デーモン戦はその為の人間性回収にと言う事で。


不死の英雄伝 125

第百二十五話 心の折れた太陽

 

 

あの後、彼の案内で司祭が居た場所の先にあった階段を上っている。

 

イザリスはこの世の地下の地下、最果ての地、地獄の釜の底。

 

つまりは下に向かうのが普通だと思うのだ。

 

だが彼は隣に下に降りる階段も有ったにも関わらず、そちらを無視して態々此方を選んだ。

 

ーイザリスに向かうには下に向った方が正しいのではないかね?ー

 

ー炎司祭も居たのだ、恐らくこの下にイザリスがあるのだろう?ー

 

 

ーああ、地図にもこの下に行った先にイザリスがあるって書かれてるよー

 

 

ーなら、何故上に?ー

 

 

ー俺が地上に用があるんだよー

 

ーテメェだって余計な体力を使いたかねぇだろ?ー

 

 

ーそれは、そうだが……ー

 

ーいや、案内役は君だったな、私はそれに従おうー

 

ーいざとなれば君を斬って地図を奪えば良いしなー

 

 

ー内心だけに留めとけよ……、喧嘩売ってんなら買ってやるぞ?ー

 

 

ー余計な体力は使いたくないんだろう?ー

 

 

ーケッ、良いから着いて来いー

 

 

そう言って彼は階段を上りきり、ある床を踏む。

 

すると床が持ち上がり、昇降機のように上昇して行く。

 

その終点は、丁度目覚ましの鐘の真下に位置した場所だった。

 

ーどうせ見えてねぇだろうから、ちょっと其処で待ってろー

 

 

ー何をするのかは知らないが、承知したー

 

 

そう言った彼は壁をすり抜けて消えて行った、あの位置に幻影の壁でもあるのだろうか?

 

彼は暫くしたら戻って来たが、盛大に溜め息を吐いている。

 

 

ー如何したのかね? 疲れたような顔をしているがー

 

 

ー何でもねぇよ、ただ誓約を変えて人間性を捧げまくった事が疲れただけだ……ー

 

 

疲れたような声で昇降機を再び起動した彼は此れから我々が通るルートを地図付きで説明し始めた。

 

 

ー俺たちの現在位置はデーモン炎司祭がいた場所だー

 

ーでだ、本当なら俺たちはこのまま下に向かって行って溶岩地帯を抜けるつもりだったー

 

 

ー待ちたまえ、どうやって溶岩を越えると言うのだね?ー

 

ー私の大盾は乗れて一人だぞ?ー

 

 

ー盾を船代わりにするのはテメェだけだよ‼︎ー

 

ーんな奇天烈な事はしねぇよ、まったく……ー

 

ー話を戻すぞー

 

ー本当なら、あの爛れがその溶岩を渡る為の指輪を持っていた筈なんだが……ー

 

 

ー成る程な、だが残念ながら私にはそのような指輪が流れ込んできた様子は無いー

 

 

ーチッ、やっぱりテメェもかー

 

ーまあ要するにそう言う話だ、手違いか記憶違いかしらねぇが、その指輪が手に入らなかった以上その溶岩地帯を渡る術がねぇー

 

ーだから抜け道をつかわせて貰うー

 

ー此処のすぐ側にそのイザリスから直通の脱出経路見たいなもんがある、今は壁に閉ざされちまってるらしいが其処を開けるー

 

ーその為に姫さんの従者になったんだが………ー

 

ーどうした? トラブルでもあったのか?ー

 

 

ーいやなんでもねぇ、これ以上は蛇足だー

 

ーともかく、其処まで行くぞー

 

そう言った彼は、デーモン炎司祭のいた場所の入り口まで戻り、左手に見える大通りに向かって行く。

 

突き当たりは壁に閉ざされ、更に周囲には変な虫が跳ねている。

 

その虫が強く発光しているのを眩しく思いながら、壁に手を当てている放浪者を見る。

 

 

彼は目を瞑り、壁に意識を向けているようだ。

 

周囲の虫に辟易しているようなのでナイフを投げながら一匹づつ処理してやる。

 

 

辺りを掃除し終えると同時に、地響きが辺りに木霊する。

 

振動と共に羽子板を外すように壁が床と天井に収納されて行く。

 

その光景に驚きはしたが、それより驚いたのはその先に居た男だった。

 

 

我が親友ソラール。

 

彼には幾たびも助けられ、共に助け合おうと誓いあった友人だ。

 

しかし彼の頭には先ほどの虫が乗っており、彼の様子もおかしかった。

 

 

ー遂に、遂に、手に入れたぞ、入れたんだー

 

ー…俺の…俺の太陽、俺が太陽だ…ー

 

ー…やった…やったぞ…ー

 

ー…どうだっ…俺は、やったんだ…ー

 

ー…お、おお…ー

 

ー…おおおおおおおおっ‼︎ー

 

以前の彼の姿からは見る影の無い姿となっていた。

 

 

ー……ありゃあ、寄生されてんなー

 

唖然としている俺の耳に、放浪者の声が入ってきた。

 

 

ー多分頭の上に張り付いてる虫は寄生虫なんだろうよー

 

ーさっきテメェが仕留めた虫をひっくり返して見ると、頭の付け根辺りに針みたいなのがあるー

 

ー液体を吸う針にしちゃ、鋭すぎるー

 

ーかと言って攻撃用にしては細すぎるー

 

ーあの男の頭に張り付いて動かねぇのを見ると、寄生虫と見て良いだろうよー

ーまっ、終わっちまったんだったらそれまでだけどなー

 

ーで? オメェはどうすんだよ?ー

 

 

彼から突き付けられた選択肢。

 

助けるか、否か。

 

ー勿論、救うともさー

 

ー君は手を出さないでくれー

 

ーこれは彼と私の戦いだー

 

 




あったかもしれない会話 ⑥

〜 昇降機で降下中 〜


主人公「所で女ったらし君、君はその『姫さん』とやらと何があったのかね?』

放浪者「喧嘩売ってるなら幾らでも買ってやるぞ…ッ‼︎」

主人公「文字通り出血も大サービスで売り付けてやろう」

主人公「どうせその姫君からも好意を持たれてしまった事に辟易しているのだろう?」(適当

放浪者「なんで分かったんだよ⁉︎」

放浪者「旅の話してやってるだけで気に入られるとかまじで何なんだよ」(師匠から貰ったお揃いの老魔女の指輪装備

放浪者「畜生、師匠が気にしてるみてぇだから様子を見に行っただけなのによ、どうしてこうなった」

主人公「冗談だったのだが………」

放浪者「は?」

主人公「誘導尋問すらしていないのに自白するとは……」

主人公「さては自慢して居るな?」

放浪者「んなわけあるかァァァァア‼︎」

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