不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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この調子だと150話以内に終わるな(確信)

玉ねぎさんは勿論スルーです。

或る意味生存ルートですね(白目)


不死の英雄伝 127

第百二十七話 混沌の苗床

 

 

イザリスまでの直通通路に立ちはだかっていた楔のデーモンを放浪者が倒した後、俺たちは漸く其処へと足を踏み入れた。

 

 

混沌の廃都、最後の王のソウルがある場所。

 

長かった俺の旅も終焉が近付いている。

 

しかし感傷にはまだ早い、何故ならまだ放浪者との決着や大王グウィンが残っているのだから。

 

通路を渡りきった先に設置されていた石像を全て破壊し、地図に従いながら霧の前まで到達する。

 

だが、霧の前には一人の女性が立ちはだかっていた。

 

服装を見る限り、混沌の娘の一人であろうと判断できるが、どうやら亡者化しているらしく、俺たちに襲い掛かってきた。

 

 

ーおっと、手を出すんじゃねぇぜ?ー

 

ーあの女は俺が殺るー

 

ーテメェは黙って見てなー

 

 

アルトリウスの大剣を抜き掛けていたが、その言葉を聞いて戦闘体勢を解く。

 

俺が手を出さないと悟った彼は彼女の前まで一気に接近する。

 

彼女の手の平に発現したのは巨大な炎の塊。

 

しかし、それはただの炎では無くゴボゴボと沸騰した溶岩の炎だった。

 

 

その炎が投げつけられた瞬間に、放浪者は墓王の大剣を振るってその炎を両断する。

 

斬り捨てられた炎は左右に分かれながら地面に着弾する。

 

着弾点に目を向けてみると、溶岩として其処に残っており、地面を焼き焦がしていた。

 

 

次に彼女は薙ぎ払うように炎を撒き散らし始め、接近する放浪者を払い除けようとしたが、彼にはそれが読まれて居たようだ。

 

 

彼は薙ぎ払うかのごとくに振るわれている手首を掴み上げ、彼女の呪術を封じ、その心臓に向かって態々ソウルから取り出したシミターを突き立てて、彼女の生命を終わらせた。

 

 

ー悪いな、正気を保ってりゃいくらでも助けられたんだがな……ー

 

ー今のあんたには、一思いに楽にしてやる位しか出来ねぇー

 

ーrest in peace、恨むなら恨んでくれても良いぜ?ー

 

 

徐々に瞼を閉じて行く彼女に彼はそう語りかけ、その最期を看取っていった。

 

その後、彼は彼女が持っていた杖を拾いながら明後日の方向を見つめる。

 

その表情を見る限り、恐らく闇霊に侵入されたのだろう。

 

 

しかし、同時に俺にも襲いかかる不快感、背後を見てみると闇霊がゆっくりと侵入して来ている所だった。

 

 

ーその様子だと、テメェも侵入食らったみてぇだなー

 

 

ーああ、その通りだー

 

 

ー良かったじゃねぇか、退屈凌ぎにゃうってつけだぜ?ー

 

 

ー私は生まれて来てから一度たりとも自分が強者だと思った事は無いよー

 

ー若しかしたら、彼に遅れを取る可能性も有るさー

 

 

ー負ける気なんぞねぇだろうがー

 

 

ー無論だ、私は自分を強いとは思っていない、故に常に全霊だー

 

 

ーえげつねぇ奴だなー

 

 

その言葉を皮切りに、お互いに目の前に居る闇霊に向かっていった。

 

 

俺の目の前に居る男の装いは、頭にずた袋、胴にダークレイスの鎧、そして混沌の娘のスカート。

 

右手にはアイアンゴーレムの斧、左手には銀騎士の盾、更に腰には刀が装備されている。

 

 

彼は斧を振るって不可視の刃を放って来たが、半身を逸らすだけで回避する。

 

彼は不可視の一撃を回避されたのを不審に思ったのだろうが、偶然回避したと判断したのか、もう一度彼はその刃を振るってきた。

 

 

確かに、見えない攻撃は脅威ではあるが、腕の振りを見ればその一撃の位置を把握できる。

 

更に、さっきの一撃で着弾まで何秒くらいかを把握することが出来た。

 

 

二発目の不可視の刃を斬り払い、アルトリウスの大剣を左手で抜き、彼の胸に向かって突進する。

 

彼は咄嗟に腰の刀で迎撃しようとしたのだろうが、聖剣を斬る事は叶わず。

 

彼は鎧ごと胸を貫かれ、ソウルの粒子となって散って行った。

 

 

一方の放浪者はある男と対峙していた。

 

 

ーよおカーク、さっきぶりじゃねぇかー

 

ー姫さんの所には珍しく居なかったみてぇだったから、若しかしたら先回りしてんじゃねぇかとは思っていたがなー

 

 

ー黙れ、この先には行かせぬー

 

ー例えこの命に変えても、姫様の母君は討たせはせん‼︎ー

 

ーこれ以上、あのお方に悲しみを背負わせる訳には、これ以上涙を流させる訳には行かんのだ‼︎ー

 

 

ーハァ、どいつもこいつも馬鹿みてぇな事しか言いやがらねぇなー

 

 

ーなに?ー

 

 

ー本当に姫さん達の事を考えるなら、逆だろうがよー

 

ー醜い魔物となった母親や、亡者となって正気を失った姉なんぞ見てて辛いだけだろうが‼︎ー

 

ー悲しみを背負わせるだ?涙を流させる訳には行かないだ?ー

 

ー悲しみを背負ってるんなら、軽くなるように共に背負えば良いだろうが‼︎、悲しみを忘れるほど喜ばせれば良いだけだろうが‼︎ー

 

ー泣いてるんなら涙を拭え‼︎、笑わせてやれ‼︎ー

 

ーそれが出来ねぇテメェらは、姫さんの優しさにおんぶに抱っこしてるだけのただの重しなんだよ‼︎ー

 

 

その言葉を言い終えた放浪者は墓王の大剣を抜きながら棘の騎士に向かって飛び込んで行く。

 

 

彼の言葉に動揺していた棘の騎士は僅かに反応が遅れ、自身の剣で鍔迫り合いに持ち込んでしまった。

 

 

放浪者は剣が受け止められるや否や、その形状を鎌へ変形させ、棘の騎士の背中を貫く。

 

 

ーがっ、ごふっ…………ー

 

 

ーカークよぉ、テメェが俺に勝てない理由は三つあるー

 

ー先ず一つ、テメェの剣は軽すぎるー

 

ーだからこうやって鍔迫り合いから押し込まれんだよー

 

ーそして二つ目、お前より俺の方が良い男だー

 

ーヘタレなテメェと違って、俺は迷わねぇし躊躇わねぇ、それだけでも俺の方が良い男だろ?ー

 

ー最後に三つ目、強え奴は強えんだよー

 

 

ソウルの粒子となって消えて行くカークに、彼はそう吐き捨てるように言った。





あったかもしれない会話 ⑧

〜合流後〜

主人公「君がモテる理由が分かったような気がするよ」

放浪者「はあ?いきなり何言ってんだよ」

主人公「存外女性に優しいのだな」

放浪者「普通だろ?」

主人公「ああ、成る程、以前に言った本命はその『姫さん』か」

放浪者「テメェは本当にしつけぇな‼︎」

放浪者「女みてぇにネチネチと、鬱陶しいぞ‼︎」

主人公「おや?私は自分の性別を君に伝えた事があったかね?」

放浪者「は?、テメェまさかおんーー」

主人公「紛れもなく男だよ、君の眼は節穴かね?」

放浪者「決めた今殺す、すぐ殺す絶対ころーー」

主人公「冗談はともかく、君の愛しい『師匠』の為に頑張ろうでは無いか」

放浪者「 」

主人公「昇降機の所で師匠がどうのと言っていたのでカマをかけたのだが、当たりだったか」

放浪者「 」

主人公「本当に愉快な男だな」

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