不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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苗床は手を加えようかと思いましたが辞めました。

早くリリカルで主人公にもハーレムを与えたいんだ。

テンプレ転生者の人数どうしよ…。


不死の英雄伝 128

第百二十八話 最後の王のソウル

 

 

 

俺たちは互いの世界に侵入してきた闇霊を討った後、霧の前で合流し、霧を越える。

 

ここに来て語る事も、思う事も無い。

 

この胸に有るのは、最後の王のソウルを手に入れる、その思いだけだ。

 

霧を越えた先の坂を滑り降りながら、背中の月明かりの大剣に魔力を込めて行く。

 

坂を降りきった先で目に映ったのは、聳え立つ巨大な巨人。

 

先手必勝と言わんばかりにその巨人に向かって月明かりの大剣の光波を放ったのだが、彼は光波の直撃を受けてもびくともしなかった。

 

 

もう一発叩き込もうと思った所で放浪者に肩を掴まれ止められてしまった。

 

ー無駄だ無駄、アレはそれじゃ倒せねぇみてぇだぜ?ー

 

その言葉を聞き、一旦剣を納めてから、あの巨人の動きに注意しながら彼に続きを促す。

 

 

ー良いか?コレは混沌の娘の一人である俺の師匠と姫さんから聞いた話を纏めたもんだ、信憑性は高いー

 

ー先ずアレが何なのかは、イザリスの魔女とその七人の娘達がどうなったか、それから語る必要があるんだが、時間がねぇざっと説明するぞ?ー

 

ー混沌の炎に焼かれたイザリスの魔女はデーモンとなった、此処までは良いな?ー

 

ーそうして残る混沌の娘達だが、これは俺の師匠を除いた全員が何かしらの被害を被ったー

 

ーテメェに分かりやすい所で言ったら、クラーグ辺りだなー

 

ー因みに姫さんも同じ症状だ、他にはさっきのグラナだが、こいつは説明はいらねぇなー

 

ー後は爛れの所で死んでたのも混沌の娘の一人だー

 

ー俺の師匠を含めてコレで五人だ、すると残りの二人は何処へ行ったのかが問題になるー

 

ーそんで、その答えが彼処の二つの物体だー

 

 

彼がそう言って指を指した場所は、巨人の両脇にある木の根だった。

 

ーイザリスの魔女が混沌の炎に飲まれた時には二人の娘が側に居たんだと、つまりアレが残りの娘だろうよー

 

ーでだ、これからが本題なんだが、アレの名前は混沌の苗床って言うんだとー

 

ー名前の通り、彼奴は唯の植物でイザリスの魔女じゃねぇー

 

ーただ、アレは封印になってるんだとさー

 

ー両脇に居る混沌の娘を利用して、イザリスの魔女を封じてるそうだー

 

ーつまり、あの二人を先ず討って、それからイザリスの魔女を引き摺り出すー

 

ー足場には気を付けろよ?ー

 

ー封印を一つ破壊すると、同時にそれによって支えられてる床も崩落する可能性があるってよー

 

ー最後にもう一つ、封印を破壊するとその分混沌の力との均衡が崩れちまうから、あの巨人が暴れ出すかもしれねぇって事を頭に入れておけよ?ー

 

彼からの詳細な情報を頭に入れ、俺は右、放浪者は左へと別れてゆく。

 

 

背中の月明かりの大剣に魔力を込めながら、全力疾走して混沌の娘の封印を破壊しに向かう。

 

そんな最中、急に影が出来た為、上を見ると巨人の手の平が俺を叩き潰そうと振り下ろされて居るのが目に映った。

 

これは多分、封印を守る為の防衛行動だろうな。

 

 

この距離ならば放浪者の視界に入らないため、気兼ねなく奥の手を使う事が出来る。

 

振り下ろされる手の平を回避する為に月明かりの大剣を暴発させて急加速、更に其処からもう一度踏み込む。

 

それによって一時的に神速の境地に達した俺は、彼の手の下からすり抜け、一気に封印まで肉薄する。

 

 

その瞬間地面が揺れた。

 

 

 

震源に目を向けると、左側に炎に包まれた枝が新たに生えているのが見え、周囲の床が崩落して行く。

 

幸い俺の足元は崩落しなかったが、下は正に奈落、落ちれば生命は無いだろう。

 

 

 

恐らく彼が左の封印を破壊したのが原因だろう、なら下手に移動される前に間髪入れずに此方の封印を破壊しなくてはならない。

 

背中のアルトリウスの大剣を槍に見立てて封印に向かって投げ付ける。

 

二つ目の封印が破壊され、二本目の枝が姿を現す。

 

 

 

急いで剣を回収し、放浪者と別れた地点まで走って行く。

 

だがそれは、巨人相手に無防備な背中を晒していると言う事になる。

 

当然振るわれる手、今回は叩きつけでは無く、薙ぎ払うように腕を振るってきた。

 

背後から迫る混沌の力によって暴走した巨人の手。

 

 

その手のひらを受け止めるように盾を構え、敢えてその一撃を受ける。

 

衝撃は凄まじかったが、そのお陰で一気に目的地まで運ばれる事が出来た。

 

 

ーどっから来るんだよその発想……ー

 

呆れた彼の声を聞き流しながら、俺は崩落した床の下に見えた醜い魔物に指を指す。

 

 

ーそんな事はどうでも良いさ、それより此処は私が囮になろう、主役は君に譲るからキッチリ仕留めてきたまえよー

 

 

ーそいつはどうも、けど終幕は呆気ないとおもうぜ?ー

 

 

 

そう言って、囮役を引き受けた不死の騎士は、巨人に向かって光波を放ち、派手な行動を取りながら巨人の注意を引き付ける。

 

 

光波の爆風や巨人の振り下ろす炎の枝の影に隠れながら、放浪者が崩落した床から飛び降り、イザリスの魔女まで突き進む。

 

彼は醜い魔物となったソレを踏みつけ、墓王の大剣を振り下ろす。

 

 

ーAuf Wiedersehenー

 

ーゆっくり眠んな、魔女さんよ……ー

 

 

彼が魔女の居場所に乗り込んでいってから暫くした後に、俺の中に最後の王のソウルが流れ込んできた。

 

どうやら、俺が直接倒して居なくとも、王の器さえあれば無事に流れ込んでくるようだ。

 

 

身を焦がす熱に耐えながら、彼の元まで向かって行く。

 

イザリスの魔女が居た場所には彼の姿は無く、代わりに書き置きが残されていた。

 

最初の火の炉で待つ。

 

俺たちの因縁の決着は其処で付ける、それまでにその粗末な装備を鍛えておくんだな。

 

 

こう書かれた書き置きの側には各鉱石が山積みとなっていた。

 





イザリスの魔女を討った後、姫さんの篝火まで身体を転送する。


意識が飛びそうだが、姫さんに気取られないように振る舞い、何時ものように旅の話をしてやる。


ーよう姫さん、あんたのお陰で用事も済んだあんがとなー


ーそんな事無いよ、私にはこれ位しか出来ないから……ー


ーそおかい、んじゃ何時も通り旅の話と行くかー

ーつっても今回は結果報告みてぇになるかもしれねぇがー


俺はこのイザリスで体験した事ややってきた事を話して行く。

俺の対極に位置するあの変人の話は姫さんのお気に入りな為、道中の会話も余す事なく話してやった。


ーとまあ、最後はカッコよく俺が姫さんの母さんを解放してやって終わりってなー

ーコレで、あんたは自分の心配に集中出来るってこったなー


ー母さん……ー


ー…………姫さんにはカークも居るしエンジーのジジイも居るんだ一人じゃねぇよー

ーカークにゃ発破も掛けたんだ、あの石頭も柔らかくなっただろうよー


ーねぇ……、貴方は、居てくれないの?ー


ー………悪ぃな、俺はこれから用事があるからこれで帰らせて貰うぜ?ー


ーえ?うん、またね?ー


ーああ、”じゃあな”ー

帰る途中でエンジーにクラーグの魔剣を渡す。

ー……お主、腹を決めたかー


ーハッ、何のことだよ?ー

ーそいつはもう必要無いってだけだぜ?ー

ー変な勘ぐりは辞めろってのー


ー……そう言う事にしておいてやろうー



さて、と。

次は師匠か。


師匠は俺の帰りを心配し過ぎているのか、目の前に立っていても気付かねぇ。


ー師匠、ほらあんたの後悔と罪は俺が清算してやったぜ?ー

仕方ないので俺から声を掛け、イザリスで手に入れてきた混沌の娘達の遺品を師匠に渡す。

ーそ、そうか、お前が、やって、やってくれたのかー

ボロボロと大粒の涙を流しながら泣き崩れ始めた師匠に背を向ける。


ーなあ、師匠ー

ー俺には一つ、如何しても決着を付けなきゃなんねぇ事があるんだー

ーだから、また暫く帰って来れそうに無いー


ーそう、かー

ーならキッチリと埋め合わせはしてくれるんだろうな?ー


師匠は涙を拭いながら何時もの調子で俺に無茶振りをする。


ー”帰ってきたら”何でもしてやるよー


ーほう?、それは珍しいなー

ー文字通り”何でも”なんだな?ー


ーああ、”何でも”ー


ーそうか、ならば楽しみに待っているよー


ーじゃあな、”クラーナ”ー



そう言って師匠の所から地上に向かう。

後ろで師匠が素っ頓狂な声を上げていたが、振り向かない。


地上に上がり、飛竜の谷でビアトリスと遭遇した。


ー…………奇遇ねー


ー毎回言ってねぇか、それ?ー


ー…………お弁当、どうだった?ー


ーせめてコメント出来る味のもんを作れよ……ー


ーそうじゃ無くってもっと、こう、ほらー


ー俺を落としてぇなら、せめてその平均値ど真ん中の味から脱却しろ、全然上達してねぇじゃねぇかよ……ー


ー…………だって、お料理難しいんだもんー


ー…………今度教えてやるよー


ー………本当‼︎ー


ーああ、本当だよー

ー但し、今から用事があるから、其奴が終わってからだー


ーなら、ここで待ってる、だから早く終わらせてきてね?ー


ー…………始めの毒舌はどこいったんだよー

ーじゃあな、ビアトリスー


ー⁈、な、名前⁉︎ー

ーは、は、初めて名前で呼ばれた⁉︎ー


大袈裟にあたふたし始めたビアトリスに呆れながら、祭祀場へと足を向ける。


あの男、暫く見ねぇうちに随分強くなりやがった。

前まではひよっこもいいところだったのにな。

若しかしたら、見つかるかもしんねぇ。

俺の産まれた意味って奴が。

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