不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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漸くグウィン戦ですね、いやー長かった(白目)

リリカルの準備もしないとな〜(白目)


不死の英雄伝 132

第百三十二話 薪の王

 

 

霧を越えた先で見たものは、小さな火の側に座った初老の男、恐らく彼が大王グウィンだろう。

 

 

その背中は煤けていて、正に消えかけの印象だと言うのに、その印象とは真逆の凄まじい圧を周りに振りまいている。

 

 

アレは早く殺してしまうべきだな。

 

 

此処に踏み入れた瞬間から胸に宿っている王のソウルが暴れ回っている、戦いになってしまっては一撃と持たず、直ぐに地に顔を付ける事になるだろう。

 

先手必勝だ、一撃で殺す。

 

 

そう思い、その一歩踏み出した時だった。

 

 

俺の中の王のソウルが全て彼の元に向かい、その精神を再構築させて行く。

 

 

瞬間、始まりの火が巨大な炎の柱となり、辺りにその熱を染み渡らせて行く。

 

 

大王グウィン。

 

太陽に例えられたその力、それが今、完全に復活した。

 

膨大な熱が全て放出された為に、かなり息が荒れてしまったが、お陰で楽にはなった。

 

状況は最悪だけどね。

 

 

ー大儀であった、不死の英雄よー

 

ー此れで、再び余がこの火の薪となる事が出来るー

 

ー故に其方がこの火を継ぐ必要はもう無いー

 

ーさあ、危ないから余から離れよー

 

 

彼の吐く言葉の一つ一つが神の業、吐息の一つ、仕草の一片までもが全て神格を持っているかのごとくの物だった。

 

そう言えば、今までの旅で色んな敵と戦ってきたけど。

 

太陽を相手にした事は無かったな。

 

これじゃあ太陽の信徒失格だね。

 

なんせ、これからその”太陽”を落とすのだから。

 

 

始まりの火に触れようとした大王の手に向けてナイフを投げ付ける。

 

気配で察せられたのか、残念ながらナイフは当たらなかったが、代わりに彼に此方を向かせる事に成功した。

 

 

ー不死の英雄よ、何のつもりかー

 

ー自ら薪となる必要は最早無いと言ったであろう?ー

 

ーそれとも、乱心でも起こしたか?ー

 

ーこの火を消し、闇の時代を産むつもりか?ー

 

ー答えよー

 

 

彼の問い、一つ一つは大した言葉では無いが、神格を持った彼の言葉による重圧に、魂が悲鳴を上げている。

 

 

下手を打てば、このまま魂ごと潰されてしまうだろう。

 

 

しかし、俺の目的は火継ぎなんてくだらない物ではない。

 

始まりの火を利用した新世界の創世だ。

 

ならば、この程度の圧に屈するものかよ。

 

 

ー大王グウィンよ、そもそも、貴方は大きな勘違いをしているー

 

ー俺が此処に来た理由を、全くもって理解しておられないー

 

ー何せ、俺は初めからその火を継ぐ気は無いのだからー

 

 

 

ー成る程、貴様の目的は闇の時代を産むことかー

 

その言葉と共に彼から殺気を向けられる。

 

それと同時に、俺にかかる圧力が先ほどまでとは比較にならないほど強大になった。

 

 

逃げ出したい、跪いて許しをこいたい、死にたくない。

 

 

一瞬、それらのような恐怖の感情が湧き上がりそうになったが、それを無理矢理飲み込み、更に続けて行く。

 

ー闇の時代、ねー

 

ーそんな物に俺は微塵も興味は無いさー

 

ー日の刺さない時代に何の価値がある?ー

 

ー不死が神になり変わって偉ぶりたいのかよー

 

ー馬鹿馬鹿しい、俺は逆立ちしたって御免だねー

 

 

俺の言葉を聞き、大王は訳がわからないと言った表情を浮かべ、俺に真意を問いただす。

 

 

ーならば、貴様は何が目的で此処までやって来たのだ?ー

 

ーまさか言われるがまま、と言う事は無かろうなー

 

 

ー其れこそまさかさー

 

ーそんな事はありはしない、俺は俺の意思で此処に立っているー

 

 

大きく息を吸ってその言葉を大王グヴィンに投げかける。

 

 

ー我が目的は新世界の創世なり‼︎ー

 

ー人間に不屈の精神を与える事により、神に縋る必要の無い世界を創り、地上を人の世とする事だ‼︎ー

 

ー神は天上に‼︎、魔物は地下へ‼︎ー

 

ー人間の強さを証明する世界、その礎となれ‼︎ー

 

ーさあ、神が世界を統治する時代は終わりだ‼︎ー

 

ー太陽の王よ、その座とその首、俺が貰い受ける‼︎ー

 

戦線布告、太陽の王に向かってアルトリウスの大剣を向け、高らかに宣言する。

 

 

ー成る程、世界創世の為に此処に来たかー

 

ー良かろう、貴様の挑戦受けて立つ‼︎ー

 

ーただし、余は太陽と同意なり‼︎ー

 

ー太陽とは即ち天‼︎ー

 

ー地を這う人間に、天が落とせるものか‼︎ー

 

ー貴様は震えながらでは無く、藁のように死に行くのだ‼︎ー

 

ーその覚悟があるならば、かかってくるがよい‼︎ー

 

 

覚悟?

 

覚悟だと?

 

 

ーそんな物はとうの昔に出来ている‼︎ー

 

ー人間の強さ、今こそ此処に証明してやるから、目に焼き付けて死んで行け‼︎ー

 





久しぶりの問答回でしたね。

主人公も一人称が俺に戻りましたから、今かなり昂ぶってます。

彼は今超絶好調。

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