不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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不死の英雄伝 17

第十七話 使命の重さ

 

俺は今火守女の前にいる。

 

祭祀場に戻る際に教会で見つけていた魂を使用しエスト瓶を強化してもらうためだ。

 

リフトを降りる前に拾ったものの、それが何なのか分からなかった俺は祭祀場に居るペトルスに話を聞いた。

 

今回はそれなりに情報料を払ったおかげか、この魂の事を詳しく教えて貰った。

 

これは火守女の魂と言い、ペトルス曰く火守女とは篝火の化身であり、捧げられた人間性の憑代である。

 

その魂は、無数の人間性に食い荒らされ、不死の宝エスト瓶の力を高めるという。

 

先ほど渡した魂に祭祀場の火守女が祈りを捧げる。

 

火守女の魂がエスト瓶に溶けて行く。

 

その光景は何処か神秘的だった。

 

強化されたエスト瓶を受け取る。

 

人一人の魂を使用してその力を高められたエスト瓶は心なしか前よりも重く感じた。

 

 

リフトを使い教会へと戻る。

 

不死の使命の重さに押し潰されそうになりながらも鐘を鳴らす為に歩みを進める。

 

今更後戻りは出来ない。

 

不死院で俺を助けてくれた騎士は使命を俺に託して死んだ。

 

教会で祀られて居た魂を拾い、その命を食らって力とした。

 

出会いと別れはこの先幾つも有るのだろう。

 

その度に俺はどれだけの命を背負う事になるのだろうか。

 

そもそも不死の使命は本当に俺なんかに託されても良かった物なのか?

 

俺より強い輩はそれこそ幾らでも居るだろう、肉体的にも精神的にもだ。

 

こんな元引きこもりに勤まる使命では無いだろうに。

 

リフトが上がり切り教会に着く。

 

重くため息を吐きながら思考を切り上げ隣にある階段を上っていく。

 

階段の先にレイピアを構えた騎士が立って居た。

 

左手にはバックラーを携えレイピアの鋒をこちらに向け俺を見つめている。

 

俺は騎士に対し腰の剣を抜き袈裟斬りに振るう。

 

先ほどまで後ろ向きな考え事をしていた所為か、僅かに剣筋がブレる。

 

そこを彼のレイピアが横に弾き、体勢が崩れた俺の胸にレイピアが突き刺さる。

 

反射的に身体をズラして致命傷を避けたは良いがその差は薄皮一枚だった。

 

ゴチャゴチャとしていた頭が一気に覚醒し、レイピアを引き抜こうとする彼の手を左手で抑え込む。

 

口から血を流しながらも弾かれてしまって素手となっていた右手で目の前の騎士の首を握る。

 

ギチギチと嫌な音を立ながら彼の首を締め上げていく。

 

向こうも刺さったままのレイピアを激しく動かし俺の心臓を潰そうとするがその手に力は無い。

 

鈍い感触と乾いた音が響き彼の首が折れてだらしなくぶら下がっている。

 

 

レイピアを胸から引き抜きエスト瓶にて傷を癒す。

 

 

悩むのは俺らしく無いな。

 

背負っちまったもんは仕方ないんだ、やるだけやってやる。

 

俺が泥舟か豪華客船かは俺次第なんだから悩んでちゃ駄目なんだ。

 

弾かれた剣を拾いなおし、魔術師に奇襲をかけた際に刺さったままとなって居たハルバードを回収する。

 

回収した先にまた同じ装備をした騎士が居た。

 

先ほどの二の舞にならない様に魔術師がいた場所まで一度下がる。

 

ハルバードを両手で構え彼方を見据える。

 

彼は盾を構えこちらの様子を伺っているようだったがこいつはバックラー程度の小盾なら弾き飛ばせる。

 

ハルバードの斧となっている面の反対側に返しのようになった部分がある。

 

そいつを彼の足元から盾の裏へと引っ掛けて弾き飛ばす。

 

盾を弾かれた彼が大きく後ろに飛び退くが、俺は弓のように身体を引き、槍に見たててハルバードを投擲する。

 

飛び退くと同時に投げられたそれを避けられはせず、見事に心臓を穿たれる。

 

ハルバードを引き抜き先に進む。

 

奥には鐘は無かったが代わりに隠し部屋を見つけ、中に居たロートレクと言う男を助けた。

 

どうやら長い間囚われて居たらしく疲弊して居たので肩を貸してやり祭祀場まで連れて行ってやる。

 

その際に礼だと言って太陽のメダルと言うものを貰った。

 

これは太陽の戦士達が人を助けた証として祭壇に捧げ誓約を深めて行く為のものだと言う。

 

彼は私には不要な物だと言いながら俺に押し付けて来たがそれはどうなのだろうか?

 

そんな考えが顔に出ていたのか、人の好意は素直に受け取るものだと笑われてしまった。

 

それに、現に私を助けたのだからそれを渡すのは間違いではあるまいと言われてしまい納得してしまう。

 

 

途中寄り道があったが無事に屋根裏へ到達する。

 

 

目の前に二つ書かれたサインを触る。サインの情報が頭に流れ込んでくる。

 

 

女神の騎士ロートレク。

 

 

太陽の戦士ソラール。

 

 

サインの情報から彼等を召喚するか否かを問われるが勿論二人とも召喚する。

 

召喚を許可した瞬間世界が歪み二人の霊体が現れる。

 

先に現れたのは女神の騎士ロートレク。

 

彼の霊体は地面から湧き出るようにゆっくりとその姿を見せる。

 

-貴公には借りがあるからな、暫くの間手を貸してやろう-

 

彼は不敵に笑いながらそう言っていた。

 

そして次に現れたのは太陽の戦士ソラール。

 

ソラールの霊体はロートレクとは違い太陽賛美をしながら現れた。

 

-我が友よ、力を貸そう-

 

-何、遠慮することは無い。我々は同じ志を持つ太陽の信徒なのだからな-

 

ソラールは豪快に笑いながらそう言った。

 

二人の霊体を見つつ屋根裏から外に出る為の霧の前に立ちながら、不死の使命だなんだと難しく考えていた自分が馬鹿らしくなる。

 

何も一人でやれって訳では無いんだな。

 

そうだよな、誰だって一人は辛いものな。

 

-有難う二人とも-

 

感謝の言葉を紡ぎ二人と共に霧を越える。

 

 

 

屋根の上に出ると、確かに鐘楼が見える。

 

あれが目的の目覚めの鐘か。

 

鐘に眼を向けているとそれの側に居たガーゴイルが突然ミシミシと音を立てながら動き出す。

 

成る程、こいつが門番か。

 

しかし動き出したガーゴイルは一体だけではなく、背後からも羽音と共にガーゴイルが二体現れた。

 

 

-三対三、つまり一人一殺になるみたいだがいけるか?-

 

-無論だ。私を甘く見ないで欲しいな-

 

-心配するな我が友よ、このぐらい造作も無い-

 

二人の頼もしい言葉を聞いた俺は背中の大剣を引き抜き目の前のガーゴイルに向かっていく。

 

他の二人もそれぞれの前に居るガーゴイルに意識を向けているようだった。

 

友人達の前で無様な姿は見せられないからな。

 

さっさと終わらせてやるよ。

 

掛かって来い。

 





主人公「ハルバードってすげーよな。斬って良し、突いて良し、投げて良し、足場にして良し、だもんな。」

ハルバード「最後の二つについて小一時間ほどお話が」

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