不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

24 / 134
不死の英雄伝 24

第二十四話 犬ネズミの王

 

 

闇霊が消滅した場所には血だまりが残っている。だが、ソウルは漂っておらず、代わりにそれに込められていたのは人間性だった。

 

 

闇霊は他者を襲い人間性を奪う存在達だ。もしかしたら、この人間性も他の誰かから奪ったものなのかもな。

 

 

そんな事を思いながら、俺はその場を後にし、篝火に触れてから先に進む。

 

 

 

 

ネズミの群れを越えると、砦のような場所の上に出た。

 

下水道の中に砦?

 

不思議な光景に首を捻って居たが何やら聞き覚えのある呪文が聞こえ思考を中断する。

 

 

どうやら不死教区で戦った魔術師がまた居たようで、こいつは自分の周りにいる三匹のネズミ達を強化し、俺に襲いかからせる。

 

臆病だったネズミ達は魔術によって凶暴化し縄張りに足を踏み入れた俺を排除しようとする。

 

あの放浪者を倒す際に掛けたエンチャントはまだ効力を発揮していたので、先陣を切って突撃して来たネズミの頭を真っ二つに割る。

 

それに合わせ左右から残りのネズミが噛み付いてくる。片方のネズミを盾で防ぎながらもう片方のネズミの顔に膝蹴りを入れる。

 

ネズミ達に意識が向いていると、正面から魔術師によってソウルの矢が放たれる。左には盾の上からでもお構いなしに大口を開いているネズミが居るため盾は使えない。

 

 

胸を目掛けて放たれたソウルの矢を防ぐために右腕を滑り込ませて直撃を防ぐ。

 

 

手甲は砕け肉を抉られたがなんとか防ぎ切った。代償に利き腕を潰された上に剣も取りこぼしてしまったが。

 

 

追撃を防ぐために最初に仕留めたネズミを魔術師めがけて蹴り飛ばす。それと同時にハルバードをソウルから取り出し左手に握り横にいるネズミに突き立てる。

 

立て続けにネズミを撃破され、分が悪いと感じたのか新たな呪文を紡ぎ彼は消えた。

 

しかし、彼の魔術はまだ生きているようでダラダラと涎を垂らしながら興奮気味にこちらに殺意を向けるネズミが残されている。

 

 

魔術の強化を受けたネズミの動きは素早く、エスト瓶を使用する暇はない。

 

 

左手一本でハルバードを構える。

 

本来は両手で構えるものだろうが右腕は潰されてしまっているので仕方が無い。

 

右腕を庇うように身体を引き、ハルバードを左脇に抱え切っ先をネズミへと向ける。

 

彼はネズミとは思えない咆哮を上げ俺の右側を走り抜ける。

 

その行く手を塞ぐようにハルバードを振るうがどうやら浅かったらしく、動きを止めるには至らずに右腕の傷に噛みつかれる。

 

彼の牙が骨を砕き、その唾液が傷に触れ焼きごてを押し付けられたような激痛が走る。

 

痛みに耐えながらハルバードを回しネズミを斬り捨てる。

 

 

痛過ぎて気絶もできねぇよ、畜生。

 

 

エスト瓶を取り出し傷を癒そうとした時に今まで感じた事の無い痛みを感じてその手を止める。

 

 

最早原型を残さない程に潰された右腕に紫色の斑点が現れ、そこを中心に全身へ倦怠感のようなものと息苦しさが回る。

 

 

身体に力が入らず、思わず膝をついてしまう。呼吸を荒げるが中々酸素が入ってこない。胃液がせり上がり床にブチまける。

 

震える左手でエスト瓶を口に運ぶがこの苦しみから解放される事は無い。

 

必死にエスト瓶を使用していた時に商人から毒消しの苔を買っていたのを思い出し、藁にもすがる想いで口にねじ込む。

 

全身の倦怠感は嘘のように消え、息苦しさも無くなった。

 

毒の恐ろしさを身に震わせながら、先ほど取り落とした剣を拾う。

 

話によれば病み村はこの苔が無ければまともに旅が出来ない場所らしい。

 

その現実に、心が折れてしまいそうになるが深く考えないようにして先へ進む。

 

辛いことにエスト瓶を使い過ぎた所為で後一口分しか残っていない。

 

一度補充しに戻ろうかと思ったのだが、魔術師を仕留め損ねている為にあまり気乗りはしなかった。

 

悩んだ結果、有る程度先に進み地形を把握してから篝火まで戻る事にする。

 

狭い通路、人一人がやっと通れるような幅のそれをゆっくり歩いていく。

 

通路の先にはデーモンのようなサイズのネズミが居た。

 

自分の顔が引きつるのが分かる。

 

エストは後一口分しか残っていないので出来ればあれを相手にはしたく無い。

 

試しに彼に向かって、ソウルの矢を放つが毛ほども効いていない。

 

 

諦めて篝火へと帰りエストを補充し、破壊された手甲も直した後にあの巨大なネズミを倒しに行く。

 

 

その道中にまた魔術師が現れるのかと思っていたがその姿は無く、ネズミ達も大人しいものだった。

 

 

先ほどの通路から巨大ネズミの前に躍り出る。

 

視界の端に人間が映った事で、顔をこっちに向ける。その視線は敵に向ける物では無く餌を見る目だった。目の前の巨体は前脚を振り上げ、俺に叩きつけてくる。

 

 

その前脚を前に飛び込むように避け、背中の大剣で胴を斬りつける。

 

だがしかし、その巨大な身体は大剣によって付けられた傷を物ともせず逆に胴体を使い、俺を押しつぶそうとする。

 

ネズミの下から飛び退きそれを回避するが、そこを狙われ俺は一息に飲み込まれた。




早くクラーグ様に会いたい…。

明日はもしかしたら一話しか更新出来ないかもしれません。申し訳ないですm(_ _)m

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。