不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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騙して悪いが二話更新なんでな?


不死の英雄伝 27

第二十七話 騎士の誉れ

 

ハルバードを構え古竜へと向かう。ソラール達も肩で息をしている、その呼吸が整うまで俺がアレの相手をする。

 

 

魔術で強化されたハルバードによる刺突は古竜のウロコを容易く貫き、筋肉へとその先端を食い込ませる。

 

刃を使わず丁寧に前足に刺突を集中させていく、狙いは硬いウロコを破壊して行き、斬撃が通るようにすることだ。

 

 

少しづつだが、確実に破壊されていくウロコの痛みに古竜は雄叫びを上げながら、俺を踏み潰そうと跳び回る。

 

目の前の古竜の朽ち果ててしまった翼では空を飛ぶ事は出来ない、なので足に力を入れ跳び上がっている。

 

 

しかし、その行為には足の疲労という弱点があり、避け回っていればその内動けなくなる。

 

 

その証拠に徐々に跳び上がる頻度が少なくなって来ている。

 

こちらもソラール達の呼吸が整い始めている、そろそろ攻勢に出ても良さそうだな。

 

 

ハルバードを両手で握りしめ、打って出ようと踏み込んだ時だった。

 

 

着地した瞬間に古竜の胸に開いた口から何かがせり上がり、地面に向けて大量に吐き出された。

 

 

それは津波となって俺たちを襲う。

 

それぞれが手に持つ武器を地面に刺して流されまいとする。背後は奈落、落とされる訳にはいかない。

 

 

胃液の波を耐え、いざ反撃に移ろうとした時にそれに気が付いた。

 

 

武器や鎧から煙が上がっている。

 

特に尻尾の一撃を受けた際にかなりのダメージを受けていた鎧に、それは顕著に現れていた。

 

 

軽い音を立てて崩れ去る鎧に驚愕していると、最早聞き慣れた魔術の呪文、強化の魔法。

 

 

砦の上から聞こえたそれはあの時仕留め損ねた魔術師の物だった。

 

ソラールがそれに気付き雷の槍を投げ魔術師を仕留めるが一歩遅く、着弾する瞬間にその魔術が完成してしまう。

 

 

魔術による強化。それはただの亡者ですら折れた剣で、鎧を着込み大剣を背負った俺を片手で軽々と吹き飛ばした事がある。

 

それが今回掛けられたのはただでさえ強靭無比な古竜だ。

 

その事実に生唾を飲み込み、冷や汗が流れ、渇いた笑いが漏れる。

 

さしものソラール達も旗色が悪くなったのが分かったのか俺と同じような表情をしている。

 

 

あの魔術は1分にも満たない時間の短い強化なので、ソラールが早々に魔術師を潰してくれたお蔭で恒久的な強化は無くなった。

 

だが、そんな事を気にしては居られない。

 

1分にも満たない間の猛攻を俺たちはボロボロな鎧で耐えなければいけなくなった。

 

-第三ラウンドって事か-

 

-行けるか?二人とも-

 

-古来より竜には雷だ、太陽の信徒の奇跡を信じろ-

 

-愚問だな、私はこの程度の逆境に屈するほど柔では無い-

 

 

俺のハルバードは幸いな事にエンチャントのお蔭で破壊はまのがれた。

 

彼らの足を引っ張る事がなさそうで良かったよ。

 

 

短いやり取りを終えてから前を見る。

 

口が裂けるほど咆哮を上げながら、ハルバードによって破壊された前足を使い周囲にあった柱を引っこ抜く古竜。んなアホな。

 

 

あまりの光景に変な声を上げてしまう。

 

だが向こうとしては冗談などでは無く、まるでモグラ叩きのように力任せに柱を叩きつけて来た。

 

 

全員がそれぞれ散開し狙いを散らす。

 

俺は暴れん坊の古竜の後ろに回り込み大剣によって千切れかけていた尻尾にハルバードを振り下ろす。

 

大剣による連撃、尻尾による攻撃、度重なる跳躍、それらによって限界を迎えていた尻尾はその刃によって切断される。

 

鮮血が噴き出し、視界を塞がれるが手応えはあった。

 

 

一方のソラール達は前衛後衛に別れながら戦っていた。

 

前衛のロートレクが狙いを集め、後衛のソラールが槍を放つ。

 

単純な陣形だが短時間耐えれば良いのだからこれで十分。

 

 

しかし、後数秒で強化が切れるといった時に、ロートレクが空いている古竜の手に握られる。

 

破壊された床に足を取られた瞬間の出来事だった。

 

古竜は手に掴んだロートレクをソラールに投げ付け砲台役を潰す。そして強化が切れる瞬間に柱を二人に振り下ろす。

 

 

投げ付けられたロートレクを咄嗟に受け止めたソラールにその一撃は回避出来ず、ロートレク諸共叩き潰された。

 

ソラールは潰される瞬間に、雷の槍で古竜の背に刺さっている俺の大剣を弾き飛ばした。

 

 

二人は霊体なので消滅しても生身を失う事は無いので心配する必要は無かったのだが、これで一対一になってしまった。

 

 

大きく深呼吸し、ハルバードに篭っている余計な力みを取る。

 

エンチャントの切れたハルバードに黄金松脂を塗って行く、先ほどのソラールの言に従い今度は雷を纏わせて古竜に向かう。

 

 

古竜も満身創痍、ここまでお膳立てされたんだ、後は俺一人で頑張るしか無い。

 

 

ゆっくりと此方に振り向く古竜の頭に雷を纏うハルバードを投擲する。

 

足元を散々俺たちに攻撃されボロボロとなっている古竜は碌な回避行動を取れずに、ハルバードが突き刺さる。

 

 

古竜が電流に身体を捩らせて居る隙にソラールが弾き飛ばした大剣を拾い、エンチャントを施す。

 

古竜はハルバードが突き刺さったまま此方に突進をしかけて来る。

 

大剣を両手で握り、頭上に振り上げる天の構えを取る。

 

この構えを取っている時の相手を斬る動作は究極的には振り下ろすだけになり、最速の一撃を放つ事が出来る攻撃以外を捨てた構えとなっている。

 

 

地面を揺らしハルバードの刺さっているワニ頭を晒しながら突進してくる古竜を見据え意識を集中させる。

 

 

疲労や痛み、周囲の音、あらゆる物が遠ざかり自分が研ぎ澄まされて行くような感覚が自分を包む。

 

向かってくる古竜の動きがとてもスローに見え自分が振り下ろすべき一点がハッキリと見える。

 

ハルバードが刺さりウロコに隙間が出来ている一点。

 

俺は迷わずその一点に振り下ろす。

 

雄叫びに似た大声と共に振り下ろされた大剣はハルバードによって出来た傷に寸分違わず直撃する。

 

相手の突進に合わせてのカウンターは、その威力を倍増させ古竜を両断した。

 

大剣を掲げ勝鬨を上げる。

 

ソウルとなった古竜の身体から鍵が現れたが、そんな事はどうでもいい。

 

 

万歳のように両手を上げ全身でY字を作る。

 

太陽の恩恵を一身に浴びるためのポーズ、太陽賛美だ。

 

 

 

今はただこの勝利を喜ぶだけだ。

 

 

太陽万歳‼︎





貪食ドラゴン「本当は好きじゃ無いんだ…こうゆうマジな勝負はさ…。」

貪食ドラゴン「ま、ヤるんなら本気でやろうや。そっちの方が楽しいだろう?」

貪食ドラゴン「( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \ 」

マスブレードのゲスト参戦でした

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