異形となった朽ちぬ古竜の子孫、貪食ドラゴンの尾から生まれた武器。
希少なドラゴンウェポンの1つ。
強い神秘の力を帯びており、両手使いでその力が解放される。
脳筋が餅つきに使う杵。
第二十八話 病み村
勝利の余韻に浸っていると、先ほど切断した尻尾から一本の斧が現れた。
ドラゴンウェポン。竜の尾から産出されたそれには強い神秘の力が宿っており両手で使用する事により真の力が解放される。
無骨な古竜の骨で出来た大斧、それをソウルとしてしまい込み鍵を拾う。
一旦篝火まで戻り、破壊された装備を修繕しに行き、これから向かう場所へ思いを馳せる。
病み村、そこは二つ目の目覚ましの鐘が眠る奈落の底。
混沌の海に沈んだ廃都イザリスの炎の影響で異形となってしまった者どもの溜まり場となった地の果て。
そして大扉は開かれる。
眼下に見える物は深い闇。
日の光も差さない地獄の釜が今開いた。
下から漂って来る瘴気。
地獄があるならばこのような場所なのだろう。異臭が立ち込め、日の光も差さず、外界から閉ざされた場所。
粗雑な造りの足場しか無く、手すりなどは無い。
そば立て掛けてあった梯子を一段一段下って行き、足場へ到着する。落ちれば間違いなく死が待っている。
今まで以上に気を引き締め、先へ進んで行く。
目の前には長い棍棒を持った巨漢が立ちはだかって居た。
獣のような咆哮を上げながら此方に棍棒を振り下ろす巨漢。
その身体は脂肪による物では無く、筋肉によって練り上げられたもの、振り下ろす一撃も素早かった。
盾で受け止めたものの、勢いは殺しきれず身体が後ろに後退させられる。
危うく転落する所だったが間一髪耐え切った。
そのまま俺を叩き落とそうと棍棒を横薙ぎにする巨漢。
その下を抜けるように避けて背後に回り込み、バックスタブを叩き込み逆に奈落の底に叩き落す。
突き落とされた巨漢は悲鳴を遠ざけながら落下して行った。
この下が俺の目指す場所なんだよな。
長い道のりになりそうだ、と呟きながら歩みを進めていく。
2体目の巨漢亡者と出会い、ハルバードで応戦する。
この不安定な足場では間合いが大切になってくる為に竿武器であるこれを取り出す。
相手の間合い外から肩、肘、膝と彼の関節を次々と貫いて行く。
両腕が持ち上がらず、足も動かない巨漢の首をハルバードの斧で刎ね飛ばす。
血飛沫を上げながらソウルとなり消えていく巨漢亡者、その先にはトカゲのような頭をした亡者が巨漢の首を拾っていた。
トカゲ頭は消えて行く巨漢の頭を見て、敵の存在を察知したのか俺に向かってくる。
俺は興奮しているトカゲ頭の出鼻を挫く為に盾の裏のナイフを取り出して投げ付けた、だがトカゲ頭は野生的な反応速度で飛来するナイフを避ける。
その隙にハルバードを両手で構え直し、何時襲われても構わないように備える。
折れた剣を片手に吠えながら突撃してくるトカゲ頭。
短く息を吐き鋭く突きを放つ、ハルバードの槍はトカゲ頭の腹に深々と突き刺さる。
その状態から全身を使ってハルバードを回転させ、トカゲ頭を足場の外へとぶん投げる。
だが奴の声は周りの仲間にも聞こえて居たようでわらわらと俺に向かって集まってくる。
片っ端から叩き落としてやろうかと思ったが、一本の針が俺の肩に刺さった事で状況が一変する。
激痛と共に毒の症状が身体に現れる。
しかし、それらはかつてのネズミの毒とは比べものにならないくらいに症状が重い。
咄嗟に患部をナイフで抉ったものの身体に毒が回り始めている。
今はまだ動けているが、その内指ひとつ動かなくなるだろう。そうなればたこ殴りにされるだろうな。
盾を構え、強引にトカゲ頭達を抜けて行く。
少し進んだ先の足場に飛び降りて、苔を口に含む。
しかし身体の毒は浄化される事無く全身を貪り、俺の体力を奪い続け意識が遠のく。
エスト瓶を使い意識を回復してから冷静に懐の苔を探す。
一度ネズミの毒を味わっているお蔭で、あの時ほどパニックにはならなかったが、その分焦りが止まらない。
水路に居た商人から、猛毒について聞いていたのを思い出した。
猛毒は通常の毒とは違い、花の咲いた苔でしか治せず、その凶悪さ、進行の速さ、共に普通の毒の比では無いと言う。
長々と花の咲いた苔のプレゼンを聞いた甲斐があったのかしっかりと思い出したため、懐から花の咲いた苔を見つけ口に運び、解毒する。
ひとまずは窮地を脱した俺は周囲を見る。
トカゲ頭たちはどうやら此方に飛び込む勇気が無いのか躊躇して居るようだ。お蔭で助かった。
足元に何かが触れる感覚があり、そちらに目を向けると一本の刀が目に映る。この世界に日本刀が有るとは思わなかった。
上のトカゲ頭達が騒ぎ出して此方に意を決して飛び降りる。
足元の刀を引き抜き、トカゲ頭を斬り捨てる。
鋭い斬撃、西洋剣が叩き斬る事を主眼に置くならば日本刀は斬り裂く事を主眼に置いている。
鞘から居合抜きのごとく抜き放たれた斬撃は、するりとトカゲ頭を通り身体を両断する。
斬った感覚が無いほど研ぎ澄まされた刀。
その切れ味に驚愕しながらも次々と降りてくる亡者達を切り捨てて行く。
最後の一匹が折れた剣で斬撃を防ごうとしたのだが、この刀はそれごと斬り伏せる。
血払いを済ませ、刀を納刀する。
鞘を左腰に差す。位置は今まで付けていた剣の下。
この刀は居合い抜きに特化した物だからソウルに仕舞わず腰に着けておく。
病み村はまだまだ広い。
俺は新たな武器を携え、降りれそうな足場を探し始めた。
居合い刀
東の地で鍛えられる刀剣の一つ。
刀を鞘にしまい、もって光速の斬撃を見舞う「居合い」と呼ばれる剣術流派のもの。
「居合い」の技は踏み込みに伸びがあり、遠間の敵を一瞬で斬り落とす。
主人公「俺の零閃は逸々でも出撃可能だぜ?」