次回ハルバード炎派生させます。
他の武器の方が…と言うお方はご感想で。
第三十三話 救出劇の始まり
彼が通って来た道筋には敵は居らず、骸骨が辺りに散乱して居る。鈍器で殴られた跡がある点から、彼が片付けてくれていたのだろう。
地下墓地に入った直ぐの所に篝火があったが、それに構わず聖女が居る地下まで一直線に走り抜けて行く。
だが、一つ橋を渡った所で何時もの不快感が俺を襲う。
入り口周辺の地面から湧き出るように現れる赤い霊体、放浪者の服を纏い、その腰には曲剣の代わりにクラーグの魔剣が差されていた。
恐らく、あの放浪者は俺が建てた墓を暴き、あの剣を引き抜いたのだろう。
その証拠に、俺の顔を確認するとその魔剣をこれ見よがしに、此方へ向かって見せびらかしている。
つくづく、性根が腐り切ってやがる。
ペトルスの身体には火傷の痕があった、彼を襲ったのはあの放浪者で間違いないだろう。
今すぐに叩き斬ってしまいたかったが、それでは奴の思うつぼ。
怒りに震える手を抑え込み、橋を渡ってしまう。
無視された事が頭に来たのか、奴は背中に付けていた弓を構え、俺の移動先を狙って火矢を放つ。
目と鼻の先を火矢が通過し思わず足を止めてしまう。
そして、足の止まった俺に向けて盾を付けたまま左手を向ける。
その手の内には種火のような火、呪術の火が漂っていた。
その小さな火が大きく燃え上がり、人の頭ほどの大きさの火球となる。
そして、その炎の塊を豪快に俺へ投擲する。
盾を構え投げられた炎の塊を防ぐ。
だが、この炎は生半可な盾で防ぐ事の出来るものでは無かったようで、爆風を受け橋の上から落とされる。
そして、宙に放り出され落下する俺の眉間、喉、胸を立て続けに撃ち抜いてゆく。
咄嗟に腰の剣を引き抜き、下に見える石橋の側面に突き立て、よじ登る。
すんでの所で落下死は逃れたものの、急所を立て続けに射抜かれてしまった。
何とかトドメを刺されずに済んだが、コレで奴を無視できなくなった。
刺さっている矢を引き抜き、エスト瓶で傷を癒す。
上からまた炎の塊が投擲される。
左側に見える横穴に転がり込み回避する。
爆風が砂利を巻き上げるが間一髪で間に合い、奥へと逃げる。
放浪者はそのまま俺を見失ったらしく攻撃が止んだ。
目の前には大穴が空いており、足場のような場所もある。
躊躇いなどない。急いで足場に向けて飛び降りる。その際に鉱石のような物を掴み一番下まで降りて行く。
金属を叩く音が聞こえる、目の前には巨大な骸骨が金槌をふるっていた。
俺を発見するとツルハシで壁を破壊し、用がなければ出てゆけと言ってきた。
話を聞きたかったが、先に向かわないといけないため急いで外に出る。
渓谷のような場所が見え、霧が掛かって居る。
闇霊は霧の先までは追って来れず、元の世界に強制的に送還される。
その霧に向かって全力で走って行く。
しかし、奴の嗅覚は凄まじいようで、一瞬影が差した為に咄嗟にバックステップをする。
上空から灼熱の炎が纏われたクラーグの魔剣を落下しながら俺に振り下ろす放浪者。
崖から飛び降りたのか…。
ストーカー野郎め、男のストーカーなんて嬉しくもなんとも無いぞ。
流れるような剣捌きが俺を徐々に追い詰めて行く。
腰の剣で応戦しては居るがいつ迄耐えられるか。
息も絶え絶えになり、剣筋が乱れ始めた隙を突いて、放浪者が左手を俺に突き出して来た。
その動きに、反射的に毒ナイフで左手を射抜き、向けられた手の平を逸らす。
瞬間、突き出された手から大きな爆発が起こりナイフが蒸発する。
左手を毒に犯され始めたのか動きが鈍った彼に、背中の大剣を一息に振り下ろす。しかし、片手の一撃だった為に致命傷には至らなかったようだ。
先ほど握っていた剣を地面に刺し、大剣を両手で握る。
天の構え、上段に刃を構え彼と向き合う。
毒に犯されながらも彼は両手で炎の魔剣を握る。
奴の顔から薄ら笑いが消える、毒の苦しみなど無いと言わんばかりに此方を見据え、この一撃に全てを集中している。
脂汗を流しながらも睨みつけるように此方の動きを注視する彼に、足元に刺した片手剣の柄を蹴り、彼へ飛ばす。
俺の常套手段なのだが、奴には最下層で一度見せていた為か、避ける事も、防ぐ事もせず、飛来する剣が刺さったまま俺の胴に向けて横薙ぎの一閃を放つ。
だが、俺の構えは脅しでは無い。
天の構えは攻撃に関しては最速。そして、相手は毒により僅かだが動きが鈍っている、そんな相手ならば十分に後の先を取ることが出来る。
唐竹割り、魔剣の刃が俺を両断する前に、俺の大剣が彼を両断する。
二度目の敗北を経て、目の前の男への怨みを募らせる放浪者。
-そのツラァ、覚えたからなァ‼︎-
憎しみがありありと伝わるようなドスの効いた声を上げながら彼は消えて行った。
-こっちもだよ、クソ野郎-
放浪者は大火球と大発火を使ってます。
詰まりはツンデレ師匠を誑かしたんですよ。
彼のイメージとしてはACfaの主人公的な感じ。