不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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今回、朱莉様の『騎士と魔術師』の主人公を霊体として召還致します。

本人から許可を頂いておりますので御安心下さい。

なお、装備はフルアルトリですので、フライング的ではありますがご容赦を。

人間性求めてサイン出した形になるのかな?


不死の英雄伝 34

第三十四話 地下の鍛治師

 

放浪者を撃破したものの、その代償として装備品が使い物にならなくなっていた。

 

これで、道中何もなければこのまま走り抜けても良いのだが、今みたいに闇霊に出くわすかもしれない。そう考えると今の状態はあまり褒められたものではなかった。

 

しかし、修理のために篝火まで戻ることも出来れば避けたい。

 

篝火に触れてしまうと辺りの敵が纏めて復活してしまう。一刻を争っている今、ただでさえ放浪者の横槍が入り、時間を食っているのだ。いちいち雑魚に時間を取られるわけには行かなかった。

 

 

背後からは金槌の音が聞こえている、先ほどの巨大な骸骨だろう。

 

気難しい性格のようだったが、背に腹は変えられない。来た道を戻って行き、彼に事情を話してみる。

 

 

一通り事情を説明すると、彼は不機嫌そうに鼻を鳴らしながら俺の装備を修繕してくれた。

 

そして、貴様の武器は粗末で見るに耐えん。と言いながら手を差し出して来た。どうやら俺の武器を鍛えてくれるらしい。

 

ただし、その指は一本だけだと示して居るため、何を渡すかを慎重に考えなければならない。

 

 

少し悩んだが、ソウルからハルバードを取り出して彼に渡す。

 

大剣や片手剣などは体重をかけて強引に叩き斬る事が出来るが、ハルバードでは少し勝手が違うためそれ程の切断力を求められない。

 

 

それに、俺は投げたり足場にしたりとそれなりにハルバードを重宝して居るため、頑丈になるならそれに越したことは無かった。

 

 

彼は俺の手からハルバードと先ほど手に入れた鉱石を受け取ると、ハルバードを鍛え始めた。

 

 

武器の強化には楔石と呼ばれる特殊な鉱石が必要なのだと言う。今回は材料費込みでソウルを支払う事で強化して貰っているが、次からは自分で持ち込んでくれと言外に言われてしまった。

 

 

強化自体はそんなに時間を取られる事も無く終了し、ハルバードが俺の手の中に帰ってくる。

 

 

違いは、握った瞬間に分かった。

 

見た目に変化は無い、斬れ味なども良くなっているだろうが違いはそこでは無い。

 

 

ハルバードの全体から溢れ出るような炎の息吹き。

 

その柄を握る手の平からは生命感溢れる温もりが伝わってくる。

 

炎のハルバード、特殊な楔石を使用する事でその性質を大きく変化させたもの。

 

 

己の武器の変貌に驚愕している俺を他所に、目の前の鍛治師は、用が終わったらサッサと出て行け。と言わんばかりに手を振っていた。

 

 

彼に頭を下げ、霧に向かって走り出して行く。

 

 

霧の前には一つのサインが書かれていた。

 

 

夜天の騎士 ヤガミ ナユタ

 

 

名前からして東洋人なのだろうか?

 

懐かしい名前の並び方にもしや同じ境遇の者では? との思いが募るが首を振り否定する。

 

 

ここはロードランだ、現在過去未来の全てが一緒くたになって居るんだ、もしかしたらこんな事も有るだろうさ。

 

サインろう石さえ持っていたら、現代日本だろうが何処だろうがサインは書ける。

 

 

サインは不死人が世界と世界を越える手段だ、普通の人間が何故それを使えるのかは謎だがこの際、それは置いておこう。

 

 

サインに触れ、霊体を召喚する。

 

 

彼は全身に朽ち果てた鎧に身を纏い、同じく風化仕掛けて居る大剣と大盾を持っていた。

 

しかし、その装備からは朽ちてなお、消えない力が宿っているように感じた。

 

 

お互いに頭を下げ、霧を越える。

 

 

色々聞きたい事もあったのだが、彼は彼なりに何かを抱えているらしく、真っ直ぐな瞳を持っていた。

 

ならば何も聞くまい、本来は不死人同士の出会いなんてものは一期一会なんだ。

 

言葉でなく、剣で語ろう。

 

 

霧の先は巨大な棺桶を彷彿とさせる場所だった。

 

周囲には書物が散乱して居る点から見て何かの研究所と行った所か。

 

夜天の騎士と共に棺桶の中に飛び降りる。

 

 

着地した先には怪しげな者が居た。

 

六本の腕に三つの仮面、二人羽織をして居るような服装、この場合は三人羽織とでも呼べば良いのか。

 

三つの顔は互いに相談しながら、侵入者をどう始末したものかと相談して居るようだった。

 

だが、此方がそれを待ってやる必要は何処にも無い。

 

大剣を引き抜き、三人羽織に一気に詰め寄る。

 

後ろで夜天の騎士が俺の行動に呆れながらも後に続く。

 

 

短く息を吐き、両手で大剣を振り下ろすが三人羽織が目の前から消える。

 

彼らの相談の結果、我々の排除が決定されたようで、彼らの分身が周囲に現れる。

 

夜天の騎士は盾を構えながらどれが本物か見極めようとして居るんだろう、周りの三人羽織に鋭い眼光を向けている。

 

 

だが、正直な話、三人羽織からは大した威圧感は感じられない。これなら牛頭のデーモンの方が怖かった。

 

試しに、横に居た三人羽織を切ってみるが一撃で斬り捨てられた。

 

悠長に戦っていられないからな。

 

俺は夜天の騎士に向けてハンドサインを出し、片っ端から斬り捨てる旨を伝える。

 

彼は苦笑いと共に頷き、大剣を両手で構える。

 

懐から太陽のメダルを取り出し、コイントスをする。俺からしたら罰当たりな行為なのだが、今回は人命がかかっているため大目に見て欲しい。

 

 

メダルが地面に落ちる瞬間に俺たちは走りだし、三人羽織を斬り捨てて行く。

 

一人、また一人と分身が切られて行く光景に、奥の一体が慌てて魔術を放とうとする。妨害しようにも彼は俺たちの間合いの外に居る。

 

だが、俺は今回一人では無い。

 

俺たちは目配せをし、夜天の騎士を大剣の腹に乗せ全体重をかけて彼を三人羽織に向けて弾き飛ばす。

 

 

弾丸のように弾き出された夜天の騎士は、その勢いを殺さずに大剣を三人羽織に突き立てる。

 

そして、そのまま大剣を一気に振り上げる。傷口を広げるように切り裂かれた三人羽織は断末魔と共に消えて行った。

 

 

一礼をしながら消えて行く彼に太陽メダルを投げ渡し、俺は手を振りながら彼と別れた。

 

 





以上軽いコラボ回でした。


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