不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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ようやく次でアノール到達だ……長かったなぁ(白目)


不死の英雄伝 42

第四十二話 黒鉄の巨人

 

 

霧を越えた先に見えた物は、巨大なゴーレムが斧を振りかぶる姿だった。

 

 

ゆうに2、30mは離れている場所から何をしようと言うのか。

 

 

 

だが、その疑問は直ぐに解決する。

 

 

 

何かが俺に直撃し、背後の壁に叩き付けられる。 被弾した箇所を確認すると、胸に大あざができていた。当然、骨も折れて居る。

 

 

 

遠距離からの不可視の一撃かよ……、シャレになんねぇぞおい。

 

 

 

エストを飲み、骨を繋げたのだが、そのせいでエストの残りが心許なくなってしまった。 多く見積もっても後二回、下手をしたら後一回分だろう。

 

 

 

先ほどの不可視の一撃、出処はあの斧だろうな。 どうにかしてアレを潰したいが、難しいだろう。

 

 

 

あのゴーレムは全身鉄の塊でできているため、武器を弾き飛ばすことも出来ない。

 

 

そもそも、武器の重さが圧倒的に違うため打ち合いに望む事は自殺行為な上、不可視の一撃の正体が分からない限り避けるしかすべが無い。

 

 

 

盾で急所を守りながら対処法を考える。此処は障害物が無いために、あの一撃を撃たせたい放題だ。

 

 

 

ゴーレムが無造作に斧を振るうもんだから、軌道を呼んで着弾点を予測することも出来やしない。

 

 

霊体の二人も不可視の弾幕により、徐々に傷が増えていく。

 

 

 

斧から放たれて居る一撃は地面に着脱していき、土煙りを巻き上げて俺たちの視界を覆って行く。

 

 

 

遂に何処から攻撃が飛んでくるのかさえも分からなくなってしまった。

 

 

どうする? どうしたらいい?

 

ジリ貧となってしまい中々打開策が思い付かない。

 

 

次に飛んでくる一撃を避けられるのか悩んでいると、シンが何かに気が付いたようだ。

 

 

彼はハンドサインで土煙りを指差している、注視していると土煙りが巻き込まれ、不可視だった何かの正体が判明する。

 

 

圧縮された空気の塊、それがあの一撃の正体だった。

 

 

土煙りによって視認できるようになったそれを回避し、三人でゴーレムの足元に飛び込む。

 

 

シンとテイスがゴーレムの足に殴り掛かるが傷一つ付かず、それぞれの武器が弾かれる。

 

 

だが、全く意味が無かった訳ではないようで、ゴーレムのバランスが僅かにぶれる。

 

 

どうやら、このゴーレムは其処までバランス感覚が良いわけでは無いようだ。

 

 

黒い火炎壺を取り出し、中に入っている油をゴーレムの足元にばら撒く。

 

 

俺の意図に気が付いたのか、二人の霊体は油まみれの足を叩き付け、ゴーレムを転倒させる。

 

 

テイスが呪術の火を温め、火の玉を手のひらに出現させてゴーレムの手首に投げ付ける。

 

 

それに合わせて、ソウルから黒騎士の特大剣を取り出し、斧を持っているゴーレムの手首に振り下ろす。

 

 

熱されて比較的に柔らかくなった関節部分を狙いすました一撃だったのだが、やはり俺の力では切り落とす事が出来ない。

 

 

すかさず、シンが特大剣にラージクラブを振り下ろして、手首を力尽くで切断した。

 

 

これで不可視の一撃を撃てなくしたのだが、ゴーレムが空いている手で俺を握り潰そうとしたのだ。

 

 

特大剣を振り下ろした体勢だったため回避できそうに無い。

 

 

それを見たテイスが俺を突き飛ばし、身代わりとなる。

 

 

テイスは、少しづつ締め上げられて行く身体に苦悶の表情を浮かべながらも、雷の槍をゴーレムの胸に投げつける。

 

 

その槍はゴーレムの急所らしい場所に直撃したようで、テイスは古城の外に投げ捨てられてしまった。

 

 

奴の急所は胸、それが分かったのだが、ゴーレムは立ち上がってしまっている。

 

 

背中の大剣にエンチャントを施しながら、どうやって胸を狙うか考えていた。

 

 

目の前のゴーレムは自分の肩ごと自分の腕を引きちぎり、ハンマーがわりにし始め、俺達を叩き潰そうとする。

 

 

俺が対策を考えているのを悟ったのか、シンが矢面に立ちゴーレムを引きつけてくれて居る。

 

 

 

エンチャントの施されたこの大剣なら、あの鉄の塊に傷を付けられはするだろうが、俺の力では浅い傷しか付けられまい。

 

 

やはり、何時もの手を使うしか無いか。

 

 

 

半身を逸らし、弓のように身体を引き絞り、全身の力を余すことなく使い、胸に目掛けて投げ付ける。

 

 

筋力だけで対抗できないなら、それ以外の力も総動員して剣を振るのが俺の遣り方だ。

 

 

 

大剣は見事にゴーレムの胸に突き刺さるが、残念ながら急所には届かなかったようだ。

 

 

原因は分かって居る、エンチャントの効果時間だ。

 

 

実はゴーレムの胸に突き立った瞬間にエンチャントが切れてしまい、刃が半ば程までしか刺さらなかったのだ。

 

 

もう一度同じ事をしようにも、手元に投げられる物はなく、黒騎士の特大剣が有るには有るのだが、今耐えて貰って居るシンがそろそろ限界に近そうだった。

 

 

 

彼の方も投げられた大剣が半ばまでしか刺さっていないのを確認すると、何かを考えているようだった。

 

 

意を決したような顔をした彼はラージクラブを俺に見せて上を指差す。

 

 

成る程、以前俺がやったような事をするのか。

 

 

装備を全てソウルに仕舞いながら彼のラージクラブに飛び乗る。

 

 

振り上げられるラージクラブに合わせて全力で跳躍する。

 

 

打ち上げられる力と跳躍する力が合わさり、ゴーレムの全長よりも高い場所まで飛び上がる。

 

 

シンは俺を打ち上げる為に足を止めてしまったためか、ゴーレムに叩き潰されてしまう。

 

 

彼らの犠牲を無駄にしない為に一撃で仕留めるしか無い。

 

 

ソウルから俺の所持品の中で最大の重量を持つ武器、竜王の大斧を取り出し、大剣の柄に向かって振り下ろす。

 

 

両手で持っていても、普段なら持ち上げる事すら出来ない大斧だが、空中でならば落下の勢いを利用して振り下ろす事ぐらいはできる。

 

 

 

大斧の一撃は寸分違わず大剣の柄を打ち抜き、ゴーレムの胸を破壊する。

 

 

剥き出しになった胸部からは、大剣によって破壊された核のような物が見えた。

 

 

地面に着地する頃には、ゴーレムがソウルとなり完全に消えて行った。

 

 

今回はあの二人が居なければ、勝つことは出来なかっただろう。

 

 

もう消えてしまった二人の霊体に感謝の意を込めて太陽賛美を捧げる。

 

 

 

太陽万歳‼︎

 

 





使い物にならなくなったゴーレムの核が勿体無い?

「幾ら高くても物は物です」

「物をあまり大事にしたり、執着し過ぎたりすることは人を軽く見ることの元になるのです」

by喪黒 福造

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