不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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書き始めた頃は混沌の娘達を皆殺しにするようなぐう畜にする筈だった放浪者がいつの間にか師匠大好きツンデレっ子に…。

ど う し て こ う な っ た

まあ、彼がデレるのは師匠だけですが。


オールドキングのような存在に唆され無ければ大丈夫でしょう。


不死の英雄伝 46

第四十六話 神の居城

 

 

ユイが背後で大弓を構え、銀騎士に狙いを定めて行く。

 

彼には一撃で彼らを仕留めてもらうため、ひたすら弓を引く事に精神を集中してもらう。

 

 

その集中を乱さないように、飛来する凶弾を切り払うのが俺の役目、音速とも呼べる速度で俺たちに襲いかかる矢の弾幕を大剣で切り払って行く。

 

 

銀騎士達の狙いは針の穴を射抜くほど正確だ。

 

 

 

それ故に、軌道さえ読めば着弾点を計算することも可能だ。反応出来るかは別物だが。

 

 

 

息切れ防止のために緑化草を迎撃の合間に口に運ぶ、いい加減腕が疲れて来たが、その粘りのおかげかユイの第一射は片方の銀騎士を鎧ごと壁に貼り付ける。

 

 

残りの銀騎士も音速の矢を放つのだが、一体では弾幕を張ることは出来ない。

 

 

ユイの第二射は見事銀騎士を壁の縁から叩き落とした。

 

 

撃破した銀騎士達にはお互い目もくれずテラスに急ぐ。

 

 

あの放浪者が今も罠を仕掛けていると仮定すると、銀騎士だけでかなり時間を食ってしまった。

 

 

テラスに飛び降り、そこから中を覗く。

 

一見、唯の通路だ、何の問題も無いように思える。

 

 

だが、彼の事だ確実に何か仕掛けているだろう。

 

試しに盾の裏のナイフを通路の床に向けて投げてみる。

 

 

ナイフが刺さった場所は偽装された感圧板だったらしく、刺さったと同時に床が炸裂した。

 

 

あの床にはどうやら火薬だけでなく鉄片も仕込まれていて、爆風による火傷と鉄片による裂傷を与え対象を弱らせる事が目的の代物だ。

 

 

もう一つ意地が悪い事に、アレに積まれている火薬は手足を一つ吹き飛ばすだけの量しか仕込まれていない。

 

 

エスト瓶の中身だって無限に有るわけでは無い。

 

 

何度も喰らってしまったら、それこそ生き地獄を味わうことになるだろう。

 

 

だからといって感圧板だけを避ける事も難しい。

 

 

その理由は、この一帯の床が全て掘り起こされた跡が残っていてどれが感圧板なのか判断し辛い事と、通路一面に張られたワイヤーだ。

 

 

このワイヤー、何処で手に入れたのか太さがまちまちで、肉眼でハッキリ分かる物から光の反射が無ければ見えない物まで様々だ。

 

 

ワイヤーをよく見て行くと、壁にも何か細工した後がある。しかし、此方に関しては余り手の込んだ物では無さそうで、壁に埋め込まれたナイフが若干見えている。

 

 

アレを見せることにより、ワイヤーを丁重に解体して行かなければナイフの餌食になると教えて、足止めを狙っているのだろう。

 

 

 

誰がそんな面倒な事をするものかよ。

 

 

 

俺はありったけの火炎壺を取り出して通路にばら撒き、テラスの影に隠れる。

 

 

轟音と衝撃が辺りを襲うが、無事に彼の仕掛けた罠を根こそぎ破壊できた。

 

 

横でユイが顎を開き、膝をついて放心している。

 

 

多少、やり過ぎたかもしれない。

 

予定では床の火薬を引火させた後に、ワイヤーを切りながら突っ切るつもりだったのだが、どうやら壁にも相当な火薬が仕込まれていたらしく。

 

 

通路はボロボロ、両脇の部屋の壁は無惨に吹き飛び、銀騎士と偶々篝火に触れていたソラールが吹き飛ばされていた。

 

 

 

ーソ、ソラール⁈ -

 

-すまない、まさか君が居るとは思ってもいなかったんだー

 

-ふ、ふふふっ-

 

 

-貴公は相変わらず破天荒な男だな-

 

 

彼は痛む身体をエスト瓶で癒しながら改めて篝火に座る。

 

 

今の彼は生身の身体なので、丁度彼の世界と俺の世界が重なったのだろう。

 

 

俺は霊体を召喚して居るために篝火に触れる事は出来ないのだが、俺の世界の霊体は彼の世界までは干渉しないらしく、放浪者の事もユイの事も見えていないようだった。

 

 

-こうして直接会うのは、久しぶりだなー

 

 

-召喚は上手く使っているか?-

 

 

-もし俺の、光り輝くサインを見つけたら、遠慮なく召喚してくれー

 

 

-それと、俺も変わり者だが、貴公も同じくらい変わり者だな-

 

吹き飛ばされたにも関わらず、彼はそんな事を言って豪快に笑っていた。

 

 

その言葉に釈然としない思いを抱きながら、先ほど吹き飛ばされた銀騎士の側に置かれて居る宝箱を覗きこむ。

 

 

銀騎士は運悪く、吹き飛ばされた際に壁に潰されてしまい絶命している。

 

 

宝箱には、太陽メダルが三枚入っていた。

 

 

こんな時だが、太陽の信徒である俺には何よりの宝だ、迷わず手に取り、僅かに熱を帯びたそのメダルを懐に収める。

 

 

譫言のように城が…城が…と呟いているユイの肩を叩き先を急かす。

 

 

そう言えば、彼はここの火防女の同僚だと言っていたな。

 

このアノール・ロンドを守護する者の一人として、この光景に思う所が有るのだろう。

 

 

この惨状を作り上げた張本人としては中々後ろめたい物が有るのだがユイの肩を叩き、コレもみんなあの放浪者の仕業なんだと彼に言い聞かせる。

 

 

そのかい有ってか、彼も冷静さを取り戻したのだが、何やら怪しげな笑いをこぼしている。

 

 

もしかしたら、俺はもうアノール・ロンドには出禁かもな…。

 

 





主人公は器物破損の罪を放浪者になすりつけました。

彼の罪状が一つ増えましたね(白目)

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