不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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これから、放浪者はイザリス編までお休みです。

理由は……ね?


不死の英雄伝 49

第四十九話 友故に……

 

 

あの後、ジークマイヤーから銀騎士を倒してくれた礼にと指輪を貰った。

 

 

小さな生命の指輪。

 

これを装備することで少しだけ、生命力が上がるらしい。

 

指輪には様々な魔力が込められていて、それに準じた効果が有るんだと。

 

 

また新しい知識が手に入った事に喜びを感じながら彼に礼を言い、先に進む。

 

 

謁見の間に繋がる、正面玄関。

 

 

そこの隣に有るレバーを回して開門させる。

 

これで、篝火から一本道にすることが出来た。

 

もし、何かあってもこれで大丈夫だ。

 

 

そして、先ほどから震えている黒い瞳のオーブを懐から取り出す。

 

 

火防女の側に落ちていたコレがこの部屋に足を踏み入れた時から常に反応して居たのだ。

 

 

その瞳を覗き込むと、吸い込まれるように自分の身体が霊体になって行くのが分かる。

 

彼女を殺した者の世界に侵入して居るようだ。

 

 

世界が切り替わる。

 

天と地が反転し、彼女を殺した犯人の世界の地面から湧き出る。

 

 

俺の身体は白でも無く、赤でも無い。

 

青い霊体だった。

 

 

復讐霊、罪人を断罪する霊体だと聞いた覚えがある。

 

そして、彼女を殺した罪人に目を向け、愕然とした。

 

 

その罪人は、見覚え何処かよく知っている人物だった。

 

 

女神の騎士 ロートレク

 

 

それが、彼女を殺した男の名だった。

 

 

ーロートレク? ロートレクなのか⁈ー

 

 

ーほう、貴公か…ー

 

ー多少は賢いかと思ったが、そうでも無かったようだなー

 

ー哀れだよ。炎に向かう蛾のようだー

 

ーそう思うだろ?なあ?あんた達ー

 

 

下衆な笑い声が周りに響く。

 

彼の言葉に、俺は頭に血が昇ってしまい、冷静な判断が出来なくなってしまった。

 

 

背中の大剣を引き抜くと同時にエンチャントを施し、ブーメランのように投擲する。

 

 

それによって、ロートレクの側にいた霊体二人が飛び退き、彼が一人になる。

 

 

俺の戦い方を知っているためか、右手のショーテルで難なく大剣を弾かれるが、それは織り込み済みだ。

 

 

俺の本命は腰の刀による最速の居合い抜き、コレは彼と別れた後に手に入れた武器だ。

 

 

いくらこの男と言えど、始めて見る攻撃ならば反応できないだろ‼︎

 

 

だがそれは、普段の俺からは考えられない失態。

 

 

冷静さを無くした俺はあの男に指摘された欠点を失念していたのだ。

 

 

ー殺ったぞ‼︎ー

 

 

完璧なタイミングの抜刀、しかし。

 

 

ー殺っていない、殺られたんだー

 

 

ロートレクのその言葉と同時に視点がずり下がる。

 

不思議に思っていると、自分の身体が視界に映る。

 

首を、落とされたのか⁉︎

 

 

彼は消えて行く俺の頭を踏みつける。

 

 

ーゴミだー

 

ー人は死ねばゴミになるー

 

ーそれに弔いの言葉など不要だー

 

ーそれは不死も火防女も変わらんー

 

ー貴公のその怒りも無駄な物だー

 

ーこれからは、賢く生きるのだなー

 

 

その言葉が、やけに耳に残った。

 

 

気が付くと、俺は篝火に触れていた。

 

冷えた頭で、さっきの自分を見つめ直す。

 

 

始めから実力に差が有ることは知っていたはずなのだが、友人の仕業だった事に裏切られたような思いに満たされてしまい、自分を見失ってしまった。

 

 

常に冷静に、足りない実力差は頭で補うのが俺のやり方だったはずだ。

 

それを忘れ、怒りの感情のままに剣を振るってしまった。

 

 

何か対策を練るしか無い。

 

 

友だから斬らないのではなく、友だから斬る。

 

その思いに翳りがないと言えば嘘になるが、こればかりは俺の手で決着を付けなければならない。

 

 

少しでも戦いの手段を増やす為に魔術を新たに記憶する。

 

 

ソウルの矢と槍を交換し、魔法の武器も強い魔法の武器に変える。

 

 

現在記憶して居る魔術は、ソウルの槍、追尾するソウルの塊、強い魔法の武器、音送り、この四つ。

 

それに、ナイフだってまだまだ残っている。

篝火から立ち上がり、再び謁見の間を目指す。

 

黒い瞳のオーブは変わらず、そこを指している。つまり、彼らはまだ移動して居ないと言う事になる。

 

 

二度目の侵入、今度は頭も冷え切って居る。

 

 

ー貴公…また懲りずに来たのかー

 

 

ーロートレク…ー

 

ー何があった どうしてだ などとはもう聞かないー

 

ー今や君は俺の敵になったー

ーなってしまったー

 

ー倒さなければならない…ー

 

ー滅ぼさなければならない…‼︎ー

 

ーさらばだ、我が友…ー

 

ー然らば‼︎ 死ね‼︎ー

 

 

 

ーククククッ‼︎ー

 

ーそれでこそ我が友だー

 

ー貴公はやはりー

 

ー私の友に相応しい男だったー

 

 

 

大剣にエンチャントを施しソウルの塊を周囲に張る。

 

理力を上げたからか、その数が一つ増えていた。

 

 

運命がカードを混ぜた。

 

行くぞ、勝負だ。

 

この再戦に全てを賭ける。

 

賭場は一度‼︎

 

勝負は一度きり‼︎

 

相手は鬼札‼︎

 

さて、俺は何だろうな?

 





アノール編は過去最長になる予感。

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