不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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キャラ崩壊の著しい放浪者ェ……。

お前は一体何処に向かってるんだ。

ベジータみたいにはしたくは無いんだけどなぁ。


スモウフルボッコ回、妖刀によるブーストがかなり掛かってます。






不死の英雄伝 53

第五十三話 処刑人スモウ

 

俺たちは今それぞれの敵と対峙して居る。

 

 

ソラールが竜狩りを引きつけてくれて居る間に、俺が処刑人と混沌の刃を抜いた状態で向かい合う。

 

 

この刀は確かに殺人衝動のように血が見たくなるのだが、逆に考えれば格上相手にも退くことなく、精神をかなり高揚させ、斬ること以外の事を考えずに済むのだ。

 

 

恐怖や迷いを無くし、ただ斬る事だけに神経を集中させる。

 

刀の魅力に逆らわず、その全てを受け入れる。

 

その際に動きの妨げになる為、この刀と、足を守る具足、魔術を使用する為の杖以外の全てをソウルにしまう。

 

 

正面に見える巨大な肉塊がその身の丈に合わせたハンマーを振り上げる。

 

 

その動きに合わせて、一気に懐に向かって踏み込む。

 

振り下ろされたハンマーからは、完全に避けたはずなのに体勢が崩れる程の風圧が発せられる。 その風圧に吹き飛ばされた瞬間に、更にもう一歩踏み込み処刑人のアキレス腱を斬る。

 

 

風圧による爆発的な加速が最大限活かされる点での踏み込み、それは周りの景色を置き去りにする程の速度。 普段なら、こんな速度に対応出来るはずもなく無駄な行為となったはずだ。

 

 

刃の魅力に囚われ一本の刀のように研ぎ澄まされた思考回路に、俺の動体視力もつられて跳ね上げられた為に出来る芸当だ。

 

 

斬り裂かれたアキレス腱を庇うように、処刑人は残った足を使って後ろに飛び退く。

 

だが、明らかに距離が足りていない。

 

斬撃の際に大量に出血が出るように斬り裂いた為、処刑人の足は下手に動かすと傷口が開き、足が使い物にならなくなる。

 

 

これでは半端な力しか入らない、足を庇いながらでは攻撃も回避も満足にできまい。

 

振り下ろされるハンマーの頻度は多くなりモグラ叩きのように暴れまわる処刑人。

 

 

その興奮した顔に向けてソウルの槍を放ち、周囲にソウルの塊を張る。

 

 

今まで、弱者を甚振る事しかして来なかった者にこの一撃は避けられず、痛烈な一発をまともに貰った処刑人は思わずハンマーの動きを止めてしまう。

 

止まったハンマーを踏み台にして跳び上がり、今度は処刑人の手首を斬り裂く。

 

俺の周囲に展開しているソウルの塊は同時に処刑人の傷口を破壊して行く。

 

 

足の次は腕、あの重量の物を自在に振り回すのは腕力だけでは無理だ。

 

全身のあらゆる場所を使い、それによって始めて完全にその真価を発揮する物。それを片腕、ましてや片足などでは十全な力で振るうことは出来はしない。

 

 

これで、処刑人の脅威は無くなった。

 

だが、混沌の刃に魅了されて居る状態の俺はまだまだ追撃を止めない。

 

 

処刑人の腕の上から肩に掛けてを一文字に斬り裂いて行き夥しい出血を強いる。

 

伝説の一角とは言え此処までされては最早抵抗する事など出来ず、甘んじてその一閃を受け入れる。

 

 

肩に登った俺に残った腕を振り上げ、捻り潰そうとする処刑人に、天の構えを取りその一撃を待つ。

 

 

迫る拳を両断し手首の関節まで一気に斬り開く。

 

 

両腕を潰された処刑人は、ただの達磨に過ぎず、俺の刃を遮る事は出来はしない。

 

 

此処で首を刎ねる何て真似はしない、積もりに積もった処刑人への苛立ちを熨斗付けて返すにはまだまだこの程度では足りない。

 

 

肩から飛び降り、無傷で残っている足首を刎ね飛ばす。

 

バランスを崩し、転倒した処刑人の背中を十字に斬りつける。

 

斬る度に噴き出す血を眺めながら、全身を巡る快楽を味わって行く。

 

もっと血を、もっと血を。

 

思考がそれに満たされ始めた時だった。

 

 

ー御免‼︎ー

 

 

竜狩りと戦っていたソラールの拳が俺の顔に突き刺さり、床を転げ回る。

 

 

ー正気に戻ったか?ー

 

 

ーあ、あぁ。助かった、ソラールー

 

 

刃の魅了から解放された俺は刃を仕舞い、何時もの装備を装着する。

 

 

先ほどまで戦っていた処刑人は全身を斬り裂かれ、血の海に沈みながら絶命していた。

 

 

竜狩りはゆっくりと惨殺された処刑人に近づき、その遺体に触れる。

 

 

彼の身体も傷だらけで肩で息をして居る状態にも関わらず、共に戦った処刑人の死を悼んで居るのだろう。

 

 

彼は目を瞑り、静かに息を吐き出すと、処刑人の身体からソウルを吸い上げ始めた。

 

 

ソウルはその者の魂、それを直接吸収すると言うことはその対象と同化すると言うこと。

 

 

竜狩りの傷が塞がって行き、その身が処刑人のように巨大化する。

 

 

その際に、彼の性質である雷が全身から迸る。

 

倒れた仲間を見捨てずに自分と共に再び戦えるようにする、それが例え危険な思想をしていたとしてもその背に背負う。 四騎士の長、その名は伊達では無かったか。

 

 

彼は槍を払い、仕切り直しをアピールして居る。

 

俺たちもそれぞれ武器を構え、何時でも応戦出来るようにする。

 

 

彼は俺たちを見て頷くと同時に突っ込んできた。

 

 




お ま け 不死の英雄外伝 〜闇の落とし子〜

灰の湖。古竜の生き残りが確か最後に住み着いた場所だったと思ったんだが、そこまで行くのが非常に面倒くせぇ。

何が悲しくてキノコとバジリスクだらけの場所を越えなきゃならねぇんだよ。よし決めた、これから暫く飯なんざ作ってやんねぇ。

そもそも、俺は彼処が嫌いだ。

俺には、綺麗すぎる。

俺はバジリスクとキノコ共を片付けながら湖に到達する。

釣竿を取り出した所で周りが煩い事に気が付いた。

そちらを見ると、首が七本ある竜が湖の上を泳いでいた。確か、湖獣だったかヒドラだったかそんな名前だった筈だ。

ーギャーギャーうるせぇなー

ー魚が逃げちまうだろうがー


腰のコンポジットボウを引き絞り、七本の火矢を連続で奴の頭全てに目掛けて射る。

ほぼ同時に着弾した火矢に大声を上げて怒りを表すヒドラ。だからうるせぇつってんだろ。

全ての首を使って、俺を潰そうとしたみてぇだが単純すぎてため息がでる。

目の前に迫る首を左手の魔剣で一本刎ねる、横から食いつこうとする頭を背中のツヴァイヘンダーで叩き割る。コレで二本。

背後に突き刺さる三本の首を振り下ろしたツヴァイヘンダーで纏めて切り落とす。コレで五本。


ルッツェルンの先端を残った頭の片方に引っ掛け、奴の上に乗る。

乗った頭の脳天をルッツェルンで破壊する。これで六本。

そのまま目の前の首に飛び移り、最後の首を魔剣で切り落とし、その首を蹴って岸に戻る。

ーあー面倒くせぇ、雑魚が粋がるなよー


あの後、魚は大漁だったのだが新たな問題に直面している。

シバから調味料を分けてもらったから料理自体は問題無い、問題はまた別の物だ。

ー刺身って奴は生のまま食うんだったよな?ー

ーあの環境下で…生ものはキツイだろ……ー

そこら中から腐敗臭やら腐乱臭やらと、凄まじい臭いと瘴気が充満した場所で食える代物では無い。一瞬で腐っちまう。

作ってから気が付いた為、計画が頓挫してしまった事を認めたくは無い。

どうにかして師匠にこいつを食わせる方法を考えにゃならん。


暫く考えて、妙案を思い付いたので師匠の元に戻る。


ーどうした? 準備が出来たのか?ー


ーあぁ、アンタの注文通りの物を作ってやったよー

面倒だったがな。口が裂けてもマズイとかは言わせねぇぞ。そう、内心で悪態をつく。


ーそうか、それは楽しみだー

ー口が裂けてもマズイとは言わせないとは、大きく出たなー


ーてっテメェ……‼︎ー


ーふふっ、お前は顔に出るからなー

ー私にはお前の考えている事がすぐ分かるぞ?ー

ーまだまだ青いな、馬鹿弟子?ー


ーチッ、とっとと着いてこい‼︎ー

これ以上余計な事を言われる前に師匠を連れ、灰の湖まで向かう。無論道中の雑魚は掃除済みだ。


ーふむ、こんな地の果てにもー

ーこのような美しい場所があったのか…ー


ー…アンタの辞書には此処は載ってねぇのかよー


ー残念ながら…な、私の辞書は落丁本だったらしいー


ーやけに嬉しそうじゃねぇか、明日は槍か?ー


ー失礼な事を言うものだなー

ー私とて女だ、こういった物に惹かれるに決まっているだろう?ー

ーまぁ良い、今度から食事はここで取ろうー

ーどうにも此処を気に入ってしまったー


ーそぉかよー


ー自分には綺麗過ぎる、だから気に入らない、そう思っているだろう?ー


ー……ー


ー何も闇に生まれた者が光を望んではいけないという訳では無いー

ー自分の気持ちは素直に受け入れろー

ーでなければ何時まで経っても変われないぞ?ー


ー分かってるってのー

その言葉と共にそっぽを向いた放浪者の頭を撫で始める彼の師匠。

ー何しやがんだ‼︎ー

ー餓鬼か俺は‼︎ー


ー私にとっては、お前はまだまだ子供だ馬鹿弟子ー

ーさて、食事にしようかー

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