不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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師匠が人気者なので後書きを放浪者サイドのおまけコーナーにしようと思います。

詳しくは活動報告で。


不死の英雄伝 54

第五十四話 竜狩りのオーンスタイン

 

 

竜狩りの素早さ、処刑人のタフネス、そして歴戦の槍捌き、処刑人のように力任せに振り回したりはしない、鋭く、早く、的確に貫きにかかる。それによって、二人がかりだと言うのに俺達は段々追い詰められていく。

 

 

ーなんて速さだよ⁉︎ー

 

 

ー伝説……やはり伊達では無かったなー

 

 

雷と同じ速度で俺たちを翻弄する竜狩りに対しての対策を練る為に俺達は今逃げに徹して居る。

 

 

先ほど、ソウルの塊による自動追尾を試して見たのだが、移動時に起きるソニックブームで全て吹き飛ばされてしまい空撃ちに終わってしまった。

 

 

ソラールの雷の槍も同様だ。彼の槍は標的に対して鋭角に追尾するために普通なら避けられないはずなのだが、二段階の踏み込みによって容易く回避されてしまう。

 

 

こちらが視認出来ない速さを持って、俺達に向かってくる彼を迎撃するためには、直線的な移動の軌道上に攻撃を置くしか無い。

 

 

しかし、光速で迫る彼の動きを予測するのは並大抵の事では無理だ、再び混沌の刃を抜いて目を皿にして彼を注視して居てもきっかけすら掴む事が出来ない。

 

 

よしんば彼の軌道を見切れたとしても、一撃であの動きを止める事が出来なければならない。

 

 

もし仕留め損ねたら、彼は何故斬られたかに考えを巡らし、それを修正するだろう。そうなっては二度とチャンスが訪れない。

 

 

それ以前に、俺たちのダメージも深刻な物だ。

 

速度とは即ち重さ。

 

防具を強化していたお陰で即死はしないのだが、その分全身を打ちのめされ中々力が入らない。

 

 

エスト瓶も出来れば節約したい。 解決の糸口を掴む事が出来ない内から空になるまで使用してしまうのは愚かだろう。

 

 

ソラールも肩で息をして居る。俺達もあんまり長続きしないか。

 

 

ーソラール、危険な方法だが一つ思いついた事があるー

 

ーようやく、貴公の奇策が出来上がったかー

 

 

ーああ。だが、そのためには君にかなり無茶をしてもらわないと行けないー

 

 

 

ー構わんよ。どうせこの身は霊体だー

 

ー多少の無茶は効くー

 

 

ーすまんな、ソラールー

 

 

彼には俺の護衛をしてもらい、ある地点まで一気に走り出す。

 

 

彼の移動に伴う衝撃波で、周囲の柱やインテリアは全滅しているため、隠れる場所など無い。 故に俺の行動は丸わかりだ。

 

 

だからこそ、そこに到達するまでの間を一秒でも多くソラールに稼いで貰う。 無茶なお願いだが、彼は俺を信じて二つ返事で了承してくれた、なら俺は期待に答えるしかあるまい。

 

 

その地点、それは謁見の間の四隅の一角だ。

 

 

此処に立つことで、攻撃時の位置を強引に割り出すことが出来る。 何処から攻撃が飛んでくるのか分かれば、あとはそれに合わせてのカウンターに全神経を集中させれば良いだけだ。

 

 

ソラールの方を見ると竜狩りの持つ槍で貫かれ、全身に雷を浴びている所だった。

 

 

すまない、ソラール。

 

 

心の内で謝罪し竜狩りに視線を合わせ、天の構えを取る。

 

 

攻撃に関しての最速の構え、きっとコレなら目の前の男を斬る事が出来る。

 

 

竜狩りが槍を構え俺の方を向く。

 

腰を低くし、足に力を込めて居る。

 

踏み込みと同時に姿を消した彼に合わせ、

 

 

混沌の刃と共に握り込んでいた杖からソウルの槍を放つ。

 

 

着弾点は彼の顔、腰を低くしたために丁度射線上に降りてきたのだろう。

 

 

動きを止めた彼の首にハルバードの刃を引っ掛け、強引に身体に捕まる。

 

 

だが、これだけでは速力だけで振り落とされてしまう。

 

竜狩りの背中におぶさり、大剣で俺と彼を縫い付ける。

 

それを察して、俺を振り下ろそうとする竜狩りの背に意地でもしがみつく。

 

 

景色が白黒になり、何もかもが置き去りにされた世界で、混沌の刃を振るい竜狩りの首を刎ね飛ばした。

 

 

ソウルになって消えて行く彼から何かが俺に流れこむ。

 

 

それを取り出してみると彼の使っていた槍だった。

 

餞別…だろうか? 勝手な思い込みだが俺はそう捉え、奥に見える昇降機に乗りこんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、不死の英雄とは対極に位置する男も己の世界で王の試練に挑んでいた。

 

 

ーカアスの奴が言うにはこの先の連中を殺さなけりゃ王の器が手に入らねぇんだったなー

 

ー処刑人スモウに竜狩りのオーンスタインねぇー

 

ーまぁ、連中相手に負ける気はねぇなー

 

ーカビの生えた伝説を今日終わらせてやるよー

 

 

彼は軽口を叩きながら霧を越える。

 

霧の先にいた二人の伝説はこの男の危険性についていち早く察したようだった。

 

始めから、全力を持って彼を殺しにかかる。

 

 

ー流石、神族だな。俺の目的に感づきやがったー

 

ーそんなに自分達が頂点に居なけりゃ気がすまねぇのかね?ー

 

 

竜狩りの神速の突きを半身逸らすだけで回避する男。

 

槍の鋒を膝で蹴り上げ、背中の特大剣で柄を両断する。

 

竜狩りは自慢の槍を切り捨てられた事に動揺一つ表さず距離を取る。

 

 

ー忘れもんだぜ?ー

 

 

そう言うと、男は落下してきた槍の鋒を蹴り飛ばし竜狩りの頭を射抜く。

 

男は振り下ろされるハンマーを潜り抜け、風圧を利用して一息に竜狩りに接近する。

 

ー別れの言葉ってのはたしか…ー

 

ーauf wiedersehen (アウフ ヴィーダーゼーエ)ー

 

ーだったよなー

 

別れの言葉と共に振り下ろされる特大剣の一撃。それに耐えられず、竜狩りは絶命する。

 

処刑人はすかさずハンマーで竜狩り共々男を叩き潰す。

 

しかし、男はその一撃を難なく回避する。

 

 

ーおぉ、すげぇすげぇー

 

ー味方潰してでも力を奪うとか好感が持てちまうなー

 

 

竜狩りの雷をその身に宿した処刑人は、改めて男に向き合ったのだが、視線の先に男は居ない。

 

 

ーコッチだ、ウスノロー

 

彼はハンマーの先端に刺剣を突き立て、取っ手替わりにぶら下がっていた。

 

処刑人がそちらを向いた瞬間に、男は顔面に目掛けて大火球を投げつける。

 

爆風によって身を逸らした処刑人の頭を背中の特大剣で叩き割る。

 

 

着地した彼は流れ込む処刑人のハンマーを見ながらため息をつく。

 

 

ーチッ、どうせならそっちの槍の方が良かったー

 

ーそれにしても、呆気ねぇなー

 

ーコレならあの男の方が強かったぞ、……認めたくねぇがなー

 

そう言いながら、放浪者の格好をした男は昇降機に向かって歩きだした。





NEXT VS ノーマル な気分ですね。


つくずく、どうして主人公が放浪者に勝てるのか分かりませんね。

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