不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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愛する公爵の書庫、此処だけは何度攻略しても飽きないね。


しかし、結晶騎士、君は如何してその盾でパリィ出来るんだ?


生きやすい物だな、ふらやましいよ。


追記

2015/02/12 書庫見取り図についての事項を加筆修正。


不死の英雄伝 62

第六十二話 結晶の魔力

 

 

一通りの研究日誌に目を通し終わった後、白竜への対策を考える。

 

 

結晶の魔力に当てられ、不死身となったシースを倒すには不死の結晶その物を破壊する他無く、そこまで辿り着くのは至難な技だ。

 

 

 

彼はこの上に居るらしいので、戦うこと自体は可能だろう。一方的に蹂躙されるだろうが。

 

 

白竜に挑み、そして散った者の末路は、結晶と生物を融合させる実験のモルモット。

牢獄に閉じ込められ、自分の番を今か今かと待つだけとなる。

 

 

ま、此処でうだうだ考えていても仕方ない。

 

そうさな……虎の子を見つけたければ、虎の巣穴に入るしか無いか…。

 

先ほど、此処の見取り図を発見した。

 

それによると、ここから先は白竜の居場所までの一方通行となっていて、不死の結晶までの道は閉ざされている。

 

 

奥に見える昇降機、それが彼の待つ部屋まで直通となっている。

 

勝つことでは無く負ける事が目的の戦いに挑まなきゃならない日が来るとはね。

 

 

牢屋にぶち込まれたら魔術か混沌の刃で鉄格子なり壁なりを破壊して逃げ出せば良いかな。

 

 

昇降機の先の部屋からは結晶が溢れ出し、天井も、壁も、階段も、結晶に包まれたあらゆる場所から禍々しい魔力を放っていた。

 

そんな通路から、結晶の付いた鎧を着た騎士が現れた。

 

 

虚ろな目をした騎士、その手に握った大剣と盾も同じく結晶で出来ていた。

 

 

恐らく、この男が不死の結晶を求めて白竜に敗れた男なのだろう。

 

後悔と絶望に包まれた彼は亡者となり、白竜の実験体と成り果て、結晶を守護する者となった。

 

 

彼は人形のような動きで結晶の刃を振るう。

 

結晶の力は凄まじく、周囲の壁や床などを次々破壊して行く。

俺はハルバードを構え、彼の大剣を狙って打ち付ける。

 

 

結晶の武器はその魔力によって悉くが強力な代物となっているのだが、その反面、耐久性に問題があり、一度破壊されると二度と修理が出来ないと言う欠点がある。

 

 

 

ハルバードの魔力によって、彼の剣の傷から炎が吹き出しその耐久力を減らしてゆく。

 

 

炎によって脆くなった大剣をハルバードの刃に挟み込み、捻るようにして圧し折る。

 

 

元々、脆い物だった為か軽い音を立てながら、結晶の刃は砕かれた。

 

 

ハルバードの石突きで、彼の顎を打ち上げ炎を浴びせる。

 

 

彼は生物ならば、誰もが恐れる炎の一撃を受けてもなお、怯みもせず結晶のついた盾でシールドバッシュを敢行する。

 

 

彼の盾に付いている結晶に、俺の鎧を容易く貫かれた。

 

 

重症と言うほどでも無いが、決して軽い怪我でもない。

 

エスト瓶を取り出し、使用する寸前で止めた。

 

これから、白竜シースによって敗北しなければならない為、治すだけ無駄だな。

 

そう考えて、半身を引き、ハルバードを改めて構え直す。

 

 

彼の盾はパリィには不向き、更に大剣は半ばから圧し折られているため、バックスタブ等の攻撃は出来ない。

 

 

先ず、あの盾を破壊しよう。

 

 

そう思い、腰の捻りを加え、飛び込むように踏み込み刺突を放つ。

 

 

しかし、目の前の騎士の行動は、俺の予想を上回るものだった。

 

 

彼は、結晶だらけの盾でハルバードをパリィし、圧し折れた大剣で俺の胸に突きを放ってきた。

 

 

折れた大剣では、鎧ごと人体を貫く事はできなかったが、その一連の行動が俺に与えた衝撃は凄まじかった。

 

 

常人の発想じゃないぞ、自ら盾を駄目にしてまでパリィを敢行するなんて…!

 

彼の盾に付いていた結晶は強引にパリィをしたせいか所々砕けていて、盾自体にもヒビが入っていた。

 

 

それに構わず、折れた大剣を振り上げ、倒れている俺に止めを刺そうとしている彼の顔面を蹴り飛ばし、怯みを狙う。

 

 

鈍い手応えと、骨が折れる音が辺りに響いたのだが、彼は構わず刃を振り下ろす。

 

 

右腕を大剣の軌道に滑り込ませ、死ぬことだけはなんとか回避する。

 

 

左手で盾の裏のナイフを二つ握り、彼の両手を射抜く。

 

 

彼が武器を取り落とした隙に、倒れた体勢から飛び起きて、エスト瓶で傷を癒す。

 

 

無駄だの何だのと言ってられ無い、目の前の男も結晶の魔力に当てられ、異常な程のタフネスとなっている。

 

 

改めて、彼の姿を見る。

 

 

芸術的だった武装は見る影も無くなり、折れた首がだらし無く後ろに垂れている。

 

 

それでも彼は、刺さったナイフをそのままに、砕けた武器を握り此方に迫ってくる。

 

 

俺は結晶の魔力の悍ましさを目の当たりにし、手甲の中を手汗がじっとりと湿らせる。

 

最早、アレは生物では無い。 ただ命令された事を忠実にこなす自動人形だ。

 

 

 

両手にナイフが刺さり、握られているだけの剣と盾をハルバードで弾き胸を貫く。

 

 

彼の胸から全身が燃え上がり、あっと言うまに火達磨になる。

 

 

だが、彼は白竜に最も近い位置に居るためか、若しくは他の連中よりも多くの結晶の魔力を浴びて居るためか、彼は燃え尽きる事なく立っている。

 

 

此奴は殺せない。

 

いや、殺し続けていれば若しかしたら死ぬかも知れないが、其処まで俺が保たないだろう。

 

 

作戦を切り替える、殺せないなら殺す以外で彼を突破すればいい。

 

 

最終確認の為に混沌の刃を構え、彼の首を刎ね飛ばす。

 

 

首を刎ねられたにも関わらず、未だに動いている彼を見て殺せない事を再確認し、彼の両腕と両足を斬り落とす。

 

 

コレで、殺せないまでも追われる事は無くなった。

 

 

さあ、白竜に謁見しようか。




お ま け 不死の英雄外伝 〜闇の落とし子〜

第3戦 騎士


あの後、俺はオーブを使って別世界に侵入を果たした。


ーさぁて、今回の相手はどんなもんかねぇー


侵入先には、丁度目の前に騎士が1人立っていた。


ぎこちねぇ動きで、見た事の無い構えを取りながら大剣を構えていやがる。


一丁前に俺とやろうってのか?


最近、骨のねぇ連中ばかりでつまらなかった所だった為につい笑いを浮かべちまう。


まあ、遠慮はしねぇ。 俺から行かせて貰うぜ?


奴との距離を一気に詰める、そうするとあの手合いは大剣で俺を引き離しに来やがるはずだ。


彼の狙い通り、目の前の騎士は大剣を横薙ぎに振るう。


ドンピシャだぜ‼︎


すかさずその刃をパリィし、シミターを心臓目掛けて突き出す。 曲剣は突きに向かねぇが今はこいつしか刃物を持ってねぇから仕方ない。


だが、予想外な事に、この男は俺の顔を蹴り飛ばし距離を稼ぎやがった。


まともに反撃を貰った事なんざ久しぶりだ、興奮で腹ん中が熱くなってきやがった。


中々ヤルみてぇだ、俺の殺気を浴び続けても目を逸らしやがらねぇ。


じゃあ、コレはどおよ?


腰のショートボウを引き、火矢をチラつかせながら、ゆっくりと見せ付けるように奴に狙いを定める。


予想どおり、この誘いに乗った奴の背後に回り込み、バックスタブを叩き込む。


何が起きたのか分からないと言った顔をした騎士の首を刎ね飛ばし、勝利の余韻に浸りながら、思わず高笑いをする。


ーやっぱり、俺が最強みてぇだなー

ーそりゃあそうか、何せ俺様は天才なんだからよー


彼は知らない、この騎士が後に彼の生涯において最大の宿敵になる事を。








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