不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

64 / 134

遂に大型アップデートですね。

奇跡売りの彼女にテコ入れが……聖鈴で撲殺された怨みは忘れない。


鐘守りが各種鉱石をドロップするようになりマラソンが楽になるのでは……無いか。



最後に、この作品ではデモンズ、ダクソ、ダクソ2と言った時系列となっております。

今回、その辺りにの考察に触れますので、その事を念頭に置いて頂ければ幸いです。



不死の英雄伝 64

第六十四話 繰り返される歴史

 

 

膨大な資料に目を通していた時に一つ気になる本を見つけてしまった。

 

 

この私、白竜シースによるこのロードランと呼ばれる地に対する考察。

 

 

そう銘打たれた一冊に目を惹かれて、思わず手に取り中に目を通す。

 

 

始めに、此れから私が記す物はあくまで考察だ、グウィン王と酒を交わしていた際の肴を私なりに纏めたもの、根拠は無い。

 

 

だが、何事も仮説を発表した者を中心に探究は始まるのだ、穴だらけ、矛盾だらけだが私以外にこの地についての事を考えている者は居ないため許してほしい。

 

前置きが長くなったが本題に入ろう。

 

 

物事の始まりは神が居ない時代、竜に知恵がなかった時代にソウルの力が発見された事にある。

 

諸説あるのだが、この力を発見したのは人の王だと言う。

 

その王の治める国は繁栄し、たちまち強国となった。

 

民は明るく、騎士は精鋭、更に王家は聡明。

 

誰もが、この国の永遠を確信して疑わなかった。

 

だが、その繁栄は脆くも崩れ出す、他ならぬ王の手で。

 

ソウルの力に魅入られた王はとある獣の力を得て世界に霧を撒き散らす。

 

恐らくこの霧に影響され、地の底にあった我らの灰の世界は俄かに色付き、始まりの火が巻き起こったのだろう。

 

話を戻そう、その王の撒き散らした霧は数々のデーモンを生み、辺りを滅ぼしていった。

 

明るかった民や、王に使えた騎士は霧の魔力に犯され理性を失う。

 

混沌の坩堝と化したその国に、一人の者が訪れる。

 

その者は生まれは愚か、性別すら記載されておらず、ただ”英雄”とだけ呼ばれていた。

 

”英雄”はその地に降り立つと尖兵を殺し、竜の王に殺された。

 

霧の影響でソウルで構成された身体となり魂が剥き出しとなった英雄は肉体を取り戻す為に、各地のデーモンを討ち滅ぼして行った。

 

かの英雄が何の為にその国に訪れたのかは定かでは無い、しかしその功績は讃えられる物だった。

 

英雄は遂に王と対峙する、彼の息子は目前で力尽き、英雄に襲いかかり散っている。

 

仇討ちをする訳でも無く、ただ侵入者の排除の為に剣を向けた王と英雄の戦いは熾烈を極めた。

 

その戦いは三日三晩続き、王は倒れる。

 

英雄は気が付いていた、彼がただの人形である事に、自分が討った物が傀儡の王である事に。

 

かの王の本体は獣の腹の中、英雄は迷わず獣に飲まれた。

 

英雄の伝記は此処で終わっている。

 

私はこれを読んで一つの仮説を打ち立てた。

 

歴史は繰り返す、王と英雄の対峙は我々にも当てはまるのでは無いか?

 

嘗て我らは不死身の竜の統治を打ち破り、火の時代を築き上げた。

 

だがなグウィンよ、私には今の平穏が嵐の前の静けさに思えて仕方がないのだ。

 

今回は、我らは英雄だった。

 

しかし次回は? もしかすると我らは王の立場かも知れぬ。

 

栄えある者はいずれ衰える、盛者必衰の理だ。

 

その時まで、我らは我らのままで居られるのか、それは誰にも分からぬ。

 

故にお互いに凶王にならぬように気を付けようではないか。

 

おっと、うっかりその亡国の名前を書き忘れる所だった。

 

その国の名はーーーーーーー。

 

残念ながらインクが滲んでいてその先を読む事ができなかった。

 

歴史は繰り返す、まだ正気だった頃のシースの仮説。

 

結局、彼の仮説通りの結末となり、英雄であった彼らは今や凶王となってしまった。

 

 

火を継いだ後は不死の呪いは払われ、世界は浄化される。

 

 

そう信じて戦ってきたが、この仮説の通りだとすればいずれ俺の継いだ火は消えてしまうのではないのか?

 

 

その度にまた新たな不死が生まれ、薪となる為に試練を課せられるのだろう。

 

 

世界を救う、耳障りは良いが実態はその場しのぎの延命だった。

 

神の君臨する世界の為の礎、始まりの火の燃料。

 

何てことはない、王女もフラムトも、神の統治する世界が無くなる事を恐れているだけなのだ。

 

 

滑稽だ、事ここに至るまでその事に気が付かなかった自分に堪らなく笑いが込み上げる。

 

いつかローガンが言ったな、”世に神は無く、神秘も無く、ただ有るのは真理のみ、それを明らかにするのは知のみだ "

と。

 

まさにその通りだ、奴らは崇めるべき神では無い、欲望塗れの人間と変わらない。

 

だからと言って、始まりの火を消すことは俺には出来そうに無い、火を消した所で待っている物は闇の時代だ。

 

日の光は消え、不死が神の代替えとなり力で力を捩伏せる世界。

 

そんな世界が正しいとも思えなかった。

 

選択の時だ、改めて自分の意思で火を継ぐか、それとも消すか。

 

 

穴が空くほど何度も白竜の考察を読んで行く。

 

 

若しかしたら、嘗ての事象から何かを学べるかも知れなかったからだ。

 

そうして、決断する。

 

 

決めた、俺は火を継ぐ。

 

やはり、俺は闇の王になどなれはしない。

 

但し、タダでは継いでやらない。

 

俺の継ぐ新世界は貴様ら神の統治する世界になどはさせない。





お ま け 不死の英雄外伝 〜闇の落とし子〜

第5戦 貪食ドラゴン

クソがッ‼︎ あの野郎は俺が必ず殺してやる‼︎

俺の無敗の戦歴に泥を塗りやがって、あらゆる手で亡者に落としてやるッ‼︎


沸騰した脳味噌で霧を潜り目の前の竜にめを合わす。

彼奴のワニ頭は恐らくウロコが薄い、狙うならあの一点だ。

ショートボウを取り出し的確に頭部を狙い打つ。

しかし相手は竜だ、この程度じゃ死にやしないだろう。

だが、ウロコは破壊できる。

さっきっから上でチョロチョロと変な踊りを踊ってやがる奴も居るが無視だ無視。


冷静に慣っていれば、真っ先に踊っている奴を殺したのだが、そこまで気が回らなかった。


奴は立ち上がり、両手で一本づつ周囲の柱を引っこ抜き、武器として振り回し始めた。


頭に血が上り、冷静さを無くしていたがそれが今戻る。

ーチッ、らしくねぇー

ー頭に血が上って自分を見失うなんざ三流のすることじゃねぇかー

シミターに松脂を塗り炎を纏わせる。

先ずはあの手を使い物にならなくさせる。

縦横無尽に暴れ回る柱を足場にしながら、奴の顔を斬りつける。

竜は炎による目潰しに、片腕に持っていた柱を取り落とし顔を抑えようとする。

その腕を滅多斬りにし、手のひらを灰にする。

肩の上に乗り移り、ひたすら頭を斬りつける。

全く同じ箇所を斬りつけ、遂に頭を両断する。

剥き出しになった脳味噌を潰す前に、上からソウルの矢が俺に放たれようとしているのに気が付いた。

そいつを回避し、剥き出しの脳にソウルの矢を誘導して破壊させる。


ソウルとなり消えてゆく竜の上から、魔術師の眉間を弓で撃ち抜いて始末する。


ーはぁ、無様な戦いだったなぁー

放浪者は頭を掻きながらそう愚痴る。

ーもっと俺はスタイリッシュな戦い方だったはずだー

ーやっぱし、あの男を殺さなきゃ収まりがつかねぇよー


待ってやがれ、必ず殺してやるからな。




▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。