不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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明日、明後日とそれぞれセンの古城、アノール・ロンドでイベントが有るみたいですね。

よし私も放浪者で参戦しよう。




不死の英雄伝 65

第六十五話 結晶の魔術

 

 

決意を新たに、この牢獄から脱出する事にする。

 

他にもまだ読みたい物があるのだが、また何時増援が来るか分からない以上、時間が足りないだろう。この屋敷の見取り図だけは失敬して行こう。

 

 

魅力的な書物達に後ろ髪を引かれながら階段を上って居ると、ふと視界の端に何かが映っていた。

 

 

それは、俺の知っている人物だった。

 

ペトルスの遺言で巨人墓場にて俺が救出した女性、聖女レア。

 

 

だが彼女の胸には短剣が突き立てられている、亡者に墜ちる前に自害したのだろう。

 

攫われたのか、或いは彼女の正義感から他に囚われている聖女を助けに来たのか、その結果彼女は自ら命を断った。

 

 

牢屋の錠前を破壊し彼女の檻に入る。

 

彼女の遺体の手にはペトルスの形見が握られていた。

 

ナイフを抜き取り、念のために脈を測る。

 

当たり前だが脈は無い、その事に対して苦笑いすら出ない。

 

ロートレクにしろ、ペトルスにしろ、知り合いの死だけは何時まで経っても慣れないものだな。

 

それが、自分が助けた相手だと思うと余計に辛いな。

 

 

彼女の側に落ちている聖書を拾い集めソウルにしまう。

 

 

形見、と言う程では無いのだが、彼女の思い出として拝借させて貰う。

 

 

亡者化が進み始めた俺は思い出を残す事が難しくなって来ている、前世の記憶などは最早欠片も思い出せない。

 

俺はもう、何かを関連付けなければ、思い出を繋ぎ止められなかった。

 

 

彼女の亡骸を後にし、書庫牢から脱獄する。

 

 

どうやら此処は別館らしく、渡り廊下から直接本館に渡れるようだ。

 

渡り廊下から見える広大な庭には結晶のゴーレム、クリスタルゴーレムが山ほど配置されていた。

 

そしてもう一つ見えたのが、天高く聳え立つ巨大な結晶の柱。

 

あの柱の麓に、不死の結晶が有るのだろう。

 

直接向かいたいが、あいにくロープのような物は無い為、渡り廊下から庭に降りる事は出来なかった。

 

ハルバードを構え、結晶亡者を片ずけながら道なりに進む。

 

本館に入るや否や、一つ上の階からソウルの矢が飛んでくる。

 

壁の影に隠れ、放たれた魔術を凌ぎながら周囲を索敵すると、直ぐ側で伝道者が例の踊りを踊っているのを発見した。

 

 

すぐさま混沌の刃による居合い斬りで此奴を斬り捨てる、その瞬間を狙い撃たれるだろうが構いはしない。

 

 

斬ったと同時に前転、放たれた魔術を回避する。 それと同時にソウルからスナイパークロスを取り出し、伝道者の握る槍を撃ち落とす。

 

撃ち落とされた槍は、地面に落下して砕け散る。

 

 

奴らの槍は魔術の触媒となっている為、破壊してしまえばこっちの物。

 

 

なす術が無くなった伝道者を無視して真っ直ぐ進む。

 

指輪のお陰で俺の発する音は消えている、それを活かし、壁や柱に隠れながら結晶亡者達の背後に忍び寄る。

 

 

左手で口を抑え、声を上げさせないようにし、右手の混沌の刃で背中から心臓を貫く。

 

 

周辺の制圧が終わり、絡繰り仕掛けの階段のレバーを回す。

 

この階段はレバーを回すと位置が反転する物、そしてコレはもう一つ対になる階段があり、其処から庭に出ることが出来る。

 

 

見取り図を頼りに書庫を進んで行くと、見知った男と出会った。

 

 

ビックハットローガン、彼は俺と同じく一度捕まったのだが、錠前を破壊して脱出したと言う。

 

 

彼はその際に結晶の力を己の魔術に応用する事に成功したらしい。

 

ソウルの結晶槍、追尾する結晶塊、結晶魔法の武器。

 

 

これらが彼が新たに生み出した魔術、それを特別に俺に教えてくれると言う。

 

 

三つの魔術書を貰い、彼と別れたのだが……嫌な予感がする。

 

 

彼はどうも結晶の魅力に取り憑かれているようだった、俺にこの魔術を伝授した際にかなり興奮気味で、彼らしくはなかった。

 

 

さり気なく忠告しておいたが、恐らく無駄だろうな。

 

まったく、俺が関わった奴は碌な結末にならないようだ。

 

 

既に狂い初めて居るのか、俺に魔術書を渡したローガンは譫言のように何かをブツブツと呟き始めた。

 

声をかけると反応する所を見ると、まだ正気と狂気の瀬戸際に立っているのだろう。

 

 

ーローガン、程々にしておけよ?ー

 

ーでないと白竜シースのようになるぞー

 

 

俺の問いかけに、彼は沈黙で返す。

 

 

ー狂気に堕ちても…求める物があるという事かー

 

ー分かった、君の覚悟はしっかり伝わったよー

 

ー介錯は俺が務めるから安心してくれー

 

 

ー…………かたじけないー

 

ーすまぬな、如何しても探求者の性には逆らえぬのだー

 

ー私が狂気に飲まれた時は、その時は…ー

 

ー迷わず私を斬ってくれー

 

俺は彼の介錯を約束し、近くのレバーを引いて篝火までの道を開き、篝火に触れるのだった。

 

 





お ま け 不死の英雄外伝 〜 闇の落とし子 〜

第6戦 弟子入り

蜘蛛女の魔剣を引き抜いた帰りに、クラーナとか言う女に声を掛けられた。


ーそこのお前ー

ー力を求めて居るようだな?ー


ーあぁん? なんだテメェー

ーテメェにゃ関係ねぇ話だろうがー


ー力が欲しいのかと聞いているんだー

ー質問にはキチンと答えろー


ーちっ、だったらなんだよー


ーふむ、決めたぞー


ーはぁ? 何をだよー


ーお前を弟子にする、異論は認めんー


ーお前、頭大丈夫か?ー

ーお断りだ、大体ー

その言葉の続きは言えなかった。

目の前に突き出された呪術の火、全く反応が出来なかった。

この女はさっきまで座った体勢だったにも関わらず、いつの間にか間合いを詰められていた。

ーッ‼︎ この野郎‼︎ー

右手の魔剣を振り、目の前の女を焼き払おうとしたのだが、手首を握られた。

所謂背負い投げ、無様に地面に叩き付けられた俺の前に、この女はまた呪術の火を突きつけている。

ー二回目だ、どうした、お前の力はこの程度か?ー


ーこのッ、女ァ‼︎ー

倒れた体勢から女に魔剣の突きを放つ。

この女は当然のように避けやがるが、それが俺の目的だ。

空いている左手を使い、思いっきり飛び起きて殴りかかる。

相手の回避行動に合わせて踏み込み、全体重を掛けて殴りかかる。


完璧なタイミングだったにも関わらず、この女は俺の拳を受け流し、その拳を背中に回すように捻りあげる。


ー3度目だ、いい加減敗北を認めろー


ー………わかったよー


ーふっ、安心しろー

ー私に師事する以上、今よりも確実に強くしてやるー

ーお前には才能がある、一目で確信したー

ーまだまだ荒削りだが、その分伸び代もあるー

ー我流も結構だが、それではいずれ限界がくるー


ー…………好きに、しやがれー


ー決まり、だなー

ーお前のように才能溢れる弟子は初めてだー

ー成長が楽しみだー


これが、俺と師匠とのファーストコンタクトだった。

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